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お知らせ
2023年12月4日のパウパーの禁止についての説明
2023年12月4日
やあ!ガヴィン・ヴァーヘイだ。私は、マジックのカード・デザインに加えて、パウパー・フォーマット委員会/Pauper Format Panelのメンバーでもある。今日はパウパーの禁止について話すために来たんだ。
まだパウパーに慣れていない人のために説明すると、パウパー・フォーマット委員会がこのフォーマットを監視し、禁止や制限を管理している。私たちはマジックのセットに影響を与えたり、どのカードのレアリティが格下げになるかを選んだり、このフォーマットのために新しいカードを作ったりはしない(マジックのデザイナーとしての私の能力外だ)。そして、私たちは確かにフォーマットがどのようなカードを望むかについて話すが、我々が重点を置くのはフォーマットの健全性と重要なカードの制限なんだ。
それでは本題に入ろう。 《僧院の速槍》はパウパーで禁止された。みんなの中には「なぜ?」と思う人もいるだろう。また、「なぜもっとないのか?」と疑問に思う人もいるだろう。この決断に至ったデータや情報、このフォーマットでのデッキの見方などについて説明しよう。
まずはこのフォーマットの現状から見ていこう。ここしばらくの間、パウパーは多様性に富んだエターナル・フォーマットだった。マジック・オンライン・チャレンジのようなオンライン・イベントを見ると、トップ8の多くには5~6種類のデッキが登場していた。数週間前に行われた、500人以上のプレイヤーが参加した大規模なパウパー大会「Paupergeddon」では、トップ8に5種類のデッキが入った。多様性を見れば、親和、赤単、ゴルガリ・ガーデンズ、青単テラー、ファミリア、フェアリー、防衛、カウ・ゲートなどのデッキが登場し、成功を収めている。アグロ、コントロール、ミッドレンジ、そしてコンボさえも登場している。
では、何が問題なのか?
問題はスピードと振れ幅だ。
2022年以降、このフォーマットは大幅にスピードアップした。《トレイリアの恐怖》、《きらきらするすべて》、《僧院の速槍》などのカードを加えることで、より速く爆発的なスタートを切るデッキが生まれた。そして、スタートが非常に強かったり、相互作用が難しかったりすると、ゲームが非常に不利に感じられることがあるため、そこに振れ幅が生じるのだ。確かに、平均的なドローなら、ゲームはうまくいくかもしれない。しかし、赤単が良いドローを得たり、あるいは対戦相手が少しつまずいたりすると、4ターン以内に終わってしまう。《トレイリアの恐怖》が適切な組み合わせのキャントリップを引いたり、《思考掃き》が決まったりすると、3ターン目にいきなり《トレイリアの恐怖》2体が出てくることになる。他にも色々ある。
だから私たちは変化を起こしたかった。そして私たちは、多くの禁止の可能性について(そしていくつかの解禁についても)話し合った。まず、パウパーが最もプレイされている「Magic Online」リーグのデータを率直に見てみよう。
まず赤単から始めよう。赤単は、最も禁止を出すことを求める声が多いデッキだ。さて、人々はこのデッキについて語るのが大好きだが、その非ミラー勝率が50.8%であることを知ると、あなたはショックを受けるかもしれない。かろうじてゲームの半分を超えた程度なのだ。そして、これは最も成績の良いリストのものである。いくつかのバージョンのデッキは勝率50%以下を記録している!
では、なぜそこからカードを禁止するのか?
ここでも、振れ幅の大きさが問題だ。
第1ゲームを見ると、赤単は素晴らしい活躍をしている。ほとんどの対戦で有利だ。しかし、第2ゲームと第3ゲームでは……ほとんどすべての対戦で不利に変わる!
《青霊破》《水流破》を使うにせよ、大量のライフを得るカードを持ち込むにせよ、赤に対する素晴らしい選択肢はたくさんある。
それでも、このフォーマットは多大な影響を受けている。サイドボードの8枠を赤に費やす人が多いということは、他のデッキと戦うのが難しくなるということだ。そうなると、他のアーキタイプを締め出してしまう。赤単がまだ有力なデッキでありながら、波乱が少なくなるようにしたい。プレイヤーに8つのスロットを捧げることを強いられていると感じてほしくない。その爆発的なドローはやや弱く、反発力もない。赤単が強力なデッキであるならば、それは健全で良いことだ。このようにフォーマットを歪めてしまうほど強いのは良くない。
私たちはデッキのすべてのカードを評価し、禁止される可能性のあるカードについてたくさん話し合った。特に真新しい《ゴブリンの墓荒らし》はこのデッキにとってもう1つの大きな収穫であり、振れ幅が極めて大きくなる可能性がある。
《レンの決意》と《無謀なる衝動》の2種類の「壺」カード(壺はこの効果の内部デザイン名で、《エルキンの壷》にちなんで命名された)は、土地をごまかしながらデッキに大量のカード・アドバンテージと長いゲームプレイを与えてくれる。《実験統合機》も同様だ。しかし、これらのカードはその価値を最大限に発揮するために、より軽いプレイを集める必要があり、《僧院の速槍》と組み合わせると巨大な効果を発揮する。このデッキには他にも軽いプレイがたくさんあるが、重要なものを失うのは大きな問題だ。
《カルドーサの再誕》は《ゴブリンの奇襲隊》と組み合わせることで、このデッキに最強のスタートを与える。しかし、どちらのカードも長い間パウパーに存在し、多くの楽しく、カジュアルで、時には爆発的な戦略を可能にしてきた。このうちの1枚を潰すことは、長年パウパーを支えてきた1枚を潰すことであり、このコンボが強力なカード単体よりも強いとは言い切れない。
《ゴブリンの墓荒らし》は新参者で、《大焼炉》と一緒に引くと簡単に《ゴブリンの先達》になる。アーティファクト・土地と並べると、確かに振れ幅が大きくなる。
私たちはアーティファクト・土地についても話したが、それについては後の「親和」のところで詳しく説明する。
あらゆるものが《僧院の速槍》を指し示し続けていた。そもそも赤の大量流入のきっかけとなったものであり、「壺2」呪文とシナジーがあり、タフネス2除去をうまくかわし、一般的に最も爆発的なドローを可能にする。対戦相手の手札に2~3枚の《僧院の速槍》があれば、すぐに遅れを感じるようになってしまうだろう。
禁止を1枚にするか2枚にするかは話し合った。まず、ここから始めて、それ以上のことが必要なのかどうかを考えてみようと思った。上記のどのカードも間違いなく選択肢にある。新しいフォーマットを試してみての感想があれば、是非私たちに教えてほしい。
さて、赤に関してはたくさん話してきた。次は、他のデッキに移ろう。まずは親和からだ。
親和は非常に長い間パウパーでプレイされてきた。《エイトグ》のような禁止にも生き残り、その過程で新しいおもちゃを手に入れた。最近では、《きらきらするすべて》が《羽ばたき飛行機械》や《ジンジャーブルート》につけていきなり強打を叩き込むことができる青白バージョンでデッキに新たな風を吹き込んだ。
これに関する禁止については長い間話し合ってきた。そして、大きく2つの方向性があった。
最初の、そして単純なものは、《きらきらするすべて》だ。このデッキの強打を可能にしている最近の格下げで、ゲームに大きな振れ幅をもたらす一因でもある。しかし、妨害するのは簡単だ。
2つ目の、より微妙なものは、アーティファクト・土地のセット、つまり10枚の橋か、5枚の初代『ミラディン』のアーティファクト・土地だ。また、5枚の初代アーティファクト・土地を禁止することで赤単は《大焼炉》を失うため、赤単へのダメージという波及効果もある。
アーティファクト・土地を失うことは、親和にとってもフォーマットにとっても大きな痛手だ。様々なデッキで使われてきた。(例えば、《浄化の野火》と破壊不能持ちの組み合わせなど。)アンタップ状態で出るものはとても長い間パウパーの一部であり、愛されてきた。これまではタップ状態で出るものが使われていたが、この新しい青白ビルドでは、青白の4枚のみが使われている。(もちろん、もっと多くの枚数を使う、「Paupergeddon」で優勝したジェスカイの構築も考慮しなければならないが。)これはおそらく、最も広く長く議論されたトピックのひとつだろう。
それを念頭に置いて、データを掘り下げてみよう。
勝率やマッチアップに関して言えば、親和は赤単とは少し異なる話になる。勝率は50.5%と同程度だが、対戦成績における振れ幅はかなり少ない。黒緑ガーデンやフェアリーのように苦手なデッキもあるが、他のほとんどのデッキに対しては有利だ。サイドボード後は、ただただ不利なマッチアップが増えるだけである。
さらに、アーティファクトと戦う手段や、《きらきらするすべて》がついているクリーチャーを殺すだけの手段に関しても、多くのサイドボードの選択肢がある。赤が少し弱体化すれば、親和対策にサイドボードの枠がいくつか空くはずだ。クリーチャー除去呪文を4枚増やすだけでも、この構築に対抗するための大きな助けになる。
最終的に、私たちは今のところ親和を維持し、赤単へのこの変更でどうなるかを見て、これがどうなるかによって将来のアップデートを検討することにした。また、アーティファクト・土地に関するプレイヤーの意見も聞きたい。初代アーティファクト・土地がなくなることについてどう思うか?橋についてはどうか?
3大デッキのうち、最後にテラーについて話したい。
このデッキは長い間青黒で、その勝率は決して高いものではなかった。しかし、《謎めいた海蛇》の『統率者マスターズ』での格下げによる追加により、これらの巨大クリーチャーを素早く展開する青単ビルドに移行した。
ここでもいくつかの禁止の選択肢について話し合った。まず最初に、《トレイリアの恐怖》と《謎めいた海蛇》は、コストが軽く、殺すのが難しい大きな脅威だ。もう1つは呪文で、我々が最も話題にしたカードは《ロリアンの発見》だ。これは土地の数をさらにごまかすことができ、そうすることで呪文を自分の墓地に入れることができ、ゲーム終盤にマナが余ったり膠着したりしたときに窮地を脱することができる。
では、データを見てみよう。このデッキの状態はどうだろうか?
まあ、勝率は5割を切っている! 親和、フェアリー、カウ・ゲート、防衛はすべてこれを上回る勝率で、もちろん赤単よりも劣っている。そして、ゲームに勝ったり、サイドボードから助けを得たりすることは可能だが、それでも残酷だ。人気のある強力なデッキである「カウ・ゲート」に対する勝率は30%程度しかない!
さらに、『イクサラン:失われし洞窟』からの新カード、《税血の刃》がこのゲームを大きく変えた。このカードは突如として黒緑ガーデンのテラーに対するアドバンテージを激増させ、それが定着するかどうかを知るには時期尚早だが、このカードはこのアーキタイプに大きなダメージを与える恐れがある。
これらのことを考慮し、我々は《トレイリアの恐怖》に変更を加えないことにした。
ところで、私たちは物事を本当に面白くするために、よりアグレッシブな変更について話し合ってきた。例えば、赤単から2枚、アーティファクト・土地、《トレイリアの恐怖》を一度に禁止するとする。しかし、現状にはいくつかのことがある。1つ目が、このフォーマットが多様であること。2つ目が、『イクサラン:失われし洞窟』では《税血の刃》を筆頭に大きな新パーツが導入されており、メタゲームがそれを軸に動き回っている中、我々が必要だと分かっていた変更を行い、その進化を見守ることが適切だと感じたこと。ここでは小さな変更にとどめて、《僧院の速槍》だけでは充分でなかったために数カ月後にまた戻ってきてもう1、2枚カードを禁止しなければならないとしても、その準備はできている。
ああ、次の話題に移る前に、勝率の議論で、人々が最も話題にするデッキの勝率がそれほど高くないと言うなら「勝率が高いのはどれだろう?」と疑問に思われるかもしれない。
もちろんセットが出るたびに変動することではあるが、データがある直近の週では、ファミリアが約56%でトップに立っている。カウ・ゲート、黒緑ガーデン、青黒フェアリー(テラーは見当たらない!)が52~55%と僅差だ。もうひとつ、本当に驚いたのは(プレイ率がかなり低いので、データは完璧ではないが)白ウィニーの勝率が54%もあることだった。一度試してみてもいいかもしれない。
勝率のばらつきが比較的小さく、トップデッキが毎週入れ替わることを考えて、私たちはこのフォーマットに多くの変更を加えることを躊躇してきた。スピードと二極性の問題により、私たちはここで行動を起こすことになった。しかし、私たちはパウパーについてよく話しているし、これまで変更を加えなかった理由の1つは、バランスが取れているように見えたからだ。私たちは最近、この《僧院の速槍》禁止に落ち着いたが、プレイヤーたちが土壇場で何かを変更しようと奔走しないようにするため、先週末に開催されたばかりのブラジル・パウパー全国大会が終わるまで、この禁止を待ちたかった。
最後にいくつか話しておきたいことがある。
ひとつは禁止解除について。私たちは、《予言のプリズム》(以前に言及したことがある)のような無害なカードから、もっと荒唐無稽な選択肢まで、いくつかのカードの禁止解除について話し合った。しかし、1枚の禁止でこのフォーマットを少し調整する場合、誤って同時に大きな新しい変数を導入したくはなかった。私はプリズムが将来的に解禁される可能性があると思う。これまでのパウパーの動画でも何回か話してきたように、私たちは《陥没孔》《トーラックへの賛歌》《満潮》を調査したが、その時は解禁しないことに決めた。しかし、カードを復活させることについては、これまでも議論してきたし、これからも議論していくつもりだ。
次に、時折受ける質問に、パウパーに変化をもたらすために、常に積極的にカードを禁止したり禁止解除したりするのはどうだろうか、というものがある。結局のところ、これは非常に親しみやすいフォーマットなのだ。
それはある程度正しいが、ローテーションのないフォーマットでは、私は同じカードがずっと使えることが重要だと考えている。人々はデッキに惚れ込み、それを楽しむためにプレイする。そして、ただ物事を揺さぶってどうなるかを見るために数週間デッキからカードを禁止することは、私が健全だと思う自然な変化ではない。そのむち打ちは、人々がこのフォーマットから完全に離れる原因になるかもしれない。加えて、隔月で永久にカードを禁止するようなら、パウパー以外のプレイヤーがこのフォーマットを試すときに何を期待すればいいのか、あまりいい印象を与えないだろう。私たちはこのフォーマットを長期的に成長させたいと考えている。私は、もう少し積極的に禁止することを検討してもいいと思うし、そうすべきだと思うし、それについて話し合うつもりだが、しかし、それでも極端なレベルではない。
最後に、Magic Onlineにおける《________ Goblin》というカード、あるいは名前ステッカー・ゴブリンについて話したい。DaybreakのMagic OnlineチームはこのカードをMagic Onlineに実装するために素晴らしい仕事をしてくれたが、プレイヤーからはオンラインと現実で異なる動きをすることがこのフォーマットにとって奇妙な分断であるという指摘もあった。このカードは、現在禁止された《僧院の速槍》と並んで、このフォーマットのほとんどで何枚か登場している。私たちはこの問題を注視していくつもりだし、もしそれが重大な問題となり、フォーマット間の断絶につながるようなことがあれば、私たちはそれを禁止することを恐れない。
このフォーマットと我々がこの決断に至った背景について、舞台裏が参考になっていれば嬉しく思う。最後にもう1度、この言葉を繰り返そう。私たちの願いは、このフォーマットをもう少し速くなく、振れ幅が大きくなりすぎないようにし、選べるサイドボードの枠を増やすことだ。赤単を殺すためのものではない。もしこのフォーマットに意味のある変化がなければ、私たちは必要であれば2、3ヶ月のうちに戻って来てさらなる変更を加えることを恐れてはいない。
私たちは、私たちの変更とその理由について、プレイヤーに対してできる限り透明性を保とうとしている。私たちは、あなたがこのすべてに目を通してくれたことに感謝している。その代わり、私たちはあなたがここにあるすべての根拠について考え、フォーマットの変更を試し、そして私たちにあなたの考えを連絡してくれることを望んでいる。ソーシャルメディアのアカウントは以下の通り。
パウパー・フォーマット委員会を代表して、パウパーをプレイしてくれてありがとう、 そしてこのフォーマットへの変更を楽しんでほしい!
Alex Ullman – @nerdtothecore
Alexandre Weber – @Webermtg
Emma Partlow – @Emmadpartlow
Gavin Verhey – @GavinVerhey
Mirco Ciavatta – @Heisen011
Paige Smith – @TheMaverickGal
Ryuji Saito – @Saito_o3
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