READING

開発秘話

Making Magic -マジック開発秘話-

基本根本 #18:メカニズムの階層化

Mark Rosewater
authorpic_markrosewater.jpg

2026年2月9日

 

 「Making Magic」における私の数ある目標の一つは、アマチュアのマジック・デザイナーが自分自身のセットをどうデザインするかを学べるよう助けることである。その助けとして、私は2009年から毎年「基本根本」というシリーズを書き始め、マジックの自作セットをデザインしたいプレイヤーに実践的な助言を与えてきた。これらの記事は、私たちがセットをどのようにデザインしているのか、その舞台裏をのぞくための絶好の機会となってきた。たとえあなたが『マジック』のカードを作る予定が一切なくても、これらの記事は役に立つはずだ。

 「基本根本」コラムは今年で18年目になる。以下が過去17回の回である。

 ここまでに私が書いてきた内容を振り返ろう。

基本根本 #1:カード・コード(リンク先は英語)

 この1本目の記事はもっとも技術寄りのもので、我々が話すときに同じカードのことを確実に示せるようにするシステムの使い方を説明している。

基本根本 #2:デザインの骨格(リンク先は英語)

 この2本目の記事で、セットをデザインする上でもっとも重要な道具の「デザインの骨格」を紹介している。(この中でカード・コードを使用しており、そのためにそちらの記事が先になったのだ。)

基本根本 #3:デザインの骨格を埋めよう

 この3本目の記事はそれぞれのデザインの骨格を埋める方法について話している。まずはコモンからだ。

基本根本 #4:より高いレアリティ

 この4本目の記事では他のレアリティを埋めていくことについて話している。

基本根本 #5:初期プレイテスト

 この5本目の記事では、フィードバックを集めてセットを進化させていくためのプレイテストの最良の使い方について論じている。

基本根本 #6:繰り返し

 この6本目の記事では、繰り返しの概念とセットを徐々に進化させていく方法について語っている。

基本根本 #7:デザインの3つのステージ

 この7本目の記事ではデザインにおける異なった3つの段階について、セットの進化に伴ってどのように優先度が変動していくかを通して説明している。

基本根本 #8:問題解決

 この8本目の記事では、デザインの初期から中盤にかけてよくある問題に関する疑問に答えている。

基本根本 #9:評価

 この9本目の記事では、自分のセット全体を見て、どのような微調整が必要か判断する方法について語っている。

基本根本 #10:クリエイティブ要素

 この10本目の記事では、メカニズム的要素とクリエイティブ的要素をどう組み合わせて一体感のあるセットに編み上げるかについて論じている。その中で、トップダウン(フレイバーから始める)とボトムアップ(メカニズムから始める)という両方のデザインについて論じた。その後、カード名やクリーチャー・タイプ、フレイバーテキストの扱い方について詳細に述べた。

基本根本 #11:アート

 この11本目の記事では、後期プレイテストにおいてアートを用いることの重要性と、それをセットにどのように組み込むかについて語っている。

基本根本 #12 その1:リミテッド(メカニズム)

 この記事は2部作となっている。どちらも、そのセットがリミテッドで正しく働くようにする手法について語っている。前半にあたるこの記事では、メカニズムがリミテッドで作用するようにすることに焦点を当てた。

基本根本 #12 その2:リミテッド(テーマ)

 後半にあたるこの記事は、リミテッド向けのテーマの作り方に焦点を当てている。

基本根本 #13:デザイン骨格の再確認

 開発部は初期デザイン骨格を改良してきた。そこでこの記事で、すべてのマジックのセットに含まれる要素を改めて語っている。

基本根本 #14:最初の観念作用

 14本目のこの記事では、アイデアをどう具体化して新しいセットを作るかを扱った。

基本根本 #15:構造的サポート

 そして昨年は、我々が「構造的サポート」と呼ぶものについて語った。それはデザイン上の手順の1つであり、特にリミテッドが適切に機能するために必要なあらゆる要素を確実にセットに揃えられるよう行っている。

基本根本 #16:プレイ・ブースター

 ドラフト・ブースターからプレイ・ブースターへの変更によって生じた、デザイン骨格のすべての更新について説明した。

基本根本 #17:自身のメカニズムを見つけ出す その1

 この2部構成の記事で、メカニズムの作り方を説明した。前編では、メカニズムを生み出す多様な方法を解説した。

基本根本 #17:自身のメカニズムを見つけ出す その2

 後編では、メカニズムを作ったあとにそれを反復し、メカニズムの適切な規模を見極めるための手順を解説した。

 これが18本目の「基本根本」記事となる。昨年、私はメカニズムの作り方について話した。だがデザインには(我々で言えば初期の展望デザインにおいて)セットの構想を終え、実際のカード・ファイルを作りたくなる段階が来る。今年は、複数のメカニズムを一つのセットへ層として重ね始める方法を探っていく。実際にどうやってファイルへ追加するのか? あるメカニズムは、他にどんなメカニズムが必要かをどう示すのか? ファイルが進化するにつれて、メカニズムのニーズはどう変わるのか?


開始地点

 まず今日の最重要レッスンから始めよう。あなたがファイルに追加できるメカニズムは、一度に一つだけである。理由は単純だ。あなたは空のファイルから始める(上でリンクした数多くの記事では、『マジック』のカード・ファイルを構築する重要なツールであるセットの骨格の作り方を扱っている)ので、思いつくかぎりほとんど何でもできる。だがひとたび何かをファイルに置くと、そこには埋まった枠が生まれる。埋まった枠には別のカードを置けない。こうして制約が増え始める。あなたはメカニズムを「階層化」する必要がある。なぜなら、すでにファイルにあるものを補完するものを選ばねばならないからである。追加される各メカニズムは、ファイル内の空いたスペースに収まらねばならない。

 当然、疑問が生じる。ファイルに入れる最初のメカニズムはどう決めればよいのか?

 これには数多くの答えがあり得る。

最も複雑なメカニズムを選ぶ

 すべてのメカニズムが同じように作られているわけではない。多くの「構造」を要求するメカニズムもあり、セットが別のことにコミットしてしまうと、それを組み込むのは非常に難しくなる。セットを構築する戦略の一つは、手持ちで最も複雑なメカニズムから始めることである。そうすれば、最も難しいメカニズムが必要とするニーズをすべて満たせる自由度が得られる。

セットを最も体現するメカニズムを選ぶ

 『マジック』カード・ファイルの目標はどれも、クールなフレイバーを共鳴する形で捉えた、喚起力のあるセットを作ることにある。最も喚起的なメカニズムを最初にセットへ加えれば、それを中心に構築でき、セット構造の核であることを保証できる。

最もシナジーがあるメカニズムを選ぶ

 セットに最初に入れるメカニズムは、他のメカニズムがどうはまり込むかを定義する。ゆえに、柔軟性が高く、他のメカニズムと相性良く機能するものを選べ。そうすれば、最初のメカニズムと一緒に機能する別のメカニズムを見つけるのが格段に容易になる。

最も大きいメカニズムを選ぶ

 十分なスペースが確保できることが保証されているのは、最初に入れるメカニズムだけである。もしあるメカニズムがセット内で多くのスペースを必要とするなら、それが最初でない場合、そもそも入らないかもしれない。

お気に入りのメカニズムを選ぶ

 確実に入ると分かっているメカニズムは最初のものだけである。ゆえに、お気に入りがあるなら、そこから始めたいと思うかもしれない。最初にお気に入りを入れないと、後で入れるスペースがなくなる可能性があるからだ。

 これらのどれかが決定的に正しい答え、というわけではない。正しい選択は、あなたがどんなセットを作っているか、そして初期に作ったメカニズムのうち、どれが全体のビジョンに良く合うと感じるかに依存する。私は、あなたがプレイテストしてきたさまざまなメカニズムを見て、候補となるメカニズムについて次の質問を自分に投げかけることをお勧めする。

  • どれくらい複雑か?
  • 機能させるために、ファイル内に他に何が必要か?
  • どんなカード要素やテーマとシナジーするか?
  • どれくらいフレイバーが強いか?
  • プレイテスターはどれくらい気に入っているか?
  • カラー・パイの中で、どの色に収まるか?
  • ざっくり何枚くらい、そのメカニズムでカードを作れるか?

 強調しておくが、メカニズムを眺めるだけでこれらすべてに答えることはできない。メカニズム付きのカードを作り、それらでデッキを組み、プレイテストしなければならない。

 初期のプレイテストでは、これらのカードで40枚デッキを作り、互いに対戦させる。40枚デッキを薦めるのは、デッキ構築がシールド・プレイを反映するからである。デッキに大量の新規カードは必要ない。メカニズムを試せるだけで十分である。私は8〜12枚を薦める。残りは既存のマジックのカードでもよいが、必要なものが見つからないなら、必要なカードをでっち上げてしまえばよい。再録については、『ファウンデーションズ』のカードのようなシンプルなカードに寄せるのがよい。セット内のノイズを最小化し、メカニズムに集中したいからだ。土地は必要な色のマナを出すと仮定してしまおう。これらのプレイテストは、ゲームプレイを通してメカニズムを試すためのものである。まだ環境をテストする段階ではない。

 プレイ後、そのメカニズムがプレイして楽しかったかを自分に問おう。楽しかったなら、検討すべきメカニズムの山に入れる。楽しくなかったなら、なぜ楽しくなかったのか理解できるか試みるべきだ。それは修正できるものか? できるなら、メカニズムを調整し、新しいプレイテスト・デッキを作る。修正できないなら、捨てて新しいメカニズムへ移る。多くの場合はその中間にある。可能性は見えるが、出来は良くないのだ。反復はデザインの核心である。何かの閃きを見たなら、そこでもっとも気に入っている点を突き止め、他の要因を変えていく。

 いずれ、あなたのセットに入るかもしれないメカニズムの候補リストができるだろう。リストができたら、次のステップは、どのメカニズムに焦点を当てたいのかを見極めることである。優先順位づけが鍵である。すべてのメカニズムに同じ重みは与えられない。ファイルを構築し始める際、どれから始めるかを決めねばならない。

 私が薦める練習は、プレイテストで気に入ったメカニズムをすべて取り出し、セットに入れたい度合いを高い順から低い順へ並べることである。どれだけ良いプレイ感だったか? どれだけ喚起的だったか? セットのビジョンと一致していたか? 並べ替えながら、こうした問いを自分に投げ続けていく。

 番号を振る理由は、ひとたびファイルを作り始めると、メカニズムの優先順位を把握しておかねばならないからである。1位のメカニズムは、あなたがセットにとって最重要だと感じるものである。2位のメカニズムは2番目に重要だが、1位のメカニズムがすでに入った状態で同居できないならカットされる。

 優先順位はセットをデザインするにつれて変わり得るが、頻繁に変えるべきではない。重要なのは、ある特定の時点で、あなたが自分のデザインにおいて何が最重要かを把握していることである。2つの要素がスペースを奪い合うなら、どちらを残すかを知っていなければならない。これは残酷になり得るが、最良のデザインを作るうえで不可欠である。あらゆるメカニズム、テーマ、サイクル、カードは、そのセットのビジョンを前進させねばならない。そうでないなら、単体でどれほど良くプレイできても、カットすべきである。

最初のメカニズム

 優先順位付けという大仕事を終えれば、何から始めるかはたいてい難しくない。もし同等に見えるメカニズムがいくつかあるなら、私は個人的に「最初に加えないと入りそうにない」メカニズムへ寄りがちである。最初のメカニズムを加えるときは、やや多めに入れてよい。少なすぎるより多すぎるほうがよい。量が多すぎる場合は気づきやすいが、少なすぎる場合は気づきにくいからである。

 次に私は、(以前の記事で述べたデザイン骨格が指定する枠に従い)コモンとアンコモンを再録カードで埋めることを薦める。繰り返すが、どうしても存在しないカードが必要なら、作ってしまえばよい。そうしたら、そのカード・ファイルでシールドをプレイせよ。プレイテストに参加する人数が多いなら、全員が異なる色をプレイするようにすることを薦める。単純な方法として、各プレイヤーに、あなたがプレイしてほしい色のカードを渡せばよい。あなたはファイルのあらゆる側面からメカニズムを体験すべきなので、全プレイヤーが異なる色を使う状況が望ましいのである。

 強調しておくが、開発部は初回プレイテストにもっと多くのメカニズムを詰め込む傾向がある。だがそれは長年の経験があってこそである。我々は、メカニズムがどれほどのスペースを埋めるべきかをより直感的に把握しているため、あなたがプレイテストで得なければならない情報を、過去の知識である程度収集できているのである。

 プレイテスト後、あなたとプレイテスターは、試しているメカニズム(あるいはメカニズム群)について感じたことを話し合うべきである。何が一番良かったか? どのカードで輝いたか? 何が一番良くなかったか? どのカードでは一番合わなかったか? これが、最初に多様なカードをたくさん作りたい理由である。あなたはデザイン空間を探索しているのだ。プレイテストは、何が機能し、何が機能しないかを教えてくれる。

 プレイテストで学んだことを反復に活かそう。うまくプレイできなかったカードを抜こう。うまくいったカードに似たものを増やそう。メカニズムを魅力的にする要素の微調整をし始めよ。あなたは、このメカニズムがどう機能するかの感触を得るまで、必要な回数だけ反復すべきである。規模が大きくなることもあれば小さくなることもある。別のカード・タイプへ移ることも、特定の色で増減することもある。あなたがやっているのは、最初のメカニズムがセット内で占めるべきスペースを掴むことである。

 この時点で、最初のメカニズムが期待に応えていない可能性もある。十分にプレイして精彩を欠くように感じるなら、それを取り除き、新しい「最初のメカニズム」でやり直してよいのだ。良いデザインは常に前進するとは限らない。機能していない部分を直すために後退する必要があることもある。それは失敗ではない。それがデザインである。あなたは、結局うまくいかない試みをするだろう。だからこそプレイテストしているのだ。ここで見極めるのである。

 急ぐ必要はない。確かに我々はスケジュールに従って『マジック』セットをデザインする。だがあなたにはそれがない。私からの提案は一つだけである。プレイテストの合間には調整を続けよ。メカニズムが自ら望む有機的なスペースを満たし始めるようにさせるのだ。反復の速度が落ち始めたなら、第二のメカニズムを層として重ねる時である。

2番目のメカニズム

 優先順位リストで2位に置いたメカニズムを見てみよう。それは現在のカード・ファイルに収まるか? 収まるなら、空きを作るために可能な限り再録カードを取り除きつつ、そのメカニズムをファイルへ加えよう。収まるか確信がないなら、とりあえず入れてみよう。実際にファイルへ置く以上に、収まるかどうかを確定的に教えてくれるものはない。ほぼ収まるなら少し調整してもよいが、2位たり得た要点を削り落とさないよう注意せよ。また、最初のメカニズムのカードは抜いてはいけない。最初と2番目のメカニズムは、同じファイルの中で共存できなければならない。デザイン後半なら最初のメカニズムのカードを抜くことも可能になるが、メカニズムが収まるかを見極めている段階では避けるべきだ。

 第二のメカニズムが収まらないなら、優先順位の高いものから順に、3位、4位、あるいは次にファイルへ収まるメカニズムへ進んでくれ。普通は2位が収まるはずだ。経験則として、追加のメカニズムが入らなくなり始める前に、多くのファイルは二つのメカニズムを収められることが多い。常にそうとは限らないが、たいていはそうである。

 最良の第二メカニズムとは、第一メカニズムとは異なる空間でプレイされるものである。例えば第一がクリーチャー系のメカニズムなら、第二が呪文系のメカニズムだと理想的だ。ファイルを埋める作業の大きな部分は、残っている穴が何かをより意識することにある。そして覚えておけ。再録カードは、ファイルを埋めるという目的においては単なる穴である。あなたはプレイテストのために使っているだけだ。

 第二のメカニズムをファイルに入れたら、さらにプレイテストである。ある時点でレアを少し足すのも問題ない。私はまず、すでにバランスが取れていてプレイテストを乱しにくいレアの再録カードから始めることを薦めるが、やがて自分のレアもデザインし始めてよい。シールドのプレイテストに大量のレアは必要ない。

 プレイしながら反復を続けよう。そう、最初のメカニズムのカードを含め、どんなカードも反復してよい。これらのプレイテストで重要なのは、第二のメカニズムが入るかどうかだけではない。第一とどれほど上手く一緒にプレイできるかも試しているのである。二つが単独では機能しても互いにシナジーしないなら、たいていは「別の第二メカニズムを試したほうがよい」というサインである。良い反復変更は、第一と第二のメカニズムのカードを調整し、互いがより良く相互作用するようにするところから始まる。

 最初の二つがファイルに収まり、かつ一緒に機能するなら、次に考えるべきは、二つのメカニズムのどちらか(あるいは両方)の占有空間を減らすべきかどうかである。メカニズムを特定の色だけに限定したいかもしれないし、特定のレアリティや複数レアリティだけに限定したいかもしれない。ファイルに二つあることで、各メカニズムがどのスペースを埋めたがっているかを試し始められる。ファイルの感触が良くなったら、第三のメカニズムへ進む時である。

3番目以降のメカニズム

 基本の流れは同じである。優先順位リストに戻り、次のメカニズムを試そう。ここがたいてい、リストの大半が入らないと分かる地点になる。最初の二つのメカニズムの規模や形状によっては、運良く入ったり、調整して入れられるメカニズムがあったりもする。だが第三、あるいは次のメカニズムあたりで、あなたはデザインが次の段階へ移ったことに気づくだろう。手持ちのものを使う段階ではなく、「必要なものをデザインする」段階である。

 私はまず、残っているスペースが何かを列挙することから始める。探索すべき領域の例は以下である。

 メカニズムでデザインを進めると、それらはしばしば特定の色に集中する。第一のメカニズムがマナを生むなら、主に赤と緑に置きたがるだろう。第二のメカニズムが+1/+1カウンターを参照するなら、主に緑と白に集中するだろう。つまり青と黒には手当てが必要で、おそらく緑について心配するのはやめてもよい。

カード・タイプ

 例えば最初の二つがどちらもパーマネントに焦点を当てているなら、インスタントやソーサリーで機能するものを探すべきかもしれない。

レアリティ

 第一のメカニズムがアンコモン以上にしか存在せず、第二が単純な効果にかぎられているなら、第三に必要なのはコモンを支える何かかもしれない。

ゲームでの焦点

 最初の二つがクリーチャー戦闘に関するものばかりなら、戦闘以外に焦点を当てたメカニズムが欲しくなるかもしれない。

効果の種類

 第一のメカニズムがスケーリングに関わるなら、許容できる効果のリストは非常に限られる。つまり、もう一つ効果ベースのメカニズムを作るなら、その効果は異なるデザインの筋道に焦点を当てたものにする必要がある。

必要な要素

 私たちが各セットに入れようとする要素が三つある。

  • マナの使い道(ゲーム後半にマナを使う手段)
  • カードの取得方法(デッキの中の必要なカードへ到達しやすくする手段)
  • クリーチャー戦闘(クリーチャーを攻撃させるための慣性を生む手段)

 最初の二つのメカニズムでこれらのいずれかが欠けているなら、後のメカニズムがその不足を補えるかを見るべきだ。加えて、後のメカニズムが先のメカニズムのテーマ同士を結びつけられるかも探りたい。良い例が『カラデシュ』である。このセットにはトークン・テーマと+1/+1カウンター・テーマがあったが、それらを結びつけるものがなかった。そこで私たちは製造をデザインした。これはアーティファクト・クリーチャー・トークンを作るか、+1/+1カウンターを得るかを選べるメカニズムである。

 デザインのこの段階での鍵は、セットが必要とするものを作ることである。『マジック』のデザインの多くは、自由奔放で無制限な発想ではなく、問題解決に重点が置かれている。私がよく言うように、制約は創造性を育てる。そして、目指すべきものがあると、しばしば最もワクワクする成果へ到達できる。

 天才的なひらめきは天から降ってくる、という神話があるのは知っている。だがデザイン作業の大半はそうではない。『マジック』のデザインの多くは、あなたが思いついたものに合わせてビジョンを広げることではなく、ビジョンに合うものを見つけることにある。

 デザイン探索のためのヒントをいくつか挙げよう。

1. 様々なアプローチを試し続ける

 人間の脳は、何度も繰り返し使用する神経回路を作るのが大好きである。毎日やることをいちいち考えたくないときには、これは素晴らしいものだ。例えば誰も、食べ方を思い出すのに時間を使いたくはない。だが創造的であろうとするとき、同じ神経回路を辿ると同じ結論に到達しがちである。だが入力を変えれば、出力も変わり始める。

2. スイートスポットは、必要性と相乗効果のシナジーである

 何年も前、私は「点と点をつなぐ」という創造性に関する記事を書いた。そこで私は、創造性の核は「それまで結びつけたことのない二つのものの間に結びつきを見つけること」だと説明した。ブレインストーミングにもこの技法を使える。セットに欠けているもの(例えば呪文メカニズム)を一つ選び、求めるシナジー(例えば「エンチャントが重要」というテーマと相性が良いこと)を一つ選ぶ。この二つを交差させると、脳が新しいデザイン空間を探索するための結節点が生まれる。気に入るアイデアが出なくなってきたら、片方または両方の条件を変えてみよう。

3. 過去はあなたの味方である

 マジックには3万枚を超えるユニークなカードがある。新しいアイデアを探すなら、これは使うべきリソースである。私はブレインストームの際、『マジック』のデータベースを開いておくのが好きだ。関連しそうな単語で検索し、どんなカードが出てくるか見てみよう。古い『マジック』のカードが、まるごと新しいメカニズムを生むきっかけになった例は数え切れない。古典例は、オリジナルの『ローウィン』が必要としていたタイプ的な「つなぎ」を《霧衣の究極体》から着想して多相を作ることで解決した、という話である。

4.古いメカニズムを再利用してよい

 私が好きな言い回しとして「箱の外を見る前に、箱の中を見ろ」がある。探しているメカニズムが、すでに存在していることもある。昔に考案されたものを使うのは悪いことではない。実際、経験則として我々は各セットに少なくとも1つは再録メカニズムを入れたがる。

 有望なメカニズムを見つけたら(必要なら同じくプレイテスト・デッキ作成の手法を使ってよい)、ファイルへ入れ、反復を続けよう。ファイルが埋まるまで続けるのだ。通常、これは少なくとも3つのメカニズムで起こり、たいていは6つを超えない。だがこれは多くの要因に左右されうる。最大の要因は、各メカニズムがどれほどのスペースを取るかである。

 反復の中で、以前はうまくいっていると思えたメカニズムが、セット全体とうまく噛み合わなくなることもある。調整しても解決しないなら、そのメカニズムを外し、上と同じ手法で代替を探せばよい。

 強調しておくが、より高度で、メカニズムの加え方に追加のニュアンスを要するセット構造も存在する。例えば、各陣営が独自のメカニズムを持つ陣営セットでは、各メカニズムが、色の重なる範囲で、陣営メカニズム同士でシナジーしなければならない。そのためには、メカニズム間のバランスとシナジーを作る、より精緻な仕組みが必要になる。だがこの手法は、より基本的で分かりやすいデザインには十分よく機能するはずである。

 あなたにとってうまくいくか、私は聞くのを楽しみにしている。


授業終了

 今年の「基本根本」記事を楽しんでもらえたなら幸いである。この記事を楽しんだか、あるいは自分のセット作りに役立ったか、ぜひ聞かせてほしい。念のため言っておくが、私は未依頼のデザインを受け取れない。よって、メカニズムの詳細を説明するのではなく、全体像について語ってほしい。フィードバックを、メールやソーシャル・メディア(XTumblrInstagramBlueskyTikTok)を通じて(英語で)送ってもらえると幸いだ。

 来週は「ユニバースビヨンド」のメカニズムと、それを私たちがどうデザインするかを語る予定だ。

 それまで、あなたが素晴らしいメカニズム一式に出会えますように。


(Tr. Ryuki Matsushita)

  • この記事をシェアする

RANKING

NEWEST

CATEGORY

BACK NUMBER

サイト内検索