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開発秘話

Making Magic -マジック開発秘話-

混成の歴史 その2

Mark Rosewater
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2024年2月26日

 

 2週間前に、私は混成マナの歴史を語り始めた。それは1つの記事では語り切れない長さだったので、本日は続きを話そう。前回『アラーラ再誕』における混成マナまで話したところからだ。

『ラヴニカへの回帰』ブロック

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 混成マナが再び姿を現したのは、3年後、それが初めて登場した次元ラヴニカへの再訪に合わせてのことだった。『ラヴニカへの回帰』ブロックでは再び、初代『ラヴニカ』ブロックと同じ方法で混成を使うことにした。各2色の組み合わせそれぞれに垂直サイクル(コモン、アンコモン、レアのサイクル)を作り、『ラヴニカへの回帰』に5つの組み合わせ、『ギルド門侵犯』にもう5つの組み合わせを収録した。初代『ラヴニカ』ブロックと異なるのは、カード10枚の混成カード・サイクルを用意しなかったことだ。今回のギルド魔道士は金色カードだった。『ラヴニカへの回帰』ブロックにおいては、混成の使い方に革新はなかった。主に良い重なりのスペースを見つけることに取り組んでいた。

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 唯一の例外は、このブロックの最終セット『ドラゴンの迷路』収録の《野蛮生まれのハイドラ》だ。このカードには、バランス上の観点から起動コストに色マナが必要だと当時の開発チームは強く感じていたが、コストが軽いため色マナ・シンボルは1つだけにしたかった。もし我々が赤マナか緑マナか選ぶだけに留めたら、このカードはその色を使うデッキにばかり採用が偏ってしまうだろう。我々は赤と緑のバランスを取ってやりたかった。その解答が、混成マナを使うことだった。こうしてこのカードは、赤と緑の2色で平等に機能できるようになったのだ。

 混成マナが問題を解決したのはこれが初めてのことだったので、そのカードがセットに収録されたのは興味深い。セット内に1枚だけ混成カードを収録することにも抵抗がなかった。ある意味、混成が真に落葉樹となったのはこのときだったと言えるだろう。混成カードは開発部が使える便利なツールとなり、我々が必要とするときにカード単位で使えるようになったのだ。

『運命再編』

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 それからまた3年後に、混成カードが帰ってきた。『運命再編』は興味深いセットだった。当時の開発部は1年おきに、ブロックの第3セットをそれ単体でドラフトできるだけの新規メカニズムを揃えた大型セットにしようと決めていた。そこで大きな変化を起こそうとする中で、私は斬新なブロック計画を思いついた。第1セットである『タルキール覇王譚』と第3セットである『タルキール龍紀伝』は独自のメカニズムを持つ大型セットにし、そして第2セットである『運命再編』はそのどちらとも合わせてドラフトできる小型セットにしよう、という計画だ。我々はこのブロック全体のストーリーを作成した(サルカンが過去へ行き、ウギンをはじめすべての龍を救う話だ)。第2セットで過去を表現し、2つの大型セットでは異なる時間軸を描くのだ。

 『運命再編』のデザインを始めると、我々はこのセットならではの難題があることに気づいた。『タルキール覇王譚』は楔3色のセットである。『タルキール龍紀伝』は友好2色のセットだ。3色テーマのセットと2色テーマのセットの両方と噛み合うセットにするためには、『運命再編』にどのようなカードを収録すればいいのか? その答えは、もちろん混成だった。我々はクリーチャー・カードによる2つのサイクルを作った(1つは伝説のクリーチャー)。いずれも唱えるためのコストが単色で、ルール・テキストに混成マナを含むクリーチャーのサイクルだ。ほとんどは起動型能力を持っていたが、誘発型能力のコストに混成マナを含むものもあった。これらは3色のプレイ感覚を味わえる(さらに伝説のクリーチャーは固有色を3色持つ統率者として使える)ものでありながら、2色だけでもプレイできる。この2つのサイクルで楔3色の組み合わせが2回ずつ登場するが、能力のコストは対抗2色の混成マナのみ使うことになるため、それぞれの単色カードに対応する対抗2色が被らないようにした。

『Unstable』

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 混成カードが次に姿を現したのはそれから2年後、友好2色陣営のセット『Unstable』でのことだった。ここで初めて、サプリメント・セットに混成カードが収録された。登場する陣営の1つに、黒赤のスーパーヴィランの陣営があった。《Mary O'Kill》では、《野蛮生まれのハイドラ》と同様に色マナが要求される軽い起動コストを持たせながらも両方の色を平等に扱いたかった。そこで私は、同じように混成マナをコストに含めることにしたのだ。《The Big Idea》の起動コストは当初黒マナと赤マナを1点ずつ支払うものだったが、ドラフトで黒を使わないデッキでも起動できるようにするため、混成マナに変更した。また、統率者戦の盛り上がりが高まっていく中で我々も固有色への意識が高まっており、これらの伝説のクリーチャーたちにも黒と赤の固有色を持ってもらいたかったのだ。

『ラヴニカのギルド』と『ラヴニカの献身』

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 1年後、3度目のラヴニカ訪問にて混成カードも戻ってきた。混成カードには再び垂直サイクルが作られ、コモンのアーティファクトのサイクルも作られた。アーティファクトでないコモンのサイクルは、通常の重なりのデザインの混成カードで構成された。コモンのアーティファクトで構成される「ロケット」サイクルは、マナ基盤を整えるものだった。混成マナを使うことで、その特定の2色のデッキにおいて最も効率が良くなるカードになった。コストの面で2色のものを1色のように機能させられる、混成の特徴を活かしたものだ。混成マナで4色を使うコストはそのうち2色を使うデッキなら楽に支払えるが、1色しか使わないデッキでは非常に難しいのだ。

 アンコモンとレアのカードはすべて、分割カードだった。片方は2色の金色カードで、もう片方はマナ・コストに混成マナを含むものだ。混成側の方がコストが軽く、両方の色マナが揃っていない場合でも早い段階でプレイできることが多い。金色側はよりコストが重く、大抵は両方の色が揃ってから使えるものになっている。

『灯争大戦』

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 そしてすぐ次のセットでも混成マナは使われた。『灯争大戦』は引き続きラヴニカを舞台にしていたが、ギルドに焦点を当てたものではなく、ニコル・ボーラスとプレインズウォーカーたちによる戦争という「集大成的なイベント」を描くセットだった。当時は1つのセットにプレインズウォーカーを3~5枚収録するのが普通だったのだが、描かれる物語の性質上ここでは大きく数を増やし、実に36枚ものプレインズウォーカーが収録された。リミテッドにおけるプレインズウォーカーの開封比を上げるために、我々はアンコモンに混成プレインズウォーカー10枚のサイクルを作成した。それまで混成プレインズウォーカーを作ったことはなかったが、多くのプレインズウォーカーが登場する物語のために、我々は新たなデザイン領域に入っていくのをよしとしたのだ。(『灯争大戦』はまた、常在能力を持つプレインズウォーカーが落葉樹になったセットでもあった。)

 開封比を上げるために混成カードを使うことの効果について、少し話しておこう。『灯争大戦』では、アンコモンに10枚のプレインズウォーカーが収録された。それらすべてが2色の金色カードだったらと想像してみてほしい。あなたが白青のデッキを使うなら、使用できるアンコモンのプレインズウォーカーは全体の10%ということになる(10枚のうち1枚、白青のものだ)。次は、すべて単色で各色2枚ずつ収録される場合だ。その場合、白青のデッキはアンコモンのプレインズウォーカーのうち40%を使用できる(白単色のもの2枚と青単色のもの2枚)。それでは、すべて混成カードだった場合を試してみよう。白青のデッキは、アンコモンのプレインズウォーカーのうち70%を使用できる。白青のもの1枚と、他に白が絡む3枚、そして他に青が絡む3枚だ。これこそが、混成の力だ。それは可能性を広げ、実現が難しそうなテーマをより実現しやすくしてくれるのだ。

『モダンホライゾン』

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 1か月後に、『モダンホライゾン』が発売された。これはより高度なテーマを持つサプリメント・セットであり、混成にも足を踏み入れている。《甦る死滅都市、ホガーク》はたしか、当初は混成カードとしてデザインされたものではなかったと思うが、その能力は黒でも緑でも機能することに気づき、混成に変更して勢いを少しつけたのだろう。興味深いことに、《自然の詠唱》はその昔、私が初めて混成カードをお披露目したときに作った初期デザインの1つだった。初代『ラヴニカ』の垂直サイクルに入れるには少しばかり限定的すぎたため、何年も居場所を探していたのだ。これは『モダンホライゾン』の実現可能性を証明するために提出された、ハッカソン用カード・ファイルに収められたカードの1枚だった。

『エルドレインの王権』

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 その年には、『エルドレインの王権』も発売された。このセットはエルドレインの宮廷を表現する一環として単色をテーマとしていた(「一徹」メカニズムもこれに寄与している)。セット・デザイン・チームは、アンコモンに単色デッキでも2色デッキでも平等に機能するカード10枚のサイクルを作ることに興味を持ち、マナ・コストが混成マナ4点の混成カード・サイクルを作成した。10枚のうち9枚がクリーチャー(もう1枚はソーサリー)だったが、マナ・コストに関連がある以外、デザインはさまざまだった。緑白のカードには「出来事」側もあり、そちらの呪文のコストも混成マナ4点だった。

『イコリア:巨獣の棲処』

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 『イコリア:巨獣の棲処』は、怪物をテーマにしたセットだった。ここでは混成カードがいくつかの方法で使われている。特に目を引いたのは、新規メカニズム「相棒」だった。それらは、ゲーム開始時にゲームの外部に置いておくことを選べるクリーチャーだ。あなたのデッキが特定の構築条件を満たしているなら、それをゲームの外部から唱えることができたのだ。「相棒」はレアの2色クリーチャー10枚によるサイクルだった。デザイン領域が狭かったため、10枚しか作られなかった。相棒がすべて混成カードだったのは、それらをプレイできるデッキの数を可能な限り多くするためだった。

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 混成マナは、このセットの主要メカニズム「変容」にも使われた。このセットには、平均枚数を超える数の多色カードが収録された。「変容」を持つ金色カード10枚はすべて、混成マナを使って作られている。アンコモンはすべて対抗色のカードで、カードと同じ色の混成マナが「変容」コストに使われている。これは『タルキール覇王譚』における「変異」の使い方と同じだ。両方の色が揃っていれば通常のマナ・コストで唱えることができ、片方の色がなくとも「変容」の方で使えるのだ。

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 神話レアのクリーチャーによるサイクルは、楔3色(中心色1つとその対抗色2つ)のコストを持っていた。「変容」コストは中心色に他の2色の混成マナが添えられる形だ。アンコモンのサイクルと同様に、こちらもすべての色を揃えなくても「変容」で使えるようになっている。金色の「変容」クリーチャーは、2~3種類のクリーチャー・タイプをかけ合わせたフレイバーで表現されていた。ここでは混成マナがフレイバー要素も持っていたことは、特筆すべきだろう。

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 最後は、より伝統的な重なりのデザインでの使用だ。これはアンコモンのマナ・コストに友好2色の混成マナを含むクリーチャーによるサイクルで見受けられる。このセットには楔3色の要素が含まれるため、当時のデザイナーは友好色のカードを慎重に作らなければならなかった。そのためこのサイクルは、より多くのデッキに合うよう混成カードになった。それから神話レアにもう1枚、混成カードのデザインがあった。《甦る死滅都市、ホガーク》と同じく2色の両方で機能するデザインであるため、コストが混成マナになったのだろう。

『統率者(2020年版)』

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 『イコリア:巨獣の棲処』に合わせて、『統率者(2020年版)』が発売された。このセットには、能力の起動コストに混成マナを含むクリーチャーが1枚収録されている。ご覧の通り、開発部は必要とあれば混成マナを使うことに抵抗がなくなっている。

『Jumpstart』

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 『Jumpstart』は、できるかぎりシンプルにリミテッドを楽しめるようデザインされた、初心者向け製品だった。2パック開封して中身を混ぜ合わせるだけで、デッキが完成するのだ。この製品にもいくらか新規カードが収録され(37枚)、そのうち5枚は新たな伝説のクリーチャーだった。それらは固有色を2色持つことが理想とされたが、『Jumpstart』のブースターはほとんどが単色だった。カードを単色のデッキで使えるようにしながらも、固有色を2色持つにはどうすればいいだろうか? その状況を混成が救うのだ! これまで開発部が学んできたように、起動コストに含まれる色マナは混成マナに変えることができる。こうすることで、まるで単色であるように使いやすいカードでありながら、固有色に2色目を加えることができるのだ。

『ゼンディカーの夜明け』

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 2008年の『シャドウムーア』で、「ツーブリッド」の混成マナが導入された。それが12年ぶりに再登場したのが、この1枚だった。《団結の標、タズリ》のデザインにおいては、パーティーを構成する4つのクリーチャー・タイプ(クレリック、ならず者、戦士、ウィザード)と同盟者が使えるようにすることが求められた。つまり5色すべてが使えるように、という要求だ。果たしてタズリに5色の固有色を与えながら、好みに応じて5色より少なくてもプレイできるようにする方法はあるのだろうか。この問題の解答となったのが、色マナを使うこともできるが必須ではないツーブリッド・マナだった。ツーブリッド・マナは、様々なセットで幾度となく試してきた。展望デザインのファイルには何度も入ってきたので、いずれは1枚よりも多く印刷されるようになると私は確信している。

『ストリクスヘイヴン:魔法学院』

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 『ストリクスヘイヴン:魔法学院』は、対抗2色陣営のセットだった。ここでは多種多様な方法で混成マナが使われている。まずは「履修」メカニズムと新たなサブタイプ「講義」だ。あなたが「履修」を持つカードを唱えると、講義のサブタイプを持つインスタントやソーサリーを手札に加えることができる。講義カードは全部で20種類しかなかったため、当時のデザイナーは開封比を増やすために無色の講義5種と混成の講義5種を作った。

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 それから『ストリクスヘイヴン:魔法学院』には、こちらも開封比向上のためコモンに、対抗2色の混成のクリーチャーと呪文のサイクルがあった。多色セットにおける伝統的な問題の1つは、金色カードが多いと各色の開封比を十分に高くするのが難しくなることだ。混成カードは、特にリミテッドにおいてその点を解消するのに一役買う、最高のツールであることを証明してみせた。

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 アンコモンには、マナ・コストに2色のマナとその2色の混成マナ(中央に配置)を含むクリーチャーによるサイクルが作られた。これにより、2色デッキで唱えにくくなることを避けながらマナ・コストに色マナを加えることができた。2色の金色カードのセットをデザインする際の難題の1つは、できる限り多くの色を使うことだけが正解にならないようにすることだ。それが正解だと、デッキは最高の呪文を集めてプレイする「グッドスタッフ」と呼ばれるものに偏る。これではどのデッキも似たようなものになり、プレイの多様性も減ってしまうだろう。

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 そしてレアには、マナ・コストが対抗2色の混成マナ4点であるクリーチャーによるサイクルがあった。『ストリクスヘイヴン:魔法学院』のデザイナーたちは、我々が『エルドレインの王権』のデザインで学んだ仕掛けを拝借していた。これもまた、2色デッキの使用を推す意図のデザイン上の選択だった。

 『ストリクスヘイヴン:魔法学院』での混成マナの使用量は、『シャドウムーア』後で最大規模だった。

『モダンホライゾン2』

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 『モダンホライゾン2』でも混成カードが2枚収録されたのは、混成カードが落葉樹ツールとしての存在感を高めていることを示すもう1つのサインとなるだろう。《アスモラノマルディカダイスティナカルダカール》は、我々が長きにわたり作ろうと話していたカードだった。しかし彼女の名前がカード最上部のスペースを埋めてしまうため、マナ・コストを記載する余地がなかったのだ。それから彼女のコストを混成にすることで、2色の固有色を与えている。リスは緑が第1色で、黒が第2色だ。黒緑のドラフト・アーキタイプもリスで、このカードは混成カードとしてしっかり機能するデザインだった。

『Secret Lair x Street Fighter』

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 『Secret Lair x Street Fighter』は、混成マナを使用する新規カードが初めて収録されたSecret Lairだ。この2枚はどちらも、古典的な混成カード技術が使われている。ケンは固有色に白を加えながら、赤単色のデッキで問題なく機能する。春麗は1マナの多重キッカーを実現させながら、白と青が平等にキッカーを使えるようになっている。

『神河:輝ける世界』

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 『神河:輝ける世界』の物語における大きなポイントの1つは、人気キャラクターの1人であるタミヨウがファイレクシア化することだった。物語が進行するにつれて他のプレインズウォーカーもファイレクシア化していくため、タミヨウのカードはファイレクシア化したプレインズウォーカーがどのようになるのかを見せるものだった。我々は、どうしてもそのカードのコストにファイレクシア・マナを使いたかった。ファイレクシア・マナはファイレクシアンと密接に関係しているからだ。しかしファイレクシア・マナの数は1点だけに留めたかったのと、タミヨウが2色であったため、我々は初めて混成ファイレクシア・マナを導入したのだった。

 このセットにはもう1枚だけ、混成マナを使うカードがあった。《カエル乗り、達成》は、我々が伝説のクリーチャーに3色の固有色を持たせたかったケースに当てはまる。

『ニューカペナの街角』

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 『ニューカペナの街角』にはレアの混成クリーチャーによるサイクルがあったが、ここでは少し違うことに挑戦した。このセットには孤3色(中心色とその友好色2色)のテーマがあったため、サイクルのカードはマナ・コストに中心色のマナと、2つの異なる混成マナ(それぞれ中心色と友好色1色のもの)を含む形になった。これにより、中心色のマナでもその友好色1つとでも2つとでもそのカードを唱えられた。

 開発部は長年にわたり、マナ・コストに混成マナを1種類より多く含むカードの是非を議論してきた。混成マナが第3色の通常マナと結びつけられた『アラーラ再誕』では多くの混乱が生じたため、我々はそこから何年も手を引くことになった。『ニューカペナの街角』で再び足を踏み入れた我々は、今度は少し積極的に推し進めた。結果は良くも悪くもないといったところで、人気は出なかったものの、『アラーラ再誕』における混成マナを含むコストほど問題を起こすことはなかった。我々はまた挑戦すると思われるが、頻繁に行うことはないだろう。

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 また「新入り」サイクルと呼ばれる、起動コストにマナ・コストの友好2色の混成マナを含む、コモンの単色クリーチャーによるサイクルもあった。これにより我々は、プレイしにくいカードを作ることなく孤3色のコモンを用意することができた。(基本的なルールとして、我々は伝統的な金色の3色カードをコモンに作りすぎることを避けている。)

『団結のドミナリア』

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 『団結のドミナリア』で登場したアジャニは、2枚目のファイレクシア化したプレインズウォーカーだった。

『ジャンプスタート2022』

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 新しい「ジャンプスタート」では、初代『Jumpstart』で使われたのと同じ手法で、伝説のクリーチャーによる新たなサイクルが採用された。

『ファイレクシア:完全なる統一』

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 『ファイレクシア:完全なる統一』にはファイレクシア化したプレインズウォーカー・カード5枚によるサイクルがあったが、そのうち多色なのは2枚だけだったため、その2枚にだけコストに混成マナ・シンボルが使われた。

『指輪物語:中つ国の伝承』

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 混成マナを使うカードの中でも、このカードが一番フレイバーに富んでいると私は思う。《サウロンの破滅、フロド》は、物語の最終盤におけるフロドが描かれている。このカードでは、一つの指輪がフロドを堕落させていく様子を表現したかった。カード・デザインにおいては、混成カードの中でも特に人気がある『イーブンタイド』の《運命の大立者》を使って作られた。能力を起動するたびに、そのクリーチャーが強化されていくデザインだ。このカードのマナ・コストは白マナで、最後の能力には黒マナが使われている。では白から黒への変遷を示すためにはどうすればいいか? もちろん、白黒の混成だ。天才的と言うほかない。

『イクサラン:失われし洞窟』

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 ファートリはプレインズウォーカーの灯を失ったため、『イクサラン:失われし洞窟』では彼女に伝説のクリーチャー・カードを用意したかった(イクサランは彼女の故郷の次元なのだ)。このセットには両面カードがあったため、我々はファートリが彼女の民族の物語を伝える英雄譚に変身する、というクールなデザインを実現できた。彼女の核となる色であるため第1面は緑単色にしたかったが、このカードには彼女の色である3色すべての固有色を持たせたかったため、変身するための起動型能力のコストに混成マナを使うことにしたのだった。

「ジュラシック・ワールド」コレクション・カード

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 「ジュラシック・ワールド」コレクション・カードでは、コストに混成マナを含むカードが2枚デザインされた。どちらも3色のカードだが、2色でも唱えられるようにしたかった。それから、カード名に「ハイブリッド」と書かれたカードに混成(hybrid)マナを使わない理由があるだろうか?

『Secret Lair x Doctor Who™: Regeneration』

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 《The Fourteenth Doctor》は、(ほぼ)4色にまたがる「ドクターのコンパニオン」メカニズムを中心にしたデッキを組みたいプレイヤーのための統率者としてデザインされた。

『カルロフ邸殺人事件』

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 こうして、また新たな方法やさまざまな手段で混成カードを使う『カルロフ邸殺人事件』へと至った。まずは、「変装」メカニズムとラヴニカ次元の舞台背景を馴染ませるために使われた。「変装」は色が揃っていない時点でもプレイできるため、多色カードとの相性が良い。「変装」コストを混成マナにすることでこれをさらに一歩進めることができ、1色でも表にすることができるようになる。つまり2色のカードが手札にあるが色が片方しかない場合でも、それを戦場に繰り出せるのだ。

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 これまでマナ・コストに含まれる異なる種類の混成マナ・シンボルの数で一番多かったのは、『ニューカペナの街角』での2点だった。ではそれを2倍にしよう。《ギルドパクトの力線》では、緑を含む混成マナを4種すべて使っている。これにより、緑マナだけでもプレイできるが他の色マナが唱えるための助けにもなる。こういうことは頻繁にやるものではないが、比較的ハードルは低くできる楽しい要素である。

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 このセットには、友好色の組み合わせ5つを用いたアンコモンの分割カード・サイクルもあった。混成呪文と金色カードの組み合わせだった『ラヴニカのギルド』と異なり、このサイクルでは両方とも混成カードが使われている。片方は序盤に唱えられるコストの軽いもので、もう片方はゲーム後半に大きな一手となる6マナのものになっている。ちょうど6マナにしたのは、証拠収集に使えるようにするためだった(コモンの証拠収集はすべて6なのだ)。分割カードのマナ総量は両方の呪文のマナ総量を足した値だが、そのことがプレイヤーの必須知識にならないよう、5つの分割カードはすべて片方の呪文だけでコモンの証拠収集が求める値を満たすように作ったのだ。

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 最後に紹介するカードも、混成マナをフレイバー豊かに利用している。トロスターニは、3体のドライアドが連結した存在だ。この3体が別々のドライアドであることを示すために、能力の起動コストはそれぞれ異なるマナを使用している。カードを2色で作っているため、3つ目の能力は緑と白の混成マナを使う必要があった。

ハイブリッド精神で

 混成マナの歴史を振り返る物語は、これで以上だ。このメカニズムが長い年月を経てどのように成長し、広がっていったのかを楽しんでいただけたなら幸いである。特に時間が立つにつれてこのメカニズムがツールとして使わることが多くなっていくのが、面白いところだ。この記事や混成マナに関する諸君の考えを、メール、各ソーシャルメディア(X(旧Twitter)TumblrInstagramTikTok)で(英語で)聞かせてくれたまえ。

 それではまた次回、プレイ・ブースターを見ていく今年の「基本根本」記事でお会いしよう。

 その日まで、あなたが混成カードの新しい使い道を見つけますように。


 (Tr. Tetsuya Yabuki)

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