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開発秘話

Making Magic -マジック開発秘話-

地底を行く その2

Mark Rosewater
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2023年10月30日

 

 先週、『イクサラン:失われし洞窟』の先行デザイン・チームと展望デザイン・チームを紹介した。その後、このセットのデザインの話を始め、このセットからの新しいカードを披露した。今日も基本的には同じことを繰り返すことになる。セットデザイン・チームを紹介し、このセットのデザインの話を続け、そして新カードをご紹介する。それでは発掘を始めよう。

 まずは、セットデザイン・チームのさまざまなデザイナーを紹介しよう。いつものように、デザインのリードからチームを紹介してもらうことにしよう。今回はジュール・ロビンス/Jules Robins(エリック・ラウアー/Erik Lauerと共同でセットデザインをリードした)だ。

クリックしてセットデザイン・チームを表示

そこを掘る

 先週、作製メカニズムがどのようにデザインされたかを話した。今週は、展望デザインの提出の直後、クリエイティブ・チームが大きな依頼をしてきたところから話を始めようと思う。展望デザイン中を通しての計画では、新しい次元が舞台になるはずだった。初期の段階では、既知の次元を舞台にした地底世界について話していたが、それはやめにした。次元構築のあらゆるニーズに何ヶ月も取り組んだ後、クリエイティブ・チームは、基本的にこの次元がイクサランにどんどん近づいていることに気づいた。彼らは、イクサランを避けてこのセットに独自の次元を与えようと多くの時間を費やしたが、自分たちが望まない選択をしていて、地底世界の最良のバージョンがイクサランにあると気づいたのだ。

 これに関して2つの問題があった。1つは、先行デザイン・チームと展望デザイン・チームが、まったく新しいものを作り上げるためにすでに6カ月を費やしていたこと。2つ目が、初代『イクサラン』ブロックは、設定はとても愛されていたが、市場調査によるとそのメカニズムは一般からあまり高い評価を得ていなかったこと。この地底セットを「イクサランへの再訪」でない『イクサラン』にすることはできるだろうか。

 我々が「背景」セットと呼んでいるものの1作目が、『灯争大戦』だった。つまり、ラヴニカという次元で起こったものでありながら、メカニズム的にはラヴニカに関するものではなかった。ギルドを基柱とした陣営セットではなかったのだ。そのために、我々はまずその直前の2つのセット、『ラヴニカのギルド』と『ラヴニカの献身』をラヴニカへの再訪として使い、プレイヤーがラヴニカで愛した陣営要素をすべて盛り込んだ。しかし、メカニズム的な再登場をもたらさない「背景」セットは可能だろうか。

 ラヴニカは、メカニズム的にもクリエイティブ的にも、我々がこれまでに手がけた中で最も愛されている次元の1つだ。『イクサラン』はクリエイティブ面では大いに愛されたが、メカニズム面では物足りなかった。メカニズム的な再登場なしの背景セットを求める次元があるとすれば、イクサランだろう。セットデザインへの質問:イクサランへの最初の旅でやったことをやり直さずにイクサランらしさを出すには、メカニズム的にどれだけのことをしなければならないのか?

 まず、彼らは『イクサラン』ブロック(『イクサラン』と『イクサランの相克』)のすべてのメカニズムを振り返った:

  • 昇殿/都市の承認
  • 探検
  • 激昂
  • 強襲
  • 変身する両面カード(第2面が土地)
  • 宝物・トークン
  • タイプ的テーマ(海賊、吸血鬼、恐竜、マーフォーク)

 イクサランのような雰囲気になるように少し戻したかったが、メカニズム的な特徴を繰り返すわけではないので、あまり戻し過ぎないようにした。各メカニズムについての考えは以下の通り。

昇殿/都市の承認

 昇殿は超人気というわけではなく、かなりの構造的サポートを必要とする。 我々が望むような軽い触れ方には向かない。また、セット全体が地底に潜ることをテーマにしているのに、昇るというイメージの昇殿というメカニズムがあるのは不自然だ。(この後取り上げる、このセットに入っている落魄が昇殿の昇ると対照的に落ちるものであることは、クールなことだと思われた。)

探検

 この名前の持つフレーバーは的確で、メカニズムは便利で好評である。再登場の有力候補だ。

激昂

 このメカニズムは恐竜と結びついた陣営メカニズムだった。また、戦闘中に意味を持つ効果でなければならないため、デザイン空間も限られている。

強襲

 このメカニズムは『イクサラン』で海賊の派閥メカニズムとして使われた(最初は『タルキール覇王譚』でマルドゥの派閥メカニズムだった)。激昂よりも構造的なサポートが少なくて済み、デザイン空間も広い。これもフレイバーに富んでいたが、このセット全体の雰囲気にはまったく合っていなかった。

変身する両面カード(第2面が土地)

 変身する両面カード(TDFC)は『イクサラン』ブロックで最も評価の高かったメカニズムであり、再登場させることをセットデザイン・チームが最も熱望していた要素だった。

宝物・アーティファクト・トークン

 『イクサラン』で登場した宝物・アーティファクト・トークンは、その後落葉樹(そしてほぼ常盤木)となったので、我々はこれを自由に入れることができるようになっていた。

タイプ的テーマ(海賊、吸血鬼、恐竜、マーフォーク)

 これは『イクサラン』ブロックで最も目立つメカニズム的テーマであり、実行において最も失敗したテーマでもあった。セットデザインは、これら4種類のクリーチャー・タイプはすべてセット内に大量に存在させるが、タイプ的なカードは大幅に減らすことにし、恐竜だけは例外とした。恐竜は『イクサラン』ブロックで最も人気のクリーチャー・タイプであり、プレイヤーがタイプ的利益を最も要求していることがわかっていたので、このセットの赤緑ドラフト・アーキタイプの大きな部分を占めるようにした。

 この調査の後、セットデザイン・チームは『イクサラン』のメカニズム的な呼び戻しとして探検、TDFC、宝物・トークン、恐竜のタイプ的を使いたいと決めた。それぞれの要素が、セット内の他のデザインにどのような影響を与えたかを見ていこうと思う。

探検

 「掘る」の源としてのライブラリーというテーマについて話すにはいい場所だ。先週話したように、展望デザイン・チームは、墓地からカードを追放することと、ライブラリーからカードを追放したり切削したりすることの2つが、掘るという雰囲気を最もよく表していることを発見した。

 展望デザインの間に、我々は「採掘/dig」というメカニズムを作った。マナを消費してそのカードを捨て、諜報1を行い、カード1枚を引くという、手札で機能する起動型能力だった。一例をお見せしよう。

〈用心深い守護者〉
{5}{W}
クリーチャー ― 巨人
3/6
警戒
採掘{1}{W}({1}{W}, このカードを捨てる:諜報1を行い、その後、カード1枚を引く。)

 探検が採掘と少しばかり近すぎたので、セットデザイン・チームはこれをファイルから取り除いたが、自分のライブラリーの一番上から何かを探すというアイデアは採用した。彼らが求めていた、掘るという本質を捉えた既存のメカニズムはあったのだろうか。あった。『アラーラ再誕』で、ライブラリーの一番上を「掘って」そのカードよりもマナ総量が低い呪文を探す続唱というメカニズムが導入されていた。

 続唱にはいくつか問題があった。1つ目に、プレイデザイン上の懸念があった。デッキ構築により、メカニズムに組み込まれた分散を弱めることができることが多い。2つ目に、続唱/cascadeという単語は舞台に見合うフレイバーを持っているとは言えない。この2つの問題が組み合わさって、セットデザイン・チームは続唱に手を加えて別のメカニズムを作ることにした。

 彼らが行き着いたのは発見だった。文章はこうである。

発見N(マナ送料がN以下であり土地でないカード1枚が追放されるまで、あなたのライブラリーの一番上から1枚ずつ追放していく。それをマナ・コストを支払うことなく唱えるか、あなたの手札に加える。残りをあなたのライブラリーの一番下に無作為の順番で置く。)

 続唱との違いについて見ていこう。

  • 発見は、手に入れるカードのマナ総量と、効果を生み出すために使われたカードのマナ総量を切り離した。続唱では、この2つの数字が常に結ばれていたことで、カードのバランスを適切に取ることが難しくなっていた。発見には、適切にするために調整できる数字がある。
  • マナ・コストから数値を切り離すことで、このメカニズムをキーワード処理にすることも可能になった(つまり、動詞として使い、発生させたいときにいつでも発生させることができる)。これによって、毎ターン発見するカードを作るようなことができるようになる。
  • 発見では、その数字より小さい呪文だけでなくそれに等しい呪文も得ることができる。これはどちらかというと直感的なもので、ただ数字を1つ小さくすれば いいだけだった。
  • 発見は、打ち消し呪文のように条件付きの場合など、唱えたくないならカードを手札に置くという選択肢を与えてくれる。
  • 発見も舞台裏でいくつか修正された(呪文を唱えること以外でも使えるようになった)ので、戦場に出るパーマネントを唱えて発見した場合、まずそのパーマネントを解決し、それから発見効果を解決するようになった。これは続唱の働きとは逆で、より直感的だと感じている。

 さて、発見の話はここまでにして、いよいよこのメカニズムを使った今日のカード・プレビューをお見せしよう。

クリックして「内なる太陽、チミル」を表示

変身する両面カード(TDFC)

 TDFCは結局、このセットでは土地への変身と作製という2つの異なる方法で使われることになった。

土地への変身

 初代『イクサラン』ブロックでは、変身する両面カードはどれも第2面が土地だった。『イクサラン:失われし洞窟』では、土地に変身する何枚かのカードでこのフレイバーを扱っている。このカード群の一部は新しいサイクルの神々で、すべて死んで土地になり、それらをまた神に変身させる方法を与えてくれる。第2面の土地の中には、新しいサブタイプ「洞窟」を持つものがある。洞窟は門の技術を利用し、セットの土地にちょっとしたフレイバーをもたらし、メカニズム的にそれらのカードを参照するカードを数枚作れるようにしたものである。洞窟が選ばれたのは、それが地底セットのフレイバーを引き立てるからだ。

作製

 作製を持つTDFCの大半はアーティファクトに変身するが、先週のプレビュー・カードのようにクリーチャーに変身するものもある。第2面が土地であるカードは決して作製を使わず、作製を行うカードは決して土地にならない。

 

 作製は墓地をリソースとして使用しており、セットデザイン・チームは同じことをする他の方法を掘り下げることになった。彼らが興奮したアイデアは、地底にどれだけ深く潜ったかを再現するものだった。そして、ゲームが進むにつれて自然に増えていく墓地は、使うのにふさわしい領域だと思った。

 しばらくの間、セットデザイン・チームはあなたの墓地にあるすべてのカードの枚数を気にするという、『オデッセイ』のスレッショルド型で実験を行った。自分の墓地にあるカードの枚数を参照するだけでなく、このターンに自分の墓地にカードが行ったかどうかを参照するものも採用した。プレイテストの結果、インスタントやソーサリーでは後者が簡単すぎることがわかったので、戦場にあるパーマネントの数を参照していた『イクサランの相克』の昇殿を参考にして、落魄はあなたの墓地にあるパーマネントの数を参照することになった。多くの調査とプレイテストの結果、セットデザイン・チームは3通りの落魄の使い方を見つけた。

固定値の落魄

 これは、閾値に達しているかどうかを確認するために使われる数字が付いた能力語である。追跡を簡単にするため、このタイプの落魄では、落魄4と落魄8の2つの数字しか使っていない。

拡大効果の落魄

 これは、あなたの墓地にあるパーマネント・カードの枚数を参照する、底なしの落魄と呼ばれる能力語である。これは、ゲームが進行して墓地が増えるにつれて変化するものなので、少し違う能力語を使う。

イベントとしての落魄

 これは、このターンにあなたの墓地に行ったパーマネント・カードがあるかどうかを尋ねるキーワード処理である。これはどの領域からでもよいので、パーマネント・カードを切削することも、捨てることも、そのターンの落魄に含まれることになる。これは誘発型能力で使われることが多い。つまり、複数のターンで発生することがありうるのだ。

宝物・トークン

 宝物・アーティファクト・トークンはある種自由に使えるものであり、その登場以来落葉樹になっていた(このセットでは主に無色のアーティファクトと赤のカードで使われている)ので、デザイン・チームはこのセットで新しいアーティファクト・トークンをサポートできると考えた。彼らは結局、地図・トークンを使うことにした。その理由の1つは、探検を使うことを拡大することができたからであり、もう1つは、それがフレーバー的に大当たりだったからである。地図は、1マナを支払ってそれを生け贄に捧げることで探検ができるのだ。

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地図・トークン

恐竜タイプ的

 恐竜のタイプ的効果は赤緑ドラフトのアーキタイプになったので、ここで語るのがふさわしいだろう。以下は、10種類の2色アーキタイプの内訳である(文章は、ジュールが書いたボックス・インサートのドラフト・ヘルパーから拝借した)。

オルテカの創意(白青アーティファクト・コントロール)

 ブロック・クリーチャーや除去、ライフ回復で時間を稼ぎ、長期戦で真価を発揮するアーティファクトを集めましょう。

死者の残響(青黒落魄コントロール)

 墓地を肥やしつつ、ブロック・クリーチャーを展開しましょう。高コストのクリーチャーやカードドロー、繰り返し出現する脅威を駆使し、対戦相手を絶望の淵に追いやりましょう。

降下するぞ!(黒赤落魄ビートダウン)

 墓地を肥やし、自軍のクリーチャーを成長させましょう。激しい攻撃を繰り出し、ブロックを強要し、自分のパーマネントを墓地送りにしても構いません。クリーチャー・除去で対戦相手を追い詰めましょう。

太陽帝国の恐竜(赤緑恐竜ストンピー)

 巨大な恐竜を召喚し、対戦相手を蹂躙しましょう。マナを作り出す手段を活用し、これらのクリーチャーを戦場に出し、相手のブロック・クリーチャーを打ち破りましょう。

マラメトの戦略(緑白バフ・アグロ)

 低コストのクリーチャーを大量に出して対戦相手にプレッシャーを与え続けましょう。相手が防御に回った隙を見計らい、自軍のクリーチャー達を強化して一気に攻め崩しましょう。

薄暮軍団の巡礼(白黒生け贄)

 アクロゾズの栄光のため、(そして追加のリソースを得るために)小型クリーチャーやアーティファクトを生け贄に捧げましょう。相手の防御が崩れたら、強力なクリーチャーを複数展開し、とどめを刺しましょう。

海賊の略奪(青赤アーティファクト・アグロ)

 海の荒くれ者達と共に装備や宝物を手に入れましょう。厄介な奴らが止めに来たら、飛行で飛び越えるか、ブロックするクリーチャーを船外に叩き出しましょう。

ただれた菌類(黒緑落魄削り)

 墓地を肥やしながら、しぶといクリーチャーで戦場を覆いましょう。十分に落魄し戦力を強化したなら、対戦相手のブロックを削り取ってしまいましょう。

千の月の軍団(赤白タップ・ミッドレンジ)

 多数の小型クリーチャーやアーティファクトを展開し、進軍しましょう。リソースを戦略的に駆使して軍勢を起動し、侵略者を撃退しましょう。

川守りの探検(緑青探検ミッドレンジ)

 土地や強力なクリーチャーを求めて探検しましょう。獲得した追加のマナを起動型能力やカードドローに使用し、対戦相手をこちらの流れに飲み込んでしまうのです。

探検の時間だ

 以上で今日の記事は終わりである。このセットがどのように作られたのかのを楽しんでもらえたなら幸いである。今日の記事や私の話したカード、あるいは『イクサラン:失われし洞窟』に関する意見があれば、メール、各ソーシャルメディア(X(旧Twitter)TumblrInstagramTikTok)で(英語で)聞かせてくれたまえ。

 それではまた次回、『イクサラン:失われし洞窟』の展望デザイン提出文書をお見せする日にお会いしよう。

 その日まで、あなたが深く掘り進み、『イクサラン:失われし洞窟』の宝物を見つけられますように。

(Tr. YONEMURA "Pao" Kaoru)

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