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開発秘話

Making Magic -マジック開発秘話-

こぼれ話:『イコリア』

Mark Rosewater
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2020年5月11日


 

 「Making Magic -マジック開発秘話-」の慣習として、新セットに関する諸君からの質問に答える一問一答記事を各セット1~2回書いている。今回は、『イコリア:巨獣の棲処』について語ろう。

 私のツイートは次の通り。

諸君からの『イコリア:巨獣の棲処』に関する質問に答える記事を書く時期がやってきた。質問は1ツイート1問でよろしく。 #WotCStaff

 いつもの通り、可能な限り多くの質問に答えようと思うが、以下のような理由によって答えられないこともある。

  • 文章量の都合で、答えられる質問の数には限界がある。
  • すでに同じ質問に答えている場合がある。最初に来た質問に答えるのが通例である。
  • 私が答えを知らない質問もあるし、正しく答える資格がないと思われる質問もある。
  • 将来のセットのプレビューになるなど、さまざまな理由で回答できない話題もある。

 それでは始めよう。

Q: 『イコリア』のティーザーの答え合わせをする記事を書く予定はありますか?

 『イコリア』のプレビューよりも前に、私は、『イコリア』のカードについての部分的な情報を出し、昔のDuelist誌と同じようなティーザーをオンラインで行なった。私が示したティーザーとそのカードは次の通りだった。

Q: 人間はなぜ変容しないんですか?

 これほど多くの世界を舞台としたゲームを作る上での課題の1つが、世界と世界の違いを注意深く描写しなければならないということである。注意深くなければ、世界同士のテーマが重複し、世界同士が混じり合って、独自の世界だと感じさせられなくなってしまうのだ。我々が人間を変容できないとした大きな理由がこれである。衆知の通り、イコリアはマジック史上初の怪物の世界というわけではない。マジックにはすでに怪物の世界であるイニストラードが存在している。イニストラードもイコリア同様、その元ネタの多くは映画であり、変身を扱っていた。イニストラードとイコリアを区別するために選んだ描写の1つが、イニストラードの怪物は人間から変化したものであり、イコリアの怪物は人間以外から変化したものである、ということだったのだ。吸血鬼、ゾンビ、人狼、幽霊、これらはどれも、もともと人間だった。イコリアの怪物は人間だったことはない。これが理由である。

Q: 変容メカニズム大好きです。他の製品で再登場する可能性はありますか?

 変容は非常に複雑なメカニズムである。つまり、入れるセットではかなりの準備が必要となる。将来、もっと複雑さレベルが高くて過去のメカニズムを使う、そう、『モダンホライゾン』のようなサプリメント・セットなら採用を検討する可能性はある。イコリアを再訪することになれば、変容が再録される可能性はかなり高いだろう。この2つを除いては、他のセットに入る可能性は今のところ低いだろうが、大成功を収めれば再検討することになるかもしれない。

Q: このセットの複雑さが高くなりすぎないようにどのような方法を取りましたか?(まだあまりプレイしてはいませんが、変容などはかなりマジックを複雑にしているような気がします。)

 展望デザインからプレイデザインまで、我々は変容が比較的複雑なメカニズムだということをかなり意識していた。我々は3つのことに注目していた。1つ目、どれだけ楽しいか。2つ目、どれだけフレイバーに富んでいるか。3つ目、どれだけ直感的か。このメカニズムには奇妙なコーナーケースが大量に存在するということがわかっていたが、プレイテストを重ねて、このメカニズムはこのセットに多くのものをもたらすと感じたので残すことに決めたのだ。そのためには、特にリミテッドで、生み出される複雑さを減らすためにそれ以外のものにさらに注意を払う必要があった。このセットの複雑さのさらなる問題について、今後の記事で扱う予定である。

Q: 《Grusilda, Monster Masher》は変容についてどう思ってるんですか?

 グルシルダは変容の大ファンだ。実際、変容は「結合されている」クリーチャーの一種であり、グルシルダによって変容クリーチャーは威迫を持つ。

Q: 『イコリア』のボックス購入特典やボックストッパーは一体何なんですか?よくわからないんです……。

 この説明でわかるだろうか。ゴジラシリーズ・プロモカードは19種類ある。それらはそれぞれ、『イコリア』のクリーチャーの、ゴジラの世界のキャラクターを取り上げた別アート版カードである。どうすれば手に入れられるかという点から、これらを3種類に分類できる。

その1(1枚):

 《怪獣王、ゴジラ》は『イコリア:巨獣の棲処』のボックス購入特典プロモである。このカードのフォイル版は、ボックス購入特典でしか存在しない。《怪獣王、ゴジラ》はこの後説明するボックストッパーには入っていないが、『イコリア』コレクター・ブースターには非フォイル版が入っている可能性がある。非フォイル版の《怪獣王、ゴジラ》は、『イコリア』コレクター・ブースターでしか手に入らない。《怪獣王、ゴジラ》は19枚の中で唯一、『イコリア』のセット内に『イコリア』版が存在していないカードでもある。ゴジラシリーズでない名前(《力の具現、ジローサ》)はあるが、このカードのその版はまだ印刷されていない。

その2(15枚):

 これら15枚のカードは、プロモーションを行なっている全言語に存在している。日本語以外の『イコリア』製品では、これらのカードはボックストッパーになっている。ドラフト・ブースターの各ボックスに1枚ずつ、ボックストッパー・パックに封入されている。ボックストッパーでは、これらのカードはフォイル版である。これらの15枚については、該当する言語のコレクター・ブースターに、フォイル版や非フォイル版が入っている可能性もある。

その3(3枚):

 19枚のゴジラシリーズ・カードのうち3枚は、日本語版しか存在しておらず、日本語版『イコリア』製品にしか入っていない。(これら3枚については、最初、英語版やフランス語版の『イコリア』コレクター・ブースターにも入る予定だったが、残念ながら内部の手違いで入らなかったのだ。)日本語版製品では、その2やその3のカードは、フォイル版でボックストッパーに入っている可能性があり、 ドラフト・ブースターでは12パックに1枚非フォイル版のゴジラシリーズ・カードが、60パックに1枚フォイル版のゴジラシリーズ・カードが入っている可能性がある。また、日本語版『イコリア』コレクター・ブースターには、フォイル版、非フォイル版とも入っている可能性がある。

Q: ジローサの非ゴジラ版が印刷される可能性はありますか?

 アートは存在しているので、いつか印刷される可能性は非常に高いと答えておこう。

Q: ゴジラの怪獣に合わせて特に作られたカードはありますか? あるいは、怪獣があって、それを元にカードを作ったんですか? ゴジラシリーズと関係なく、巨大な神話の蛾を作ったというのは信じがたいです。

 残念ながら、このプロモーションが決まったのはセットデザインの後期だったのでゴジラシリーズ版に合わせてカードをデザインすることはできなかった。セット内の既存のカードから選ぶしかなかったのだ。たまたま完璧にピッタリだったものもあれば調整できたものもあったが、トップダウンでデザインできていた場合に比べて理想的とは言えないカードもあった。ただし、もともとのファイルに巨大な蛾は存在していたのだ。

Q: 怪物のアートや名前が、ゴジラシリーズのアートや名前しか存在しない可能性はありましたか?あと、リスをもっと具体的にサポートしてください。

 ゴジラシリーズ・プロモーションについては、プレイヤーが望むなら使えるものではあるが、使わなければならないものではない(現在唯一の例外が、ボックス購入特典の《怪獣王、ゴジラ》である)というものである。

 私は黒枠にさらなるリスを登場させるべく尽力している。

Q: どーうーやーっーてー、リスを復活させたんですかぁ!

 私はマジックにおいて(銀枠カードや昔のさまざまな黒枠カードなどを通して)リスを強く推進してきて、開発部内にリスに賛同する環境を助長してきたとは思うが、『イコリア』にリスを登場させたのは私が張本人ではない。ダグ・ベイヤー/Doug Beyerが成し遂げたのだ。衆知の通り、彼は飛行か先制攻撃を持つ必要があるクリーチャーのコンセプト付けをしていた。飛行を持つ可能性があるクリーチャーをデザインするのは難しいのだ。そこで、彼は滑空できるクリーチャーを考えた。そして思いついたものの1つがリスだったのだ。(訳注:ムササビは英語で「Flying squirrel」(飛行するリス)と言います。)リスを黒枠世界に復活させることについては(私だけではなく)多くの議論があり、ダグはこれを好機だと捉えたのだ。

Q: お気に入りの話題です、そう、リスです! 黒枠に復活したのは嬉しいことですが、緑や黒でなかったのは驚きでした。なぜ白になったんですか?

 上述の通り、このカードで重要だったのはリスであるということではなかった。このカードはリスとしてデザインされたわけではないので、色には誰も注目していなかったのだ。確かに、もしリスとしてカードを作っていたなら、おそらく緑(あるいは黒)だっただろう。リスを黒枠に戻すことに長年取り組んできた1人として、どのカードであってもリスであるのを見るのは嬉しいことだ。私はただ、人々が黒枠のリスをもっと受け入れるようになってほしいだけなのだ。これをいくらか当たり前のものにできたなら、緑の(そして黒の)リスを増やすことを約束しよう。

Q: 猟犬が変容して犬になることはできますか?

 この変更については文字通り20年以上戦ってきたので、私は関係者である。必要なのは、開発部の他のメンバーを納得させることだ。


 

Q: カウンター関連と変容を同じセットに入れる承認を得るのは難しかったですか?

 興味深いことに、展望デザインでは変容はキーワード・カウンターを使っていたので、私がこのセットを提出した時点ではそれらは相互に関連しており両方が存在する必要があった。セットデザイン中に、変容が変更になって不必要になったキーワード・カウンターをセットから取り除くことの議論はあった。しかしながら、このセットには、許容される複雑さを食いつぶす変容と一緒に採用する、フレイバーに富んでいてあまり複雑でないメカニズムが必要で、そしてキーワード・カウンターは「怪物を作る」テーマと相性がよく、物理的な負荷はあったものの複雑さは非常に低かったのだ。

Q: どうやって変容メカニズムを思いついたのかわかりますか? 『Unstable』の拡張メカニズムと関係ありますか?

 拡張メカニズムはあったが、それが変容メカニズムのもとになったわけではない。メカニズムを使って進化という概念を再現する方法を探していて、そのために必要だと感じたものをすべて書き出したのだ。

  • 変身
  • 進化前後の関連性
  • 強化されたという感じ
  • 時間をかけての向上

 その後、我々はこれに当てはまるあらゆるメカニズムを掘り下げていった。覇権、怪物化、変身、スレッショルド、Lvアップ、など。宿主/拡張もこの議論の中で出てきたが、それは過去にどのような方法でこういったことをしてきたかを検証する中の一部という意味が大きかったのだ。もっとも影響を与えたメカニズムは、おそらく、覇権だろう。前回、まさにこのデザイン空間を掘り下げたメカニズムだったのだ。しかし、ユーザー受けはそれほどよくなかったので、我々はもっと良い覇権の作り方を検証したのである。そうして変容ができたのだ。

Q: 相棒の評判がよかったとしたら、さらなる「追加デッキ」や「ゲームの外部」系効果がスタンダード・セットで使われることはありえますか?

 私のゲームデザイン上の標語の1つが、「成功は反復の母である」である。つまり、何かを行なってユーザーがそれを気に入ったなら、将来それと似たことをすることになる、ということだ。相棒はオンラインで非常に意見が分かれているメカニズムなので、実際にプレイしてみた結果プレイヤーがどう感じるかを知りたいと思っている。最終的に好評であれば、掘り下げることができる良い鉱脈があるということである。

Q: 相棒について不安はありますか?

 もう1つ、私のゲームデザイン上の標語には、「最大のリスクはリスクを取らないことである」というものがある。マジックを「マジック」たらしめているのは、常に変化と新しい挑戦を続ける動的なゲームだということである。すべてが成功するわけではないが、それは問題ではないのだ。マジックは、最終的に問題があるものを生き残らせることができる。マジックの歴史上、頭痛を引き起こしたものはいくつもあったのだ。それよりもずっと危険なことは、誰の心も躍らないようなセットを作ってしまうことである。誰もがすぐに忘れてしまうようなメカニズムよりも、賛否両論になるメカニズムを作るほうがずっといい。相棒が素晴らしいものになるのか最悪の失敗になるのか。私は、多くの人々が何回も実際にプレイして決めることだと考えている。また、我々は開発部内で何回もプレイしてきた。そしてとても楽しかった。良い可能性が大きいと我々が考えなかったなら、世に出してはいないのだ。

Q: 『イコリア』は大量の記録が必要で複雑なセットに見えます。アリーナの存在によって可能になった部分はありますか? 『イコリア』のデザインが、2年前のアリーナのベータ版の時期と重なることは注目に値すると思います。

 ある面ではあるし、ある面ではない。MTGアリーナはマジックの初心者の入り口として好評な2つのうち1つである。(もう1つは統率者戦だ。)そのため、初心者向けにものごとを和らげることができた。しかし、このセットで高い複雑さを試したのは、この世界に結びついた濃いフレイバーと、基本セットを除くとローテーション直前のセットであるという時期の影響のほうが強い。言い換えると、複雑なデザインに到ったのはその世界のフレイバーによるものであり、『イコリア』の時期を考えて試してみることにした、ということになる。上述の通り、この内容についてさらに掘り下げる記事を予定している。

今日はここまで

 今日の文字数制限に到達してしまったので、ここで終わらせなければならなくなった。質問を送ってくれた諸君に感謝しよう。いつもの通り、今日の記事や『イコリア』そのものについての諸君の反響を楽しみにしている。メール、各ソーシャルメディア(TwitterTumblrInstagramTikTok)で(英語で)聞かせてくれたまえ。

 それではまた次回、さらなる回答をする日にお会いしよう。

 その日まで、あなたが大勢の怪物を作り、使いますように。

(Tr. YONEMURA "Pao" Kaoru)

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