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Making Magic -マジック開発秘話-
何としても
何としても
Mark Rosewater / Tr. YONEMURA "Pao" Kaoru
2015年2月2日
スゥルタイ特集へようこそ! 今週は、黒緑青の楔について語っていく。5つの氏族特集の4つめなので、今回も今まで通り各氏族をなしている3つの色に焦点を当てていこう。そのため、私はこの3色を1つの部屋に集め、そして話を聞くことにした。これまでにもアブザン、ジェスカイ、マルドゥの色に話を聞いている。色の理念について興味がある諸君は、カラー・パイのページを参照してもらいたい。そこではこの話題について、20記事以上に渡って詳細に語っている(英語記事)。
この楔シリーズの目的は、各色がどのように相互作用しているか、そしてお互いのことをどう考えているかについてよりよく理解してもらうことである。まず彼らに質問を投げかけ、そしてあとは流れに任せよう。前説は終わりだ、早速話を聞くことにしよう。
やあ、色の皆さん。今回も、まず皆さんにそれぞれ自己紹介をしてもらいます。スゥルタイのカードのマナ・コストで出てくる順番でお願いします。
黒だ。俺は可能性を追求して力を......おい、これ毎回言わなきゃならねえのか?
私は緑。私は知恵をもって受容を達成する色。黒と違って、同じ儀式を繰り返すのは大好き。
儀式ってんなら嫌いじゃねえよ。
青なのです。知識を元に完全を目指しているのです。
まず最初は、その氏族が表す性質について語ってもらっています。スゥルタイは残忍さの氏族ですが、皆さんそれぞれご自分にとっての「残忍さ」の意味をお教え願えますか。
もうこれで4回目だろう? 同じ手順に拘るのは読者も面白くないかもしれねえぞ。ちょっと面白いこと思いついたんだが、どうだ?
黒さんの言う通りなのです。サプライズがないと、お客さんも興奮しないと思うのです。何が起こるかわからないというのは、それだけでスリリングなものなのです。もちろん、予測を立てる時間があるのなら、一番論理的な方法を選ぶことができるのですが。
変えることはないわ。このインタビューのやり方はうまく行っているじゃないの。これまで成功してきたことを振り返れば、4回めも同じことを繰り返すことに不満なんてないでしょう。
赤の言葉を借りれば、「冒険なくして成功なし」だ。
なぜここで赤の話を? ああ、わかったわ、私を困らせるために変えたいんでしょう。
変えられるものは変えたい。それでお前が困るんだったら、そりゃありがたいことだ。
変えるためだけに変えるというのがあなたの考え方なのね?
んー、「変える」という言葉にこだわっているようなのですが......変えるというのはそんなに悪い考えなのでしょうか? 自然というのはいつも変わり続けているものなのです。
いいえ、自然は変わるのではなく進化するものよ。ゆっくりと段階を踏んで変わっていくの。あなたや黒が言っているのは、ただ単に自己顕示欲という利己的な目的を果たすためだけの、急で突然の変化よね。
判らねえのはそこだ、緑。誰かが何かをすれば、それは自然に反して破壊的だという。だがお前が望むようにすれば、それは自然の秩序だと。お前さんの、自分の生き方だけが正しいっていう世界観は好きだぜ。
壊さなければ、直す必要はないわ。
でも、いつだって向上の余地はあるのです。何かがうまくいったからといって、他にもっとうまくいく方法がないというわけではないのです。実験しなければそれは見つからないのです。
マローが私たちに聞いたのは残忍さに関する意見よ。その話をしましょう。
これは自由なインタビューだぜ。ローズウォーターも「流れに任せる」と言ってたじゃねえか。好きなように答えりゃいいのさ。俺はお前さんの変化恐怖症について話したいね。
変化を恐れているわけじゃないわ。
緑さんは黒さんと青の両方の敵対色なのです。黒さんと青は、両方とも自分の生き方を自分で決められると信じているのです。
あなたの生き方は決まっているわ。決める必要なんてない、ただそのままに進めばいいだけよ。
その生き方とやらが気に入らなければ? 他の生き方がしたければどうなんだ?
それに、生き方は1つじゃないのです。いつでも無数の選択肢がある、もっと大きなものなのです。
そんなまさか、世界は単純よ。必要のないところに複雑さを作ろうというのは欲というものだわ。
欲? 欲は生まれ持った感覚だろう。欲を持たずに生まれてくるってのか?
そうして馬鹿にするのもいいけれど、あなたと私の違いは、私は本当の生き方を知っているということよ。
生き方の話だろう。生き方ってのは黄色いレンガの道だってのか? それを通れば全ての問題が解決できるって? そりゃドロシーと同じようにうまく行くだろうな。
彼女は帰れたじゃない。
黄色いレンガの道のおかげじゃねえだろ。ドロシーは自分の手で問題を解決したから帰れたんだ。もし邪悪な魔女を殺していなけりゃ、ドロシーはカンザスに戻れなかったろうよ。
彼女が帰れたのは、その力が彼女の中にあったからよ。
その力があったのはルビーのスリッパなのです。でも、フランク・L・ボームの原著では銀のスリッパだったのです。これは黄色のレンガの道に象徴される金本位制と対立する銀本位制を表している、つまり「オズの魔法使い」という本は19世紀後半の通貨制度に関する議論の隠喩なのです。
青?
ごめんなさい。青の言いたかったことは、ドロシーが帰れたのはスリッパのおかげで、ドロシーの力のおかげじゃないということなのです。
そうは言うけれど、作者の言いたいことは、問題を解決する力は彼女自身がずっと持っていたものだ、ということでしょう。解決方法を外に求めるのではなく、自分の持っているものを考えるべきだって。
お前さんは「残忍さ」というものを理解したいんだろう。残忍さってのは、欲しいものを手に入れるために行動する意志のことだ。餌食になるか、それとも自分の人生を自分で掴むかを決めるのは、やり抜くための意志だけだ。そしてそのためには必要なときに変化を恐れない意志も必要なのさ。
その通りです。自分で選んで変化させるために行動することで、自分も成長するのです。
残忍さは変化とは関係ないわ。それは自分が何であるかを受け入れ、自分の本質に正直にある意志を持つことよ。
つまり、何にせよ意志の問題だってことは賛成するんだな?
はい。
ええ。
それでは、皆さんのメカニズムでこの残忍さの戦略に関わるものについてお話しください。
青と俺は、他の色にはできないことができる。そう、他人の精神に入り込むってことだ。マジック的には手札とライブラリーだな。青には打ち消し呪文が、俺には手札破壊がある。青にはライブラリー破壊もあるし、俺は直接ライブラリーからカードを取り除くことができる。
黒と私は、どちらも物を破壊できるわね。黒はクリーチャー、土地、プレインズウォーカーを、私はクリーチャー以外のあらゆるものを。
青は、あ、黒さんも少しできますけれど、相手のものを奪えるのです。青は呪文を向け直すこともできるのです。相手の武器で、相手をやっつけてしまうのです。
効果を得るために必要なら、俺はどんな追加コストだろうと払う準備があるぜ。ライフを支払ったり、クリーチャーを生け贄にしたり、手札を捨てたり......何でも来いだ。
黒と私、それに青のいくつかの呪文は、墓地にあるものを取り戻せるわね。
そもそも、どの色も勝利のために何でもするものだろう。相手のリソースを削り、必要なことをして、相手のものを奪い、死体を利用し......タブーなんてそうあるもんじゃねえ。
緑さん、敵対色2色とともに働くということについて、もう少しお話しいただけますか。
最大の問題は、可哀想な2色とともに働くのが難しいということね。
可哀想? 俺らが? なんだ、馬鹿にしてるのか。馬鹿はお前だろう。
他人が見つけるために努力しているのを見ても、その意味はわからないのね。
お前も白も、詰め込むのが好きなだけだ。この宇宙を導く神秘的な力とやらについて教えてくれよ。
どう言えばわかってもらえるのかしら。あなた方は信じていないのだもの。
緑さんたちがあると言っているものを本当に見せてくれるのなら、信じられるのです。
知るものではなく、信じるものなのよ。全てが証明できるわけではないわ。
ああ、証明できないものを信じるのは便利そうだな。誰にも反証できないってわけだ。
証明とか反証とかの話じゃないの。あなたを取り巻く世界をどう見るかという話よ。
緑さんは、取り巻く世界を見ていないのです。その逆、知っていることにすがりついて、その世界観に合わないもの全てから目をそらしているだけなのです。黒さんや青が、世界についてどう考えていると思いますか? 青たちは、世界について研究して、世界の中で生きていて、世界を調べているのです。黒さんの言う通り、緑さんは、変化を恐れているのです。緑さんの信じていることが真実でないかもしれないと、受け入れられないでいるだけなのです。
そこが一番の問題だ。お前さんはいつも運命と世界における役割の話をするが、お前さんが何者なのか、何をできるのかは誰かが決めてるもんじゃねえ。お前さんを止めるのは、お前さん自身の限界、あるいはお前さんよりも強大でお前さんを妨害する何者かだ。
それがあなたの選んだ世界なのね。本当に残念よ。
俺が選んだ? 違う、これが世界なんだ。お前らどの色も勘違いしてやがる。お前さんもだ、青。
そうなのですか。
お前は否定の中に生きているな。世界をありのままに受け入れていない。例えば、俺が人々を強欲にするわけではなく、もとより強欲だ。俺はそれを考慮して生きているわけだ。俺が、他の連中を殺してもいいと考える理由はわかるか? そうしなければ、そいつが俺を殺すことができて、そしてそれを警戒していなければ俺が死ぬことになるからだ。もちろん、殺すためにうろついたりはしねえ。殺すのは必要なときだけだ。
その代償が、あなたの信じるその世界で生きていかなければならないということね。
緑さんは、根拠もないのに、真実だと言い続けているのです。
根拠がない? あなたのまわりにはないかもね。森の中をご覧なさい、山の上をご覧なさい、水の中をご覧なさい。あなたは文字通り自然の中、生命の中にいるの。あなたはものを見る目があるのでしょう、青。私の言っている全ては観察できるものよ。
自然にも構造はありますが、それが最善とは限らないのです。向上の余地もあるかもしれないのです。
それで、私は証明できないことを言っているというの?
証明する気があるのですか? 道具はどうなのですか。人間は、よりうまくできるようにするために道具を作ったのです。
白鳥は、どれだけ強く釘を当てられるか考えると思うかしら?
はぁ? 下手な詩を聞く趣味はないぜ。白鳥がどうしたって? 白鳥の話がどう関係あるんだ!?
たぶん、緑さんは道具に関する話への反論として、道具の利点は小さいと言いたいんだと思うのです。
そうよ。
冗談だろ。道具の中には武器があり、武器は力のバランスを完全に変えたじゃねえか。
そうして人間は人間同士戦うわね。それが、ガゼルにどう関係するの?
ガゼル? 何か、お前さんは適当に動物の名前を出す装置でも使ってるのか? 問題が何なのかはわかるだろう。青と俺は世界をより良くしようとしていて、お前は現状に甘んじてるんだ。
あなたは人を殺すでしょう。それでどうして世界がより良くなるの?
お前さんが草を刈るのと同じ理由だ。弱者を除くことで、強者が育つ。考えてみろ、それが自然ってもんだろう。
その通りなのです。
俺の見る限り、お前さんは詐欺師だ。何の役にも立たないものを売りつけようとしてやがる。
乾いた男が河を渡る、といったところかしらね。
青、代わってくれ。俺が緑を殺しちまったらローズウォーターも困るだろうしな。
わかりました。緑さん、運命っていうのがどれだけ残念に聞こえるかわかっているのですか? 未来が決まっているということは、何をしても意味がないということなのです。
残念? それとも、啓発かしら。自分の本質を創造的に活かすのではなく、それに抗うために無為に時間を費やしている人はたくさんいるわ。あなたの役割が定められているとわかったとき、どれだけ肩の荷が下りるかわかっていないのね。手に入れられない理想を目指すことがどれだけのストレスを生んでいることか。
そのストレスが生産に繋がり、そして、その生産性が積み重なって向上に繋がるのです。
本当に?
ああ、ようやく緑のやり方が判ったぜ。ちょっとはっきり正しいことを言ってみろ。
2足す2は4なのです。
ああ、はっきりとは言えないが充分だ。もう一回言ってくれ。
2足す2は4なのです。
それが4でないのでない限りはな。何を言おうと、緑はその逆を体験談として言うわけだ。量れないことを前提にするわけだから、議論なんざ成立しやしねえ。
私はあなたたちに光を見せたいの。生命には理由があり、生命のことをさらに力を得るための試練だと見るのをやめれば、全てははっきりと描き出されるのよ。
何をしてもその描かれた通りにしかならなくて、つまり、人々は向上できない、というのですか? それなら、知識を得たり、訓練したり、経験したりするのはなぜなのですか? ただ本当の生き方から離れるだけなのです。
いつも私の考え方に皮肉を言うのをやめてくれたら嬉しいわ。
皮肉なしで話ができりゃ嬉しいな。遠回しな言い方はやめよう。お前さんはすげえよ、怠けることを新しい境地まで高めやがった。「遺伝子の導きに反することになるから、何もしないようにしましょう」ってな。その主張に、反論も確認もできないような回答で肉付けしてやがる。これは真実だ、なぜなら私が言っているから――はぁ? 俺はお前を信じちゃいない。お前が嘘を積み重ね、人生における厳しい現実に目を向けないようにしているだけだ。
まるで私が自然を作り上げたみたいに言うのね。あなたも、世界の有り様を受け入れなければならないと言うのでしょう。それは自然も同じよ。変える必要がないかもしれない自然を変えることにあくせくしすぎなのよ。
青と黒の両氏が緑に対して思っていることはわかりました。ところで、あなた方の間での対立点は何でしょう?
友好色同士の対立の鍵は、そのそれぞれのもう1色の友好色にあるのです。青と黒さんの場合は、それぞれ白さんと赤さんです。白さんと赤さんの最大の対立点は、秩序と混沌です。青は白さんの秩序に、黒さんは赤さんの混沌に近いのです。青は計画したい、青は相手が何なのかを知って準備したいのです。黒さんは「臨機応変」の色なのです。赤さんのように過激ではないのですが、黒さんはリスクを好みすぎなのです。
青の一番気に入らないところは、無意識に先回りしすぎだってところだ。重要なのは反応だ。青はもっと待って、何が起こるか確認してから動くべきだな。
黒さんの一番困るところは、欲しいものを手に入れるために何でもするということなのです。他の色は理由があって節制していて、そうすることで社会的、人間的な特徴ができるのです。黒さんは、できるということを示すためだけにその節制の線を踏み越えていると思うのです。
そろそろ時間となりました。これまでのインタビューと同じように、なぜスゥルタイを使うべきか皆さんそれぞれに一言ずつお願いします。今回も、自己紹介と同じ順番でお願いします。
勝ちたいという意志が強い奴が勝つんだ。
自然の可能性に限りはないわ。
一番危険な戦士は、自分のできることを知っている戦士なのです。
素晴らしいインタビュー、ありがとうございました。
これまでの3つと同様に、このインタビューを楽しんでもらえたなら幸いである。いつもの通り、諸君からの反響を楽しみにしている。メール、各ソーシャルメディア(Twitter、Tumblr、Google+、Instagram)で(英語で)聞かせてくれたまえ。
それではまた次回、予示の話をするときにお会いしよう。
その日まで、あなたが人生に適切な変化の量を見いだせますように。
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