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岩SHOWの「デイリー・デッキ」
リアニメイトの復活?キーカードは“寓話”(スタンダード)
「第29回マジック世界選手権」、正式にカウントしたわけではないが……おそらくはこの舞台で争われたスタンダードで、最もカードプールが広い環境だったのではないだろうか。ローテーション変更で2021年秋から2022年夏にかけてリリースされたセットがまだ使用可能となり、合計で10セットからなる現スタンダード環境。これだけカードが沢山あれば、自然とデッキのバリエーションも豊富になる。世界選手権という競技イベントの中でも最高の舞台、となるとデッキ分布というものは偏りがちである。ガチで勝ちにいくわけで、自ずと選択肢は絞られてくる……実験的なリストより手堅いデッキを選ぶのは当然のことである。
しかしながら久しぶりに100名を超える参加者が集った大規模な世界選手権、使用されたデッキはイメージしていたよりも散った形になった。デッキの割合をトーナメント開始前に明かすメタゲームブレイクダウンの記事が公開された時には、最大勢力は19%と判明(詳しくはコチラをチェックだ)。確かに多いは多いのだが、ミラーマッチが連発するほど支配的な存在ではないかもなと。逆にこのメタゲームブレイクダウンに名を連ねたアーキタイプ名に、「ラクドス・リアニメイト」の名があったのは意外だった。
リアニメイト……主に黒が用いる戦術であり、墓地からクリーチャーを戦場に戻す呪文や能力で、マナ総量が大きかったり色マナ要求量が多いなど唱えるのが困難なクリーチャーをマナを踏み倒しながら運用する。シンプルなコンボであり、蘇らせるクリーチャーによっては一瞬でカタがつく、非常に強力なアプローチだ。
前スタンダード環境でも人気を集めたものであり、リアニメイトするためのカード、通称“釣り竿”は色々あるが、最も一般的なのは《ギックスの残虐》。どの章能力が誘発するかを選ぶ英雄譚、いきなりⅢ章能力でリアニメイトしても良し、他の能力から入って妨害や手札補充をして良しと万能すぎるパワーカード。これ自体が5マナなので、6マナ以上のクリーチャーを釣り上げれば得することができる。
現スタンダードでこれを満たすものは選択肢豊富で迷いこそすれど……やっぱり筆頭候補は《偉大なる統一者、アトラクサ》。戦闘面でも文句なし、手札も平然と3枚以上増やしてくれる、戦場に出すだけでグッと勝利に近づくマスターピース。エンチャントを手札に加えられるということは、第2のギックスもスタンバイできて最高に噛み合っている。このアトラクサの他に《産業のタイタン》や《原初の征服者、エターリ》などの超強力ラインナップを釣り分けてゲームを制する。強さと楽しさを両立したコンボがリアニメイトだ。
このリアニメイト、アトラクサの登場を受けて強力デッキとしての地位を確立し、2023年のスタンダードではトーナメントシーンでも活躍したものだが……ここしばらくはその姿が激減。《鏡割りの寓話》という強力パーツの禁止がその答えだ。
リアニメイトに限らず、赤い中速デッキのすべてに採用されていたこの英雄譚。ゴブリン・シャーマンの生成する宝物はギックスを唱えるターンを早め、またリアニメイトできない時に大物を唱えるための助けにもなる。そしてⅡ章能力が最も重要。手札を2枚まで捨ててその分カードを引く、赤のお約束の手札入れ替え。これがリアニメイト的には単なる入れ替えに留まらず、重いクリーチャーを捨てて墓地に待機させ、釣り竿を引き込んでくるというデッキの動きを後押しする。最も無駄なく墓地に獲物をセットできた寓話がなくなって、リアニメイトのブームも下火となっていた。
なので、世界選手権のメタゲームブレイクダウンにその名を見た時には「おぉ」と思わされたのだ。では支柱であったパーツを失ったリアニメイト、デッキ自身の復活に向けてチョイスしたカードとは……
1 《ミレックス》 1 《ジアトラの試練場》 1 《ザンダーの居室》 1 《ラフィーンの塔》 1 《落石の谷間》 2 《砕かれた聖域》 4 《硫黄泉》 4 《憑依された峰》 4 《黒割れの崖》 1 《山》 1 《見捨てられたぬかるみ、竹沼》 2 《英雄の公有地》 3 《沼》 -土地(26)- 1 《原初の征服者、エターリ》 4 《偉大なる統一者、アトラクサ》 1 《黙示録、シェオルドレッド》 2 《燃え立つ空、軋賜》 4 《税血の収穫者》 -クリーチャー(12)- |
2 《ヴェールのリリアナ》 2 《執念の徳目》 2 《兄弟仲の終焉》 2 《強迫》 1 《一巻の終わり》 2 《喉首狙い》 1 《切り崩し》 2 《塔の点火》 4 《蒐集家の保管庫》 4 《ギックスの残虐》 -呪文(22)- |
1 《黙示録、シェオルドレッド》 2 《墓地の侵入者》 1 《ギックスの命令》 1 《家の焼き払い》 1 《危難の道》 2 《窃取》 2 《石術の連射》 2 《強迫》 1 《削剥》 1 《シェオルドレッドの勅令》 1 《切り崩し》 -サイドボード(15)- |
「ラクドス(黒赤)リアニメイト」と一口に分類されているが、全てが同じ構成であるというわけではない。各々で練り上げられたリアニメイトの中でも、目を引いたのはこちらのもの。
寓話にとってかわって4枚採用されているのが……《蒐集家の保管庫》!このカード、一部からは「帰ってきた寓話」などと表現されることも。起動の度にマナは必要だが、何度でも繰り返し使える手札入れ替えと宝物生成、寓話が担っていた役目を果たせるのだ。少々手間は発生するようにはなったが、リアニメイトのための下ごしらえはこれで十分に果たせる。しっかり4枚採用して確実にクリーチャーを墓地に送る手段を確保、あまり多数引いても嬉しいカードではないが、そこは保管庫で他のカードと交換してしまえば問題ない。宝物を数個生成して大物の素出しを狙うもよし、単純に不要カードが別のものと置き換わる可能性があり、使ってみれば見た目よりもずっと強力なカードであることがわかるはず。この保管庫に《税血の収穫者》や《ヴェールのリリアナ》と手札を捨てる手段でリアニメイトを成立させているのだ。
《執念の徳目》という継続してリアニメイトを行う固定釣り竿が新たに加わったのも大きい。釣り竿というものは、その役目しか持っていないものが大半。墓地が準備できていない段階、ゲーム序盤に引いてくると正直言ってお荷物になってしまう。その点この徳目は《ロークスワインの嘲笑》というモードで、最序盤でも除去として運用可能。初手に来てしまっても、複数枚引いてしまってもなんとかなる。7マナとクリーチャーそのものと同じくらいのマナ総量で重たいのは重たいが、対戦相手の墓地からも釣り上げられるので、これ1枚で勝てるフィニッシャーとして扱うと良いね。
1 《砕かれた聖域》 2 《シヴの浅瀬》 1 《天上都市、大田原》 2 《難破船の湿地》 4 《憑依された峰》 2 《ジアトラの試練場》 4 《黒割れの崖》 1 《沼》 1 《さびれた浜》 2 《闇滑りの岸》 2 《嵐削りの海岸》 2 《硫黄泉》 2 《ラフィーンの塔》 -土地(26)- 4 《偉大なる統一者、アトラクサ》 3 《死体鑑定士》 2 《さまよう心》 4 《税血の収穫者》 -クリーチャー(13)- |
2 《兄弟仲の終焉》 2 《虚空裂き》 3 《喉首狙い》 3 《かき消し》 2 《切り崩し》 1 《セレスタス》 4 《蒐集家の保管庫》 4 《ギックスの残虐》 -呪文(21)- |
1 《肉体の裏切者、テゼレット》 1 《敵対するもの、オブ・ニクシリス》 1 《蝕むもの、トクスリル》 2 《黙示録、シェオルドレッド》 2 《強迫》 2 《石術の連射》 2 《否認》 2 《軽蔑的な一撃》 2 《切り崩し》 -サイドボード(15)- |
先ほどのリスト、呪文構成はほとんど黒と赤の2色であるためラクドスとジャンル分けされているが、アトラクサを唱えるために《ラフィーンの塔》《ジアトラの試練場》などの他の色を加えられる土地も採用されている。結局マナ基盤が5色になるなら、だったら各色の呪文も採用しちゃえばいいんじゃないか?と5色デッキになったリアニメイトも、世界選手権の場に持ち込まれていた。《死体鑑定士》や《虚空裂き》など、世界選手権のメタゲームを読んでのカードチョイスが面白い。
リアニメイトというデッキ、《蒐集家の保管庫》の参入でまたスタンダードで一花咲かせるだろうか?ギックスでアトラクサを釣るという動きは変わらずメチャ強なので、そこに至るまでのルートをどうするか。保管庫のような工夫、味のある1枚、君なりの答えを見つけてみよう!
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