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佐藤レイの「一歩踏み込む!」リミテッドの極意
第15回(特別編):もっと勝てる!『指輪物語:中つ国の伝承』ドラフト
皆さんこんにちは、佐藤レイです!
パイオニア・フォーマットになりますが、先日行われた「チャンピオンズカップファイナル サイクル3」にてトップ8に入賞することができました!
優勝した前回の「チャンピオンズカップファイナル サイクル2」同様、自分らしいデッキを選んで好成績を出せて良かったです。せっかくなので連覇したかったのですが、なかなか思うように勝つことは難しいですね。これからもコツコツ大会に出て、結果を積み重ねていければなと思っております。
今回はあの名作小説「指輪物語」とのコラボが話題のユニバースビヨンド・セット『指輪物語:中つ国の伝承』のブースタードラフトについての攻略記事をお届けします。
今回リリースにあたって指輪物語のことを調べたところ、三部作の全てが売り上げ一億部を超え、世界史上のベストセラーのトップ10に入る作品だそうです。ファンタジー作品の金字塔的な存在という認識はありましたが、これほどまでとは……本当にすごいコラボだと世界的に盛り上がっているのもわかりますね。
ちなみに映画を見て僕はサムとガンダルフが好きになりました。今回もよろしくお願いします!
『指輪物語:中つ国の伝承』ドラフト概要
『指輪物語:中つ国の伝承』ドラフトに最初に触れてまず感じたことは「黒が強い」です。除去、クリーチャー性能、アンコモン以上のカードの強さ、どれを取っても圧倒的でまごうことなく今環境の最強色と言えるでしょう。
黒がメインとしているオーク動員というメカニズムも強力で、ここまで原作に忠実に再現しているのかと驚きました。(映画を観てモブっぽいオークが普通に強くてビビりました。)特に赤と合わせた黒赤は強力で、間違いなく今セット最強のアーキタイプの1つとなります。
なので環境攻略のアプローチとしては、まずは黒の優先度を高めつつ黒赤をしっかり狙って、それが駄目だった場合の逃げ道として白黒・青赤あたりをできるようにしましょう。
それからより勝つために、異なるアプローチとして緑白・緑多色・赤白などの他のマイナーな色の組み合わせをできるように引き出しを増やしていくのが良いのではないでしょうか。
ということで、今回もいくつか代表的なアーキタイプの解説をしていきます。ちなみに今環境は基本的には2色環境になります。ただ《冥王、サウロン》《イシリアンの領主、ファラミア》《ドゥリンの扉》《灰色のガンダルフ》などの強力なマルチレアをピックできたときはタッチをしたり、また緑を使う場合は多色戦略も視野に入れるといいでしょう。
『指輪物語:中つ国の伝承』ドラフト有力アーキタイプ紹介
ここからは、有力なアーキタイプについてサンプルデッキと共にご紹介します。
黒赤
7《山》 8《沼》 1《滅びの山》 -土地(16)- 1《死者の沼地の亡者》 3《褐色国のクレバイン》 1《オークの弓使い》 1《モルグルの副官、ゴスモグ》 1《軽率な扇動者、グリシュナーハ》 1《群がるモリアのやから》 1《ウルク=ハイの隊長、マウフール》 1《オログ=ハイの破壊者》 1《カザド=ドゥームのトロール》 1《キリス・ウンゴルの巡回兵》 -クリーチャー(12)- |
1《ゴラムの噛みつき》 1《バルログの鞭打ち》 1《黒門からの出撃》 1《モルドールの召集》 1《悲惨な破滅》 1《ゴラムへの拷問》 1《間に合わせの棍棒》 1《不死者の討滅》 1《マザルブルの書》 1《オークの急襲》 1《いとしいものを取り返す》 1《東方人の先陣》 -呪文(12)- |
-サイドボード(0)- |
黒赤は豊富な除去を始めとして優秀なカードがコモンやアンコモンに多く、強力なアーキタイプかつ再現性も高いため、この環境で最も人気のアーキタイプとなります。
デッキを構築するときに最初に核にすべきメカニズムは「オーク動員」です。最重要コモンは《褐色国のクレバイン》となります。
アンコモンだと《ウルク=ハイの隊長、マウフール》《黒門からの出撃》《オークの急襲》などが強力かつキーとなるカードで、初手からピックして狙っていく価値のあるカードたちです。
また動員が出るカードは生贄シナジーとも相性が良いです。《バルログの鞭打ち》《間に合わせの棍棒》の2種類の除去を上手く使っていきましょう。《軽率な扇動者、グリシュナーハ》でコントロールを奪ったクリーチャーを生け贄に捧げられれば最高ですね!
「指輪があなたを誘惑する」はあまりメインの戦略とはならず、失敗気味になった場合のサブプランな印象です。ただし《指輪の誘い》《ナズグル》などの誘惑シナジーのある強力なカードが取れた場合はその限りではありません。
《ウルク=ハイの狂戦士》《容赦なきロヒアリム》などを採用する際には、他にどれだけ誘惑系のカードがあるかをしっかり確認しましょう。
白黒
7《平地》 9《沼》 1《ミナス・ティリス》 -土地(17)- 1《南小路のロージー・コトン》 1《サウロンの破滅、フロド》 1《小馬のビル》 1《野戦指揮官、ファラミア》 1《東四が一の庄の農夫》 1《モルグルの副官、ゴスモグ》 1《アングマールの魔王》 1《褐色国のクレバイン》 1《ナズグル》 1《貪欲なる忌まわしき獣》 1《誓言破りし者の王》 1《統治する執政、デネソール》 1《堕落した庄察頭、ロソ》 1《ウェストフォルドの乗り手》 1《闇の森のコウモリ》 1《忍耐強く企む者、ゴラム》 -クリーチャー(16)- |
1《ホビットのつらぬき》 1《ホビット庄の庄察》 1《影の召喚》 1《オルサンクからの脱出》 1《バルログの鞭打ち》 1《悲惨な破滅》 1《いとしいものを取り返す》 -呪文(7)- |
-サイドボード(0)- |
黒を使ったデッキでは黒緑だけシナジーの薄さから下がりますが、残りの白黒・青黒もまた赤黒に次ぐ人気の組み合わせです。今回は白黒を紹介します。
白黒は黒赤と同様にオーク動員を利用することになりますが、それのみならず1/1兵士、食物、宝物など、あらゆるトークンを上手く利用することが大切になります。
黒赤を目指していた際、あるいは目指しつつの代替案としてとても良く、《南小路のロージー・コトン》《小馬のビル》のようなカードや、遅めに流れてきた《統治する執政、デネソール》《影の召喚》を取ることで移行していくことができます。
黒を取ってから強力なマルチのカードを取ることでその色の組み合わせにいくことは、青黒の《サウロンの口》などでも同様にありえます。
青赤
8《島》 8《山》 -土地(16)- 2《ペラルギルの生き残り》 1《エレボール山の炎鍛冶》 1《ハラドリムの槍使い》 1《群がるモリアのやから》 1《引退した忍びの者、ビルボ》 1《灰色のガンダルフ》 1《白のサルマン》 -クリーチャー(8)- |
1《使者を欺く》 1《誕生日の旅立ち》 1《スメアゴルをなだめる》 1《サルマンの策略》 1《オルサンクへの幽閉》 2《灼熱の銘》 1《レンジャーの松明》 2《不死者の討滅》 1《間に合わせの棍棒》 1《ガンダルフの制裁》 2《ロリアンの発見》 1《角笛城での結集》 1《アルウェンの贈り物》 -呪文(16)- |
-サイドボード(0)- |
青赤はこれまで紹介した黒系のデッキとは異なり、インスタントやソーサリーといったいわゆる「スペル」を上手く使うことで勝利を目指すデッキです。デッキによってはクリーチャー・カードが10枚以下になることも珍しくありません。こちらは《ペラルギルの生き残り》《灼熱の銘》《エレボール山の炎鍛冶》といったカードがキーカードになります。
青赤の良い点はキーカードの専用性の高さです。デッキを構成するカードの多くが他とは異なるため、キーとなるカードが遅い巡目でもピックすることができます。立ち位置が重要なアーキタイプになるので、アンコモン以上の強力なキーカードが流れてきたときに始めたいです。
また青赤は誘惑とも相性が良いです。《誕生日の旅立ち》《スメアゴルをなだめる》《灼熱の銘》などの誘惑するカードと終盤立っているだけになりやすい《ペラルギルの生き残り》《エレボール山の炎鍛冶》などのクリーチャーが噛み合い、より少ないリソースで相手のライフを削ることができます。《引退した忍びの者、ビルボ》もいいですね。
ここまでで紹介した3つのアーキタイプは積極的に狙いにいく価値のある、環境でおすすめの選択肢になります。
『指輪物語:中つ国の伝承』ドラフトのカウンターアプローチ
これから紹介するのは、人気のアーキタイプ・強力なカードの認識がある程度共有されているメンバーとドラフトをするときに有効な「カウンターアプローチ」としてのアーキタイプです。
これらのアーキタイプを理解することで、各パックの初手で引いたり流れてきた強力なレア・神話レア、そして良いポジションでのピックをスルーしなくて良くなります。
レベルが高くなればなるほど、人気のアーキタイプはやりづらくなり、ポジションに合わせたピックが重要になってくるので、より勝てるようになるためには引き出しを広げるつもりでしっかりと理解していきましょう。
緑多色
1《平地》 1《島》 3《山》 8《森》 -土地(13)- 1《怒り猛るフオルン》 2《ウォーゼの先導者》 1《弓の名人、レゴラス》 2《ペレグリン・トゥック》 1《気前のよいエント》 1《アルウェン・ウンドーミエル》 1《ホビット庄の庄察》 1《サムワイズ・ギャムジー》 1《軽率な扇動者、グリシュナーハ》 1《茸の番犬》 2《ドゥネダインのレンジャー》 1《メリアドク・ブランディバック》 3《袋小路屋敷の荷運び人》 -クリーチャー(18)- |
1《ドゥリンの扉》 4《数々の別れ》 1《エントの憤怒》 1《危ない! 火事だ! 敵だ!》 2《間に合わせの棍棒》 -呪文(9)- |
-サイドボード(0)- |
緑を主体に、様々な色のカードを使用する緑多色にはいろいろな形がありますが、今回は僕がプレミアドラフトで7勝したデッキを紹介します。
まずこのデッキに土地カードは13枚しか入っていません。しかしライブラリーから基本土地をサーチする《数々の別れ》が4枚、マナ・クリーチャーの《ウォーゼの先導者》が2枚、さらに森サイクリングを持つ《気前のよいエント》が入っており、実質的なマナソースは通常のデッキよりも多いです。
そこからプレイできる様々な伝説のクリーチャーや《ドゥリンの扉》、食物・トークンのシナジーを使って勝利を目指すデッキとなっています。
緑は緑白以外の2色の組み合わせがあまり強くなく、今回最も不人気の色になります。しかし裏を返せば環境後期になればなるほど流れが良くなりやすい色ということでもあるので、毛嫌いせず勝てるデッキを組めるようになることで回りに差をつけられるはずです。
緑を使うなら緑白のアグロデッキか、このデッキのようにより幅を広げて多色にするのがいいでしょう。いずれにせよ、食物シナジーを使うこと、後者の場合は伝説のクリーチャーが増えがちなことを抑えておくとよいです。
そのほかの緑については、緑青は占術というテーマを持つもののシナジーに寄りすぎて単体でのカードパワーが低くあまり強くないデッキになりがちで、赤緑・黒緑は他のアーキタイプに比べシナジーが薄く、いずれもあまりおすすめしません。《医術の大家、エルロンド》《ドゥリンの扉》《役立つ案内人、スメアゴル》などの強力なマルチのレアカードが取れたときだけ考えるくらいでいいでしょう。
赤白
8《平地》 8《山》 -土地(16)- 1《ホビット庄の庄察》 1《東マーク軍団の騎兵》 1《ウェストフォルドの乗り手》 2《ゴンドールの使者》 1《ローハンの姫君、エオウィン》 2《ゴンドールの守護者》 1《ウェストフォルドの領主、エルケンブランド》 1《騎士国のエオメル》 1《ローハンの王、セオデン》 1《ハラドリムの槍使い》 2《ロヒアリムの槍兵》 1《ローハンの軍団長、エオメル》 1《軽率な扇動者、グリシュナーハ》 -クリーチャー(16)- |
1《ホビットのつらぬき》 1《間に合わせの棍棒》 1《ギムリの怒り》 1《不死者の討滅》 1《危ない! 火事だ! 敵だ!》 1《ドゥネダインの刃》 2《角笛城での結集》 -呪文(8)- |
-サイドボード(0)- |
赤白もまた黒を使わないカウンターアプローチとして、この環境では人気のアーキタイプです。《ローハンの王、セオデン》《ウェストフォルドの領主、エルケンブランド》といった伝説のクリーチャーから始めやすく、また人間や兵士に寄せるというわかりやすい指標もあります。特に《ウェストフォルドの領主、エルケンブランド》と《角笛城での結集》のコンボは強力ですよね。
赤白を組むときに気にしたいのが「しっかりと詰め切れるデッキとなっているか」です。赤白のクリーチャーたちはサイズも大きくなく、回避能力も特にありません。
この環境は《褐色国のクレバイン》を始めとして、オーク動員持ちのカードが多く、動員はシステム的にアグロに強いです。なので、装備・本体火力・全体強化・トランプル……なんでも良いですが何か決めパターンのようなものがないと、《ローハンの王、セオデン》を除去されてしまったらすぐ戦場が膠着して負けてしまった、ということになりかねませんのでそこは注意しましょう。
おわりに
今回はメインプランとしての「黒赤」「白黒」「青赤」、カウンターアプローチとしての「緑多色」「赤白」を紹介しました。もちろんリミテッドは自由で奥が深いので、これ以外にもたくさんのアーキタイプ、勝ちパターンが存在しますのでいろいろ試してみてください。
僕も今月末に行われる「プロツアー・指輪物語」に向けて、まだまだこのフォーマットを研究していくつもりです!
それでは、また次回の記事でお会いしましょう!
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