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岩SHOWの「デイリー・デッキ」
ラクドス想起はまだ死んでいない!(モダン)
個人的な話で恐縮だが、久しぶりに紙のカードの大会に参加した。昨年末、大晦日のそのまた前の晩。長年の友人らとチームモダンをプレイしたのだ。5年ぶりくらいだったのかな、正確な年数は覚えていないが本当に久しぶりだった。マジックってこういうことができるから良いんだよな。モダンやレガシーだったらデッキは残り続け、何年たってもプレイすることが可能という。もちろん、勝てるかどうかは別の話。最新のカード、最新のデッキ、最新のテクニックに打ち負かされてしまったが……それでも「楽しい」と思えたのはマジックとそれを共に遊ぶ友人の偉大さを改めて実感させてくれた体験となった。
当コラムでもモダンはそれなりに取り上げており、プロツアーや各種トーナメントの実況・観戦でそのトレンドは把握しているつもりではあったが……データとして把握しているカードやデッキを実際に紙のカードで体験すると、「プレイヤーたちはこんな目に遭っていたのか!」という驚きでいっぱい。特にインパクトが大きかったのは「ラクドス(黒赤)想起」。
想起という本来のものでないコストを支払って唱えられるクリーチャー。コストが軽くなるなどのメリットはあるが、それらは即座に生け贄に捧げられる。戦場に出た時や死亡した際に誘発する能力を持ったものをこれで唱えて、戦闘は出来ないが能力の恩恵を受けるという形で運用するものだが……モダンでは生け贄となる前に《まだ死んでいない》などのインスタントで対象に取り、生け贄となったものが即座に墓地から戦場に戻ってそのまま居座るというメカニズムを搭載したデッキがここしばらくのトレンド。
ラクドスカラーの想起デッキは、2大想起クリーチャーのうち赤の《激情》は禁止となったが、黒の《悲嘆》だけでも十分に強力なものとして成立している……というデータは把握していたが、着席して先攻後攻を決めて、マリガンチェック。土地5枚とキーカード2枚、マナが必要なデッキなのでこれは悪くないとキープを宣言したところに……《悲嘆》が《まだ死んでいない》で手札2枚抜き!気絶しそうになった、というかマジで気絶したのかと思ったよ。ゲーム開始時につきつけられる土地5枚の手札!そら無理や。モダンのラクドス、マジ強ぇぇ。
4 《血染めのぬかるみ》 2 《湿地の干潟》 1 《汚染された三角州》 1 《新緑の地下墓地》 4 《血の墓所》 3 《黒割れの崖》 1 《ロークスワイン城》 1 《見捨てられたぬかるみ、竹沼》 3 《沼》 -土地(20)- 4 《敏捷なこそ泥、ラガバン》 4 《ダウスィーの虚空歩き》 4 《オークの弓使い》 1 《ヨーグモスの法務官、ギックス》 1 《月の大魔術師》 4 《悲嘆》 2 《黙示録、シェオルドレッド》 -クリーチャー(20)- |
4 《思考囲い》 2 《致命的な一押し》 2 《終止》 2 《稲妻》 1 《溶鉄の崩壊》 4 《まだ死んでいない》 1 《アガディームの覚醒》 4 《鏡割りの寓話》 -呪文(20)- |
3 《虚空の杯》 2 《苦難の影》 2 《未認可霊柩車》 2 《仕組まれた爆薬》 1 《兄弟仲の終焉》 1 《血染めの月》 1 《月の大魔術師》 1 《呪われたトーテム像》 1 《コラガンの命令》 1 《屍呆症》 -サイドボード(15)- |
というわけで個人として2024年、乗り越えるべき目標として設定した「ラクドス想起」を改めて紹介しよう。《悲嘆》を使いまわす動きは想起だけでなく、戦場に既にクリーチャーとして陣取っている《悲嘆》に対して自ら《稲妻》等の除去を撃ち込みつつ、《まだ死んでいない》系の呪文で使いまわすという強引なパターンもある、この強力な手札破壊ムーブを軸に、対戦相手の自由なゲーム展開をガッシリと妨害しつつ、優秀なコストパフォーマンスを誇るクリーチャーらで攻めるのがラクドスの根本原理だ。
《悲嘆》のみでなく《思考囲い》でも手札を確認、重要なカードを奪い去る。《終止》などのクリーチャー除去も充実だ。対戦相手を選ばずに、どんなデッキ相手にもその力を抑え込みつつ殴り勝てる可能性を持っている、尖っているようで実は柔軟なデッキ。それは数々のトーナメントでの上位に名を連ねている戦績が証明してくれている。全体的に軽くて、1ターンに2回以上のアクションを起こしやすい。それでいて不確かなものではなく、捨てさせたり破壊したりと確かな結果がもたらされる。世に言う鉄板ってやつだな。
《悲嘆》を想起から釣り上げる動きを出来ていれば、単に手札を捨てさせるだけでなくパワー4の威迫持ちが戦場に。これで攻撃してライフを詰めていくのはスムーズに……というわけにはいかないことも。手札を捨てさせたって、クリーチャー除去くらいは引いてくるものだ。そこで他の軽量クリーチャーも重要になってくる。赤くスピーディーなデッキといえば《敏捷なこそ泥、ラガバン》!手札破壊とクリーチャー除去でこのラガバンの攻撃をねじ込み、宝物を得ながらアドバンテージを獲得!さらに黒からは《ダウスィーの虚空歩き》、こっちもシャドーとパワー3でガンガンと攻撃を通せて、さらに変化球的な墓地対策。対戦相手の墓地に落ちたカードを追放し、これを生け贄に捧げるとその追放したカードをマナを払わずに唱えられるというこれまた修羅の中の修羅。
そしてこれらのクリーチャーを《まだ死んでいない》の対象にしても良い仕事をするというのは、自ずと伝わることだろう。《まだ死んでいない》のようなカードに限られた使い道しかない、というわけではなく、クリーチャー全般と組み合わせて本来の除去対策としての仕事をさせられる。こういうところにもラクドスの柔軟さ、アドリブが効くところが伺えるね。虚空歩きの連打は無茶強!
さらにラクドスは《月の大魔術師》《血染めの月》で対戦相手のマナ基盤を攻める手段も持ち合わせている。多色デッキの息の根を止める、《ウルザの塔》《ウルザの鉱山》《ウルザの魔力炉》を使うトロンなどの土地コンボを狙うデッキにはクリティカルで、モダンでも根強い人気の赤の戦術だ。多角的な攻めと妨害で対戦相手を追い詰めていくラクドス、こう角と無敵のデッキのようにも思えるが……
このような優等生系のデッキは、そのフォーマットの常識から逸脱したデッキやカードには対処しきれないという側面も。僕がチームモダンで使ったデッキは、ただでさえ古いリストをベースにしている上に趣味も色濃く打ち出している。そのため《龍王アタルカ》のような一般的なモダンのデッキに採用されていないようなカードを叩きつけると、対戦相手も対抗する手段を持っていなくてそのまま決着、というゲーム展開が印象に残った。
カードチョイスやデッキの構成が趣味に走り過ぎと言われても……自分を貫くことが武器になることもある。「ラクドス想起」という完成度の高い強力なデッキは、同時に個性に偏ったデッキの存在を認めてくれる存在でもある。久しぶりにモダンをプレイして、これが僕の率直な感想だ。今後も自分のやりたいことを重視しつつ、世界中のトーナメントで活躍するデッキも追い続ける。このバランスを保ちながら、楽しんでいきたいねぇ。
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