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岩SHOWの「デイリー・デッキ」
ロータス・コンボ:何して勝つの?難解パズル(パイオニア)
プロツアーなどのフィーチャーマッチの配信を観ていて「なんで投了したんだ?」と思ったことはないかな?これ結構なマジックあるあるなんだよなぁ。このゲームをある程度知っていても、第三者目線で見るとどういう理由で勝負ありとなったのかわからないということがある。それだけ複雑なゲームというわけで、このケースは特にコンボにおいて見られる。カードが2、3枚揃って勝つようなコンボだと盤面にそれらのカードが出てきて「ああ決まったね」とわかるものだが、様々なルートを辿っていくつかのゴールに行きつくことを狙うコンボの場合「ん?これでもう終わりなの?」と思ってしまうのも仕方がない。
プロツアーのような舞台でゲームをするプレイヤーであれば、環境の代表的なコンボがどのような動きをするかを熟知しているものだ。卓につく二人は納得がいっていても、はたから見れば「諦めるには早くないのか?」なんて思ってしまうのである。なので、コンボの完走を見届けることというのは珍しいことだったりする。
今回のプロツアー『カルロフ邸殺人事件』でも、フィニッシュに行きつく前にゲームが終わるフィーチャーマッチがいくつかあった。それは「ロータス・コンボ」のマッチにて見られた。
ロータスとは《睡蓮の原野》のこと。土地2枚の生け贄が必要だが、どんな色でも3マナ加えられる尖った能力の土地だ。土地3枚を使っているのでマナが増えているというわけではないが、これをアンタップして複数回起動することができれば……マナが爆発的に増える。これを利用したコンボがパイオニアにて活躍しているのだが、そのフィーチャーマッチではある程度マナが出て、それを使う準備が整ったところで対戦相手が投了する……というパターンで、結局のところどうやって決着がつくのかわからない方も多かったんじゃないだろうか。今回はこのデッキを取り上げ、何を目指しているのかを解説していこう!
1 《ハイドラの巣》 1 《迷路庭園》 4 《睡蓮の原野》 1 《天上都市、大田原》 1 《森》 1 《繁殖池》 2 《神秘の神殿》 3 《演劇の舞台》 4 《植物の聖域》 3 《耐え抜くもの、母聖樹》 1 《ヤヴィマヤの沿岸》 1 《ゼイゴスのトライオーム》 -土地(23)- 1 《溺神の信奉者、リーア》 4 《砂時計の侍臣》 2 《旅するサテュロス》 1 《願いのフェイ》 3 《樹上の草食獣》 -クリーチャー(11)- |
1 《来世の警告》 3 《出現の根本原理》 1 《闇の誓願》 4 《熟読》 3 《バーラ・ゲドの復活》 4 《森の占術》 4 《見えざる糸》 3 《大ドルイドの魔除け》 2 《衝動》 1 《全知》 -呪文(26)- |
1 《原初の災厄、ザカマ》 1 《偉大なる統一者、アトラクサ》 1 《龍王ドロモカ》 1 《長老ガーガロス》 1 《旅するサテュロス》 1 《副陽の接近》 1 《出現の根本原理》 1 《太陽降下》 2 《神秘の論争》 1 《ナーセットの逆転》 1 《神聖の力線》 3 《一時的封鎖》 -サイドボード(15)- |
こちらは先のプロツアーにてTOP8に入賞したロータス・コンボ。同大会ではロータスは使用率4位。それ故に決勝ラウンド以外のフィーチャーでもこのデッキが登場したものだが……何が起こっているのかわからないという方もいたのではないだろうか。実況解説でなるべくそこのところはカバーする努力はしているが、ゲームの進行を追っていく必要があるためなかなかどんなデッキか、逐一何をしているのか言語にして説明している暇はなかったり。こういう時こそデイリー・デッキのような文字媒体の出番だな。
ロータスの基本は上述したようにアンタップ。これを行える最軽量の呪文は《見えざる糸》。2マナでパーマネント2つをアンタップできるので、ロータスが2枚あれば……2枚タップして計6マナ加え、そこから2マナ使って糸を唱えて起こして、また6マナ。計10マナで、こうなるとなんでもできちゃうだろう。ロータスが1枚だけでも他の土地と同時に起こすことでマナが増える。《熟読》も同じく土地2枚を起こすので、これで掘り進めつつどんどんとマナを増やしていく。《演劇の舞台》で原野のコピーを作るのも重要だ。原野自体が戦場に出るのには土地の生け贄が必要だが、舞台がこれのコピーになるとこのデメリットを回避しつつ2枚以上のロータス体制を作ることが可能となる。
クリーチャーらも土地のアンタップに貢献する。《砂時計の侍臣》は超定番。戦場に出しても良いし、コンボが動き出すならサイクリングしてアンタップ、と動くことで、1マナ増やしながらカードを1枚引くという動きでライブラリーを掘り進むのを大きくサポート。このリストでは《旅するサテュロス》もメインから採用し、これらで土地を起こすプランを重要視しているのが伝わってくる。
ロータスから緑マナ3つ・黒マナ3つ・青マナ3つと1回ずつ起動することが一つのステップとなる。このマナにより《出現の根本原理》を唱える。このソーサリーは3枚のカードをライブラリーから探し、そのうち2枚をそのまま唱えられる。1枚は対戦相手が選んでライブラリーに戻してしまうが……土地の並びやその他にも戦場の状況にもよるが、持ってくるのは以下のカードの組み合わせ。
手札から唱える呪文のコストが0になる《全知》・なんでもサーチできてマナも出る《闇の請願》・3枚サーチの《来世の警告》・そして墓地のカードがフラッシュバックを持つ《溺神の信奉者、リーア》……これらに《熟読》を絡めて、対戦相手にさあどれを戻すか?と迫る。
たとえば浮いているマナがなく、手札が何枚かあるという状況なら……《闇の誓願》《全知》《熟読》と持ってくる。対戦相手が《全知》を戻してきたなら……《熟読》で土地を起こしてマナを獲得しつつカードを引き、《闇の請願》からリーアや根本原理のおかわりなど持ってきて勝利へのセットアップが完了。《熟読》を戻されたら……《闇の請願》から何かしらを手札に加えて《全知》でタダで唱えて、これもフィニッシュ目前。なので《全知》《熟読》と残して《闇の請願》を戻すのが定番で、熟読で引いてきたカードがマナコスト0で連打はされてしまうが、土地しか引かないことに賭ける……という具合になる。墓地にマナを増やせるカードがたっぷりあってマナも余裕があるならリーアを加えた3枚にするなど、《全知》とサーチの圧から、何かしら通したいカードを持ってくるということになる。
多くの場合、上記のサーチからある程度マナが出るようになったり、《全知》+たっぷりの手札という状況になれば対戦相手が投了することになる。なので「そこからどうやって勝つのか?」というのが知らない人にとっては大いなる疑問となる。実はここからどう勝つかもいくつもの選択肢があり、それはデッキにより異なるのだが……このリストでは《願いのフェイ》がその入り口となる。
フェイの出来事である《成就》でサイドボードから非クリーチャー・カードを手札に加える。《全知》が置いてある、あるいはリーアで各種カードを使いまわしてマナにはまったく不自由しない、そんな状況下でドローを複数枚、あるいはサーチを持っているなら《副陽の接近》を引っ張ってくればゲームが終わる。1回唱えてこれがライブラリーに入り、ドロー連打で引き込んだりサーチで強引に手札に加えて、2回目を唱えればそれで勝利。
フェイのサーチ先にはこのフィニッシュである副陽をはじめ、他にも根本原理など唱えて勝ちに繋げるカードがズラリ。また《成就》からのサーチはできないが、興味深いのがサイドボードの大型クリーチャーたち。《偉大なる統一者、アトラクサ》は手札を一気に補充させ、《龍王ドロモカ》は対戦相手のコンボへの妨害を完全に封じて安心してコンボを継続させられる。そして《原初の災厄、ザカマ》は盤面を更地にしたりライフを超回復させたり……土地がアンタップするのもロータスの精神と噛み合っている。
こうした大型クリーチャーを展開し、その能力でコンボを後押ししても良いしそのサイズで圧殺する殴り勝ちパターンも備えている。こういったエンディングを拝むまでもなく、そこに繋げるのに十分な資源を対戦相手が持っていることを確認した時、多くの競技プレイヤーは投了を選択する。そのため、こういった豪快なカードが盤面に飛び出してゲームが終わるシーンを我々が目にすることは稀になってしまうというわけだね。
そしてこのロータスが得た『カルロフ邸殺人事件』からの新戦力が《大ドルイドの魔除け》!この呪文は土地orクリーチャーをサーチする。土地なら戦場に出せて、クリーチャーは手札に加える。このインスタントを用いて、《睡蓮の原野》なり《演劇の舞台》なりを持ってこようというわけだ。場合によってはクリーチャーを持ってくることもあり、アトラクサやドロモカをメインに潜ませているリストも存在する。緑のトリプルシンボルで使うデッキは限られるが、ロータスなら緑マナ3つなど造作もないというわけだな。
フィニッシュをなんとか文章化してはみたが、そこに至るまでに実際にどのようなプロセスを重ねるかはなんとも説明しがたい。手札や戦場の状況と対戦相手のデッキによって、コンボルートは変化するもの。このデッキを操るプレイヤーは常に高いアドリブ力を問われ、最適解を瞬時に判断して実行せねばならない。決まる時はイージーウィンできるコンボだが、これで勝ち続けるにはかなりの習熟度が必要となってくる。練習すればするほど強くなれるデッキであり、こういったコンボを極めている職人は実にカッコイイ。何をするコンボかわかった上で興味が湧いたなら……ぜひともこの難解なパズルデッキにトライしてみてほしいね!
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