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Making Magic -マジック開発秘話-
『ホライゾン』を広げる:エネルギー編
2024年6月10日
先週、私はカード個別のデザインの話を始め、昔のカードから着想を得たエルドラージ・カードのデザインの物語を語った。取り挙げたカードの元ネタについてデザインの物語を伝え、そこから『モダンホライゾン3』のカードのデザインの話につなげていった。本日の記事も同様に進め、エネルギー関連のカードを取り挙げていこう。
《黄泉帰る悪夢》
物語の始まりは、私がウィザーズで働き始めるよりも前の1994年夏にさかのぼる。『レジェンド』が発売されたこのとき、私は地元のゲーム店で行列の一番前に並び、ブースターボックスを2箱購入した。家に帰った私はそれらをすべて開封し、すぐにゲーム店へ戻ってもう2箱購入した。幸運にも、私の行きつけの店は『レジェンド』の販売に全力を尽くしていたのだ。このとき私が初めて引き当てたカードの1つが、これだ。
数年前に書いた「私のお気に入り」という記事でも語った通り、私は墓地が絡む相互作用の大ファンである。かつて私が組んでいたデッキの多くは、自身の墓地からクリーチャーをリアニメイトする動きが入ったものであったため、《地獄の番人》を初めて見たとき、私は大いに胸を高鳴らせた。それは再利用できるリアニメイトだったのだ。『アンティキティー』に墓地から繰り返しアーティファクトを手札に戻せる《Argivian Archaeologist》というカードがあったものの、クリーチャーでそれができるものはなかった。加えて、《地獄の番人》はクリーチャーを戦場に戻す。そのためにクリーチャーを生け贄に捧げなければならないが、それは私の中のジョニー魂がデッキを構築する上ではささいな制限だった。私は《地獄の番人》を駆使するデッキを大量に組み上げたのだった。
時は進み、『エクソダス』のデザインへ。マジックのデザイナーであることの喜びの1つは、自分が楽しいと感じるカードを取り挙げて新しいバージョンを作れることだ。私は《地獄の番人》をこよなく愛していたため、その精神を受け継いだものが欲しかった。《地獄の番人》との違いを出すために、私はその後継者をクリーチャーではなくエンチャントでデザインした。それから、アップキープの間だけ使える形ではなく、起動コストにそのエンチャントを手札に戻すことを加えた。
より強力なものにしようという意思はなかったというのが正直なところだが、それはより強力なものになった。エンチャントはクリーチャーよりも除去しにくく、手札に戻すコストには、対戦相手が破壊しようとした場合に回避できるという利点もあった。また、アップキープの間だけの制限を取り払ったことで、《繰り返す悪夢》は1ターン中に複数回起動できた。これらの要素が組み合わさった結果、トーナメントの舞台で多く見受けられる強力なカードに仕上がったのだった。
それでは、『モダンホライゾン3』の話に移ろう。《黄泉帰る悪夢》の最初期のバージョンは、次のようなものだった。
〈クレリックの悪夢〉(Ver.1)
{2}{B}{B}{B}
クリーチャー ― デーモン
6/6
威迫
クレリック1体があなたのコントロール下で戦場に出るたび、それを生け贄に捧げてもよい。そうしたとき、あなたの墓地から[カード名]を戦場に戻す。
存知{3}{C}({3}{C}, このカードを捨てる:カード2枚を引く。)
このカードはクリーチャー、それもデーモンとして始まった。6/6なのは、我々がデーモンに好んで6を使うからである(6という数字は悪魔と関連している)。これは、クレリックがデーモンをリアニメイトするというタイプ的デザインだった。「存知」能力は、基本的にスーパーサイクリング(1枚ではなく2枚引ける)だ。起動コストに無色マナを含むことから、このセットの展望デザイン・リードを務めたエリック・ラウアー/Erik Lauerが「存知」をエルドラージ関連のものにしようとしていたのではないか、と私の勘が言っている。エリックはのちにそれを取り除いたが、私の考えはそう遠いものではなかっただろう。
〈クレリックの悪夢〉(Ver.2)
{2}{B}{B}
クリーチャー ― デーモン
6/6
あなたのアップキープの開始時に、これでないクリーチャー1体を生け贄に捧げる。クレリック1体があなたのコントロール下で戦場に出るたび、それを生け贄に捧げてもよい。そうしたとき、あなたの墓地から[カード名]を戦場に戻す。
バージョン2は最初のデザインを微調整したものだった。威迫と「存知」は取り除かれた。マナ・コストは{2}{B}{B}{B}から{2}{B}{B}に減らされ、フレイバー豊かなデメリットが加えられた。クリーチャーを生け贄に捧げるのは、クレリックを生け贄に捧げてリアニメイトを行う能力ともテーマ的に結びつくものであった。
〈クレリックの悪夢〉(Ver.3)
{3}{B}{B}
クリーチャー ― デーモン
6/4
待機4
[カード名]があなたの墓地にあるかぎり、クレリック1体があなたのコントロール下で戦場に出るたび、それを生け贄に捧げてもよい。そうしたとき、[カード名]を時間カウンターが2個置かれた状態で追放する。
続くバージョンでは「待機」が試された。この『時のらせん』のメカニズムを覚えていないという諸君のために説明すると、以下のテキストを持つ能力である。
待機N — [コスト](あなたの手札にあるこのカードを唱えるのではなく、[コスト]を支払って時間カウンターN個を置いた状態で追放してもよい。あなたのアップキープの開始時に、時間カウンター1個を取り除く。最後の1個が取り除かれたとき、これをマナ・コストを支払うことなく唱える。)
ファイルには、〈クレリックの悪夢〉を待機するためのコストが書かれていなかった。見落としたのだと思う。私の勘では、おそらく{1}{B}くらいだろう。クレリックのタイプ的能力で墓地から戻るのは健在だが、「待機」を用いるものになっており、戻るまでに時間がかかる。
〈繰り返す悪夢〉(Ver.4)
{3}{B}{B}
クリーチャー ― デーモン
6/4
クリーチャー1体を生け贄に捧げる, 繰り返す悪夢をオーナーの手札に戻す:あなたの墓地にあるクリーチャー・カード1枚を対象とし、それを戦場に戻す。起動はソーサリーとしてのみ行う。
セット・デザインの中で、チームは《繰り返す悪夢》をモダンに加えてみることを考えた。「モダンホライゾン」セットのルールとして、現在モダンに存在するカードは再録できない(土地は除く)というものがある。つまり再録カードはすべてモダンには新録となるのだ。《繰り返す悪夢》は強力なカードであるため、大胆な再録を試そうというチームの意思が示されている。
〈フランケンシュタインの交換〉(Ver.5)
{2}{B}
エンチャント
[カード名]が戦場に出たとき、{E}{E}{E}{E}を加える。
{E}X個を支払う, クリーチャー1体を生け贄に捧げる, [カード名]をオーナーの手札に戻す:あなたの墓地にありマナ総量がXであるクリーチャー・カード1枚を対象とし、それを戦場に戻す。起動はソーサリーとしてのみ行う。
《繰り返す悪夢》の追加は分が悪い賭けだと見られたが、セット・デザインは限界を押し広げて可能性を見ることを好む。確かに、うまくいくはずがないと思っていたことがうまくいくこともある。だがしかし、《繰り返す悪夢》の場合はそうではなかった。プレイテストを経て強すぎることが示されたため、セット・デザインはこのカードの枠を他に移すことにした。それが、強力で人気を集めた昔のカードを思わせるエネルギーのデザインであった。切り替えてからの一発目から、最終版に近いものになった。印刷されたバージョンは1マナ軽くなり、得られるエネルギーが1個少なくなっている。プレイテストでエネルギー4個は少々多すぎることが示され、3個に減らしてそれに合わせてマナ・コストも下げたのだろうと私は予想している。
最後に、このカードのアート指示をお見せしよう。
*** 拡張アート用テンプレート***
舞台:特定の次元ではない
色:黒マナに関わる呪文
場所:暗い洞窟内部
意図:このカードは、昔のカード《繰り返す悪夢》をもとにしたものである(アートを参照のこと)
行動:歯や目が並ぶ、奇妙に有機的で暗い洞窟内部を描いていただきたい。並ぶ歯からは、真っ黒なオイルが涎のようにしたたり落ちている。奥の方に小さく、うずくまる人影。悪夢に取りつかれ、洞窟の歯からしたたり落ちるオイルにまみれている。
焦点:有機的な洞窟
雰囲気:悪夢のような雰囲気
《閃いた発明者》
次なる物語は、1枚のカードではなくメカニズム全体の作成についてである。そのメカニズムとは、『カラデシュ』で登場した「製造」だ。カラデシュはスチームパンク世界をマジック流に描いた次元であり、我々はテクノロジーが統治する世界というアイデアに取り組んでいた。我々がテクノロジーを表現する主な手段はアーティファクトである。我々は「エネルギー」メカニズムを編み出し、アーティファクトに新たなサブタイプ「機体」を加えた。
このセットにさらなる深みを持たせるため、我々は+1/+1カウンターとアーティファクト・クリーチャー・トークンを活用することにした。+1/+1カウンターは、クリーチャーがテクノロジーによって強化されるフレイバーを加える助けになった。アーティファクト・クリーチャー・トークンは、カラデシュの発明家たちによって生み出されたテクノロジーを表現していた。+1/+1カウンターもアーティファクト・クリーチャー・トークンもより大きなテーマで扱われていたが、それら同士がうまく交差していなかった。カードをドラフトで争ってピックされるような魅力的なものにするためには、テーマを重ねることが肝要なのだ。
そこで私は、ミーティングで問いかけた。「どうすれば+1/+1カウンターとアーティファクト・クリーチャー・トークンを重ねられるだろう?」と。すると新たな問いかけが出てきた。「+1/+1カウンターに注目したデッキとアーティファクト・クリーチャーに注目したデッキの両方に有益なものはないだろうか?」そこで我々はいくつかのアイデアを交わした。+1/+1カウンターをアーティファクト・クリーチャーに変えたり、その逆をしたりするメカニズムはどうか? +1/+1カウンターとアーティファクト・クリーチャーを数えるメカニズムがあったらどうか? +1/+1カウンターとアーティファクト・クリーチャーを生み出すメカニズムは可能だろうか?
最後の1つが、会議部屋の注目を集めた。両方生み出すのは少々やりすぎに見えた。ではどちらか片方を生み出すメカニズムはどうか? クリーチャーを強化するか、小さな仲間を加えるか、どちらか片方だ。我々はミーティングを終える前にそのメカニズム用のカードをいくつか作り、次のプレイテストで使ってみた。結果は上々で、「製造」はセットに収録されることになったのだった。両方の選択肢を有効なものにするのは、セット・デザインにとって困難なことだった。結局のところ、最適な場所に当たるデザインは多くないからだ。とはいえ、製造をセットに残せるだけの量はあった。
それでは、この「製造」に着想を得たデザインに目を移そう。
〈朝の僧侶〉(Ver.1)
{W}
クリーチャー ― 人間・クレリック
3/3
絆魂
あなたのアップキープの開始時に、{2}{W}を支払わないかぎり[カード名]を生け贄に捧げる。
この枠は、アップキープ・コストを持つ1マナ3/3から始まった。リチャード・ガーフィールド/Richard Garfieldは『アルファ版』にアップキープ・コストを持つクリーチャーを数多く収録し、初期のデザイナーたちもそれにならっていたが、プレイヤーたちが大いに心躍らせるものではないため、我々は長い時間をかけて大幅に減らしていった。だが「モダンホライゾン」セットは過去を振り返るセットであるため、アップキープ・コストを持つ新たなクリーチャーもクールなのではないだろうか?
〈卓絶した新入り〉(Ver.2)
{W}
クリーチャー ― エルドラージ・クレリック
3/3
あなたのアップキープの開始時に、{E}を支払わないかぎり[カード名]を生け贄に捧げる。
アップキープ・コストを持つだけでは「モダンホライゾン」のカードらしさを感じるには不十分だったため、デザイン・チームはアップキープ・コストをマナからエネルギーに変更した。興味深いことに、このカードをプレイしてもエネルギーは生み出さない。ほとんどのエネルギー関連カードにおけるデザイン手法と異なっているのだ。
〈卓絶した新入り〉(Ver.3)
{W}
クリーチャー ― エルドラージ・クレリック
3/3
あなたのアップキープの開始時に、{1}{W}{W}を支払わないかぎり[カード名]を生け贄に捧げる。
その後再びマナを支払うバージョンに戻ったが、今度はアップキープ・コストが{2}{W}から{1}{W}{W}になった。これは、2色以上のデッキでの効率を下げるためだと思われる。
〈相続税〉(Ver.4)
{W}
エンチャント
あなたがコントロールしているクリーチャーが死亡するたび、{E}を得る。
{E}X個を支払う,[カード名]を生け贄に捧げる:あなたの墓地にありマナ総量がXであるクリーチャー・カード1枚を対象とし、それを戦場に戻す。起動はソーサリーとしてのみ行う。
アップキープ・コストを持つカードはうまく機能しなかったため、チームはまったく新しいデザインを次はエンチャントで試した。デザインは再びエネルギーに戻ったが、今度はより伝統的なエネルギー・カードとなり、エネルギーを使ってクリーチャーをリアニメイトできるものだった。デザインの性質上、このカードは小型クリーチャーをリアニメイトすることが多くなる。白にできることで有名だ。
〈パーティーの隊長〉(Ver.5)
{2}{W}
クリーチャー ― 人間・戦士
3/2
あなたがコントロールしているクリーチャーが単独で攻撃するたび、{E}を得る。
{E}X個を支払う,[カード名]を生け贄に捧げる:あなたの墓地にありマナ総量がXであるクリーチャー・カード1枚を対象とし、それを戦場に戻す。起動はソーサリーとしてのみ行う。
次のバージョンではクリーチャーになり、かなり除去されやすくなった。また誘発型能力も死亡誘発から攻撃誘発に変更された。死亡誘発は攻撃を抑制し、攻撃誘発はその名の通り攻撃を促すからであると私は見ている。
〈パーティーの隊長〉(Ver.6)
{2}{W}
クリーチャー ― 人間・戦士
3/2
あなたがコントロールしているクリーチャーが単独で攻撃するたび、ターン終了時まで、それは+X/+Xの修整を受ける。Xはあなたのパーティーを構成するクリーチャーの数である。
続くバージョンでは、クリーチャーのサイズと攻撃誘発である点は維持しながらも、エネルギーとリアニメイトの要素が取り除かれ、『ゼンディカーの夜明け』の「パーティー」メカニズムと結びつくものになった。このカードが〈パーティーの隊長〉と呼ばれていたことがこの変更に影響したのかどうか100%断言はできないが、私の勘はおそらくそうではないかと言っている。
〈改善された兵士〉(Ver.7)
{2}{W}
クリーチャー ― 人間・戦士
3/3
[カード名]が攻撃するたび、ターン終了時まで、それはあなたがコントロールしていて改善されているクリーチャー1体につき+1/+1の修整を受ける。
「パーティー」は非常に構造的なメカニズムであり、収録するセットはそれを中心に組み上げなければならないため、『モダンホライゾン3』のようなセットで機能する可能性は低い。この新たなバージョンでは、デザインの基本的な枠組みは維持しながらも、このセットのより大きなテーマの1つである「改善」を使うものになった。
〈光袖会の精製屋〉(Ver.8)
{2}{W}
クリーチャー ― ドワーフ・工匠・レベル
2/3
[カード名]が戦場に出たとき、以下から1つを選ぶ。
・{E}{E}{E}(エネルギー・カウンター3個)を得る。
・[カード名]の上に+1/+1カウンター1個を置く。
・無色の1/1の霊気装置・アーティファクト・クリーチャー・トークン1体を生成する。
このバージョンでついに、最終版のカードでやっていることにたどり着いた。「製造」の文言は入っていないものの、『カラデシュ』のメカニズム2つ、「エネルギー」と製造を混ぜ合わせたものになっている。最終的に印刷されたバージョンではタフネスが1少なくなり、ドワーフ・レベルから人間になっている。
次のカードへ移る前に、《閃いた発明者》のアート指示をお見せしよう。
次元:カラデシュ
色:白に関わるクリーチャー
場所:田舎町を見下ろすバルコニー。背景には雪を頂く山が見える(カラデシュの山については13~14ページを参照。建物については42ページを参照)。
行動:ガントレットのように前腕を覆う霊気装置を入念に検査する、人間男性の工匠を描いていただきたい。装置にはさまざまな形状がある。添付の例を参考に、ガントレットを兼ね備えるデザインで。装置は霊気で青く光り、大きな目のような球体もついており、ただのガントレットではないことがわかる。男性は南アジア系で大柄、40歳くらいだろう(カラデシュの人間の服装については、49~54ページを参照)。
焦点:工匠
雰囲気:「ほぼ完璧だが、まだだ……もう少し調整が必要だな。」
《荒れ模様のストームドレイク》
このカードの物語も『レジェンド』が発売した頃に始まったのだが、《繰り返す悪夢》とは別のカードに関係している。先述した通り、私は常にジョニーなデッキビルダーである。マジックを始めたての頃は、見たことのない方法で勝つデッキを作り上げるのを楽しんでいた。今の私は、先ほども言ったがリアニメイトをこよなく愛している。『レジェンド』には、クールなアイデアをもたらすカードがいくつもあった。私の新しいデッキに加わった主なカードは、以下の通りである(半分は『レジェンド』収録のものだ)。
《動く死体》で《大地の怒り》をリアニメイトし、7/8のクリーチャーを用意。そこへ《魂の絆》をつける。すると《大地の怒り》が私にダメージを与えるたびにライフを得て、相殺される。対戦相手にダメージを与えればその分のライフを得られる(《魂の絆》は絆魂能力の先駆けとなるカードだが、それがついたクリーチャーをコントロールしていなくてもライフを得られる)。だがそれだけでは足りない。クリーチャーをリアニメイトして勝つのは、やったことがあるからだ。最後のステップは、《魂の絆》を結んだ《動く死体》である《大地の怒り》と、対戦相手のクリーチャーを《対置》や《混沌の篭手》で交換することだ。対戦相手は8点のダメージを回避するために、緑マナ4点を支払わなければならない(そもそも対戦相手が緑を使っていないことも多かった)。支払わなければ、相手は8点のダメージを受けて私は8点のライフを得る。《大地の怒り》で攻撃はできるが、《魂の絆》がダメージを相殺する。私はこのデッキで多くのゲームを勝ち取り、お気に入りの1つになった。
このデッキで対戦相手から面白いクリーチャーを奪うこともクールだと私は思った。私が持ち込んでいないカードをプレイできるのはとても楽しかった。
時は進み、『ウルザズ・サーガ』のデザインへ。我々は何年にもわたり対戦相手のクリーチャーを奪うカードを作ってきたが、相手のクリーチャーを奪うのではなく交換するというアイデアに心をくすぐられた。私はそのカードに3/3飛行というしっかりした性能を与えた。クリーチャーを差し出すことにも意味を持たせたかったからだ。このカードは、またもや私の予測を越えて強力であることが判明した。(私の仕事の大部分がデザインの初期の部分である理由がここにある。パワーレベルを測るのは私の得意分野ではないのだ。)
それでは、《金粉のドレイク》に着想を得たカードについて語ろう。
〈機械仕掛けの猟犬〉(Ver.1)
{1}
アーティファクト・クリーチャー ― 犬
0/0
[カード名]は+1/+1カウンターX個が置かれた状態で戦場に出る。[カード名]が攻撃かブロックするたび、戦闘終了時にその上から+1/+1カウンター1個を取り除く。
{X}, {T}:[カード名]の上に+1/+1カウンター1個を置く。Xは[カード名]の上に置かれている+1/+1カウンターの数に等しい。
この枠は、デザインの過程で多くの変更が行われた。最初期のバージョンは『アルファ版』の《機械仕掛けの獣》を元祖とする「機械仕掛けの」クリーチャーの再来だった。機械仕掛けのクリーチャーは基本的に、攻撃でもブロックでも戦闘に参加するとサイズが小さくなっていく。それは通常、+1/+1カウンターが取り除かれることで表現される。それから、+1/+1カウンターを取り戻してサイズを上げる能力も備わっている。
〈忘れられた作品、ブリップ〉(Ver.2)
(なし)
伝説のアーティファクト・クリーチャー ― パワーストーン
2/2
{2}:あなたの墓地から[カード名]を戦場に戻す。起動はソーサリーとしてのみ行う([カード名]は唱えられない)。
{1}:[カード名]を捨てる。
[カード名]が死亡したとき、それをオーナーの手札に戻す。
{T}:{C}を加える。このマナは呪文を唱えるためには支払えない。
次のバージョンもアーティファクト・クリーチャーであることは同じだが、方向性はまったく異なるものになった。我々は過去の「モダンホライゾン」セット(や一部の本流のセット)で、アーティファクト・トークンのサブタイプとして有名なものをサブタイプに含むアーティファクト・クリーチャーを作ることを楽しんでいた。(『兄弟戦争』の)「パワーストーン」のものはまだ作っていなかったため、このデザインはそこに挑戦したものになった。特に目を引くのは、マナ・コストを持たない点だった。
最初の能力はこのカードを戦場に出す手段だが、墓地にあるときにしか機能しない。2つ目の能力は、これを墓地に置く手段となる。誘発型能力は、死亡したときに墓地へ行かせないためのものだ。そして最後の能力はパワーストーンの能力だ。アーティファクト・トークンのサブタイプを持つカードを作る際は、そのサブタイプのアーティファクト・トークンがすること(やそれに近いこと)をするように決めている。
〈翡翠の王笏〉(Ver.3)
{3}
アーティファクト・クリーチャー ― ゴーレム
{3}, {T}:対戦相手1人を対象とする。そのプレイヤーはカード1枚を捨てる。そうできない場合、[カード名]をアンタップし、ターン終了時まで、それは3/6のゴーレム・アーティファクト・クリーチャーになる。起動はあなたがソーサリーを唱えられるときにしかできない。
次なるバージョンでは、まったく異なるアーティファクトのデザインが試された。このカードは、『アルファ版』収録のクリーチャーでないアーティファクト・カード2枚を交差させたものだった。
《破裂の王笏》のマナ・コストと起動型能力に、《翡翠像》の「3/6のゴーレムになる」要素を組み合わせたカードというわけだ。
〈巡る時間〉(Ver.4)
{4}{U}
ソーサリー
待機4 — 各プレイヤーは、自分の手札と墓地を自分のライブラリーに加えて切り直し、その後カード7枚を引く。
続くバージョンは、また別の『アルファ版』収録のカード《Timetwister》を元にしたものだった。このバージョンは元の《Timetwister》から不特定マナが2点増えており、待機コストも持っている。実際の待機コストは書かれていなかったが、元のカードを反映して{2}{U}だったのではないかと私の勘が言っている。
〈エネルギー・ドレイク〉(Ver.5)
{1}{U}
クリーチャー ― ドレイク
3/3
飛行
[カード名]が戦場に出たとき、{E}{E}(エネルギー・カウンター2個)を得る。その後、あなたは{E}X個を支払ってもよい。
マナ総量がXであるクリーチャー1体を対象とする。それと[カード名]のコントロールを交換する。この方法で交換を行わない場合、[カード名]を生け贄に捧げる。
このバージョンで初めて、《金粉のドレイク》のバリエーションになった。《金粉のドレイク》にならい、{1}{U}で飛行を持つ3/3のドレイクから始まった。それから奪えるものを決めるリソースとして「エネルギー」を織り込んだ。
〈エネルギー・ドレイク〉(Ver.6)
{1}{U}
クリーチャー ― ドレイク
3/3
飛行
[カード名]が戦場に出たとき、{E}{E}(エネルギー・カウンター2個)を得る。その後、対戦相手がコントロールしているクリーチャー1体を対象とする。それと[カード名]のコントロールを交換する。そのクリーチャーは「エコー{E}X個」を得る。Xはそれのマナ総量である。(あなたのアップキープの開始時に、これが直前のあなたのアップキープの開始時よりも後にあなたのコントロール下になっていた場合、これのエコー・コストを支払わないかぎりこれを生け贄に捧げる。)
マナ総量がXであるクリーチャー1体を対象とする。それと[カード名]のコントロールを交換する。この方法で交換を行わない場合、[カード名]を生け贄に捧げる。
セット・デザイン・チームは、「エコー」(『ウルザズ・サーガ』ブロックのメカニズム)を使う実験を行った。彼らは「カードを戦場に残すためにコストを支払う」という点がエコーに似ていると感じたため、エコーを試したのだろうと私は考えている。エコーは不必要に混乱を起こすことが証明されたため、チームはクリーチャーのコントロールを交換した直後にコストを支払う形に移行した。マナ総量に関わらず奪うことはできるが、エネルギーのコストを支払える場合のみ維持できるというアイデアは、このときのエコー実験があってこそのものだった。
最終的に印刷されたバージョンは大部分が同じで、小さな変更が加えられた。サイズは3/3から3/2になった。起動型や誘発型である能力からの呪禁を持ち、得られるエネルギーは2個ではなく4個になった。これらの変更はすべて、プレイ・デザインにて調整されたものであると感じられる。このカードを構築フォーマットで求められる地位に置こうとしたのだろう。
最後に、このカードのアート指示をお見せしよう。
*** 拡張アート用テンプレート***
舞台:特定の次元ではない
色:青マナに関わるクリーチャー
場所:稲妻の嵐が巻き起こる空
行動:ドレイクとは、2枚の翼と2本の後ろ足を持ち、前足がないドラゴン風のクリーチャーである。翼を大きく広げたドレイクの姿を描いていただきたい。そのドレイクは青く光る電気的エネルギーをまとっているかもしれない。あるいは、体の内側で青い炎が燃えているかのように、鱗の隙間から青い光が出ているかもしれない。
焦点:ドレイク
雰囲気:生体電気を発するドレイク
「君のエネルギーが好きなんだ」
本日はこれで以上だ。エネルギー関連のデザインとそこから着想を得たカードやメカニズムの物語を楽しんでもらえたなら幸いである。いつもの通り、本日の記事や本日取り挙げられたカードやメカニズム、それから『モダンホライゾン3』全般に関する意見を、メール、各ソーシャルメディア(X(旧Twitter)、Tumblr、Instagram、TikTok)で(英語で)聞かせてくれたまえ。
それではまた次回、これからやってくる新たな「ユニバースビヨンド」製品「マジック:ザ・ギャザリング『Assassin's Creed』」のプレビュー記事でお会いしよう。
その日まで、あなたが必要なエネルギーを集めてマジックのゲームを楽しみますように。
(Tr. Tetsuya Yabuki)
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