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Making Magic -マジック開発秘話-
点と点をつなぐ
2020年7月13日(再掲載)
(本記事は2007年に初出で、2020年7月13日に再掲載されたものです。「1000週記念」での筆者の自薦により、翻訳を掲載いたします。)
すべての人に、その人が情熱を持つ主題があるはずだ。つまり、人にはそれぞれ、それについて継続的に学びたくて仕方なくなるほどに魅了される何かが存在するということである。そう知った上で、この情熱の話題はその人を惹きつけ続ける、繰り返されるテーマになるのだ。やがて、その人はその話題が自身の人生にどう影響するのかを内省し始める。そしてついには、その人は自分の受けた影響を示すため、その話題に自分の足跡を残す方法を見つけ出すのだ。
今日の記事は、私の情熱の主題であるもの、良いゲームデザインの基盤であると私が信じでいるものについてである。実のところ、私はそれをあらゆる芸術の基盤だと信じている。私の情熱の主題は何か。それは、創造性である。
私が諸君に今日伝えたいものはこれだ。これから、創造性がどのように私の情熱の主題になったのかを語ろう。その後、それについての基本のいくらかを解説していく。それから、私が信じる創造性というものを裏付ける私の理論を説明する。その後、誰もが創造的になることができるちょっとしたヒントをお届けしよう。良さそうに思うかね。それでは早速、この記事を始めるとしよう。
食べるための考え
私のこれまでの人生はずっと非常に創造的だった。それは私にとって当たり前になっている。思い出せる限りの若いころから、私は他のほとんどの人と違う考え方をする能力があった。子供のころは、それについてあまり深く考えてはいなかった。それが私にとって普通だったのだ。しかし成長し、私の工程が違うということに気づき始めると、私はその理由を学ぶことに興味を持つようになっていった。ほとんどの人と違う方法で私が物事に取り組んでいるらしいのはなぜだろうか。なぜある種の論理の飛躍が私には早く来るのか。なぜ私の考え方が他の人を混乱させることが多いのか。なぜ私の脳はそういう働き方をするのか。一言でいうと、なぜ私は私らしくあったのか。
自分自身を理解するための取り組みは、通常の成長過程だと信じている。私は創造的な男なので、私は何が想像力を働かせるのかをよく知りたいと考えた。私は、まさに踏み込もうとしているスズメバチの巣についてほとんど何も知らなかったのだ。周知の通り、創造性は何年もに渡って大勢を魅了してきた主題の1つだが、完全に解明されたことがあるものではない。実際、その正反対のことが起こっていると思っている。創造性について考える人が増えれば増えるほど、その答えはゆらぎを増していくように思えるのだ。
この主題は、想像しうるありとあらゆる角度から取り組まれてきている。心理学者、化学者、芸術家、ビジネスマン、哲学者……列記すればきりがない。話題にする誰もがこれを重要な性質だと思っているようだが、正確に何がその原因なのか、それどころかそれが厳密に何なのかということは常に議論されている。大まかな合意はいくつかあるが、すぐにそれにかかるとしよう。
私の心を作り上げる
主題に飛び込む前に、どのようにして創造性が好奇心から私の情熱の主題になったのかを説明したい。以前に記事で語ったことがあるが(Life Lessons, Part I(リンク先は英語)が代表的である)、私は、変わっていてしかも非常に強情だったことが主な原因で、少々荒れた子供時代を送っていた。(それは何も変わっていない。私は単に、それをポジティブに考える人々と一緒にいることを学んだだけである。)子供時代に私を孤立させていたものの1つに、私が他の子供たちと非常に明らかに違う振る舞いをするということがあった。
私は自分の創造性を素晴らしいものだと思っているが、子供のころはそれには副作用があった。他の子供から見て、私は奇妙だと思われたのだ。私がただ物事を違う考え方をしていただけだということは明らかだった。そして子供としては、違うということはその社会的立場を強めるものではない。私は変わっていることを気にしたことはなかったが(実際はとても楽しんでいた)、仲間はずれにされるのは楽しい経験ではありえない。特に、自由参加の「蝿の王」のような子供時代においては。
私が創造性を理解したいという情熱の大部分、そして自分自身の創造性を理解したいという情熱はの大部分は、私がなぜ私の考え方をするのかを理解する探求なのだろうと思っている。究極的には、私を創造性全般についてよく理解したいと思わせているのは、私自身の創造性に対する私の理解だったのだ。さまざまな専門家の手による多くの本を読んで、私は、創造性を研究した人々はそれぞれの視点から取り組んだということに気がついた。これによっていくつかの普遍的真実(繰り返すが、これについては後ほど)にたどり着いてはいるが、それによって多くの矛盾が生まれていた。
その時、私は流行に飛び乗ることを思いついたのだ。私自身の視点から、創造性を調査するのはどうだろうか。なぜどのように私が創造的であるかを突き止め、広い目で創造性を理解するためにその洞察を用いるのはどうだろうか。
なぜ、ああ、なぜ
私はまず単純な質問から始めた。人々は常々私のことを創造的だと言ってきていた。それは一体どういう意味だろうか。その反応を招いた私の行動は何だろうか。さらなる研究を経て、私は、私がいくつかのことのうち1つをしたときに人々から「創造的」という言葉を使われたとわかった。
- 私が独創的なアイデアを出したとき。つまり、他の人が聞いたこともない何かを私が考えついたとき。
- 私が想像にふけっていたとき。つまり、新しいものでなくても普通でない方法で使われるコンセプトを思いついたとき。
- 私が問題解決に長けていたとき。つまり、私が問題に対して素早く独特の解決策を見つけたとき。
- 私が新しいアイデアの使い方をたくさん見つけるのに長けていたとき。つまり、新しいコンセプトを活用するために普通より多くの方法を見つけたとき。
この4つの分類を検証して、私はこれらに共通の土壌があることに気がついた。どの場合にも、私は、外部から見て当たり前には見えない方法でアイデアを使っているのだ。そのアイデアに関する何かが新しいのだ。定義1では、そのアイデアが新しく見えた。定義2では、そのアイデアの実装が新しかった。定義3では、そのアイデアの適用が新しかった。定義4では、そのアイデアの量が新しかった。
よし。私が創造的なのは、私が定期的に新しいアイデアを作り出し実行する能力があるからなのだ。このことから、次の大きな疑問に繋がった。なぜか。なぜ私はそれができるのか。
基本を論じる
ここで私は調査に戻った。私は、自分自身の結論を導くために、他人が考えていることをはっきり把握したかったのだ。どのような属性が創造性につながるのかをそれぞれに仮定した、様々な理論が存在していた。大量に読んだ後、私は、多くの不一致はあるものの調査の大半が同意できている点もいくつか存在するという結論にたどり着いた。それは以下の通りである。
#1 ― 創造性は知性と結びついている。
このつながりは一方通行である。知性ある人々がすべて創造的なわけではないが、強い創造的特徴を示す人の大多数は高い知性を示している。
#2 ― 創造性はその持ち主が知覚するものではない。
これはつまり、創造的な人々はその想像の過程について自覚的でない傾向があるということである。アーティストに、どのようにアイデアをそういう形で表現できるのかを聞いたら、そのアーティストは大抵の場合、「それがいいと感じたから」というような答えを返すものだ。ユング説信奉者諸君、これはつまり、ほとんどの創造的な人々は思索的と言うよりも直感的な傾向があるということである。(ユング説に詳しくない諸君に言うなら、彼らは頭よりも心に従う傾向がある、ということである。)
#3 ― 創造性には山や谷があることが多い。
創造性は同じレベルに保たれるわけではない。創造的な人々は、その創造性が高まったり落ちたりするサイクルを経ていることが多い。調査の結果、創造的な人々はそれをいくらか操作できるが、その高低はほとんど意識では制御できないとわかった。
#4 ― 創造性は精神状態に何らかの関連を持つ。
創造的な人々は特定の心理状態に置いてもっとも創造的になる。このもっとも興味深い部分は、人によってどの精神状態で一番創造的になるかが異なるということである。例えば、アーティストの中には不幸なときに最高の働きを見せるものもいれば、平和な雰囲気を必要とするものもいる。共通項は、それぞれ個別の特定の状態が、最も創造的な出力を生むということである。
#5 ― 創造性は使用によって強めることができる。
創造性の強さをもっともよく示しているのは、その創造的な人がどれほどそれを使っているかである。一言で言えば、そこには使用によって強化される「筋肉」のようなものがあるのだ。
この調査は、2つの重要なことを行なっている。1つ目に、私はそれに繋がりを感じた。5つの結論それぞれがはっきり私に響いたのだ。そして2つ目に、これによって私は私の創造力の使い方を学ぶための始点を手に入れた。
内省
諸君の中に、自分がどのように考えているかを研究しようとした者がいるかどうかは知らないが、考えたことがないなら私の話に耳を傾けてほしい。非常に難しいことなのだ。なぜか。なぜなら、自分がすべて知っていることだからである。自分が考える方法以外のやり方で考えたことはないものなので、それが唯一の考える方法だと感じているのだ。私は、他人が考える方法を理解しようとすることに時間を費やしたことがあるが、しかし、これも同じく、基準となる枠組みがなければ理解するのは難しかった。最後に、私は手がかりを掴む方法を見つけたのだ。私は、私の考える方法が他人を混乱させるときのことを考えた。
一番よくあった例を挙げよう。私は、意識の流れのまま話すことが多い。基本的に、私は、考えている間にその考えていることについて語る。私がそうすると、話している相手を混乱させることはよくあることだ。なぜか。なぜなら、私が無秩序に様々な主題を飛び回るように見えるからである。話がまったく繋がっていないから会話についていくのが非常に難しい、と言われたことがある。これが発生した場合、私はよく立ち止まって会話仲間に私の脳内でのAからBまでの繋がりについて解説する。その繋がりをゆっくりと説明すれば、大抵相手は私の考え方に着いてくる。しかし、必ず、そうして説明してくれなければついていけない、と言うのだ。通常の速度で、繋がりの一部を明示しなかった場合、私の考え方を理解するのは文字通り不可能なのだ。
もう1つよく私が遭遇している問題が、誰かと議論していて、途中で私と相手の論じているものが違うと気づいたときのことである。私は、彼らが意図しているものと完全に違うものを読み取っているのだ。興味深いことは、その誤伝達は同じ文章を聞いている中で生じることが多いということである。綿足はどうやら、隠された解釈を見つけてしまう癖があるようなのだ。
このことが、高校時代に私が抱えていたもう1つの奇妙な問題に繋がるのだ。私はいつも、非常におしゃべりだった。私は言葉に非常に熟達している。私は比喩が大好きだ。しかし私はSATs(アメリカで大学に入るために必要な標準試験)の勉強をしていたときに大問題に直面した。試験の口頭試問分野で、相似性が使われていた。つまり、AとBの関係はCとDの関係と同じである、というものだ。(子猫と猫の関係は子犬と犬の関係と同じである。)問題というのは、その相似性を見つけられないというものではなかった。問題だったのは、私が、それぞれの回答と、設問中の単語との関連を見つけたことだったのだ。私にとってこの質問は、関連を見つけることではなく出題者がどの関連を見つけさせたいかを見つけることだったのだ。
これらの異なる相互関係を学ぶうちに、私は私の考え方がどう変わっているかを掴み始めた。そしてそこから、私はなぜ自分が創造的なのかを掴み始めることになったのだ。もちろん、それは今日の主題である、私が考える創造性とは、という内容に繋がっていく。
失われた繋がり
この章を始めるに当たって強調しておきたいのは、これから述べる内容は私自身の創造性に基づいた創造性に関する仮設であるということである。さまざまな種類の創造性が存在し、私は私自身のものだけに基づいて広げているということは非常に考えられることだ。それでも、私は、創造性には下敷きとなる1つの基本的な理念がある、という大胆な(それほど謙遜ではない)仮定を立てていく。これは私の理論であり、私はそれにこだわるのだ。
諸君が本質まで煮詰めたとき、創造性は他人が見ないような繋がりを見つけ出す能力という足跡から得られるに違いない。何年もに渡る私の研究から、私は創造性を突き詰めると1つの基本的な技術になると信じるに到った。私の理論は次のようなものだ。人間の脳は情報を吸収することには優秀だが、人々はそれらの情報をぶつ切りにする傾向がある。つまり、Aというものについて学んだときそれは脳内の箱Aに入り、Bというものについて学んだとき、それは脳内の箱Bに入る。ただし、脳がこの箱Aと箱Bを別物だと考えているので、それらは決して混じり合うことはない。
創造性とは、箱Aと箱Bを組み合わせる能力だと私は考えている。箱Aが箱Bに、またその逆に、どのように意味を持ちうるかを見る技術なのだ。私の理論では、創造性とは新しいアイデアをでっち上げることではない。創造性とは、思考を最適化し、過去のアイデアの組み合わせから新しいアイデアを作り出せるようにする方法だと考えているのだ。
これはさまざまな方法で使うことができる。これは、新しいものを作るために2つのものを組み合わせる方法を見つけることかもしれない。(チョコレートとピーナツバターのように。)これは、ある場所で学んだ教訓を他の場所で適用することかもしれない。(後述する。)これは、あるものの見方を他のものに当てはめ、それに新しい光を当てられるようにすることかもしれない。その繋がりがどう使われるものであれ、その繋がりを最初の場所で見出した人から生じるものなのだ。
そこから誰もそれまで思いつかなかったことをそこから考え出す、私が「青天井の思考」と呼んでいるものはどうだろうか。私の答えは、ほとんどの「新しい」アイデアは実際に新しいわけではないと考えているということである。人間という種族は長い間存在している。ほとんどのコンセプトは誰かが偶然発見したことがあるのだ。(それと同じように、私の中のライターはほとんどの物語の元型はすでに誰かが思いついているものだと考えている。)ほとんどの「新しい」アイデアとは、古いアイデアを組み合わせる興味深い方法を見つけ出すことだと言えるだろう。本当に独自の考えというものも存在するが、それは非常に稀で、私の創造性の理論から言えば特別な例外なのだ。
私の理論の最も価値あるところは2つある。1つ目に、もし自分で創造性とは何かという考えがあれば、それを高めていくのは簡単になるということ。た私が自分の理論を思いついた時点で、綿k師は「創造力の筋肉」を育てる方法として以下の訓練を試した。2つのものを無作為に選ぶ。それらの間の繋がりを探す。これによって、この理論の2つ目の恩恵に繋がるのだ。私の理論が正しければ、つまり私はそう確信しているということだが、創造性は技術であり、手をかけて育てることができるものであり、意識することで誰でも創造性を高めることができるのだ。確かに、自然に創造性を備えている脳を持つ人もいて、その人たちには簡単なことではあるが、しかし私は誰でもこの技術を身に着け、手をかけて改善していくことができると信じている。なぜそう信じているのか。なぜなら、この仮説に到るまでに、私はこの技術に懸命に手をかけてきており、そしてそのおかげで創造性を高めることができたと信じているからである。
もちろん、このことから次の、複数のものの間の繋がりを見つけることがどうして技術なのか、という質問が生まれてくる。その能力を持っているかいないかのどちらかではないのか、と。私は、誰もがその能力を持っていると信じている。(確かに、その能力の優劣は存在する。)多くの人々が繋がりを見つけない理由は、そうできないからではなく、わざわざそうしないからなのだ。
私は記事の中で何度も、私のお気に入りの本はロジャー・フォン・イークの「頭にガツンと一撃」という創造性に関する本だという話をしてきた。(「ロザンヌ」のライターをしていた期間の話と同じくお約束になりそうなほどに。)その本の主な論点は、人々は10個の心理的な鍵によって自ら創造性を封じている、つまり、考え方によって自ら創造的になることを拒んでいる、というものである。これはまさに私の論点とも通じる。人々が創造的にならないのは、いつどのように繋がりを見出すかを学ぶことに時間を掛けないからなのだ。
今日の記事では、ここから、創造性を高めるためにできることを説明していこう。これから紹介するのは、
もっと創造的になるためにできる10個のこと
#10 ― 「頭にガツンと一撃」を手に入れて読む。
真面目な話、創造性を高めるということにわずかでも興味があるなら、この本を読まなければならない。(これには「眠れる心を一蹴り」という続編がある。これは本書ほどではないが、それでも読む価値は充分にある。)私は創造性に関する本を大量に読んできており、そして私の意見として、創造性を高めるための実践的アドバイスにおいて「頭にガツンと一撃」に比肩するような本はなかった。よく書かれた本で、読んで楽しく、そして著者による長年のビジネス創造性セミナーを通じて作られた素晴らしい実例が記載されているのだ。私はこの本の販売に投資してはいない。私がこの本を称賛しているのは、この本ほどに私に影響を与えた本はほとんどないからである。私を信じて、読んでみてくれたまえ。
#9 ― ゲームをプレイする。
ああ、これは(少なくともこの記事の読者諸君にとって)ただ同然の話だ。ゲームは、通常は決して行かない場所に行くことを求めるから、素晴らしいのだ。ゲームは、諸君を安全地帯から押し出してくれる。最高のゲームは、それまでに日常としていたことを再評価させてくれる。(この点においてマジックは非常に良い。)物事を新しい視点から評価させ、問題を解決させてくるのだ。一言で言うなら、ゲームは、創造的に考えるために必要な多くの技術を試してくれる、ということである。
#8 ― パズルをする。
多くの人々はゲームとパズルをまとめて考えるが、実のところそれらは根本的に異なっている。ゲームはプレイヤーを別の方向に向かわせ、お互いに違う始点で考えることを推奨する。一方、パズルは、すべてのユーザーを同じ方向に向かわせる。パズルは(そのほとんどの場合)答えは1つだけだ。パズルに挑む全員が、同じ場所にたどり着き同じ答えを得ることになる。パズルが創造性を高めるのにいい理由は、その本質的に、人々に心理的な行き詰まりを打ち破ることを求めるものであることが多いからである。最高のパズルには、明らかなものではなくそのパズルについて持っている常識を再評価することで到達できる答えがあるものなのだ。
#7 ― 読書をする。(特にノンフィクション)
性質が完全に異なるものとものの繋がりを見つけるには、まず、そのそれぞれのものについて学ばなければならない。例えば、科学における多くのブレイクスルーは、科学者がある研究から他の研究に移るときに生まれている。彼らは前の研究についての常識を踏まえて新しい研究に入る。つまり、彼らは新しい問題に前の問題の考え方で着手するということである。これによって、現在の集団思考に覆われた科学者には見つけられないつながりを見つけることができるのだ。直面している問題に新しい洞察が必要だ。それなら、他の誰かがまったく違う問題をどう解決したかを学ぶべきである。それによって、今直面している問題に新しい視点から取り組むことができるようになるだろう。
#6 ― 他者と話す。
これは前のものの延長上にある話だ。知識があれば、より広い思考の間でつなぐことができるようになる。ここで「他者」というのは、いつも話をしている相手のことではない。時間を取って、普段話さないであろう人々と話すのだ。普段一緒に行動する人々は、諸君自身と非常に近いことが多い。違う視点を必要とするなら、時間を取って、自分のグループに来ない人々と話すことである。そしてその場合、質問をすることを恐れてはならない。ほとんどの人間は、自分について、そして自分の知っていることについて話すのが好きなものだ。最後に、時間を取って子どもたちと話すことだ。子供たちほど正直に話してくれる人はいないし、彼らの視点は大人とは根本的に異なっている。子供たちは非常に純粋に世界を感じており、大人が無視するようになっていることを指摘してくれることが多いのだ。
#5 ― 既知を検証する。
ものがお互いにどう関係するのかを理解する上での素晴らしい練習は、既知のものがどうしてそうなったのかを検証することである。例えば、なぜフォークとスプーンとナイフがカトラリーの基本3種になったのか。それらが持つどの機能によって、それらはその圧倒性を得たのか。アイスクリームのコーンはどうしてできたのか。それは、どんな存在していた問題を解決したのか。椅子はなぜそうなったのか。これがなぜこの課題を達成するための最も単純な方法なのか。ここで学ぶことは、読むことや話すことで学んだことが多ければ、身の回りにある世界を検証し、それがそうなったことを理解するのに時間をかけるだけで多くのことに気づくことができるということである。
#4 ― 実行を評価する。
諸君は、私が創造的だと言われる原因となった4つの行為を列記したことを覚えているだろうか。最後の1つは、単一の解決策を実行する多くの方法を見つける能力だった。創造力を、大局を解決するだけのものだと考えるのは非常によくある話だ。創造性の大部分は、小さな問題にあらゆる答えを見つけることである。今度、何か創造的だと感じるものに出会ったとき、そこで行なわれていたあらゆる小さな選択を検証するために時間をかけることだ。そうすると、もっとも小さな選択が、もっとも創造的であることがよくある。例えば、アーロン(・フォーサイス/Aaron Forsythe)と彼の妻のアン/Anneに長女が生まれたとき、私の妻と私は彼らにベビー用品を贈るパーティーを開いた。彼らに選んでもらったテーマは、夏だった。彼らが我が家に来たとき目にしたのは、人工芝を敷き詰めた上に巨大なピクニックシートとかごを置いたファミリー・ルームだった。誰かがその準備を非常に創造的だと言った。その声に、そのパーティに参加していたランディ(・ビューラー/Randy Buehler)は「一番すごいのはピクニックじゃなく、この芝に小さな玩具の蟻が大量にいることだ」と応えたのだった。
#3 ― 自分の中にあるものを変える力を仮定する。
先に、人々が創造的であることを妨げている一番の存在は挑戦の欠如だ、と言った。問題を自分の問題だと認識しなければ、それを解決することはありえない。自分が原因でなくても、問題を解決する存在にはなれるということを覚えておくことだ。加えて、自分の行動が何らかの影響を及ぼすだろうという心構えで問題に取り組むことだ。解決策を見つけるためにはその心構えでなければならない。そうしなければ、解決する助けになろうとすることで傷つくことはまずありえない。
#2 ― すべての問題に答えがあると仮定する。
人々がもっとも創造的になるのはどんなときか。必要に迫られたときである。映画「アポロ13」で私が好きなシーンの1つが、宇宙船に問題が生じて部屋いっぱいの科学者が宇宙飛行士が使える方法を提示され、この問題を数時間のうちに解決しなければ宇宙飛行士は死ぬ、と伝えられるところだ。それはなぜか。彼らが答えを見つけるからだ。なぜか。彼らが、失敗することを選択肢に入れていないからである。この教訓は、創造的思考において必須である。自分に答えを見つけることを強要するなら、見つけるだろう。状況が悪化したときに諦めることを自分に認めてしまえば、見つけることはないだろう。
#1 ― 無作為性を問題解決の道具として使う。
私は創造的思考についての多くの本を読んできた。そして私が学んだのは、最後には同じアドバイスをくれる(表面的には違っていても)ということだった。創造的であるための鍵は、無作為性を道具として使う方法を知ることである。それは一体どういうことか。私は、創造性は他の誰も間に関連性を見いださないものの間に繋がりを見つけ出せるようになることからくると断言する。それらの繋がりはどのように見つけるのか。あると決めつけるのだ。自分の手で繋がりを見つけるのだ。私がより創造的になろうとするときに使う素晴らしい技法が、何か無作為なものを取り組んでいる問題に関連付けることである。例えば、私が新しいカードをデザインしようとして悩んだとき、私は自分に無作為な課題を課すことにしている。ドーナツを元にしたカードをデザインする。文章に「e」を含まないカードをデザインする。モナ・リザをアートとして使って成立するようなカードをデザインする。これは私に、それまで持っていなかった観点からその問題に取り組むことを強要するのだ。すべての解決策が最高のものではないにせよ、その問題について全く新しい方法で考えることができるようになるのである。#2を忘れずに。
考えは思考の経路
これが今日ここに来て読みたいと思ったものではなかっただろうが、それでも楽しんでもらえていれば幸いである。この記事は、人々が私があることをするだろうと思っているときに、私が他のことをすることが多いということをいくつもの意味で示している。この内容は、私がずっと書きたいと思っていたものだ。そして「Making Magic -マジック開発秘話-」のような記事を持つことの喜びの1つは、こういう内容を書く機会があるということである。諸君からの(肯定的であれ否定的であれ)感想を楽しみにしている。こういう記事は好きだろうか。(書くのは好きだ。)単純なイエス、ノーだけではない答えを聞かせてほしい。メール、各ソーシャルメディア(Twitter、Tumblr、Instagram、TikTok)で(英語で)聞かせてくれたまえ。
その日まで、あなた自身の情熱の主題をあなた自身が受け入れますように。
(Tr. YONEMURA "Pao" Kaoru)
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