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Making Magic -マジック開発秘話-
どんな『基本』の話があるか その2
2019年7月8日
先週、『基本セット2020』の伝説のカードすべてについての話を始めた。半分までしか行かなかったので、これから後半に入ることにしよう。
《天頂の探求者、カーリア》
『基本セット2020』の目標の1つは、楔3色の伝説のクリーチャーのサイクルを作ることだった。これは、26年を経ても、諸君が想像するほどは掘り下げられていない領域なのだ。例えば、『基本セット2020』時点で、赤白黒の伝説のクリーチャーは8種しか存在しない。(しかも、これは他の楔よりも多いのだ。)『基本セット2020』では、その中の1人を新しいカード・デザインで再登場させることにした。赤白黒として選ばれたのは、カーリアだった。
カーリアは『統率者(2011年版)』に登場して、すぐに熱烈な支持層を得た。彼女はアラーラ世界のバント断片出身である。(『アラーラの断片』ブロックの3色クリーチャーに楔3色はいないので、このカードは『アラーラの断片』ブロック外で作られたということがわかる。)最初の彼女のカードは、{1}{R}{W}{B}で2/2の飛行クリーチャーで、天使かデーモンかドラゴンを、手札から攻撃していてタップしている状態で戦場に出すという攻撃誘発を持っていた。
チームは今回の新バージョンで、似た雰囲気で違うカードを作ることにしようと考えた。また、最初のバージョンとシナジーがあるようにしたいとも考えた。まず最初に、彼女の最初のカードの最も印象的な部分である、天使、デーモン、ドラゴンと関わりがなければならないのはわかっていた。最初のバージョンではそれらを手札から戦場に出していた。それなら、新バージョンがそれらをライブラリーから手札に入れる助けになるようにしたらどうだろうか。先週語ったとおり、開発部は、プレイの多様性を増やして切り直しを減らすため、教示者効果(自分のライブラリー全体からカードを持ってくる)よりも衝動効果(自分のライブラリーの一番上からN枚見る)を使うようになってきている。
この新能力は前の能力よりも弱いので、チームは彼女のコストを引き下げ(そうすることで彼女は天使やデーモンやドラゴンが必要になる前に手札に持ってくることができる)、スタッツを2/2から3/3にし、警戒を持たせる(もちろん飛行は持ったまま)ことができたのだ。
《隠された手、ケシス》
白黒緑の伝説のクリーチャーは赤白黒よりもさらに選択肢が少なく、わずか5種しか存在しなかった。デザイン・チームは、既存のキャラクターを再登場させるのではなく、新しいキャラクターを作ることに決めた。(おそらくは、デザイン・チームがクールなデザインを作ってから、それが既存のキャラクターに合うかどうかはクリエイティブ・チームに尋ねたが、選択肢の少なさから合うキャラクターはいないという返事が来たのだろうと思う。)
ケシスは、「伝説関連」と墓地という2つのテーマを重複させるべくデザインされている。白は「伝説関連」の最も濃い色で、黒と緑は最も墓地に注目している色である。また、白と黒は、クリーチャーを墓地から戻すことが最も多い2色でもある。このカードはおそらく最初、2つ目の能力から作られたのだと思われる。自分の墓地から特定の性質を持つカードを唱えることができるようにするものだが、そのためにはその同じ性質を持つカードをリソースとして使わなければならないのだ。これまでにもこの領域を扱ったことはあるが、伝説の呪文でそうしたことはない。
このカードを成立させるためには、大量の伝説の呪文をプレイしなければならない。このテーマを成立させるため、このカードにはもう1つ、それらのカードを唱えやすくする能力がある。コスト低減は、自分の墓地からカードをプレイするという2つ目の能力ともシナジーを持つ点でも優れている。全体として、指向性の強い基柱性を持つ楽しいカードになっている。
《風の憤怒、カイカ》
青赤白もまた、5種類しか選択肢が存在していなかった色の組み合わせである。白黒緑同様、オリジナルなキャラクターで行くという決定がなされた。ここで鍵となったのは、それぞれの色の能力を組み合わせ、全体として単一のクリーチャーだと感じられるようなものを作ることだった。3色のデザインを作る上で最大の課題の1つが、カード全体を単一の存在であると感じさせられるようにしながら各色に存在感を持たせることである。さらに、『基本セット2020』のデザイン・チームは、3色カードそれぞれをそれぞれの色のメカニズム的テーマを扱うものにしようと考えていたのだ。青赤白に関して言えば、そのテーマとは飛行であった。
カイカは最終的に、3つの要素を持つことになった。1つ目に、3/3の飛行クリーチャーであること。白と青は飛行の1種色である。2つ目に、クリーチャーでない呪文を唱えるたびに1/1の飛行を持つスピリットを生成する誘発型能力を持つこと。この誘発型能力は非常に青赤らしいものだ。その2色は呪文の比率が最も高い色であり、遠い昔からクリーチャーでない呪文が唱えられたことによって誘発する能力を持つ。例えば、果敢は何年もに渡って青赤に存在する常盤木能力であった。この2つ目の能力の賢い部分は、生成するクリーチャーが基本的に白のクリーチャーであることである。1/1の飛行を持つスピリットは、白の一般的なクリーチャー・トークンである。青赤の誘発と白の結果を組み合わせることで、各色の存在感を持たせながらカード全体として1つのことをしていると感じさせる助けとなっているのだ。
3つ目の能力もまた賢いデザインである。1/1の飛行を持つスピリットを生成するカードがある。その2つ目の能力と、誘発イベントと効果の両方で関連していると感じられるようにどうすればいいだろうか。答えは、他の、クリーチャーでない呪文を唱える助けになる効果を持ち、そのクリーチャー・トークンを(スピリットと書かれているので、そのトークンだけでなくデッキ内のスピリット・カードとも組み合わせることができる)生け贄に捧げることができる起動型能力である。赤が色として含まれているので、マナ生成を使うことができる。こうして生成されるマナは、この能力が赤のものであるということを強調するため、赤になっている。こうして、クリーチャーでない呪文によって、攻撃やブロックに使えるだけでなく以降の呪文のためのマナを生成することもできるリソースを生み出すことができるのだ。これは洗練されたデザインのカードである。
《空の踊り手、ムー・ヤンリン》
プレインズウォーカーを選ぶ上で、青単色には白単色とは逆に選択肢が多すぎるという問題があった。青単色のプレインズウォーカー・カードになっているプレインズウォーカーには、ジェイス、カズミナ、ナーセット、タミヨウ、テフェリー、テゼレット、ウィル、ヤンリン(中国人なので名前が後)がいる。カズミナはテヨや放浪者と同じ問題があり、ウィルはその双子であるローアンと結びついているが、他の全員が選択肢となりえた。ムー・ヤンリンを選んだのは、このセットにはエレメンタル・テーマが存在し、彼女は大気と水のエレメンタルを支配する能力を持っているからだろう。また、彼女が『灯争大戦』に登場していなかったのは、彼女をここに登場させるため、そして他の青のプレインズウォーカーを『灯争大戦』に出せるようにするためだったと思う。(我々は、カズミナを軽く紹介しておきたかったのだ。)
それでは大気と水の精霊魔法というのは、マジックのメカニズム的にはどういうことになるだろうか。彼女の最初のカードは、伝統的な青の基本的な能力(ブロックされない、カードを引く、追加のターンを得る)を扱っていた。これはおそらく、彼女がもともと中国限定の入門向け商品のためにデザインされたからだろう。(このプレインズウォーカー・カードは、その後『Global Series: Jiang Yanggu and Mu Yanling』を通して世界中で入手可能になった。)我々がプレインズウォーカーでやろうとしていることの中には、プレインズウォーカーがそれぞれに違うものだと感じられるように、メカニズム的空間を切り分けるというものがある。我々は、このカードで彼女を精霊魔法を使うとはっきり定義づけようと考えたのだ。
彼女の1つ目の能力は、大気の魔法を扱うものである。大気を操ることができれば、何ができるだろうか。攻撃の有効性に影響を与え、また、飛んでいるものを空から引き下ろすというのはどうだろうか。縮小(-N/-0)も、飛行を失わせることも、どちらも青系の効果である。あと必要なのは、攻撃クリーチャーすべてに影響を与えるように、その効果が次のあなたのターンまで残るようにすることだった。この能力はヤンリン自身をクリーチャーから守る助けになるので、優秀なプラス能力である。
2つ目の能力は、アジャニの2つ目の能力と同じように、クリーチャー・トークンを生成するものである。ヤンリンは大気を操るので、そのクリーチャー・トークンを大気の精霊にすることにした。彼女のフレイバーに合わせて、エレメンタル・鳥にしたのだろうと思われる。(ヤンリンとヤングーは中国の神話に関わるようにデザインされている。)
3つ目の能力である奥義は、水の精霊に関連するものにしようと考えられた。水のような能力のほとんど、例えばクリーチャーをタップするというようなものは、奥義にするにはやや平凡なものだった。そこでデザイン・チームが思いついたのは、島を何らかの形で意識することだった。クリエイティブ的に島もまた水に注目しているものなので、クールな組み合わせに感じられたのだ。最終的には、島に、何度も使いたいと思うような能力を与えることにした。カードを引くという効果にしたのは、彼女の最初のカードと関連付けるとともに魅力的な奥義を生み出すためだった。
《乱動の座、オムナス》
緑青赤も、5種類しか伝説のクリーチャーが存在していなかった楔3色である。これには既存のキャラクターを使うことができたが、興味深いことに、そのキャラクターはこれまでこの楔3色になったことはなかった。
オムナスは、旧『ゼンディカー』ブロックの『ワールドウェイク』で、緑単色のカードとして初登場した。最初から、オムナスはテーマ的にマナに関連していたのだ。この最初のカードは、自分のマナ・プールに緑マナが多ければ多いほど大きくなるというものだった。2枚目のカードになったのは、ゼンディカーを再訪した『戦乱のゼンディカー』のときであった。オムナスには赤が増え、土地と(上陸メカニズムを使って)関係するようになった。このバージョンのオムナスは5/5のエレメンタルを生成し、それや他のエレメンタルが死亡したときにダメージを与えるというものだった。
『基本セット2020』で、オムナスを再登場させ、さらにもう1色、今回は青を足すというアイデアが生まれた。これらの3色は、エレメンタルの色である。オムナスはすでにエレメンタルとのシナジーを持っていたので、まさにふさわしいと考えられたのだ。このカードはエレメンタル・テーマを濃く扱っている。1つ目の能力は、自軍のエレメンタルの数に応じて拡大する入場効果である。もちろん、これ自身も数えるので少なくとも1点のダメージを与えることになるが、うまく組まれたデッキではこのカードは大量のダメージを与えることができるのだ。
2つ目の能力は、実質的には上陸効果(ただし上陸と書かれてはいない)であり、自軍のエレメンタルを強化する助けになるものである。カウンターをオムナス自身に置くこともできるので、エレメンタル・デッキでないデッキでも、特にリミテッドではオムナスをプレイすることができる。もうすこし魅力を足すため、この2つ目の能力には長期戦(土地8枚以上)で有効になるおまけがついている。これによって、このカードはフィニッシャーとしても働けるようになっているのだ。
そのうち、4色のオムナスが出てくることになるのだろうか。時のみぞ知る。
《天空の刃、セファラ》
ドラゴン同様、これまでに多くの伝説の天使も作られてきた。『基本セット2020』で重要なのは、このセットの需要にあった天使を作ることだった。デザイン・チームはセファラのデザインを「飛行関連」デッキで働かせることに集中した。その方法は2つあった。1つ目が、飛行クリーチャーをタップすることで支払える代替コストを持たせること。興味深いことに、コストを低減する(例えば、飛行クリーチャーを1体タップするごとにコストを2マナ減らす)のではなく、単一の代替コストを持たせることにしている。
これには2つの意味があり、まず見返りを得るためにはそれだけの集中が必要であってデッキをテーマに寄せる、つまり飛行クリーチャーを増やす必要があるということ、そして代替コストなら必要なだけのマナを減らすことができるのでマナ・コストの色マナを増やすことができるということである。代替コストに白マナが1点入っているのは、白マナを出せないデッキに忍び込ませることができないようにするためである。
2つ目の「飛行関連」要素は、セファラの防御的効果である。天使は伝統的に守護者というフレイバーを持っており、他のクリーチャーを強化したり他のクリーチャーへのダメージを軽減したりする能力を持つことが多い。今回の場合、破壊不能を与えるが、これは「飛行関連」のカードなので、飛行クリーチャーだけを守るのだ。セファラは、彼女の天使らしさを強めるため、飛行と絆魂も持っている。
《傲慢な血王、ソリン》
黒のプレインズウォーカー枠は、白ほど狭くはないが、青に比べると選択肢はかなり少なかった。黒単色のプレインズウォーカー・カードになったことがあるプレインズウォーカーには、ダブリエル、リリアナ、オブ・ニクシリス、ソリン、ヴラスカがいる。ダブリエルは他の『灯争大戦』のプレインズウォーカーと同じ問題があり、ヴラスカは黒基本ではない(彼女の黒単色のカードは、プレインズウォーカーデッキを成立させるための特例だった)が、他の3人は候補となりえた。さらに加えて、アショクとケイヤは黒基本であり、いざとなれば黒単色のプレインズウォーカーにできた。リリアナには『灯争大戦』の後に休みを取らせたいと考えたので、あとの候補はオブ・ニクシリスとソリンとなる。調査の結果、ソリンは非常に人気が高いとわかっていたので、我々はソリンで行くことにした。
ソリンの特徴は、吸血鬼のプレインズウォーカーであるということである。そこで、吸血鬼・テーマを扱うあらゆることをすることができるようにした。例えば、次のようなものがある。
- ライフを奪う
- (大抵は絆魂を持つ)吸血鬼を生成する
- 自軍のクリーチャーを、パワーを増やしたり絆魂を与えたりという形で強化する
- クリーチャーやプレインズウォーカーを破壊する
- プレイヤーのコントロールを得る
- 墓地からクリーチャーを吸血鬼として戦場に戻す
また、これは基本セットのプレインズウォーカーなので、基柱にできるような濃いテーマが必要だった。吸血鬼部族というテーマは、わかりやすい選択だと感じられたのだ。最終的に、ソリンにはプラスの忠誠度能力を2つ持たせることにした。1つ目の能力は、絆魂と接死(どちらも吸血鬼らしい能力である)を与える。また、対象にしたのが吸血鬼なら+1/+1カウンターも与える。これは吸血鬼部族を奨励するためのものだ。
2つ目の能力は、ソリンに強力だけれども吸血鬼を必要とするライフ吸収能力を与えるものだ。これは、ソリンを吸血鬼デッキで使うべきだと明記している。また、スタンダードに大量のプレインズウォーカーが存在している影響で、プレインズウォーカーのデザインにおいて少しニッチに寄せる必要があるのだ。
3つ目の能力は、ソリンが今までやったことがなく、黒がすることも少ないものだが、吸血鬼に絞っていることから黒で可能だと判断されたものである。これによって、大型の吸血鬼を素早く戦場に出すことができるのだ。全体として、フレイバーに富んでいて、かつこのソリンは吸血鬼デッキに入れてほしいのだというメッセージを強く発するものになっている。
《血の取引者、ヴィリス》
天使やドラゴン同様、長年に渡って伝説のデーモンも大量に作られてきている。良いデーモンのデザインの鍵は、助けにはなるがそれが後に悩みの種として戻ってくる場合がある、という雰囲気を再現することである。我々はデーモンのカードに、「デーモンやデビルと取引する」フレイバーを再現させたいと考えた。それは大抵の場合、2つのことを意味する。1つ目に、何か欲しいものを与えてくれる。2つ目に、それにゲームの敗北に繋がりうる可能性のあるコストがついてくる。ヴィリスはまさにその好例である。
まず最初に、彼は8マナ8/8飛行クリーチャーである。これだけで心を躍らせるものだ。彼の1つ目の能力は、それほど素晴らしいものには見えない。黒マナ1点とライフ2点を消費して、クリーチャー1体を対象としてターン終了時まで-1/-1の修整を与えるというものだ。コストは大きく利益は小さい。しかし、その後でヴィリスの最後の能力が突き刺さるのだ。ライフを失った1点ごとに、カードを1枚引く。これはかなり強力そうだ。そうなると、この起動型能力はかなり強く思えてくる。黒マナ1点とライフ2点を支払って、カードを2枚引き、ターン終了時までクリーチャー1体に-1/-1の修整を与える。
これは、ライフをコストとして支払うという、黒がつねづねやっていることを軸としたデッキを組むことを奨励することになる。ライフを支払うことの問題は、消費できるライフの量に限りがあることと、支払う充分な理由は、支払うべきでないほどに支払ってしまうことを推奨するということである。良いデーモン同様、ヴィリスは、彼が与える力は制御できなくなる前にゲームに勝てるだけのものだという約定のもと、大抵はすべきでないことを推奨するのだ。これは回り回って、自分の運を頼りにリスクが割に合うかどうか確かめる、ドラマティックなゲームを生み出すことになる。それでこそデーモンをプレイするのは楽しいのだ。
《アーク弓のレインジャー、ビビアン》
緑のプレインズウォーカー枠は、黒の枠と同じような状況だった。選択肢はあったが、そう多かったわけではない。緑単色のプレインズウォーカー・カードになったことがあるプレインズウォーカーは、アーリン、フレイアリーズ、ガラク、ニッサ、ビビアン、ヤングーの6人だった。フレイアリーズは死んでいて、ガラクには別の計画があった。アーリンには少し問題があり、すでにヤンリンを採用していたのでヤングーは避けることにした。あとの選択肢は、ニッサかビビアンだった。ニッサはビビアンよりも基本セットで登場したことが多かったので、我々はビビアンを採用することにした。(プレインズウォーカーを基本セットに入れ始めたとき、我々はできるだけ同じものを入れ続けようとした。しかし今は、プレインズウォーカーの多様性はマジックの楽しさの一部であり、基本セット同士の境界を明らかにする助けとなっていると考えている。)
ビビアンの特長は、彼女の(すでに滅ぼされている)出身次元の動物の霊的コピーを生み出す、霊的な矢を放つことができる特別な弓を持っていることである。したがって、彼女の能力はクリーチャーに関連しているか、弓をテーマとしたものになる。
- 一時的あるいは永続的なクリーチャー強化
- クリーチャーに能力を与える
- クリーチャーに格闘をさせる
- クリーチャー(や土地)をライブラリーの一番上から探す
- 飛行クリーチャーを破壊する
彼女の1つ目の、そして唯一のプラスの忠誠度能力は、単純な強化能力である。このバージョンで加えたひねりは、2つの+1/+1カウンターをどのように分配するかを決められるところだけである。2つ目の能力は、格闘ではなく《狂気の一咬み》(自軍のクリーチャーだけがダメージを与える一方的格闘)である。彼女の奥義はクリーチャー・カードの「願い」(ゲームの外部からクリーチャーを持ってきて手札に入れる)である。クリーチャーをテーマにしているが、ビビアンはこのセット内のプレインズウォーカーのデザインに比べて狭くないように作られている。私はこれを、プレイデザインが彼女を構築での一般的な使い方に少し推しているということだと理解している。
《冒涜されたもの、ヤロク》
他の楔3色と同じく、黒緑青も伝説のクリーチャーの前例が豊富なわけではない。ヤロクも新しいキャラクターで、フレイバーを見ればわかるとおりゼンディカー出身である。このカードは『基本セット2020』でのこの3色のテーマ、入場効果を扱うようにデザインされた。このクリーチャーの主な効果は、基本的には入場効果を倍にするというもので、カラー・パイ的には青と緑の両方に属する。
カードに黒の要素を足すため、このクリーチャーには接死と絆魂という2つの黒の能力が与えられている。フレイバー的観点から見ると、これら2つは生と死を表しており、生涯のあり方を強く示しているのだ。(接死は緑であるとも考えられるので)デザイン・チームは青のキーワードをカードに持たせることを検討したと思われるが、青のクリーチャーのキーワードは限られており、飛行も絆魂もこのカードに持たせるべきものではないと考えたのだろう。倍にする効果のいちファンとして、私はこのカードを見たときには興奮したものである。
あなたの心に伝説を
『基本セット2020』の伝説のカードは以上となる。この2週間の解説を楽しんでもらえたなら幸いである。いつもの通り、この記事や今回語ったカード、あるいは『基本セット2020』そのものについて、諸君からの感想を楽しみにしている。メール、各ソーシャルメディア(Twitter、Tumblr、Instagram)で(英語で)聞かせてくれたまえ。
それではまた次回、制限と既定値の違いについて語る日にお会いしよう。
その日まで、あなた自身の楽しい物語が『基本セット2020』で紡がれますように。
(Tr. YONEMURA "Pao" Kaoru)
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