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開発秘話

Making Magic -マジック開発秘話-

『団結のドミナリア』デザイン演説 その3

Mark Rosewater
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2022年9月9日

 

 これまで2週に渡り(その1その2)、『団結のドミナリア』のカード個別のデザインを紹介してきた。まだ話すべき内容があるので、今回が最終、第3回となる。

統べるもの、ジョダー
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 1999年、ジェフ・グラブ/Jeff Grubbは「The Gathering Dark」という本を書いた。その主人公がジョダーという男だった。ジョダーはウルザやミシュラの血族で、兄弟戦争の少しあとに生まれた。ジョダーが初めてカード上で言及されたのは『次元の混乱』で、《ウルザの報復者》を元にして我々が作ったカードが《ジョダーの報復者》だった。ジョダーや後に『ドミナリア』で伝説のクリーチャー《永遠の大魔道師、ジョダー》としてカード化されている。我々は5色の伝説のクリーチャーにすべきクリーチャーを探していて、彼がカード・セット外の物語で重要な役割を果たしていてまだカード化されていないというところに目をつけたのだ。

 ドミナリアを再訪するにあたり、ジョダーは人気のキャラクターだとわかっているので、我々は彼の新しいカードを作ることにした。最初からわかっていたのは、彼が5色であるということだけだった。最初のデザインはこうだ。

〈連合の特使、ジョダー〉(バージョン #1)
{W}{U}{B}{R}{G}
伝説のクリーチャー ― 人間・ウィザード
5/5
連合 ― {3}:あなたがコントロールしていて[カード名]と共通のクリーチャー・タイプを持たないクリーチャー1体を対象とする。[カード名]の上に+1/+1カウンター1個を置き、これは他のタイプに加えてそのクリーチャーのクリーチャー・タイプになる。
あなたがコントロールしていて〔カード名]と共通のクリーチャー・タイプ1つを持つすべてのクリーチャーは、[カード名]の上にある+1/+1カウンター1個につき+1/+1の修整を受ける。

 物語上、ジョダーは調停者であり、ファイレクシア人と戦うためにドミナリアのさまざまな住人をまとめたので、そのフレイバーを再現するようなデザインを考えた。最初のこのバージョンでは、連合/uniteというメカニズムを用いた。これは他のクリーチャーのクリーチャー・タイプを得ることでテーマ的につながるという怪物化の変種だった。その後、そのカードはそれにメカニズム的な意味を持たせるのだ。ジョダーの場合、自分と共通のクリーチャー・タイプを持つすべてのクリーチャーを強化するロードとして機能する。

〈連合の特使、ジョダー〉(バージョン #2)
{W}{U}{B}{R}{G}
伝説のクリーチャー ― 人間・ウィザード
5/5
警戒
{T}:あなたがコントロールしていて[カード名]と共通のクリーチャー・タイプを持たないクリーチャー1体を対象とする。ターン終了時まで、[カード名]はそのクリーチャー・タイプの連合()―1を得る。
あなたがコントロールしていて[カード名]と共通のクリーチャー・タイプ1つを持つすべてのクリーチャーは、[カード名]の上にある+1/+1カウンター1個につき+1/+1の修整を受ける。

 初期デザインではメカニズムの働きを明示しないことがあるという悪癖があるので、この「連合()-1」がどういう意味かははっきりしない。おそらく、他のクリーチャーと連合するために必要なマナを減らし、その頻度を下げるためにタップを使うようにしたのではないかと思われる。この時点で我々は、連合を(元となったメカニズムの怪物化と違い)複数回使えるようにすることを試していたと思うが、提出したバージョンでは1度限りのものに戻っていた。

〈連合の特使、ジョダー〉(バージョン #3)
{W}{U}{B}{R}{G}
伝説のクリーチャー ― 人間・ウィザード
5/5
あなたがコントロールしているすべての伝説のクリーチャーは、あなたがコントロールしている伝説のクリーチャー1体につき+1/+1の修整を受ける。

 連合がなくなったので、我々はジョダーがドミナリアの人々をまとめることを表す新しい方法を考える必要があった。このデザインは、私が『エクソダス』で作った《旗印》をかなり元にしている。

 私はクリーチャー・タイプ系のデッキが人気だと気がついたが(これは『オンスロート』がクリーチャー・タイプ・テーマを扱って競技レベルにする前である)、数個の主なクリーチャー・タイプ以外にはフレイデー・ナイト・マジックなどで使える強さにする道具を与えていなかったのだ。《旗印》は、プレイヤーがデッキの基柱とするクリーチャー・タイプが何であっても強化できる汎用的なカードを作ろうという試みだったのだ。このカードにはファンが付き、そして時折それを元にした新デザインが生まれた。ジョダーで加えられたひねりは、もちろん、クリーチャーのサブタイプではなく特殊タイプの伝説を参照することだった。

〈伝説の間〉(バージョン#4)
{5}
伝説のアーティファクト
あなたがコントロールしているすべての伝説のクリーチャーは、あなたがコントロールしている伝説のクリーチャー1体につき+1/+1の修整を受ける。

 ここでデザイン・チームは、「伝説のクリーチャーの《旗印》を作るなら、《旗印》同様にアーティファクトにすればいいのでは?」と思いついた。

〈連合の特使、ジョダー〉(バージョン #5)
{W}{U}{B}{R}{G}
伝説のクリーチャー ― 人間・ウィザード
5/5
あなたがコントロールしているすべての伝説のクリーチャーは、あなたがコントロールしている伝説のクリーチャー1体につき+1/+1の修整を受ける。
壮大 ― {X}, これでなく[カード名]という名前のカード1枚を捨てる:あなたのライブラリーからマナ総量がX以下である伝説のクリーチャー・カードを探し、戦場に出し、その後、ライブラリーを切り直す。この能力はソーサリーとしてのみ起動できる。

 そしてデザイン・チームはすぐに、必要なのはジョダーで、この効果はジョダーに持たせるべきクールなものだと気がついた。このバージョンは、セットに壮大を入れようとしていた初期セットデザイン期のものだと思われる。(展望デザインでは、壮大を持つコモンの伝説のクリーチャーを試みていた。)彼の壮大能力は、伝説のクリーチャーを教示するというものである。ちなみに、5色クリーチャーをデザインする上でありがたいことの1つが、どんな能力でも持たせられるということだ。

〈連合の特使、ジョダー〉(バージョン #6)
{W}{U}{B}{R}{G}
伝説のクリーチャー ― 人間・ウィザード
5/5
あなたがコントロールしているすべての伝説のクリーチャーは、あなたがコントロールしている伝説のクリーチャー1体につき+1/+1の修整を受ける。
あなたがコントロールしていてこれでない伝説のクリーチャー1体が死亡するたび、あなたはそれを追放してもよい。それが追放され続けているかぎり、そのカードを唱えてもよい。これにより唱えるための追加コストとして、{2}を支払う。

 壮大がファイルから消えたので、デザイン・チームは自分がコントロールしていて死んだ伝説のクリーチャーを再度唱えることができる2つ目の能力を試している。これはあまり心躍るものではなかったので、最終版ではまた別の人気のメカニズム、続唱を使うことにしたのだろう。《旗印》と続唱を1枚のカードに組み合わせることで、能力の心躍る組み合わせが成立するのだ。

 このカードのアート指示は以下の通り。

舞台:ドミナリア
:全色のマナに関わるクリーチャー
場所:ヤヴィマヤの雨林の中、クルーグの遺跡(p. 221-222)の周り
行動:不死の強力な魔術師ジョダー(p. 373)が、ヤヴィマヤのエルフ(p. 226-230)の遠征と遭遇したところ。彼はエルフたちの中に立ち、支持と信頼を得て、来たるべき戦争で自分たちを助けてくれるようにしようとしている。彼は外交的で、友好的であることを示すためにヤヴィマヤの衣装を着ていてもよい。
焦点:ジョダー
雰囲気:外交的

生けるレガシー、カーン
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 カーンは、マイケル・ライアン/Michael Ryanと私が、ウェザーライト・サーガのために作ったキャラクターである。乗組員にアーティファクトのメンバーが必要で、「心優しき巨人」アーキタイプがよさそうだったので、それを組み合わせてできたのがカーンだった。

 カーンという名前は、私が「cairn」(丘の上に石を積み上げて作った記念碑などの目印。石塚。)という単語をもとにして作った。興味深いことに、カーンは最初ヴァンガードのカードだった。

Karn_VAN.jpg

 このカードのメカニズムは、ウェザーライト号の乗組員がヴァンガード・カードになると決まるよりも前に作られていた。カーンとハナだけがアーティファクトに関係していて、アーティファクトをクリーチャー化するのはハナよりカーンのほうがふさわしかったので、このカードをカーンにしたのだ。カーンは後に『ウルザズ・サーガ』で通常のマジックのカード、伝説のクリーチャーの《銀のゴーレム、カーン》になっている。彼が初めてプレインズウォーカー・カードになったのは『新たなるファイレクシア』の《解放された者、カーン》で、2枚目が『ドミナリア』の《ウルザの後継、カーン》、3枚目が『灯争大戦』の《大いなる創造者、カーン》である。

 カーンは『団結のドミナリア』で重要な役割を果たしているので、新しくカード化する必要があるとわかっていた。デザインにおいて、初期バージョンを作り、それから少しずつ調整を加えて最終製品にすることがある。バージョンごとに大きく変動することもある。カーンは後者だった。

 最初のデザインはこうだ。

〈ゴーレム男、カーン〉(バージョン #1)

伝説のプレインズウォーカー ― カーン
忠誠度 ― 3
+1:パワーストーン・トークン1個を生成する。
-2:アーティファクト1つを対象とする。それは4/4のアーティファクト・クリーチャーになる。
-7:破壊不能と「{4}:土地でないパーマネント1つを対象とする。それを破壊する。」を持つ無色のアーティファクト・トークン1つを生成する。

 『兄弟戦争』に向けて、我々はパワーストーン(兄弟戦争の物語上の鍵となる要素)を使うことを計画していたので、『団結のドミナリア』の展望デザイン・チームはこのセットに次のセットの「前フリ」としていくらか入れることを考えていた。『団結のドミナリア』も『兄弟戦争』も舞台はドミナリアなので、2つのセットをつなぐクールな方法だと考えたのだ。

 セットが完成するまでに、パワーストーンはカーン1枚にしか登場しないまでに減らされている。パワーストーンが書き下されていないのは、実際の働きをどうするか決めていなかったからだ。このカードの最初のバージョンは、主にこれまでカーンが扱ってきた、アーティファクトをクリーチャー化することと何かを破壊すること、をするだけである。

〈ゴーレム男、カーン〉(バージョン #2)

伝説のプレインズウォーカー ― カーン
忠誠度 ― 3
+2:パワーストーン・トークン1個を生成する。
0:あなたがコントロールしているアーティファクト1個を生け贄に捧げてもよい。そうしたなら、あなたの墓地にありマナ総量がその生け贄に捧げたアーティファクトのマナ総量より小さくインスタントやソーサリーであるカード1枚を唱えてもよい。このターン、その呪文が墓地に置かれるなら、それを追放する。
-X:あなたがコントロールしているアーティファクト1つと、マナ総量がXでありトークンでないクリーチャー1体を対象とする。その前者は他のタイプに加えてアーティファクトえあり伝説であったなら伝説でないことを除いてその後者のコピーになる。

 次のこのバージョンのカーンは、違う方向に向かった。(パワーストーンは作っている。)新しい[0]能力は、アーティファクトに関係しているが、墓地にありインスタントやソーサリーであるカードを唱えるというもので、これまでのカーンにはなかった能力である。[-X]能力はアーティファクトを自分がコントロールしているクリーチャーのコピーにできる。このデザインは、技術的にアーティファクトに関係しながらどこまで広げることがえきるかを試したものである。

〈ゴーレム男、カーン〉(バージョン #3)

伝説のプレインズウォーカー ― カーン
忠誠度 ― 4
+2:パワーストーン・トークン1個を生成する。
+2:アーティファクト1個を生け贄に捧げる。そうしたなら、カード1枚を引く。
-2:「このクリーチャーは、あなたがコントロールしているアーティファクト1つにつき+1/+1の修整を受ける。」を持つ無色の0/0の構築物・アーティファクト・クリーチャー・トークン1体を生成する。

 次のこのバージョンのカーンはまた転換している。パワーストーンは作っているが、こんどはアーティファクトをカードに交換するか、構築物・クリーチャー・トークンを強化することができる。このデザインは、2つ目の[+2]能力と[-2]能力がお互いに矛盾しているように見えて奇妙に思える。カードを引く能力は自軍のアーティファクトを減らすが、トークン生成能力ではアーティファクトの数が必要なのだ。

〈ゴーレム男、カーン〉(バージョン #4)

伝説のプレインズウォーカー ― カーン
忠誠度 ― 3
あなたのアップキープの開始時に、[カード名]の忠誠度はあなたがコントロールしているアーティファクトの数になる。
+2:パワーストーン・トークン1個を生成する。
-1:カード1枚を引く。
-7:ターン終了時まで、あなたがコントロールしていてクリーチャーでないすべてのアーティファクトは4/4のアーティファクト・クリーチャーになる。

 次のこのバージョンでもまた大きく変わっているが、パワーストーンは作っている。このバージョンは、常在型/誘発型能力を1つと、忠誠度能力を3つ持っていた。直感的に、これは何か間違っている。3能力プレインズウォーカーと4能力プレインズウォーカーに必要なアートが違うのだが、誰かがアートがそうなっていないことに気づかずに4能力バージョンを作ってしまったのだろう。

 このデザインでは、パワーストーン生成能力と関係する、カーンの忠誠度を定義する常在型能力を持つことを試していた。奇妙だが、斬新だ。彼の奥義は再びいつものカーンの能力である、クリーチャーでないアーティファクトのクリーチャー化に戻っている。

 最終バージョンでは再び完全に作り直されたが、パワーストーン生成能力は残っている。[-1]能力はカードを引くものだが、マナを支払うことで選べる枚数が増えている。忠誠度能力でマナを使うことはそう多くあることではない。奥義は、アーティファクトを直接ダメージにするという、カーンには前例のないことだった。

 最後に、これがカーンのアート指示である。

舞台:ドミナリア
:無色のマナに関わるクリーチャー
場所:掘り返されて開けたジャングルの中。背景に木々が見えている。
行動:p.360にある生きる機械のカーンの登場。彼は発掘されたばかりの古のスランのアーティファクト(p. 285-287)を見分している。その周りあるいは上に土汚れがあるかも。彼は目の前にあるアーティファクトを払うために手を伸ばしているか、使い道を考えて背中を向けているか。
焦点:カーン
雰囲気:発掘者

鴉の男
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 鴉の男が初めて物語に登場したのは、『マジック・オリジン』のリリアナ関連である。彼についての情報はほとんど知られていない、謎の存在だった。彼が存在しているかどうかにすら疑問があった。しかし、彼は存在していて、そして『団結のドミナリア』ではついにカード化を果たしたのだ。彼がどうデザインされたのか見てみよう。

〈鴉の男〉(バージョン #1)
{B}
伝説のクリーチャー ― スピリット
1/1
これでないクリーチャー1体があなたのコントロール下で戦場に出るたび、それが墓地から出たかあなたがそれを墓地から唱えていた場合、[カード名]の上に+1/+1カウンター2個を置く。[カード名]が死亡したとき、これのパワーに等しい数の、飛行を持つ黒の1/1の鳥・クリーチャー・トークンを生成する。

 一番最初のバージョンから、デザイナーは《鴉の男》と鳥を関係づけたかった。(鴉の男なのだから。)このバージョンでは、クリーチャーを墓地から出したり唱えたりすることを推奨している。このデザインでは鳥が出てくるのは鴉の男がいなくなった結果であり、重要性は一段落ちている。

〈リム=ドゥールの聖職者〉(バージョン #2)
{2}{B}
伝説のクリーチャー ― 人間・クレリック
2/2
[カード名]が戦場に出たときや昇格したとき、クリーチャー1体を生け贄に捧げる。
{2}{B}{B}, 「鴉の男」に2昇格する。(このクリーチャーが伝説でないなら、これの上に+1/+1カウンター2個を置き、これは伝説になり、新しい名前を得る。)
あなたがコントロールしていてトークンでないクリーチャー1体が死亡したとき、それのパワーに等しい数の、飛行を持つ黒の1/1の鳥・クリーチャー・トークンを生成する。

 次のこのバージョンでは、初期セットデザインが掘り下げていた昇格/promoteというメカニズムが使われている。昇格は、連合の進化したバージョンであり、怪物化と同じように作用するが、そのクリーチャーを伝説にして新しい名前を与えるところが違う。

 セットデザインはファイル内の何体かの伝説のクリーチャーに昇格を持たせていた。このバージョンでは、自分のコントロール下でどのクリーチャーが死亡しても鳥が生成されるので、鳥の生成は少し簡単になっている。このカードがデザインされたのは鴉の男についての詳細を詰める前だったということを書き添えておこう。(もちろん、彼がリム=ドゥールと関係があることはわかっていた。)

〈リム=ドゥールの信奉者〉(バージョン #3)
{B}
クリーチャー ― 人間・クレリック
1/1
絆魂
{2}{B}, 「鴉の男」に1昇格する。(このクリーチャーが伝説でないなら、これの上に+1/+1カウンター1個を置き、これは伝説になり、新しい名前を得る。)
あなたがコントロールしていてトークンでないクリーチャー1体が死亡したとき、これが伝説である場合、それのパワーに等しい数の、飛行を持つ黒の1/1の鳥・クリーチャー・トークンを生成する。

 このバージョンは1つ前のものを調整したものである。このカードは軽く、小さくなり、鳥生成能力は鴉の男であることに関係するようになった。メカニズム的に、知られていたような悪逆な性質から次第にズレ始めていることがわかるだろう。

〈リム=ドゥールの信奉者〉(バージョン #4)
{B}{B}{B}
クリーチャー ― 人間・クレリック
2/2
あなたがコントロールしていてトークンでないクリーチャー1体が死亡するたび、それのパワーに等しい数の、飛行を持つ黒の1/1の鳥・クリーチャー・トークンを生成する。
{2}{B}{B}{B}, 「鴉の男」に2昇格する。(このクリーチャーが伝説でないなら、これの上に+1/+1カウンター2個を置き、これは伝説になり、新しい名前を得る。)
{1}{B}, {T}:各プレイヤーはそれぞれ、トークンでないクリーチャー1体を生け贄に捧げる。この能力はソーサリーとしてのみ起動できる。

 このバージョンから、鴉の男が強化され始めた。唱えるコストが重くなった。パワーやタフネスが大きくなった。昇格数が大きくなった。そして、対戦相手に損害を与えながら自分の鳥生成能力を誘発させる起動型能力を得た。

〈鴉の男、リム=ドゥール〉(バージョン #5)
{B}{B}
伝説のクリーチャー ― 人間・クレリック
2/2
終了ステップの開始時に、このターンにあなたがコントロールしていたクリーチャー3体以上が死亡していた場合、あなたの墓地にある[カード名]を戦場に戻す。
プレイヤーがクリーチャー・カード1枚を捨てるかトークンでないクリーチャー1体を生け贄に捧げるたび、飛行を持つ黒の1/1の鴉・クリーチャー・トークンを生成する。

 ここで、このカードが物語上の鴉の男に近づいていっているのがわかる。他のプレイヤーの苦しみを糧にしているのだ。また、墓地から戻ってくる方法も身につけた。おそらくこれは、鴉の男が死なないように見えることの再現だろう。

〈鴉の男〉(バージョン #6)
{B}{B}
伝説のクリーチャー ― 人間・クレリック
2/4
対戦相手1人がカード1枚を捨てるたび、飛行を持つ黒の1/1の鳥・クリーチャー・トークン1体を生成する。
{3}{B}, {T}:各対戦相手はそれぞれカード1枚を捨てる。この能力はソーサリーとしてのみ起動できる。

 このバージョンでは、対戦相手にカードを捨てさせる方法と、それによって利益を得る方法が与えられている。一方、リアニメイト能力は失った。最終バージョンでは、テストプレイで少しばかりやりすぎだと示された鳥生成能力はターン終了時の誘発型能力になり、ターンに1体しか生成されなくなった。また、サイズが小さくなり、コストも{B}{B}から{1}{B}に減った。残念ながら、このカードのアート指示は見つけられなかった。

穢れたもの、ソルカナー
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 次のキャラクターは、1回目の登場から再登場までに長い間が空いたキャラクターである。《沼地の王ソルカナー》は1994年の夏の『レジェンド』で登場した。

 彼がまだ生きているとは知らなかったが、多分彼は悪魔のはずだ。最初のバージョンはこうだった。

〈コロンドールの王、ソルカナー〉(バージョン #1)
{2}{U}{B}{R}
伝説のクリーチャー ― デーモン
5/5
威迫
あなたが青の呪文を唱えるたび、ルーターする。
あなたが黒の呪文を唱えるたび、対象を取らない死者再生。
あなたが赤の呪文を唱えるたび、1点飛ばす。

 私は初期デザインで見かける、こういう思いつきの、省略形が好きだ。「ルーターする」というのは、カード1枚を引いてカード1枚を捨てること。「死者再生」は、墓地にあるクリーチャー・カードを手札に戻すこと。「1点飛ばす」は、「クリーチャーやプレインズウォーカーやプレイヤーのうち1つを対象とする。これはそれに1点のダメージを与える。」のことである。このバージョンでは、ソルカナーは元のバージョンと同じ3色であり、その3色それぞれの呪文を唱えることでその対応した色の効果を得られるようになっている。多色呪文の場合、複数の能力が誘発する。このカードはもとと同じく{2}{U}{B}{R}で5/5だが、使われなくなっている沼渡りは威迫に置き換えられている。

〈コロンドールの王、ソルカナー〉(バージョン #2)
{2}{U}{B}{R}
伝説のクリーチャー ― デーモン
5/5
威迫
あなたが青の呪文を唱えるたび、カード2枚を引き、その後、カード2枚を捨てる。
あなたが黒の呪文を唱えるたび、あなたの墓地にあるクリーチャー・カード1枚をあなたの手札に戻す。
あなたが赤の呪文を唱えるたび、あなたの墓地にありインスタントかソーサリーであるカード1枚をあなたの手札に戻す。

 このバージョンでは、青の効果が強化され、黒の効果が対象を取るようになり(訳注:なっていません)、赤の効果は直接火力からインスタントやソーサリーを戻すことになった。能力3つすべてがカードを軸にしたものになっている。

〈コロンドールの王、ソルカナー〉(バージョン #3)
{U}{B}{R}
伝説のクリーチャー ― デーモン
5/3
あなたが青の呪文を唱えるたび、ターン終了時まで、[カード名]は呪禁を得る。
あなたが黒の呪文を唱えるたび、ターン終了時まで、[カード名]は破壊不能を得る。
あなたが赤の呪文を唱えるたび、ターン終了時まで、[カード名]はトランプルと速攻を得る。

 次のこのバージョンで、ソルカナーは軽くなり、タフネス2点と威迫を失っている。また、誘発型能力はソルカナーの各色の能力を与えるようになった。

〈コロンドールの王、ソルカナー〉(バージョン #4)
{1}{U}{B}{R}
伝説のクリーチャー ― デーモン
3/3
速攻
[カード名]がブロックされるたび、[カード名]が戦場にあり続けているかぎり、ブロックしているすべてのクリーチャーのコントロールを得、その後、[カード名]を戦場から取り除く。
[カード名]がプレイヤー1人に戦闘ダメージを与えるたび、そのプレイヤーのライブラリーの一番上にあるカード1枚を追放する。それが土地であるなら、それをあなたのコントロール下で戦場に出してもよい。そうでないなら、それをマナ・コストを支払うことなく唱えてもよい。

 このバージョンではソルカナーを攻撃的にしている。速攻とブロック誘発とサボタージュ能力を持っている。プレイヤーに通ったら呪文を奪うが、ブロックしたらそのクリーチャーが奪われるのだ。

〈コロンドールの王、ソルカナー〉(バージョン #5)
{1}{U}{B}{R}
伝説のクリーチャー ― デーモン
2/3
速攻
[カード名]が1体以上のクリーチャーにブロックされた状態になるたび、あなたが[カード名]をコントロールし続けているかぎり、それらのクリーチャーのコントロールを得る。[カード名]を戦闘から取り除く。
[カード名]がプレイヤー1人に戦闘ダメージを与えるたび、その点数に等しい枚数のカードを引く。

 対戦相手の呪文を唱えるのは少しばかりやりすぎだったので、サボタージュ能力はカードを引くものに変わった。

〈穢れた守護者、ソルカナー〉(バージョン #6)
{2}{U}{B}{R}
伝説のクリーチャー ― デーモン
4/6
あなたのターンの戦闘開始時に、各対戦相手はそれぞれ、クリーチャーやプレインズウォーカーのうち自分がコントロールしている1体を選ぶ。ターン終了時まで、あなたは、それらのパーマネントのコントロールを得る。それらをアンタップする。ターン終了時まで、それらは速攻を得る。

 次のこのバージョンのソルカナーは、再利用可能な《脅しつけ》になった。常に最大のものを取り続けるという問題を避けるために、何を奪うかは対戦相手が選ぶようになっている。

〈穢れたマロ、ソルカナー〉(バージョン #7)
{2}{U}{B}{R}
伝説のクリーチャー ― デーモン
3/5
あなたの終了ステップの開始時に、以下からまだ選ばれていない1つを選ぶ。
・クリーチャーやプレインズウォーカーのうち最大1体を対象とする。[カード名]はそれに5点のダメージを与える。
・占術2を行い、その後、カード1枚を引く。
・各対戦相手はそれぞれ3点のライフを失い、あなたは3点のライフを得る。
・[カード名]を追放し、その後、対戦相手1人のコントロール下で戦場に戻す。

 この第7バージョンでは、『マジック・オリジン』のエンチャント《悪魔の契約》で初めて目にしたテンプレートを使っている。一連の効果があって、その中からまだ使っていないものを各ターンに1つずつ選ぶのだ。最終バージョンでは効果の一部は変わっているが、もっとも重要な、最後に選ぶであろうコントロール変更はそのままだった。

 ソルカナーのアート指示は以下の通り。

舞台:ドミナリア
:青と黒と赤のマナに関わる伝説のクリーチャー
場所:蔦や触手や蛾や沼のもので溢れた宮殿の内装。
意図:闇の魔法で怪我される前、このクリーチャーはムルタニのようなエレメンタルだった。外見に似た所があればクールだろう。
行動:泥と膿液と沼の植物が形作る悪魔のソルカナーが、彼にとってどう見ても小さすぎる玉座に座っている。巨大な手には、穢れて腐った自然物ででき、骨や長い棘が突き出しているメイスを持っている。
焦点:ソルカナー
雰囲気:穢れた自然

めでたしめでたし

 本日の話はここまで。この3週にわたる『団結のドミナリア』のカード個別のデザインの話を楽しんでもらえたなら幸いである。今日の記事や私の回答、『団結のドミナリア』に関する意見を、メール、各ソーシャルメディア(TwitterTumblrInstagramTikTok)で(英語で)聞かせてくれたまえ。

 それではまた次回、他のIPをデザインするための取り組みについて語る、来週火曜日にお会いしよう。

 その日まで、これらのカードがあなたのゲームに楽しみをもたらしてくれますように。

(Tr. YONEMURA "Pao" Kaoru)

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