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お知らせ
2022年3月7日 パウパー禁止解説
2022年3月7日
前回話をした1月、私は禁止についてだけでなく禁止の理由とパウパーの健全さについての考えについても話をした。前回の最後に私はこう言った。「短期間に追加で変更がある場合は、今回の禁止と『神河:輝ける世界』のメタゲームへの影響を見てから3月に行う可能性が最も高い」とね。
そして私たちはそこにいる。前回の禁止の影響と『神河;輝ける世界』の大きな影響の両方を目にしている。
まず最初に、私たちパウパー・フォーマット委員会(PFP)は前回の変更には全体的にかなり満足していることを言っておきたい。 私たちは毎週パウパーを監視して、Magic Onlineのリーグやチャレンジ、さらには限られた現実世界のプレイの機会からのプレイヤー数と多様性の増大を見て満足してきた。「青単コントロール」、「緑単ストンピィ」、そしてあらゆるものがあり、パウパーのプレイヤーになるにはエキサイティングな時だ。
しかしながら『神河:輝ける世界』が発売されて対策が必要な新デッキが登場し、そして私たちはいくつか変更を行うのに十分な時間事態が進展していくのを観察してきた。今日の禁止リストの更新はその決定を反映している。
ではその変更を見てみよう。
《電位式リレー》
ストームを持ったカードにはパウパーで禁止されるまでの長く名高い歴史がある。『モダンホライゾン2』が出たとき、みんなの目はその新しいストームのカードに向けられ、そして《騒鳴の嵐》と《電位式リレー》がパウパーを荒らすまで大して時間はかからなかった。
《騒鳴の嵐》の禁止後、《電位式リレー》は十分な強さの居場所のない強力なカードだった。しかし『神河:輝ける世界』の《実験統合機》の登場(特に《命取りの論争》を戻す場合)はこの虫の詰まった缶を再び開けるための失われた部品だった。あっという間に、「赤黒ストーム」はこのフォーマットの頂点へと駆け上がってきたんだ。
ここで言っておきたいのは、私たちPFPはストームがパウパーに存在することが本質的に悪いことだとは思っていないということだ。《墓の刈り取り》を軸にした「サイクリングストーム」のようなデッキや、《略奪する破戒僧》と《嵐の乗り切り》コンボのようなデッキは成功を収めている。ブライアント・クック/Bryant CookはMagic Onlineのチャレンジを何週か前に前者のデッキで優勝している。これらのデッキのパワー・レベルは妥当なもので、対処するための方法がいくつか追加で存在する。たとえば「サイクリングストーム」には墓地対策とかね。
しかし、そのデッキが早くて強くて対処が難しかったら問題だ。この新しい「赤黒ストーム」はこれらの要素全てを兼ね備えていて、それに見合った勝率を誇っている。Magic Onlineのリーグのデータを見てみると、このデッキはパウパーで他に大きく差をつけての最高勝率をマークしていて、その数値はミラーマッチを除くと60%を超えている。これはそんなにすごそうに聞こえないかもしれないけど、マジックの歴史上支配的なデッキの勝率は50%を超えたあたりに落ち着くことが多い。つまり60%というのは相当高く、前回の「親和」や「トロン」よりも高い。私たちはメタゲームが落ち着いて対策が見つかるかどうかを見るために少し時間を取ったけど、今回の場合は見つからなかったようなので、行動を起こす必要があることがハッキリした。
《電位式リレー》は禁止するべきなのが明確なカードだったけど、すべての選択肢を調査するのは大事なことだ。
まずは《炎の儀式》、《暗黒の儀式》、《陰謀団の儀式》、《水蓮の花びら》などの儀式パッケージからいってみよう。この手のカードはほぼ毎回悪さをする。こいつらをまとめて禁止してストームの存在を完全に切り捨てることは長年に渡る数多くの悲劇からこのフォーマットを救うという主張もできる。これは興味深い議論だけど、多くの人々がパウパーによくある「レガシー感」を楽しんでいて、さっき言ったように私たちは強すぎないストーム・デッキはメタゲームに存在してもよく、そしてそれは人々を引きつけると思っている。
次に目を向けたのは《電位式リレー》を壊す最後のひと押しになった新カードである《実験統合機》だ。このカードは短期間でパウパーのいたるところでプレイされるようになった。
《実験統合機》は強力だけど、これは《きらめく鷹》や《コーの空漁師》と一緒に使う赤白アグロのような、健全で楽しそうな戦略も実行可能にしている。このカードには私たちも目をつけていて、あまりに使われすぎるならば禁止することも恐れないけれども、実際にこれを禁止しても残るのは《電位式リレー》が問題のカードからただのカードに戻るという事実だけだ。《実験統合機》を禁止するということはつまり《電位式リレー》を強化するカードが出ると毎回禁止しなくてはいけないということになる。私たちはモグラ叩きをしてみるのが正解だとは思っていないんだ。
最後に、これから何が起きるのかとメタゲームがこのデッキへの対抗手段を開発するかどうかを見るためにさらに長い時間待つことについての話ができる。でも、この時点ですべての兆候がこのデッキが支配的になることを示している。私たちは《電位式リレー》がパウパーの健全さを停滞させる前に積極的にこれをつまみ出してしまおうと考えた。というわけで《電位式リレー》は禁止となる。
《大霊堂の信奉者》
《エイトグ》が禁止される前、PFPでは《エイトグ》と《大霊堂の信奉者》を禁止するべきか《エイトグ》だけを禁止するべきか多くの議論が行われた。最終的には何が起こるか待って《大霊堂の信奉者》に行動を起こす必要があるかどうかを見るという同意のもとで《エイトグ》だけ禁止する意見が勝利した。「親和」がどのような形と結果になるかを予測するのは難しかったんだ。
メタゲームの発展を観察した後、「親和」は《エイトグ》がなくていなくなってしまうようなところからはかけ離れていることがすぐに明らかになった。「親和」は依然として最もプレイされているデッキで、リーグやチャレンジで最も結果を出しているデッキの1つだ。事実、現在でさえも「親和」はリーグで最もプレイされているデッキで、次点の「赤黒ストーム」より2倍近く多い――「赤黒ストーム」のほうが勝率がかなり高いにも関わらずね。
「親和」は前回の禁止の後から『神河:輝ける世界』の発売までの期間も引き続き強力で、その後『神河:輝ける世界』から《実験統合機》と《勢団の取り引き》を手に入れた。どちらも「親和」の戦略上極めて重大なものではないけれど、確実に親和に利益をもたらし、どちらも追加のドローをもたらし、《勢団の取り引き》の場合は他のアグレッシブなデッキに対する安定感も与えてくれる。
「親和」は私たちがその存在を好ましく思っているデッキだ。これは人気のあるデッキで、対策がとても簡単なのでメタゲームの発展の面からも素晴らしい。「親和」が強いと、「親和」が嫌いなプレイヤーの数に応じて週ごとに自然とメタゲームの発展が起きる。しかし、私たちがパウパーにとって最も良い親和だと考えているのはコストを軽減されたクリーチャーで攻撃する場合と、多彩なアドバンテージ獲得手段で長期戦をじっくりやる型で、爆発的なダメージを起こす手段が大量にある場合とは対照的なものだ。
《エイトグ》がいなくなって、プレイヤーたちは《クラーク族のシャーマン》まで使い始めて《大霊堂の信奉者》2枚と組み合わせて一撃で対戦相手を倒すことに特化していった(《クラーク族のシャーマン》の1回目の能力が解決されて《大霊堂の信奉者》が倒れてしまう前に、繰り返し能力を起動することができる)。
私たちはデータに目を通すと、上で言った最もプレイされているデッキであり最も結果を残しているデッキのうち1つであることに加えてもう1つ関係する要素があった。実は「親和」はストーム・デッキに対して不利だったんだ。
次点で数の多いデッキに対して不利であるにも関わらず、そのデッキが高い勝率を維持しているという事実は意味深く、そして心配だ。その不利なデッキがいなくなれば、気にするべきデッキが1つ減ることになる。《電位式リレー》ストームという不利な相手がいなくなった親和に対して、サイドボードに親和対策をまた増やして戦うことは可能だけど、それで十分な対策ができるかどうかはわからない。
というわけで、私たちPFPは議論を再開した。橋サイクルについてもまた議論が行われた。私たちは橋サイクルを禁止することを恐れはしない――しないけれども、結論は前回と同じだった。これら橋サイクルはこのフォーマットでのみ存在できる《浄化の野火》とのシナジーによるコントロール・デッキを可能にしていて、そして1つ2つの橋を個別に禁止する手段を取った場合、この問題が解決する保証はどこにもない。アンタップ状態で出てくるアーティファクト・土地は橋サイクルと同じような別の外科的アプローチで、さらにこれらのカードは《ゴリラのシャーマン》のような対策カードにこのデッキを開放する。
最大の議論は《命取りの論争》についてのものだった。「親和」でのこのカードは凄まじく、追加のドローをもたらし、1個アーティファクトが戻ってきて、さらに《実験統合機》を生け贄に捧げることまでできてしまう。今の「親和」にあるこの直接的なカードアドバンテージは感動的だ。
だけど、私たちは長期戦でのカードアドバンテージを許容している。長期戦で安定してクリーチャーを探し続けることは問題にはならない。問題になるのはドローのすべてを駆使してゲームを決めるための《大霊堂の信奉者》を掘りに行く場合だ。このデッキでの強さと他のデッキでの使われ方を考えると、《命取りの論争》は監視対象として私たちのレーダー範囲に残される。
さらに、パトリック・サリバン/Patrick Sullivanの言葉を借りると《命取りの論争》は代替値が低い――つまり同じような動きをするカードはたくさんあるってことだ。例えば、4枚の《実験統合機》と《勢団の取り引き》に入れ替えるだけになるかもしれない。ここを触っても同じぐらい効果があるかどうかはわからない。
一方《大霊堂の信奉者》は代替値が高い。このような効果が1マナで再び現れる可能性は低く、良さそうな代替品も見当たらない。意味のある影響を起こすためには、《大霊堂の信奉者》を禁止するほうが理屈が通っている。
《エイトグ》を禁止したとき、人々はこれで「親和」が死ぬだろうと推測した。しかし、現実では瀕死にもならなかった――そして復権するのにほとんど時間はかからなくて、次のチャレンジには大量に同じデッキが参加した。《大霊堂の信奉者》が禁止された今回、同じような動きを見ても私は驚いたりしないだろう。この禁止はたしかに「親和」にとって大きな穴だけど、このデッキには大量のカードアドバンテージ獲得手段や、《歯車襲いの海蛇》や《甲殻の鍛冶工》のような軽くなるクリーチャーにアクセスする手段や、追加の《実験統合機》をプレイするなどの手段があり、再構築は可能でそして競技的であり続けるはずだ――以前と同じ使用率ではないだけだ。
大型クリーチャーといえば、最後に1つ触れておくことがある。《滞留者の相棒》はこのクリーチャー戦略と相性がいいので将来「親和」に助けが必要となった場合の解禁が検討されている(しかし《血の泉》が追加されているので私たちは慎重にならないといけない。これは重い親和クリーチャーのコスト軽減をするのにとても優秀だからね)。ただし、「親和」に助けが必要ない可能性も十分ある。長い間、パウパーの「親和」では《大霊堂の信奉者》が使われていなかったし、私たちはこのカードがなくなって「親和」がどんな感じになるか楽しみにしている。
《大霊堂の信奉者》は禁止される。
《探検の地図》
そして今度はちょっと違うことについて話をしよう。禁止解除だ!
前回私たちは「トロン」を狙って《眷者の装飾品》と《予言のプリズム》を禁止した。全体的に、私たちはこれにとても満足している。素早く勝たなければ「トロン」にマナやカードのアドバンテージで押しつぶされてしまうというプレッシャーが存在しなくなっていたので、「トロン」のパワーを下げることでパウパーは本当に開放された。私たちは以前のレベルのトロンよりも今の「トロン」の強さのほうが気に入っている。
だけど、今よりもう少しだけ「トロン」が増えるともっと満足だ。メタゲームのトップにいる「トロン」の切れ目のない脅威は理想的ではないけど、「トロン」が存在して、それに直面できることを知っていることは健全なことだと私たちは信じている。《眷者の装飾品》と《予言のプリズム》に手を出すのはやりすぎなのでやりたくないけど、《探検の地図》を戻してくることはできると考えている。これが「トロン」を少し加速させるなら素晴らしいことだ。もしこれが「トロン」のプレイ数に影響しなくても、それ以上何かすることは考えていない。
《探検の地図》が最初に禁止されたとき、「トロン」への影響は結局はとても小さなものだった。この禁止解除は《予言のプリズム》と《眷者の装飾品》禁止後の世界ではもう少し影響が大きくて、カードを唱えるために必要な色マナを探してくることができる――これは小さなことだけど、細かいゲームプレイに関わってくる。
私たちはこの禁止解除により「トロン」を序盤に揃える能力は上がると考えたけれど、これのようなマナ調整や《予言のプリズム》と《眷者の装飾品》がなければ、2色や3色の「トロン」のような、以前と違った「トロン」が見られるようになる助けになるかもしれない。
最後に、「親和」が《大霊堂の信奉者》に到達することは、過去の「トロン」の《一瞬の平和》への依存度の高さのせいで「トロン」にとって問題になっていた。《大霊堂の信奉者》の禁止はこの禁止解除と併せてトロンを助けることになる。
まとめと他のカードについて
終わりの前に、私たちが目をつけているデッキはこれだけじゃないということを言っておきたいと思う。私たちはすべての、特に『神河:輝ける世界』で新しいカードを手に入れたデッキに目を向けている。
《月回路のハッカー》は私たちが最初に心配していたカードだ。このカードは今でも私たちの注目を集めているけど、「フェアリー」は今のところ問題になっていない。「フェアリー」はプレイするのが手堅いデッキだけど、行動が必要なものは何もない。同じように、統治者に頼った赤白も引き続き強力で、特に《実験統合機》を使ったものが強いけど、今回は統治者に手を加えるだけの十分な証拠は揃っていない。
とは言うものの、この禁止と禁止解除でパウパーとその中で実行可能な戦略には変化が起こるだろう。ここからの数週間、私たちは注意深く観察する。非常事態だと感じるようなものを除けば、何か変更があるとしたら多分私たちが『ニューカペナの街角』が追加された結果を見てからになると思う。
もし君が意見や質問があるなら、PFPのメンバーはそれを歓迎するよ。私たちは君たちがこの新しいパウパーを楽しんでくれることを願っていて、そしてチャレンジ(そのうち1つは今週末だ!)で何が出てくるのか見るのを楽しみにしている。
パウパー・フォーマット委員会を代表して、ガヴィン
- アレックス・アルマン/Alex Ullman―― @nerdtothecore
- アレクサンドル・ウェーバー/Alexandre Weber――@Webermtg
- エマ・パートロウ/Emma Partlow―― @Emmmzyne
- ガヴィン・ヴァーヘイ――@GavinVerhey
- ミルコ・チャヴァッタ/Mirco Ciavatta――@Heisen011
- ペイジ・スミス/Paige Smith――@TheMaverickGal
- 齋藤 隆二――@Saito_o3
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