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開発秘話

Making Magic -マジック開発秘話-

開発部語辞典2022

Mark Rosewater
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2022年1月10日

 

 2005年、私は「A Few Words from R&D(リンク先は英語)」という記事を書き、その中で、開発部で使われているさまざまなスラングや用語について語った。(訳注:2013年にその増補版として記事が書かれていて、そちらについては日本語訳があります。)2016年、私はその続編となる記事「開発部語辞典2016」を書いた。今回の記事はその3本目となる。

 過去の記事で定義した単語を再定義するつもりはないので、今回は過去の記事から今でも開発部が使っている単語の一覧を挙げることにする。

開発部語辞典・増補版
  • FFL(フューチャー・フューチャー・リーグ)
  • 追加分/Incrementals
  • ジョニー、ジョニー向けカード(ジェニーは同等の名前である)/Johnny, Johnny card (Jenny is an equivalent name)
  • ルーター能力/Looter ability
  • 奈落/The Pit
  • 再利用可能/Repeatable
  • ルートワラ能力/Rootwalla ability
  • スパイク、スパイク向けカード/Spike, Spike card
  • 派手/Splashy
  • ティミー、ティミー向けカード(タミーは同等の名前である)/Timmy, Timmy card (Tammy is an equivalent name)
  • 調整/Tweak
  • バニラ・クリーチャー/Vanilla creature
  • WUBRG
開発部語辞典2016
  • 身近な/Accessible
  • 総員会議/All-Hands
  • 開封比/As-Fan
  • 後方互換/Backwards Compatible
  • 熊/Bear
  • The Bridge
  • C
  • カード技術/Cardcrafting
  • 特徴的/Characteristic
  • 好奇心/Curiosity
  • 威圧/Daunt
  • 落葉樹/Deciduous
  • Dominaria
  • ドレイク/Drake
  • 敵対色/Enemy colors
  • ETB, ETBT
  • 回避/Evasion
  • 常磐木/Evergreen
  • 炎のブレス/Firebreathing
  • ちらつき/Flicker
  • Free Table
  • フレンチバニラ/French vanilla
  • Grand Central Station
  • 灰色オーガ/Gray Ogre
  • 共感する/Grok
  • 確定カウンター/Hard counter
  • 対策カード/Hate card
  • 高空/High flying
  • 丘巨人/Hill Giant
  • 共感する/Grok
  • 象徴的/Iconic
  • 衝動的ドロー/Impulsive draw
  • レンズ状/Lenticular
  • 主軸的/Linear
  • M,N
  • マナ安定化/Mana smoothing
  • Meditation Realm
  • メル/Mel
  • 部品的/Modular
  • 新世界秩序/New World Order(NWO)
  • 孤立的/Parasitic
  • リアニメイト/Reanimation
  • 赤ルーター/Rummaging
  • サボタージュ/Saboteur
  • 断片/Shard
  • 不確定カウンター/Soft Counter
  • 忍び寄り/Stalking
  • ストーム値/Storm Scale
  • T
  • 閾値1/Threshold 1
  • 火曜マジック会議/Tuesday Magic Meeting
  • UEOT
  • 実質バニラ/Virtual vanilla
  • ヴォーソス/Vorthos
  • 楔/Wedge
  • ウィザーズ/Wizards

 伝えるべきことは伝えたので、新しい語彙を見ていくことにしよう。以下の用語の中には、新しいものではなく、長年記事で使っていても正式な定義をしたことがなかったものも含まれている。

能力語/Ability Word

 正式なキーワードにはなっていないがプレイヤーが識別して話題にしやすくするために非公式な名前がついているメカニズムのこと。これらの名前は、ルール文の前に斜体(日本語では教科書体)で書かれている。文章はキーワードほど同一である必要はなく、似たようなことをするという感じであればよい。能力語を取り除いたとしても、カードの働きは変わらない。これは、後述するフレイバー語とは少し異なる。デザイン上の観点から重要な点は、メカニズム的に能力語を参照することはできない、ということである。

行為者性/Agency

 ゲーム内で起こっていることを自分がいくらか制御しているというプレイヤーの気分のこと。プレイヤーが、自分の判断に意味があると感じることは重要なので、デザイン中に我々は、メカニズムやテーマ、あるいはセットの構造全体がプレイヤーに充分な行為者性を与えているかということについて話し合っている。

アートID/Art ID

 各アートに割り当てられている、1枚ずつそれぞれ異なる番号のこと。アートがあるカードをデータベース上で変更する場合、アートIDに気をつけなければならない。

アート交換/Art Swap

 2枚のカードのアートを入れ替えること。昔は非常に多く行われていたが、近年は非常に稀である。この主な理由は、カードを変更した結果として現在のアートと矛盾するようになったことである。クリーチャーに飛行を追加したが、アートは飛んでいなかった場合などがある。あるクリーチャーに飛行を追加し、他のクリーチャーから取り除き、そしてアート交換をする、ということがありえる。

アートの波/Art Wave

 カード・アートの発注の塊のこと。カード・アートはいくらかまとめて塊で発注され、アートの波と呼ばれる。ほとんどのセットでは、複数のアートの波がある。セットデザインはアート・ディレクターと協力し、どのカードのどのアートの波に入れるかを決める。通例、リード・セットデザイナーが最も確信している、あるいはメカニズムに関係なく(そのセットに入る既存の伝説のクリーチャーなどの)明らかな視覚的特徴を持つカードが最初の波に入ることになる。

実用比/As-played

 (ブースター・パック内に特定の性質を持つカードが平均何枚入っているかを示す)開封比との対比で用いられる。実用比は、特定のフォーマット、通例リミテッドで、特定の性質を持つカードが平均何枚入っているかを参照した値で、競技マジックで使われると想定しているカードのみで計算される。新メカニズムが、コモンに10枚、アンコモンに8枚、レアに6枚、神話レアに1枚あるとする。開封比は、(レアリティによる偏りを計算に入れて)その25枚すべてを計算に入れてパーセンテージを出す。一方の実用比は、特定のフォーマットにおける高レベルの競技プレイでプレイされると想定しているカードだけを計算する。ここでは25枚中13枚がそうだとしよう。実用比を使えば、特定の分類に入るカードがそのフォーマットに競技的に我々が望むような影響を与えるために充分な量が出るかどうかをよりうまく見ることができる。

曲げ/Bend

 カラー・パイ上でその色の通常の区分には入らない能力で、その色の弱点を埋めてしまわないようなもののこと。(埋めてしまうものは「壊し」と呼ばれる。後述。)曲げの例としては、ライフをコストとして支払うという通常白がしないことをする白のカードが挙げられる。

染み/Bleed

 セットのテーマを強調するため、ある1色の効果を意図して他の色で使うこと。染みには曲げが用いられる。「クールな染み出しかた」という記事で、いつどのように染みを用いるかについて説明した。

ブロックの怪物/Block Monster

 マジックの1「年」内のカードだけから作られた、通例単一のメカニズムに関連するデッキのこと。我々は、ローテーションの際にデッキが変わるように、競技スタンダードのデッキには複数年からのカードが入るようにするために尽力している。1年内で成立するデッキが壊れていたら、ローテーションの影響を受けるまでにさらに1年かかってしまうのだ。一般に、我々はブロックの怪物を避けようとしている。

ボーナス・シート/Bonus Sheet

 通例として再録カードが入った、1枚の印刷用シートであり、ブースター・パック内の1枚かそれ以上の特定枠として追加されるもの。ほとんどの場合、ボーナス・シートにはそのセットに関連したテーマがあり、そのセットのリミテッドに多様さをもたらすものである。ボーナス・シートの初登場は『時のらせん』の「タイムシフト・シート」であった。最近の例には、『ストリクスヘイヴン:魔法学院』の「ミスティカルアーカイブ」がある。

ブースター・ファン/Booster Fun

 セットで少量入っている、様々な絵違い枠違いのこと。ブースター・ファンについての私の記事がある。ブースター・ファンは今も進化し続けているので、この記事は基本についてよく説明したものではあるがそれ以降に変化しが要素があると書き添えておく。

ボトムアップ/Bottom Up

 メカニズム的前提から始まり、それをもとにフレイバー付けをするデザインのこと。

ボックストッパー/Box Topper

 ブースター・ボックスの中にそれを購入した人のためのおまけとして入っているカードのこと。ボックストッパーはそのセットに含まれているとは限らず、通例として絵違い枠違いでプレミアムな仕様になっている。

壊し/Break

 カラー・パイ上でその色の通常の区分には入らない能力で、その色の弱点を埋めてしまうもののこと。エンチャント破壊ができないのが赤の弱点であるにもかかわらず、エンチャントを破壊できる赤のカードなどはこれに当てはまる。

バケツ評価法/Bucket Pointing

 コモンやアンコモンを同等の強度のカードの「バケツ」に分け、フォーマットのバランスを解析する競技的プレイデザインの手法。迅速評価法(後述)の、より細かいバージョンである。

基柱/Build-around

 プレイヤーがそれを中心にしたデッキを組むことを推奨するカードのこと。この語は、ドラフトでのカードについて語る時に開発部で最もよく用いられる。セットには、経験豊富なドラフト・プレイヤーが初期にピックした場合、そのセットの通常のアーキタイプと違うドラフトを試みることを推奨する、基柱となるアンコモン(や少数のレアや神話レア)が入っていることが多い。基柱カードは、ドフラフと環境の寿命を伸ばすための重要な道具である。

カードセット・レビュー/Card Set Review

 特定の製品のセットデザイン・チームに参加していない開発部員がその製品を見て、個別のカード・デザインに感想を述べる会議。伝統的に、これらの会議はセットデザインに入ってから行われる。

カジュアル/Casual

 この語はさまざまなことを意味しているので、これに関して1本の記事「カジュアル・プレイ」にまとめている。一言で言うと、これは、経験が浅かったり、のめりこんでいなかったり、競技的でなかったりする、さまざまなプレイヤーのことである。

カジュアル構築/Casual Constructed

 デッキがパワーレベルやシナジーや仕上げの面で秀でていないマジックのプレイのこと。これらのデッキは「ネットデッキ」(通例インターネット上の、他の人のデッキをコピーしたデッキ)ではないことが多く、そのデッキ作者にとって魅力的な個別のカードの影響を受けていることが多い。それらは(通例、そのデッキ内のすべてのカードがたまたま含まれている)フォーマット名で区分されることがあるが、競技デッキの強度にはまったく及ばない。

並べ入れ/Collation

 印刷やブースター・パックへの封入のために、どのシートにどのカードを入れるかを決定する工程の名前。並べ入れはセットを作る上での多くの要素に影響し、セットの大きさやメカニズムの開封比などを決定することになるので、デザインは並べ入れの制限に十分注意しなければならない。

カラー・パイ/Color Pie

 マジックの5つの色と、そのお互いの関連性を含んだ概念のこと。カラー・ホイールと呼ばれることもある。2週前の、「カラー・パイの話をしよう」の記事に、この話題についての多くの記事やポッドキャストへのリンクが提示されている。

概念付け/Concepting

 カードがクリエイティブ的に何を表しているのかを決定すること。例えば、直接ダメージ呪文は、魔道士が炎を対象に浴びせることを表している場合がある。概念付けは、そのカードのアート、名前、フレイバー・テキストに影響する。

CQI

 ファイル内にあるそのカードを完全に再デザインするべきだという表記。質的向上の継続/Continual Quality Improvementの略語。(だが、開発部の大多数は知らないのではないか。)この語は、1990年代なかばにウィザーズで行われた全社的教育セミナーに由来している。

カーブ交換/Curve Swap

 通例クリーチャーである2枚のカードのマナ・コストを入れ替え、マナ・カーブを保ったままでそれぞれの効果が発生する時期を入れ替えること。

サイクル(水平)/Cycle, Horizontal

 ほとんどの場合は同じレアリティ、通例としてカード・タイプが同じ、各色1枚ずつからなるカード5枚の組。水平サイクルに、6枚目として無色のアーティファクトが含まれることがある。また、2~3色の多色カードまたは2~3色のマナを出す土地の10枚サイクルも存在する。ほとんどのサイクルはすべて単一のセットに入るが、まれに、異なるセットに分かれていることがある。複数のセットに分かれるサイクルのほとんどは、10枚サイクルである。

サイクル(垂直)/Cycle, Vertical

 通例として同じ色、同じカード・タイプの、コモン1枚、アンコモン1枚、レア/神話レア1枚からなるカード3枚の組。レアと神話レアの両方を含む、4枚垂直サイクルであることもある。

The Danger Room

 本来、The Danger Room(「Xメン」がもと)とは、リチャード・ガーフィールド/Richard Garfieldのオフィスが主にプレイテストに使われる会議室になったものであった。現在のビルに移転した後、会議室の1つにThe Danger Roomと名付けた。その部屋は後にアーロン・フォーサイス/Aaron Forsytheのオフィスになった。現在のDanger Roomは、ガラス張りの小会議室である。

判断麻痺/Decision Paralysis

 あまりにも選択肢が多かったり、決定にかかる圧力が大きすぎたりするためにプレイヤーが判断できなくなること。デザインは、判断麻痺を引き起こすようなカードやメカニズムやセットを作らないように非常に注意している。

開発コメント/Dev Comments

 データベース上にある、カードのデザインのメカニズム的実装について開発部員がコメントを残せる欄。もともとはDeveloper's Commentsという欄だったが、今はデベロッパーという役職の人物はおらず、コメントを残す欄はデベロッパーに限らず開発部の全員が使うものである。

デジタル・レビュー/Digital Review

 「MTGアリーナ」と「Magic Online」両方の代理人と集まって、セットのデジタル・フォーマットへの適合による影響について話し合う会議。

前段カード/Enabler

 特定のメカニズムや戦略を助けるカードのこと。デザインはこの語を、セットのある側面を助けるカードが過剰あるいは不足であるということを示すために使っている。

FIRE

 マジックの製品において重視すべき性質についての回避頭部全体の理念を示す語。楽しい/Fun、誘惑的な/Inviting、何度もプレイできる/Replayable、心躍る/Exciting の頭文字語。プレイデザイン・リードを務めたアンドリュー・ブラウン/Andrew BrownがFIREの理念について書いた「Fire it Up(リンク先は英語)」という記事がある。

フレイバー語/Flavor Word

 メカニズムのフレイバーを表す表記のこと。これらは、ルール文の前に斜体(日本語では教科書体)で書かれている。初登場は『フォーゴトン・レルム探訪』であった。能力語と非常によく似ているが、伝統的に同じフレイバー語が複数のカードで使われてはいない。

同型再録/Functional Reprint

 新しいフレイバー、新しい名前である点を除いて再録であるカードのこと。同型再録であっても、メカニズム的にそのカードで意味を持たない場合であればクリーチャー・タイプを変更することが可能である。

補助カード/Helper Cards/Player Aids

 デッキに入らず、プレイヤーがゲームプレイを助ける道具として使うカードのこと。補助カードの例として、トークン、紋章、昼/夜カード、統治者がある。

主要なセールスポイント/KSP(Key Selling Point)

 セットの最も魅力的な要素でありマーケティングのために用いられると思われるものを指す、内部で用いる語。これはウィザーズ独自のものではないビジネス用語である。

キーワード/Keyword

 どのカードでも同じ文章を表す、名前付きメカニズムのこと。(対照的に、能力語はカードごとに少しずつ内容が異なる場合がある。)能力語と違い、キーワードはメカニズム的に参照可能である。

キーワード処理/Keyword Action

 動詞であって特定の効果を表すキーワードのこと。例として、生成する、格闘する、死亡する、が挙げられる。

ツマミ/Knob

 プレイデザイナーがバランス目的で変更できる、通例として(マナ・コストや起動コストのような)数を含むカードの要素。ツマミが多ければ多いほど、プレイデザインには便利である。ツマミが多いメカニズムのことを、「ツマめる/knobby」と呼ぶ。

リミテッドのアーキタイプ/Limited Archetypes

 (セットごとに異なる)いくつかの色や色の組み合わせにメカニズム的定義をもたらす、製品に組み込まれた戦略。例えば、赤白は軽量クリーチャーをプレイして素早く攻撃するアグロ戦略であることがある。リミテッド向けにデザインされたほとんどのマジックの製品には、少なくとも10種類のデッキのアーキタイプがあり、ほとんどの場合は2色の組み合わせになっている。

マナ消費先/Mana Sink

 プレイヤーが余剰のマナを消費できる、カードやメカニズムの要素のこと。中期戦や長期戦になったときに適切な戦略的プレイがあるようにするため、セットにはいくらかのマナ消費先が必要である。例としては、(重かったり再利用可能だったりする)起動型能力や、マナの重い別のコストを持つメカニズムが挙げられる。

メカニズム/Mechanic

 複数のカードで使われている要素のこと。名前のあるメカニズムは、キーワードや能力語である。ただし、すべてのメカニズムに名前があるわけではない。

モティ/Moti/A+/A/B/C

 リミテッドにおけるカードの強さの評価系。モティは、初登場時にリミテッドで非常に強かったカード《マハモティ・ジン》に由来している。

神話の壁/Mythic Wall

 セットが完成に近づいたとき、我々はすべての神話レア・カードの拡大版を印刷し、奈落そばの壁に貼り出す。スタジオXの全員が、カードにコメントを残すことが推奨されている。すべての神話レアを、可能な限り心躍るものにするための最終チェックである。

オフライン/Offline

 会議外の時間のこと。デザイン・チームに所属していると、会議と会議の間にする課題があることがある。それらの課題のことを、「オフライン」でしなければならない作業、と呼ぶ。

利得/Payoff

 プレイヤーがカードによる何らかの条件を達成したことに報いる、そのカードの要素。この語は、カードに充分な報酬がないと伝えたい場合に用いられるのが通例である。

筆了/Pencils Down

 デザイン・ファイルにそれ以上の変更がなされなくなる時点のこと。筆了は、セットの編集の途中の工程である。

プレイ・パターン/Play Pattern

 カードやメカニズムをプレイする、最も一般的な方法のこと。デザイン中にこの語は、ゲームのある要素が、さまざまなプレイヤーがプレイする多くのゲームのゲームプレイに影響を及ぼすあり方について話すために使われる。大局的にゲームプレイを見る表現である。

迅速評価法/Quick Pointing

 リミテッドで各色がどの程度強いかを雑に見るために、プレイデザインが使う、迅速な採点法。

レア投票/Rare Poll

 セット内のすべてのレア、神話レアを順位付ける、参加を希望したウィザーズ社員による内部の投票。世間一般の関心を予想するために用いられる。

効率/Rate

 カードがその効果とマナ・コストに関してどの程度強いかのこと。デザイン中、この語は、特定のカードをどの程度強くしたいかという評価をしているときに用いる。rateの他にefficiencyという語を使うこともある。

効率の怪物/Rate Monster

 マナ・コストが効果に比して非常に積極的なカードのこと。

拡大可能/Scalable

 ほとんどの場合は何らかの数に関連する、複数の強度になりうる効果のこと。パーティーや版図といった特定のメカニズムやあらゆるX呪文は、拡大可能な効果を用いる。拡大可能な効果は常に作っているので、デザインはどの効果が可能かという実用的な知識を持っている。

セットの骨格/Set Skeleton

 デザインがセットの必要なものや構成を確認するために用いる道具。私が書いた、デザイン中にどのようにセットの骨格を用いるかについて説明した記事がある。

指針アンコモン/Signpost Uncommon

 プレイヤーにその色の組み合わせのドラフト・アーキタイプが何かを示す助けとなる、通例として2色の組み合わせそれぞれに存在する、10枚サイクルのアンコモンのこと。

安定化メカニズム/Smoothing Mechanic

 プレイヤーがカードを引くことや、引くカードの質を高めるためにライブラリーの一番上を弄ることを助けるメカニズムのこと。シナジーの濃いセットには、さまざまなカードの組み合わせが充分な頻度で発生するようにするため、安定化メカニズムが必要なことが多い。

定番/Staple

 直接ダメージや呪文の打ち消し、手札破壊など、ほとんどのセットで発生する基本的な効果のこと。

完全上位互換/Strictly Better

 他のカードと同じでマナ・コストが少ないカード、あるいはマナ・コストが同じですべてのルール文を持ち、さらに(有利な)ルール文が追加されているカードのこと。例えば、《ゴブリンの戦車》({2}{R}で2/2速攻)は《灰色オーガ》({2}{R}で2/2でルール文なし)の完全上位互換である。2万枚以上のカードがあるので、ほぼどんなカードであってもそのほうが有利になる状況を作ることは可能である。例えば、《灰色オーガ》は《Tivadar's Crusade》(すべてのゴブリンを破壊する)で死なないが、実際上ほとんどの状況で強いのであれば、開発部は完全上位互換として扱う。

テンプレート化/Templating

 正しく作用するようにするためにルール文の書式を整えること。通常、テンプレート化を完了させるのは編集の仕事である。

トップ・カード/Top Cards / 1枚分/Full Card / 半枚分/Half Card / 0.1枚分/0.1 Card / 0枚分/Not a Card

 特定のカードがスタンダードに入る機会の想定を示すためにプレイデザインが用いる評価系。

トップダウン/Top Down

 フレイバーから始まり、それをもとにメカニズムを作るデザインのこと。トップダウン・セットの古典的な例は『イニストラード』、『アモンケット』、『エルドレインの王権』である。トップダウン・セットのデザイン方法について説明した記事「Top Down and Goal(リンク先は英語)」がある。

トップライン/Toplining

 製品のクリエイティブ・リードが進行する、通例としてセット・リードなど、それに関連するさまざまな人々が各カードの概念付けとのアイデアを話し合う会議。

部族/Tribal

 メカニズム的にクリーチャー・タイプに関連した、キーワード、能力語、テーマ、セットのこと。例として、パーティー・メカニズムや『イクサラン』のセットが挙げられる。

小物文/Trinket Text

 メカニズム的重要性は低いが重要なフレイバーを加える、カードのルール文のこと。小物文の例として、《執念深い群衆》の「苗木にはブロックされない。」が挙げられる。

分散性/Variance

 カードの効果やゲームやデッキが、使うたびにどの程度変わるかということ。デザインが分散性を意識するのは、毎回同じ結果にはならないほうがゲームが楽しくなるからである。分散性について、私の書いた2本の記事がある。(その1その2

一周/Wheel/Table

 ブースター・ドラフトで、自分が開封したブースター・パックからのカードがテーブルの全員を回って、2度目にそのブースター・パックを見た時にドラフトできること。

スラングおしまい

 本日の開発部語録はここまで。これらの話を楽しんでもらえたなら幸いである。これらの語を、マジック仲間との会話に自由に使ってくれたまえ。いつもの通り、今日の記事についての諸君の感想を知らせてほしい。メール、各ソーシャルメディア(TwitterTumblrInstagramTikTok)で(英語で)聞かせてくれたまえ。質問をするのが好きなら、私が私のブログ(Blogatog)で質問に答えていることを覚えておいてもらいたい。

 それではまた次回、我々がさらなる大局を見ていく日にお会いしよう。

 その日まで、あなたが語りたいことを表す言葉があなたとともにありますように。

(Tr. YONEMURA "Pao" Kaoru)

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