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岩SHOWの「デイリー・デッキ」
赤単アグロ:単色から飛び出すバイパーの奇襲(スタンダード)
『エルドレインの森』の参入でスタンダードは新環境に突入!このセットによりもたらされた環境は、これまでのスタンダードにおける秋とかなり異なる風景をもたらす。それは、ローテーションが“ない”というもの。毎年9・10月頃にリリースされるセットというものは、スタンダードにローテーションをもたらしてきた。新しいセットが加わることでカードプールが拡がった分、古いセットがローテで押し出され、3・4つほどのセットが使用できなくなるという入れ替わりだ。これによりスタンダードは他のフォーマットにないカードの使用期限が設けられ、いつまでも同じカード・同じデッキがスポットライトを浴び続けるのではなく、また別のデッキやカードが注目されるようになるという流れが自然の摂理として起こっていた。
しかしこのスタンダードのローテーションに関する変更が、この2023年より実施された。そのため今年はローテなしで純粋に新カードが加わった、より広いカードプールでのデッキ構築を行うフォーマットとなったわけだ。『イニストラード:真夜中の狩り』から『ニューカペナの街角』までのセットに好きなカードがあるプレイヤーにとっては朗報、ローテに慣れていたプレイヤーにとっては新たな刺激。さあ、この変化が何をもたらすか。
少なくともローテ直後のお約束、というものは変化することになるだろう。たとえば「新環境の開幕時はアグロを使え!」という定石。これに関しては考えを改めなければならないかも。そもそも何故そのように言われていたのか?新環境が始まった時、スタンダード全体で見てカードの評価というものは定まっていない。そして新セットのもたらす新たなメカニズムを軸にした野心的な……言うなればどのように動くか保証されていないデッキを店舗イベントやアリーナのランク戦に持ち込むプレイヤーが増えるものである。
そんな渾沌とした中で、アグロ、即ち軽いクリーチャーを主体とした短期決戦デッキというものは、何を使って組めば良いかがわかりやすい。逆にコントロール等の遅いデッキは、カードの真価や仮想敵への対抗手段が見極められなければ構築することが簡単ではない。シンプルなアグロを組んで、複雑で無駄な部分もまだまだ多い新デッキを蹴散らす……これは手堅い選択だった。赤単のアグロは特に走り回っていたものだ。ただ今回はローテーションがないため、時間のかかるデッキもアグロへの対抗策を十分に用意しながら、新カードを試すという余裕を持った状態で『エルドレインの森』を迎えることになる。
さて、環境最初期に駆け抜ける赤単アグロの命運や如何に……。
13 《山》 4 《シヴの浅瀬》 2 《嵐削りの海岸》 2 《ミレックス》 1 《反逆のるつぼ、霜剣山》 -土地(22)- 4 《僧院の速槍》 4 《ヴォルダーレンの美食家》 4 《煮えたぎるバイパー》 4 《魅力的な悪漢》 2 《ロノムの発掘家、フェルドン》 2 《怪しげな統治者、スクイー》 2 《擬態する歓楽者、ゴドリック》 -クリーチャー(22)- |
4 《火遊び》 4 《稲妻の一撃》 4 《熊野と渇苛斬の対峙》 4 《勇気の徳目》 -呪文(16)- |
-サイドボード(0)- |
というわけで、前回に引き続きネットで発見したリストを紹介しつつ、リリースと同時に同アーキタイプをプレイしたレポートをお届けしよう。今回は「面白い!」と思ったこの赤単色のアグロデッキ!前環境より強い赤の速攻系カード、《熊野と渇苛斬の対峙》《ロノムの発掘家、フェルドン》《怪しげな統治者、スクイー》などで攻めつつ、《火遊び》《稲妻の一撃》をクリーチャーや対戦相手に撃ち込んで効率よくライフを攻める……とにかくスピーディーにゲームを終わらせる、アグロの精神には変化なし。
そこに加わった新カード、それが赤単を赤単でないものに変化させているのが実に面白い。《煮えたぎるバイパー》!2マナでパワー2、タフネスこそは1と低いが最低限の打点を持ちつつ……対戦相手が3マナ以下の呪文を唱えれば1点ダメージを与えるという、過去の赤単を支えた名カードを思い起こさせる、攻めの妨害能力持ち!このバイパーがいることで《切り崩し》などで耐えようとする相手に、ピシピシと1点のボディブローを撃ち込んでいく。これが後で効いてくるぞ、勝負を分ける1点になり得るぞと。
そしてこのバイパーの武器はもう一つ、「出来事」!クリーチャーとして唱える前に《蒸気洗浄》というソーサリーとしても唱えられるのだ。この出来事が行うのはシンプルなバウンス。パーマネントを手札に戻す、疑似的な除去だ。破壊や追放と異なり戻したパーマネントは再展開されてしまうため、一時的な除去にしかならない。しかしアグロであればその一瞬!ほんの一瞬でも戦場から離れてくれるだけで十分!そんなタイミングが存在する。《黙示録、シェオルドレッド》が出てきて、攻撃が出来ず、そのままターンを返したら回復されて……赤の負け筋、アグロの負けパターン。これを2マナで回避してそのまま勝ちに行ける!赤単色のクリーチャーであるバイパーの持つ青い出来事。土地に《シヴの浅瀬》などの青マナを加えられる2色土地を採用することで、赤単にほんのり青い要素を加えるというのは無理のない構築だ。スマートな構築だぜ……。
さて、テクニカルなバイパーに期待しながら夜更かししつつ初日にパックを剥くも……出ず!悲しいかな、バイパータイプの赤単を組むのはしばしお預けとなってしまった。まあ個人的にバイパーレッドを組むなら入れたかった《眠らずの尖塔》は揃ったので、あの蛇がこちらに這い寄ってくるのを楽しみに待つとしよう。
赤の軽いレアはある程度手に入ったので、赤単アグロを組むには申し分なかった。《ロティサリーの精》は新たな1マナ圏として定着できるか?速攻ではなく威迫というところを活かすことができるかがポイントになってくるだろう。《魅力的な悪漢》《怒り狂う戦闘ネズミ》はセットで使いたいと思わせる2マナ圏。戦闘ネズミで悪漢のコスト軽減を狙ったり、悪漢1枚で戦闘ネズミの祝祭を誘発させたり……良い感じに噛み合わせたいなと思いながら同居させる。というわけで例によってどのレアも4枚採用出来る!って感じの万全の手持ちではないが、環境最初期に組んでプレイしたリストがこちら。
19 《山》 1 《反逆のるつぼ、霜剣山》 2 《ミシュラの鋳造所》 -土地(22)- 4 《フェニックスの雛》 4 《僧院の速槍》 3 《ロティサリーの精》 2 《魅力的な悪漢》 2 《怒り狂う戦闘ネズミ》 2 《ロノムの発掘家、フェルドン》 2 《血に飢えた敵対者》 -クリーチャー(19)- |
4 《巨怪の怒り》 4 《火遊び》 4 《稲妻の一撃》 2 《ナヒリの戦争術》 1 《勇気の徳目》 4 《熊野と渇苛斬の対峙》 -呪文(19)- |
-サイドボード(0)- |
赤らしく憤怒!激情!そんな燃える感情に満ちた「怒り赤単」!キーカードは《巨怪の怒り》!クリーチャーのパワーを2上げつつ、怪物の役割を与えるインスタントだ。前評判も高かったこのカード、実際に使ってみると……めっちゃ強い!瞬間的に3点の打点を弾き出しつつ、次ターン以降も1点上乗せが残るので1マナとは思えないとんでもないダメージ効率を誇っている。このめっちゃ強いインスタントで《僧院の速槍》などの定番のメンバーや、威迫を持つロティサリーを鍛えて大ダメージを叩き込んでいく。
《血に飢えた敵対者》は《稲妻の一撃》等のダメージ呪文以外の選択肢が増えたことで、これまで以上に頼もしいカードになった感がある。通常コストと誘発型能力のコスト、合わせて5マナで6/4速攻トランプル!さらに次ターン以降も4/4トランプルが残るので、ゲームが多少長引いてもどんとこいだ。
悪漢と戦闘ネズミの感触も良く、ロティサリーは最低限土地を伸ばして敵対者の能力に繋げられると、新カードの手ごたえは◎。とにかくこれまでの赤単になかったトランプルの要素が加わったことは、ちょっとした革命だ。《巨怪の怒り》、皆も唱えて怒りを叩きつけよう。これとバイパーの組み合わせもやってみたいよなぁ。
結論から言うと、環境最初期の赤単……勝てました!アリーナのランク戦ではかなり遭遇することになるので、しっかりとガードを固めておくことを忘れずに。サイドボードには赤という色を対策するもの、ライフを回復できるものを備えておくべし。逆に赤単側は強さがバレている中、対策された上からどう勝つか?腕の見せ所だ。
さあ、スタンダードの環境は動き出している!乗り遅れるな!
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