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開発秘話

Making Magic -マジック開発秘話-

マジックのデザイン・AからZ その2

Mark Rosewater
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2022年7月18日

 

 先週、アルファベットの各文字から始まる合計26枚のカードに関する舞台裏の話をする3部作を始めた。Iまで話したので、今週はJから始めよう。

J-Jinxed Idol, Jinxed Ring《凶運の彫像》《凶運の指輪

 複数のセットにわたって作られたサイクルについて、何年もの間にいくつも話してきた。1年かかった『オデッセイ』ブロックのエンチャントの勝利条件サイクル(《忍耐の試練》《機知の戦い》《死闘》《偶然の出合い》《勇壮な戦闘》)、数年かかったエイトグ(《オーラトグ》《時エイトグ》《ネクロエイトグ》《エイトグ》《森エイトグ》)、5年かかった伝説の土地のメガ・メガ・サイクル(《コーの安息所》《テフェリーの島》《ヴォルラスの要塞》《ケルドの死滅都市》《ヤヴィマヤのうろ穴》)、そして今も進行中の○○と○○の剣サイクル(《真理と正義の剣》《筋腱と鋼鉄の剣》《家庭と故郷の剣》《光と影の剣》《火と氷の剣》《饗宴と飢餓の剣》《戦争と平和の剣》《肉体と精神の剣》)。初代『ミラディン』ブロックには、こういったサイクルの1つであるカルドラの装備品(《カルドラの剣》《カルドラの盾》《カルドラの兜》)があったが、その1年前、私がリードを務めたブロック『テンペスト』で、すでに試みたものがあったのだ。これは、中断されて完成することがなかった3枚サイクルの話である。

 《凶運の彫像》は最初、〈熱い芋〉という名前のカードだった。コントローラーにダメージを与えるが、クリーチャーを生け贄に捧げることで他のプレイヤーに渡すことができるのだ。プレイヤーがこれのせいで死なないよう、お互いに押し付け合うというちょっとしたミニゲームを作るというアイデアだった。これがとても気に入った私は、あることを思いついた。このブロックを通して、凶運の品物のサイクルを作ったらどうだろうか。

 共通項は、それらすべてがアーティファクトであり(当時のアーティファクトなのでコストは不特定マナ)、不利益な効果と、クリーチャーを生け贄に捧げてこのアーティファクトを対戦相手に与える能力を持つことになる。このサイクルは、これらすべてを何とかして同時に対戦相手に持たせればそのゲームに勝てるというアイデアに基づくものだった。《凶運の指輪》は自軍の何かが死亡したら罰するものなので、渡し返そうという試み自体でもダメージを受けることになるのだ。3つ目の品物は、〈凶運のブローチ〉と呼ばれていた。最初のカード・デザインは見つからなかったが、このようなものだったと記憶している。

〈凶運のブローチ〉
{2}
アーティファクト
ターンの終了時に、パーマネント1つを生け贄に捧げる。あなたが「凶運の彫像」「凶運の指輪」と凶運のブローチをコントロールしているなら、代わりにパーマネント2つを生け贄に捧げる。
クリーチャー1体を生け贄に捧げる:対戦相手1人を対象にする。そのプレイヤーは[カード名]のコントロールを得る。

 このデッキの鍵となるコンセプトは、トークン・クリーチャーを使うなどして対戦相手よりも多くのクリーチャーを生成することだった。その後、凶運の品物3つをプレイする。対戦相手のクリーチャーがなくなれば、各ターン、対戦相手は4点のダメージを受け、パーマネント2つを生け贄に捧げることになるので、抜け出すことがどんどん難しくなるのだ。

 先の2つの凶運の品物をセットに入れることはできたが、3つ目のこれはデベロップ中に『エクソダス』に巻き込まれて《無のブローチ》になったのだ。サイクル全体を作るだけの支持が得られなかったので、この3分の2のサイクルは廃棄されたのだった。

K-Keen Sense《鋭い感覚

 『時のらせん』ブロックのブロック構造を作っていたときに、私は、3つのセットをそれぞれ過去、現在、未来に割り当てるというクールなアイデアを思いついた。ブロックが時間をテーマにしていて、その概念を3つに分けるならこれだと思ったのだ。過去を描くのは簡単だった。未来を示すのは難しかったが可能だった。本当に問題だったのは、現在であるということがどういう意味を持つのかを決めることだったのだ。ほとんどのセットは現在を描いているのではないか。

 このブロックの第2セット『次元の混乱』で私が見つけた解決策は、もう1つの現実における現在を描くというアイデアだった。どうすれば現在を違うものにできるのか。核となるこのアイデアから、我々は、色の理念を表すためにメカニズムをどう選ぶかを再検討した、変化したカラー・パイを思いついた。

 異なる現実というところからのもう1つのアイデアは、異なる世界で違った結末を迎えたキャラクターを描くというものだった。ウェザーライト・サーガは私のお気に入りだったので、私は物語上の鍵となる出来事を選び、「ある出来事がちょっと違ったらどうだろうか」と問いかけた。

 その「ある出来事」は、ヴォルラスの要塞でセレニアが乗組員を襲うことだった。実際の物語では、セレニアを殺したのはクロウヴァクスであり、そのため呪いを受けて吸血鬼になってしまった。しかし、それをしたのが彼でなかったらどうだろうか。彼のすぐ近くにいたのは、ミリーだった。ミリーがセレニアに倒されるのではなく、セレニアを殺したとしたら。この1つの変化から、2枚の伝説のクリーチャー・カードができた。

 この現実では、ミリーが呪われ、そのカードは吸血鬼として緑単色から黒単色になった。一方、ウロウヴァクスは、自分の身代わりとなって呪いを受けた友を見て、高貴な道を進み、そのカードは黒単色から白単色になった。

 デザインの後期に、我々は既存のマジックのカードを違う色にしたカードだけのボーナス・シート(「カラーシフト」カード)を手掛けていた。作ることにしたカードの中に、ダメージを与えることでカードを引く能力(「エンチャントしているクリーチャーが対戦相手1人にダメージを与えるたび、カード1枚を引いてもよい。」)が誘発する青のエンチャント、《好奇心》があった。《好奇心》能力は青と緑にあり、緑では作ったことがなかったので、カラーシフト・カードとしてクールな選択に思えたのだ。その時、私は、『エクソダス』でのこのカードのことを思い出していた。

 これは、ミリーとクロウヴァクスの間の出来事を描いていた。まだ乗組員はクロウヴァクスが吸血鬼になってしまうことを知らず、ミリーは嫌な予感がしてクロウヴァクスについていったのだ。その結果、ミリーはセレニアと戦い、倒されることになる。おそらく、我々は「《好奇心》は猫を殺す」のを我慢できなかったので、このカードをその物語上の出来事に使ったのだろう。そこで、私は、別バージョンの《好奇心》を作るのだから、この異なる現実でのミリーとクロウヴァクスの間の重要な出来事を描く素晴らしい機会だろうと気がついたのだ。このバージョンでは、クロウヴァクスは状況を把握していて、本来の物語で彼がミリーにしたようにミリーが前に立ちはだかり、クロウヴァクスは難を逃れることになった。この1枚のカードに、大量の異なる現実が詰め込まれているのだ。

L-Look at Me, I'm the DCI〈こっち見てよ、僕DCI〉

 この話はブログやポッドキャストではしたことがあるが、記事にしたことはなく、お気に入りの話なのでさせてもらうことにしよう。『Unglued』でしたかったことの1つが、カードのあらゆる面に面白さを詰め込むことだった。その中にはアート欄もあるので、何が面白いかのブレインストーミングをした。

 思いついたアイデアの1つが、クレヨンの落書き版を作ることだった。(後に、同じようなことを『Secret Lair』でもしたが、そこではアーティストに絵をクレヨンで書き直してもらっている。)私はいつかマジックのカードの絵を書きたいと思っていたが芸術的能力がないことはわかっていたので、これが最高の機会だと気がついたのだ。私は、私のクレヨン画が子供の絵に見えると申し出た。私がカードの絵を描いたらユーザーが面白がるだろうと考えたのだ。私がそう申し出ると、すぐに誰もが同意してくれた。

 私が描くカードがどれになるかは決まっていなかったので、私はファイル内のすべてのカードを見て、私が示せるような単純なジョークを含むカードを探した。《Look at Me, I'm the DCI》では、我々が禁止カードを決める手順のジョークとして、誰かがマジックのカードが貼られたダーツ板にダーツを投げているところが描かれていた。その絵なら描けると思ったので、私はこのカードを選んだのだ。

 私のアートづくりの工程は、他のマジックのアーティストとは全く違っていた。私はクレヨンで60種類ほどのアートを描き、その後、全部見直してお気に入りを選んだ。この話の中で、今まで話題にしたことがないことがある。画像化(印刷工程のための超精細デジタル版作成の工程)に送る直前にサインを入れ忘れたことに気づき、アート・ディレクターの席に駆け込んで提出直前にサインを入れたのだ。子供っぽさを出すために、Rを左右逆にした。本来の計画では、他のアーティスト同様にアートの代価を支払われることになっていたが、私のアマチュアなアートの試みで代価を受け取るのはおかしいと感じた。そこで私は代価として1ドルを請求したのだ。(ウィザーズがアートの所有権を得るために、なんらかの支払いが必要だったのだ。)

 何か月も経って、私はこんな電話を受けた。

:もしもし。
相手:こちら経理の○○です。1ドルの請求書が届いているのですが。
:ええ。アートの代価ですよ。
相手:1ドル札でお渡ししますので、経理まで取りに来ていただけますか。
:いえ、小切手でお願いします。
相手:ご存知の通り、小切手の発行には1ドル以上の経費がかかります。
:それは知りませんでしたが、本来アートの代価はもっと高いところを1ドルにしていますので、小切手を発行したとしても経費はかなり抑えられると思います。
相手:なぜ小切手が必要なのか説明していただけますか?
:ええ、私は自分のアートを額装するつもりで、そこにその小切手を入れたいのです。
相手:(懐疑的に)現金化するつもりはないということですか?
:ええ。
相手:小切手が現金化されないと年末の精算が狂うんですが。
:1ドルですね。
相手:(不満そうに)わかりました。2~3週のうちに小切手を発行します。

 そして今、毎週金曜日に記事を書く時、私の小切手を見上げることができるようになっているのだ。

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M-Mana Drain《マナ吸収

 この話は厳密にはデザインの話ではないが、長年のマジックのジョークあるいはミームの元になっているのでその起源について話そうと思う。

 『レジェンド』のデザイナーたちは、《対抗呪文》の調整版を作ることにした。 このバージョンは、呪文を打ち消すことに加えて、その呪文のマナ総量に等しい点数の無色マナを生成する。当時、マナバーンがあった(各フェイズの終了時に、未消費のマナがある場合、それは失われ、マナバーンによってその失われたマナの点数に等しい点数のライフが失われる)。そのため、デザイナーは、これは《対抗呪文》とほぼ同じ強さだと考えたのだ。まったく、まったくそんなことはなかった。《マナ吸収》はマジック史上最強あるいは最強に並ぶ打ち消し呪文になった。

 1994年夏のことだった。それから1年少しして、私は開発部でフルタイムの職を得た。私はUsenet(初期のインターネット)で活発に活動していたので、ウィザーズで働くことになった私は非公式にファンとの交流をしていた。彼らからの質問に私が答えるという形だった。(今でも続けているので、興味がある諸君は私のブログを読んでくれたまえ。)

 その質問の中に、「《マナ吸収》を再録する予定はありますか?」というものがあった。昔の強力なカードの多くと違って、《マナ吸収》は『レジェンド』のアンコモンだったので再録禁止リストに入っておらず、再録される可能性があった。

 当時、再録には2種類しかなかった。再録のほとんどは当時2年に1度印刷されていた基本セットと、本流のセット(当時は単に「タイプ2のセット」と呼ばれていた)で、どちらもスタンダードで使えるものだった。サプリメント・セットはまだ存在していなかった。(1998年の『Unglued』が最初で、これはそれより何年も前の話だ。)つまり、答えは「ない」となる。スタンダードを通さずに発売する方法はなかったので、開発部は《マナ吸収》を再録するつもりはなかった。しかしインターネット上の話で、話に彩りをもたせたかった私は「《マナ吸収》が再録されるまでには開発部員全員がバスに跳ねられるだろう」と答えたのだ。これは1996年のことだったと思う。

 2009年、『Magic Online』で、オンライン限定の『Masters Edition III』が発売された。ここで《マナ吸収》が再録されている。このとき、私がありえないと言ったことが起き、このジョークが始まったのだ。別のオンライン限定製品『Vintage Masters』が2014年に発売された。ここにも《マナ吸収》が再録されていた。2017年に発売された『アイコニックマスターズ』(Hasconでのプレビュー・イベントでお披露目された)では、《マナ吸収》が初めて紙で再録された。(製品として。ジャッジプロモとしてはそれまでにも作られていた。)最初の『統率者レジェンズ』や『ダブルマスターズ2022』 でも再録されている。

 これらはすべて、開発部がバス事故にあったというジョークにつながっている。このジョークを聞いて意味がわからなかったなら、そのジョークのもとはここだ。ここから私が得た教訓は、マジックの変化には驚かされ続けるものなので、ありえないと言うときには注意深くあるべきだということである。ここから、ブログで常々語っている「ありえないということはない」に繋がるのだ。

N-Norin the Wary《二の足踏みのノリン

 『時のらせん』は、過去をテーマにしたセットである。我々は、ユーザーが知っていてまだカードになっていないので伝説のクリーチャーにできるキャラクターを探していた。私はそのためにいくつかのリストを作った。そのリストの1つに、フレイバー・テキストで取り上げられていたキャラクターが記されていた。私のリストの先頭に書かれていたのが、《サッフィー・エリクスドッター》と《二の足踏みのノリン》だったのだ。サッフィーは『アイスエイジ』の初代《ルアゴイフ》のフレイバー・テキストからだった。その創造には何も関わっていなかったが、私のお気に入りのフレイバー・テキストの一文だったので、何年かの間にそれをもとにしたカードを何枚もデザインしている。ノリンと私には、少し異なる関わりがあった。私は、マジックのユーザー同様、『アルファ版』の《翡翠像》のフレイバー・テキストで初めて《二の足踏みのノリン》に出会った。

「他の連中は触れって言ってくるけど、俺はあれが普通の岩の塊なんかじゃないってわかってたんだ。」
――二の足踏みのノリン

 私はこれが1行でこのカードの働きをわかりやすくしてキャラクターの立ったキャラクターを導入したことを面白く感じた。ノリンはいつも危険に注意を払っているから生き延びたのだ。ノリンが次に登場したのは『ザ・ダーク』で、《ゴブリンの祭殿》のこのフレイバー・テキストだった。

「俺はこれが普通の束なんかじゃないって――な。」
――二の足踏みのノリン

 私は『基本セット第5版』のフレイバー・テキスト・チームで働いていた。《動く壁》のフレイバー・テキストを書いたのは私ではないが、ノリンを使うべきだと提案はした。

「一度、玄武岩の牙に噛まれれば、剣歯虎の象牙色の牙が懐かしく思えてくるものだ。」
――二の足踏みのノリン

 ノリンは長い間、石を恐れる姿を見せ続けている。同じセットで、もう1枚ノリンを登場させているカードがある。《剣歯虎》だ。

「歯が何十センチもあるようなやつは、何だってごめんだよ!」
――二の足踏みのノリン

 ノリンをデザインするにあたって、再現すべきトップダウンのフレイバーはわかっていた。彼はあらゆるものに怯えていて、死なないようにいつも先んじて距離を取るのだ。これはメカニズム的にはどうなるのか。彼を殺そうとするたびに、代わりに逃げるのはどうか。

 最終的に、彼が逃げることを表すために、ターン終了時までの明滅を使うことにした。しばらく逃げるという彼のフレイバーにふさわしい。最初は、対戦相手が呪文を唱えたときに逃げるだけだったが、プレイテスト中にブロック強制効果を受けた彼が死んだので「クリーチャーが攻撃したとき」を追加した。正直なところ、これは奇妙な効果なので、このカードがどう使われたかは知らない。しかしプレイヤーが彼を基柱にして創造的にデザインしたデッキを見るのは嬉しい限りだ。

O-Opalescence《オパール色の輝き

 開発部で、『ウルザズ・サーガ』ブロックには誰も知らないエンチャント・テーマがある、というジョークがあった。実際にカードを確認してみるとそのテーマは明らかだが、そのブロックが「アーティファクト・サイクル」と呼ばれており、壊れたカードの多くはアーティファクトだったのだ。にもかかわらず、我々はエンチャントで使うクールなものをデザインするためにかなりの時間を費やしていた。『ウルザズ・デスティニー』のデザイン中に(私1人でデザインしたセットだったことを思い出してもらいたい)、私は、メカニズム的にアーティファクトに言及しているすべてのカードに目を通した。そして、同じことをエンチャントに対してする新カードを作ったらどうなるかを検証した。その中にはアーティファクトのようには成立しないものもあり、エンチャントはある面で異なっていたが、それらの多くは成立した。私の目を引いたカードのうちの1枚が、『アンティキティー』の《ティタニアの歌》だった。

 私はこのカードでとても楽しんだので、エンチャント版を作りたいと考えた。ほとんどは同じだったが、いくつか変更を加えることにした。1つ目に、「全体エンチャント」を参照するようにしたので、オーラをクリーチャー化したらどうなるかという問題は生じなかった。2つ目に、クールなことが起こりやすいように、クリーチャー化したエンチャントの能力を失わせないようにした。3つ目に、このエンチャントがなくなった場合にターン終了時まで効果が残るという効果をなくした。これはカードを単純化して単語数を減らすためだった。私はこのカードの働きに満足して、デベロップに送った。デベロップでは、{3}{W}から{2}{W}{W}に変わったただけだったと思う。

 このカードは、特に《謙虚》(これも私がデザインした)と組み合わせたときにジャッジのちょっとした頭痛の種になったが、多くのプレイヤーはこれを使ってとてもクールな――ときには混乱を招くにしても――ことができたのだ。

P-Panharmonicon《パンハモニコン

 愛読者諸君は、私がコピーするのが心の底から大好きだとご存知のことだろう。初期のお気に入りデッキは、《クローン》4枚、《Vesuvan Doppelganger》4枚、《Copy Artifact》4枚、《Fork》4枚を基柱にしていた。そのため、私のマジックのデザイン人生を通して、私はいつでも新しくコピーできるものを探し続けてきたのだ。(その中のいくらかについては、この記事で書いている。)このカードの話は、『カラデシュ』のデザイン中に始まった。私はデザイン・チームに、デッキの基柱となる突飛なアーティファクトが必要だと伝えた。『カラデシュ』は、発明家のテーマを持ちアーティファクトが大量にあるセットなので、基柱となる新奇なデザインがあることは非常に重要だと考えたのだ。

 その1つは、私が常に作りたいと思っていたものだったが、その方法はわからなかった。私は「戦場に出たとき」の効果をコピーしたかったのだ。そこで、私は、誰かふさわしい人がテンプレート化する方法を考えてくれるだろうと考え、作ってみることにした。最初に私が作ったこのカードのデザインはこうだった。

〈仕掛け倍増〉
{3}
アーティファクト
戦場に出るクリーチャーは、自身の能力を2回誘発させる。

 このカードは3ヶ所変更されたが、ほぼそのままだった。1つ目、最終版はクリーチャーだけでなくアーティファクトにも影響する。ショーン・メイン/Shawn Mainはひと目見てそれを思いつき、私はそれをいい変更だと受け入れた。2つ目、このカードは自分のものだけに影響するようになった。。私の意図は最初からそうだった。3つ目、コストは{3}から{4}に変更された。私が作ったときに認識していたよりも少しばかり強かったのだ。以下はテンプレート化のさまざまな試みである。

  • 戦場に出るクリーチャーは、自身の能力を追加で1回誘発させる。
  • あなたのコントロール下で戦場に出るクリーチャーやアーティファクトは、自身の能力を追加で1回誘発させる。
  • あなたがコントロールしているアーティファクトやクリーチャーの入場能力は、追加で1回誘発する。
  • クリーチャーやアーティファクト1つが戦場に出ることによって誘発するあなたの能力は追加で1回誘発する。
  • アーティファクトやクリーチャー1つが戦場に出ることがあなたがコントロールしているパーマネントの誘発型能力1つを誘発させるなら、代わりにその能力が2回誘発する。

 私はこのカードの出来と、多くのプレイヤーが気に入ってくれたことに満足している。

Q-Quirion Ranger《クウィリーオン・レインジャー

 このカードが作られたのには、2つの理由がある。1つ目は、『ビジョンズ』のデベロップ中、1マナのエルフ1枚をボツにしたこと。2つ目は、私がマジックのデザイナーであると証明することである。周知の通り、私が開発部に雇われたのはデザイナーとしてではなくデベロッパーとしてだった。私が本当にやりたかったことはマジックのデザインだったので、デベロップ中に穴ができたら私はその穴を埋めるためのカードを何枚もデザインしたのだ。私の初期のデザインのほとんどは、穴埋めでできたものである。(興味深いことに、これは今でもウィザーズで素晴らしいデザイナーが見つかる素晴らしい方法である。)

 このデザインは、私がよくプレイしていた緑青のウィニー・デッキをもとにしている。このようなデッキにふさわしい1マナはなんだろう。クリーチャーをアンタップできるものはどうだろうか。これで、例えば自分の《ラノワールのエルフ》や《極楽鳥》をアンタップしてマナを増やしたり、《ミシュラの工廠》をアンタップしてさらに+1/+1したりできるのだ。

 タップだと強すぎるのがわかっていたので、他のコストを探した。いくつかのことを試したが、序盤から支払えるコストは多くはなかった。最終的に、森を手札に戻すことに落ち着いたのだ。長期戦では、タップしてマナを出し、手札に戻して、再びプレイしてもう1マナ出すことができるので利点に変わる。私はこのデザインを本当に気に入り、このセットのリード・デベロッパーだったビル・ローズ/Bill Roseにこれをセットに入れるように申し出た。このカードはプレイしてとても楽しく、そのまま印刷に到ったのだった。

文字の人

 本日はここまで。いつもの通り、諸君からの反響を楽しみにしている。今日の話やカードについての感想を聞かせてほしい。メール、各ソーシャルメディア(TwitterTumblrInstagramTikTok)で(英語で)聞かせてくれたまえ。

 それではまた次回、RからZの話をする日にお会いしよう。

 その日まで、私たちがこれらのカードを作ることを楽しんだのと同じぐらい、あなたがこれらのカードをプレイすることを楽しみますように。

(Tr. YONEMURA "Pao" Kaoru)

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