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岩SHOWの「デイリー・デッキ」
今週のCool Deck:本家本元、ジャンドが蘇る(過去のフォーマット)
つい先日のこと、クールなお誘いを受けた。普段ネット上でやりとりしている僕のマジックコミュニティ。そこのメンバーの1人、アメリカ在住の方が大阪に用があって来るのだという。なので、東北などから数名が集まってマジックをしようじゃないかと。運が良いことに僕もスケジュールが空いていたのだ、この集まりに加わらせていただくことに。
普段なかなか会えないメンバーが集結して、さあどんなマジックをするか……答えは「懐かしのスタンダードデッキ対決」!これはクールすぎるぜ!というわけでマジックのデッキをクールという観点から紹介する当コラム、今週のデッキはこの楽しくクールな集まりの中で輝きを放ったデッキを。
そもそも僕のコミュニティには長年マジックをプレイしている方が圧倒的に多く、世代も30~40代。同じ時代を懐かしい!と語り合える者同士が集うのは、自然な流れではあるよね。今回の「懐かしのデッキ」持ち込み企画も、ある方がコミュニティに1998年の「ユーロ・ブルー」と「デッドガイ・レッド」を再現したというデッキの写真を投稿したのが始まりだった。
18 《島》 4 《流砂》 4 《隠れ石》 -土地(26)- 1 《虹のイフリート》 -クリーチャー(1)- |
4 《ミューズの囁き》 4 《魔力の乱れ》 4 《対抗呪文》 4 《衝動》 3 《マナ漏出》 1 《記憶の欠落》 3 《禁止》 2 《雲散霧消》 4 《放逐》 4 《ネビニラルの円盤》 -呪文(33)- |
4 《シー・スプライト》 4 《水流破》 1 《丸砥石》 2 《転覆》 4 《不毛の大地》 -サイドボード(15)- |
「ユーロ・ブルー」は青単の打ち消しをこれでもかと詰め込み、自身のターンでやることはカードを引いて土地を置いてターンエンド。相手のターンでは打ち消しor《ミューズの囁き》でのドローを繰り返し、《虹のイフリート》《隠れ石》と最低限の勝ち手段でフィニッシュを目指す……超長期戦を狙うクールすぎるデッキだ。
18 《山》 4 《不毛の大地》 -土地(22)- 4 《ジャッカルの仔》 4 《モグの狂信者》 4 《鉄爪のオーク》 3 《投火師》 4 《ボール・ライトニング》 -クリーチャー(19)- |
4 《ショック》 4 《火葬》 3 《ボガーダンの鎚》 4 《火炎破》 4 《呪われた巻物》 -呪文(19)- |
4 《ボトルのノーム》 1 《最後の賭け》 3 《ファイレクシアの炉》 4 《紅蓮破》 2 《破壊的脈動》 1 《拷問室》 -サイドボード(15)- |
対照的に「デッドガイ・レッド」はスピード重視の赤単だ。《ジャッカルの仔》などの軽量クリーチャーを展開しつつ、《火葬》《火炎破》とプレイヤーを直接襲うダメージ呪文がギッシリ。さらに《呪われた巻物》《ボガーダンの鎚》と継続してダメージを与えられる長期戦にも強い要素が備えられており、赤単の理想とも呼べる形状をしている。ホットなデッキとは「デッドガイ・レッド」のことである。
これらの他にもいずれも10年以上も前の懐かしデッキが持ち込まれ、それらのデッキを皆で順番にプレイして対戦を堪能した。僕も当時は持っていなかったので未プレイだった《ボガーダンの鎚》を改宗して投げ続ける強さを体感したり、《不朽の理想》コンボを決めたり……各々懐かしんだり未知に触れたりと、良い対戦会になった。その中で一堂揃えて「これは強い」「強さのレベルが一段階以上違う」と恐れおののいたデッキが一つ。そう、ヤツの名は……
4 《野蛮な地》 4 《怒り狂う山峡》 2 《溶岩爪の辺境》 2 《竜髑髏の山頂》 1 《根縛りの岩山》 4 《新緑の地下墓地》 3 《沼》 3 《山》 4 《森》 -土地(27)- 4 《朽ちゆくヒル》 4 《芽吹くトリナクス》 4 《血編み髪のエルフ》 3 《包囲攻撃の司令官》 3 《若き群れのドラゴン》 -クリーチャー(18)- |
2 《不屈の自然》 4 《荒廃稲妻》 4 《稲妻》 3 《大渦の脈動》 2 《野生語りのガラク》 -呪文(15)- |
4 《大貂皮鹿》 4 《死の印》 2 《終止》 1 《大渦の脈動》 3 《野生の狩りの達人》 1 《真髄の針》 -サイドボード(15)- |
「ジャンド」!今では黒赤緑の3色で構成されたこのデッキの色を表すフレーズとしてすっかり定着したジャンド。「ジャンド・ミッドレンジ」などというようにあくまで色を表す単語だが……2010年当時は「ジャンド」がデッキ名そのものだったのだ。そもそもジャンドとは『アラーラの断片』で登場した黒赤緑3色からなる断片のこと。この断片に属するカードを用いる3色デッキが「ジャンド」であったわけだ。このジャンドは当時のプロツアー優勝デッキで、正真正銘の強豪デッキであるッ。
「ジャンド」が当時のスタンダードで栄華を極めたのは『アラーラ再誕』が加わってからだ。このセットがもたらした続唱という能力が全てを変えた。唱えた時にそれよりもマナ総量の小さい呪文のオマケを提供する。これがもう……マジック史に名を残すクールすぎる強さだったとはね。中でも《血編み髪のエルフ》は超一級品。何せ4マナ3/2速攻に、《荒廃稲妻》や《大渦の脈動》などアドバンテージの取れる呪文がセットでついてくるのだから…血編み稲妻パンチの流れで一気にライフも手札も根こそぎ持っていく動き、クールすぎて凍り付いた思い出が……
低コストのクリーチャーの質に関しても、この時代のジャンドは素晴らしいラインナップを揃えていて文句なし。2マナで実質的に4/4として扱える《朽ちゆくヒル》。2点のライフを支払って相手が4点のライフを失うのであれば安いものだ。ジャンドは今でいうミッドレンジ、つまり中速のデッキに当たる。クリーチャー総枚数もこのリストだと18と、少なくはないが特段多いというわけでもない。そんな構成であっても、2ターン目に飛び出したヒルでガシガシと積極的に攻撃を仕掛けて、スピーディーにゲームを終わらせるプランを持っていたのが強みだったなぁ……と、ヒルラッシュを受けながら思い出に浸る。
《芽吹くトリナクス》は3マナ3/3、今でこそ平均サイズではあるが当時ではまだこの水準のクリーチャーはそう多くなく、戦闘面で頼もしい上に死亡すると苗木3体を残す……接触戦闘や除去を躊躇う、改めてクールなスペックの持ち主だ。これらが血編みから捲れるのも十分に強く、兎に角厄介な攻めをしてくるデッキである。
軽いところも強いのに、重いところもパワフルなのがジャンドである。《包囲攻撃の司令官》《若き群れのドラゴン》と、カード1枚でトークンを生成して複数体のクリーチャーとなるものがゲームを終わらせるフィニッシャーを務める。
司令官はゴブリンデッキでなくとも十分に強力!とにかく手数の勝負、リソース(戦うための資源)を巡る争いに勝つためにデッキが作られているので、ゴブリン3体を用意するだけでこのカードは偉い。ブロック役として時間稼ぎをしつつ、トークン及び本体を生け贄に捧げて2点ダメージを飛ばして除去orライフ詰め、こう書くとマジで何でもできるカードだったんだな。
ドラゴンの方は6マナで4/4のドラゴンが2体、つまりは実質8/8飛行相当と破格のコスパ。これらのマナを必要とするクリーチャーらのためにも《野生語りのガラク》のマナ加速は超重要!ビーストを生成して攻防に役立てたり、トークン横並び戦術と[-4]能力の相性も◎と、初代プレインズウォーカー・カードのクールすぎる貫録を見せつける。今でこそコモンのカードで各色がトークンを生成するが、当時はそこまで多くもなかった。その中でのジャンドのトークン生産力は抜きんでたものだったんだな。
今回の対戦会で特に目立ったのは、青いデッキがジャンドに苦戦するシーン。あらゆるものを打ち消す「ユーロ・ブルー」であっても、メインデッキでは土地への対抗手段がほとんどない。クリーチャー化する土地、現行スタンダードでも活躍しているが……2010年も強力なものが戦場を闊歩していた。中でもジャンドの象徴、《怒り狂う山峡》!これは攻撃すればするほど大きくなっていく、1枚でゲームに勝てると評された名カードだ。直接的な除去を持っていなかったり、《神の怒り》などソーサリー除去を主体としたコントロールでこの土地に殴られまくり、気絶しそうになったよ(笑)。
サイドボードからなんとかこの土地への対抗手段を……と、2本目に挑むと3ターン目におもむろに唱えられる《大貂皮鹿》!「待て待て待て」のフレーズがテーブルで飛び交い、思わず皆で笑ってしまった。打ち消されない緑のクリーチャーは現スタンダードでも存在しているが、3マナという軽さでこれを備えているのはヤバい。さらに3/3とサイズも良く、さらに青と黒へのプロテクション。ヤバすぎる!この懐かしい色対策を目の当たりにして、なんだか色々思い出せたのもクールなマジック体験だったなぁ。
歴代のスタンダードデッキ同士の、時を越えた夢の対決。クールなドリームマッチにおいて、本家本元の「ジャンド」は最強候補に名を連ねることは間違いない。皆も各々に思い入れのある時代、当時のまま取っておいてあるデッキ、そんなクールな宝物があるんじゃないかな。マジックを初めてまだ日が経っていない人は、今プレイしているこの時間が、後にそう感じられるものになる。だからこそマジックは今日まで続いてきたのだろう。デッキリストは記念写真のようなもの。このコラムも、そんなアーカイブ的な役割を担えるクールなものでありたいものだ。
それじゃあ今週はここまで。Stay cool! Thanks, my friends!!
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