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開発秘話

Making Magic -マジック開発秘話-

ボーラス・シリーズ その2

Mark Rosewater
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2019年11月4日


 

 先週、ボーラス・シリーズ(『カラデシュ』から『灯争大戦』までの3年間連なった、エルダー・ドラゴンのプレインズウォーカーを敵役にした物語)がどのように成立したかという話を始めた。この先ではその続きの話をするので、先週の記事をまだ読んでいない諸君は、読み進める前に読んできてくれたまえ。

 我々の大きな会議では、新しい次元と再訪する次元の最有力候補についていくらか時間を費やして話し合った。昼食休憩に入るときには、ホワイトボードに以下のような内容が書き出されていた。

ブロック#1:カラデシュかイクサランかアモンケット
ブロック#2:カラデシュかイクサランかアモンケット
ブロック#3:カラデシュかイクサランかアモンケット
ブロック#4:ドミナリアへの再訪
ブロック#5:ラヴニカ(ギルド・ブロック)
ブロック#6:プレインズウォーカーの戦争(ラヴニカで)

 この当時は2-2モデル、つまり毎年2つのブロックがあり、それぞれのブロックは1つの次元を舞台にした大型セット1つと小型セット1つからなる、というものだったことを思い出してもらいたい。6つの次元は決まったが、それをどういう順番にするかはまだ決まっていなかった。午後の議論は、それぞれの舞台を見て、そしてそれぞれにクリエイティブ的、メカニズム的な見方があるようにすることだった。これが重要なのは、全体の計画を上層部に売り込む前に、それぞれの次元について自信を持てるようにしたかったからである。どういう順番で議論したかは覚えていないので、アルファベット順で話を進めよう。

アモンケット

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 もちろん、これはエジプト神話を元にしたトップダウン・セットになる。クリエイティブ・チームから、次のような問題が提起された。

  1. 『テーロス』を作ったのはそれほど古い話ではなく、この2セットの素材には神々などいくつもの要素が重複するので、これらが違うものだと感じられるようにしなければならない。
  2. エジプト神話は視覚的特徴が非常に強いが、先週語ったとおり、エジプト風の素材は明るく活き活きしたエジプトとカビ臭い死のエジプトの2つに分類され、そしてその両方を扱うことはできない。
  3. エジプト神話には砂漠の要素が多いが、それらは特徴がなくて見た目もそっくりである。次元の外見を興味深いものに保ったままで、それを組み込む方法はあるだろうか。

 

 うまくいきそうだと感じた唯一のアイデアは、この次元は主神となったボーラスが形作ったものだとするというものだった。ボーラスの要素を組み入れることは、この世界にマジックらしさをもたせる助けになる。メカニズム的には、私は、この世界のトップダウン要素に頼ることになると言った。おそらく部族でミイラ(ゾンビ)を扱い、エジプト神話の素材を扱うメカニズムを1~2個探すことになると思われた。ボーラスの世界にするというアイデアはこの次元にメカニズム的に再現できるような雰囲気をもたらす助けになると考え、気に入った。私の問題は、

  1. エジプト神話はギリシャ神話に比べて遥かに知名度が低い。私は、それをもとにしたトップダウンのカードの可能性が少ないのではないかと危惧していた。
  2. 何らかの形で砂漠を組み込まなければならないが、ゲームプレイ上の問題があるので《砂漠》を再録したくはなかった。
  3. 『テーロス』の神々にはいくつかの問題があった。神々らしさを保ったまま新しい神々に取り組む方法を見つけなければならなかった。

 

 全体として、我々はこの世界を成立させられるとかなり確信していた。

ドミナリア

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 通例、次元に関する問題はそこですべきことを充分な量見つけることである。ドミナリアには、それと正反対の問題があった。マジックの最初の10年はほとんどドミナリアを舞台にしていた。クリエイティブ的にもメカニズム的にも、かなりの量のものを象徴しているが、現代マジックの次元には単一の特徴が必要なのだ。単なる無関係なもののごった煮だという以外の方法で、ドミナリアを特別なものにしているものを描写する方法を見つけることはできるだろうか。それに加えて、クリエイティブ・チームの提示した問題はこうだった。

  1. 最後にドミナリアを訪れたとき(『時のらせん』ブロック)、ポストアポカリプスの悪夢にあった。気の滅入るような雰囲気で、ユーザーにも特に大好評というわけではなかった。希望に満ちた、陰鬱でない世界にする方法はあるだろうか。
  2. ドミナリアはあまりに広く、その世界に存在するとユーザーが知っているあらゆるものを登場させることはできない。注目するべきものは一体何なのか。
  3. 同様に、ドミナリアに関連する未解決の伏線が大量に存在している。今回の物語につなげるべきものはどれなのか。

 

 クリエイティブ・チームは、ほとんどの次元と違い、ドミナリアを再訪するのであればかなりの調査が必要になると指摘した。全体を整頓して組み合わせなければならない情報が大量に存在していたのだ。私の、メカニズム的問題はこうだった。

  1. ドミナリアはマジックの初期の舞台だったので、有用なメカニズム的要素はすでに掘った後である。つまり、懐かしさを支えるのは、メカニズムよりも個別のカード・デザインが主にならざるを得ない。
  2. 熱心なユーザーはドミナリアについて最も愛しているものを再訪することを望んでいるが、このセットにすべてを入れるのには多すぎる。入っていることを期待しているプレイヤーがいるものを除外することになる。
  3. デザインの雰囲気を、プレイヤーがドミナリアと関連付けている初期マジックに近づけるべきという圧力がある。マジックを進化させるために意図的に取り除いたものを、単に懐かしさのためだけに再び使いたくはない。この過ちを『時のらせん』でやってしまい、不利益が生じたのだ。

 

 実行するのは大きな挑戦になるということは全員がわかっていたが、マジック25周年の記念の年にマジックの始まりの次元を再訪するのはやらないわけにはいかないぐらいにクールだと思われた。

カラデシュ

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 カラデシュは『マジック・オリジン』で扱っていたので、この次元については少しだけ有利なスタートを切っていた。スチームパンクの明るい面を取り上げたものであることと、インドの雰囲気をまとっていることがわかっていた。クリエイティブ・チームは『マジック・オリジン』で追加のリソースを注ぎ、ブロック1つで扱うことができるような次元を作り上げていたのだ。

 大きな問題は、その舞台のメカニズム的な面だった。私は、『マジック・オリジン』のデザインのリードを務めたショーン・メイン/Shawn Mainと協力し、カラデシュを訪れるときに再訪できるようなメカニズム的特徴を選べるようにした。ショーンと私はアーティファクトを扱うことにしたので、これがアーティファクト中心のブロックになるということはわかっていた。アーティファクト中心のブロックは『ミラディンの傷跡』以来作っていなかったので、それを求める声があることはわかっていた。私が本当に把握していたアイデアは、発明に注目することだった。この次元は他のアーティファクトの世界よりも明るく楽しいものだとわかっていて、アーティファクトを使って基柱にできるような奇妙なことをするというジョニーらしさに少し寄せるというアイデアが気に入っていたのだ。私の提案は、さまざまな形で組み合わせられる部品による部品的性質を強めたものを作るというものだった。具体的にどう実装すればいいか確信してはいなかったが、デザインの起点として心躍らせるものだったのだ。

 クリエイティブとデザインの両方がはっきりした方針を持っていたので、最も自信がある次元の1つだった。

イクサラン

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 これは間違いなく一番質問の多い次元だった。ジェンナ・ヘランド/Jenna Hellandは(クリエイティブ・チームの他メンバーの協力を得て)設定を具体化するためにかなりのことをしたが、それでもなお解決すべき未知のことは大量にあったのだ。クリエイティブ・チームからの問題はこうだった。

  1. ナヤの断片で似たような素材をすでに使っている。イクサランには独自の雰囲気が必要で、ナヤのようなもの、ではないようにしなければならない。
  2. 吸血鬼に侵略されている大陸の原住民の外見について多くの疑問がある。
  3. この次元には対立が内包されているが、それと大きな物語はどう関連するのか。イクサランは多元宇宙とまったく無関係に思える。

 

 ただし、クリエイティブ・チームはこれらの問題すべてを解決できると感じていた。それよりも大きな問題は、私が、この世界がメカニズム的にやりたいことが何なのかまったくわかっていないということだった。トップダウン・デザインに役立つものでもなかったので、何か基柱になる構造的なものが必要だった。居場所がないメカニズム的アイデアについて話していたときに私が初期に提案したアイデアの1つに、リチャード・ガーフィールドが「Vampire: the Eternal Struggle」というトレーディングカードゲームのために作った「優勢/the edge」というメカニズムの再利用だった。それは、プレイヤーに追加の能力を与えるゲーム上の物品だったが、その物品を他のプレイヤーが盗むことができるのだ。ゲームプレイを通して奪い合うリソースというアイデアは魅力的だと考え、それの使い場所を探していたのだ。

 また、2勢力の対立としては最近『戦乱のゼンディカー』をやっていて、もう一度同じことを繰り返すのは面白くなかった。この2つのアイデアを組み合わせて、私は提案をまとめた。この次元に3つ目の陣営を加えて、優勢のようなメカニズムで描写される資源を、2陣営が戦うのではなく3陣営が奪い合うようにするのはどうだろうか。クリエイティブ・チームは、3つ目の陣営を加える方法を検討すると答えた。

 我々は、これでこの次元の準備は充分だと感じていた。そして、扱っている次元の中で、これの売り込みが最も難しいことになるだろうということには気づいていた。

ラヴニカ(ギルド・ブロック)

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 これを、ギルドのブロックとプレインズウォーカーの戦争のブロックの2つの部分に分けている。ギルドのブロックは、非常に直接的だった。『ラヴニカへの回帰』と『ギルド門侵犯』でやったことをして、(まったくうまくいかなかった)『ドラゴンの迷路』をしないだけだ。つまり、このブロックは大型小型ではなく大型大型という構造になることになる。ここには何も問題がないと皆が感じていた。(我々の中に、全体の構造がここに到るまでに変わるということを知っている者はほとんどいなかったのだ。)

 唯一新しいアイデアは、それによってニコル・ボーラスがラヴニカという次元に干渉しているという物語の一部を表すことができるというものだった。クリエイティブ・チームはボーラスがいくつかのギルドに影響を及ぼしていくという冷戦の雰囲気というアイデアを気に入った。

 これはギルドのブロックになるので、メカニズム的にどう実装するかはっきりしたアイデアがあった。話題にしたすべてのブロックの中で、これがもっともかかった時間が短かったブロックであった。我々は多くの課題を自ら課している。過去の繰り返し要素が強いブロックが1つあるのは問題ないと感じたのだ。コレで問題ないと、全員が確信していた。

ラヴニカ(プレインズウォーカーの戦争)

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 このブロックにはいくつか大きな課題があった。1つ目に、2ブロック連続で同じ世界に留まるということ。それを守らなければならない。2つ目に、これを、次元ではなくイベントを基柱にしたブロックとして売り込むということ。(私はこれを「イベント・ブロック」と呼んだ。)これは新しいアイデアなので、その厳密な意味を理解する必要があった。3つ目に、ラヴニカに関するブロックではないこのブロックで、どの程度のラヴニカ要素が必要なのか。これも見つけ出さなければならなかった。

 クリエイティブ・チームの最大の問題は、無作為なカードの中で連続性のある物語をどう描くかだった。これはかなりの挑戦だったが、彼らは取り組むことができると感じていた。

 メカニズム的には、私にもまた大きな問題があった。プレインズウォーカーの戦争を作ろうとしている。通常、ブロック内には、プレインズウォーカーは5枚だ。プレインズウォーカー3枚の大型セットか、プレインズウォーカー2枚の小型セットで、どうすればプレインズウォーカーの戦争を描くことができるだろうか。また、これがイベント・ブロックであるというアイデアをメカニズム的に売り込む必要があると感じていた。その意味すらわかっていなかったが、それを見つけ出すと誓ったのだ。

 すべてのブロックの中で、これはもっとも上層部に売り込むのが簡単だ(一言で売り込むと考えるととてもすごいものに聞こえるということだ)が、同時に、実装は最も難しいものの1つだろうと思われた。私の上司のアーロン・フォーサイス/Aaron Forsytheが、メカニズム的な意味で成功させられると思うかどうか聞いてきたのを覚えている。私は、「方法を見つけるさ」と答えたのだ。

 その後、この6つのブロックの順番について話し合いを始めた。最後の3つはもう決まっているので、アモンケット、カラデシュ、イクサランの順番をどうするかを決める必要があった。確か、一番手がかかると思われるイクサランを、作業時間を一番多く取れるように3番目に置いた。最終的にアモンケットを最初にしたのは、最初に熱狂的なファンがいるようなものを置くことでこのシリーズの立ち上げに景気をつけられると思ったからである。こうして、3年間のシリーズとして提示するものはこうなった。

ブロック#1:アモンケット
ブロック#2:カラデシュ
ブロック#3:イクサラン
ブロック#4:ドミナリアへの再訪
ブロック#5:ラヴニカ(ギルド・ブロック)
ブロック#6:プレインズウォーカーの戦争(ラヴニカで)

 長い1日だったが、こうしてシリーズをどうするかが決まったのだった。

なせばなる

 上層部への売り込みは非常にうまくいった。彼らが最もこだわったのは、イクサランとラヴニカのギルド・ブロックだった。イクサランの具体化に時間を掛けることを求め、そして1年間ラヴニカに残るように言った。我々は1つ目には同意したが、2つ目には反論した。我々は、ラヴニカを再訪するならギルド・ブロックをユーザーが期待するだろうということと、プレインズウォーカーの戦争をギルド・ブロックにすることができないということを確信していた。結局、我々は彼らの意見を変えて第5ブロックをラヴニカにすることの同意を取り付けた。

 そして、各ブロックを作る上で実際に起こったことは次のとおりである。

『アモンケット』
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 『アモンケット』ブロックについていくつかの疑問が浮かんだのは、先行デザインの途中(当時はこの工程に6か月かけていたので、およそ3か月ほど経った後)だった。まず、物語が出来上がり始めて、「彼の」次元でボーラスがゲートウォッチを破るほうが物語らしいと感じられたのだ。2つ目に、『イニストラードを覆う影』ブロックにはゾンビ部族と墓地メカニズムがあり、当時は同じようなテーマを持つ2つのブロックは分けるべきだと考えられていた。(当時、スタンダードは年2回ローテーションが起こるようにしていて、ブロックが増えると3つ前のブロックが落ちるという18か月間のスタンダードだった。)3つ目に、『戦乱のゼンディカー』と『イニストラードを覆う影』の両ブロックは厳しい雰囲気を漂わせていて、ボーラスの影響を受けたエジプト風の次元もまた、いくら明るいとは言ってもいくらか暗い雰囲気をまとうことになるのは明らかだった。対照的に、『カラデシュ』ブロックはずっと明るい雰囲気になり、『イニストラードを覆う影』ブロックの次としては良いものになる。

 こうして、先行デザインの中期に緊急決定し、『アモンケット』ブロックと『カラデシュ』ブロックの順番を入れ替えたのだった。

『カラデシュ』
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 こうして、『カラデシュ』ブロックの先行デザインはわずか3か月に短縮されて始まった。(興味深いことに、これは現在の期間と一致している。)しかし、エネルギーと機体の両方が作られたこの先行デザインは完全に成功した。(エネルギーはほとんどそのまま最終形になったが、機体はずっと未熟なものだった。)

 『カラデシュ』ブロックは、そのブロックのための、発明家の雰囲気を持つアーティファクト・テーマのブロックという基本的なアイデアを採用し、それを推し進めた。物語の起点にするための物語上の変化以外には、このブロックのアイデアは初期のものとそう変わらなかった。(発明博覧会というアイデアから、物語シリーズで重要な役割を果たすことになる、ボーラスが永遠衆の軍勢をラヴニカに運び込むために使う次元橋のアイデアにつながった。)

『アモンケット』ブロック(再挑戦)
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 3か月前に先行デザインを中断したところから再開した。クリエイティブ・チームは、この次元をボーラスが作ったものにすると確定していた。そこから、展望デザインはメカニズムとクリエイティブの不連続性を、不協和音を生み出すためにデザインするというアイデアに注目することになった。メカニズムはこの世界の残酷さとボーラスらしさを扱い、クリエイティブは明るく楽しいものとして描くのだ。ここから、-1/-1カウンターや督励のようなメカニズムにつながった。

 予想通り、展望デザインはもととなる素材の知名度が低かったのでトップダウンの個別カード・デザインに苦戦した。メカニズムを通して素材の再現に寄せ、その結果、不朽やミイラ(ゾンビ)部族、石材カウンターによるピラミッド、「砂漠関連」カードなどが生まれた。

 『カラデシュ』ブロック同様、『アモンケット』ブロックもほぼ予想通りの工程をたどることになった。雰囲気は予想していたよりも少し厳しいものになり、メカニズムは、振り返ってみると理想的と言うには複雑すぎるものになっていた。

『イクサラン』ブロック
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 最終的に、このブロックは、企画したものとは最もかけ離れたものになった。『イクサラン』の先行デザインを始める予定よりも数か月前に、ショーン・メイン/Shawn Mainは『コンスピラシー:王位争奪』で扱っていた統治者というメカニズムについて話しに来た。彼は、それが『イクサラン』ブロックのために私が確保していたまさにデザイン空間を扱っているということに気が付いたのだ。私は彼に、それの掘り下げを続けてもいいが、代わりのメカニズムを見つけておくべきだと伝えた。一方で私は、優勢メカニズムが2人戦でうまく作用するか確認するために、『イクサラン』の先行デザインを早めて始めた。(販売可能性などに基づいて)メインのスタンダード・セットはサプリメント・セットよりも優先されるので、うまく働けば、それを『イクサラン』のために確保する予定だった。それから6週間後に、我々は話し合った。

 先行デザインのプレイテストを行なって、このメカニズムは2人戦プレイでもうまく作用したので、私はショーンの元に赴き、統治者メカニズムを諦めるように告げた。ショーンは、他の良いメカニズムが見つからなかったと言い、どうしても統治者を使いたいと言ったのだ。これはアーロンに持ち込まれることになり、アーロンは『コンスピラシー:王位争奪』はもうデザインが終わっていて統治者メカニズムが必要だということでそのまま使うと決定した。私は、『イクサラン』のための他のものを決めるのに展望デザインのすべてを費やすことになった。

 展望デザインの工程に入ったとき、クリエイティブ・チームは私が求めていたことを終わらせ、この世界の第3陣営である海賊を作っていた。彼らはまた、原住民を具体化して恐竜を登場させた。私が展望デザインでこのセットに取り組んでいくと、このセットの最も魅力的な側面2つは海賊と恐竜であるということが明らかになっていった。どちらもそれまでにも存在していたが、どちらもデッキの基柱とするほどの数が存在したことはなかったのだ。それが、『イクサラン』ブロックで変わった。そして私は、『イクサラン』を部族ブロックにすることができると気づいたのだ。(『ローウィン』ブロック以来、大規模な部族ブロックは作っていなかった。)そのために、恐竜を新しくクリーチャー・タイプにして、4つ目の陣営を加える必要があった。私は、当時3色陣営2つと2色陣営2つの4陣営しか存在しなかった『タルキール覇王譚』のために作った4陣営モデルを使った。

 すべてのブロックの中で、これが最初の会議から一番かけ離れたものになった。吸血鬼の侵略者は存在しているが、この次元の他の要素が中央に建っており、メカニズム的には、我々が最初に売り込んだものとは完全に変わったのだった。

『ドミナリア』ブロック
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 『ドミナリア』ブロックは、我々が取り組んだ最大の課題だったかもしれない。(これでなければプレインズウォーカーの戦争のほうだ。)テーマとして歴史に焦点を当てるというアイデアを持って先行デザインを終えた。それをどのように成功させるかを決めるのは展望デザイン全体を使った。(そして、それでさえ、歴史的をセットに残すための私の戦いは1年以上続いたのだ。)クリエイティブ・チームは次元が再生しつつあるというアイデアに落ち着き、「現在が過去に因って定義される次元」を視覚的に編み込むクールな方法を見つけた。

 このパズルを解くための混沌の中で、我々はもう1つの問題点に直面した。開発部では、2-2モデルから3-1モデル(大型セット3つと基本セット1つ)に変更することが決まっていた。つまり、『ドミナリア』に続くべき小型セットが消滅し、基本セット(『基本セット2020』)に変わったのだ。我々は緊急で、小型セットの要素を大型セットに組み込み、他(騎士部族など)を放棄する必要があった。クリエイティブ・チームには『ドミナリア』ブロックの物語を1セットに圧縮するという、さらに大きいかもしれない任務があった。

 最終的に、我々は多大な作業を費やし、最初の会議で必要だと言ったほとんどの条件にぴったり合う、非常に誇りに思うものを作り上げたのだった。

『ラヴニカのギルド』ブロック
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 先行デザイン中に、私はアーロンのもとに赴いた。我々はギルドのモデルを変化させ、少し違う方法でする方法をいくつか思いついたのだ。それはしたいことだろうか。アーロンは否定した。次のブロックはかなり革新的なものになる。それなら、このブロックには実証済みのものにこだわるべきだ。既知で、安心できるものになる。それが、あまり革新しなかった理由である。誰もが知っているギルド・モデルを使った、フレイバーに富んだ楽しいセットを作ることだけに集中したのだ。

 このセットは、最初から大型セット2つで企画されていたので、新モデルへの移行はあまり影響せず、『ドミナリア』の問題も存在しなかった。すべての次元の中で、これが最初の会議での企画に一番近いものになった。

『灯争大戦』ブロック
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 『ドミナリア』同様、『灯争大戦』も最初は大型セット1つと小型セット1つとして始まった。その移行が起こったのは展望デザインの初期の間だったので、影響はいくらかあったが『ドミナリア』ほどではなかった。『灯争大戦』の大きな課題は、プレインズウォーカーの戦争を実現させることだった。展望デザインの前半(3か月)を費やして、この「イベント」のメカニズムを作ろうとした。通常のゲームの中でサブゲームを行ない、プレイしている間その戦争の影響が残るというアイデアだった。(このメカニズムは「衝突/skirmish」というもので、詳しくはこちらの記事で語っている。)最終的に、私は間違ったものに注目していると気付き、衝突を放棄してプレインズウォーカーで溢れたセットを作る方法を考えることにした。

 一方、クリエイティブ・チームは、セットを通して物語を伝える方法を見つけるためにかなりの時間を費やしていた。彼らは1日を3章に分け、そしてなにかが起こるのが物語上のいつなのかを伝える助けとしてその時刻を使ったのだ。彼らはまた、注目のストーリーのカードを、プレイヤーに順番を伝えるための方法として重視した。

 このセットの最終結果は、我々が最初に話し合ったものとそう遠く離れていないものになったが、『ドミナリア』同様、どうやって成功させるかを決めるための道のりは大きく異なっていた。

そしてこうなった

 初期企画会議を振り返るのは面白いものだ。いくつかのものを目指して、その途中でマジックに予想外の変更が起こり、最終的にできたものは最初の外部会議中に作ったものとかなり近いものになっている。ダグ/Dougとクリエイティブ・チームは物語を我々の選んだ次元を通して編み込む素晴らしい仕事をして、私はどの世界も異なるメカニズム的特徴を持ったと思う。

 私がデザインについて語る中で大きな観点からのこの振り返りを楽しんでもらえたなら幸いである。楽しんでくれたなら、また時季を見て次の複数年のシリーズについてこういう記事を書くことにしよう。いつもの通り、諸君からの反響を楽しみにしている。メール、各ソーシャルメディア(TwitterTumblrInstagram)で(英語で)聞かせてくれたまえ。

 それではまた次回、『エルドレインの王権』の展望デザインの文書の話を始める日にお会いしよう。

 その日まで、あなたの計画が計画したものと近い形に仕上がりますように。

(Tr. YONEMURA "Pao" Kaoru)

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