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戦略記事

岩SHOWの「デイリー・デッキ」

アミュレット・タイタン:フィーチャーマッチで何が起きたか!?(モダン)

岩SHOW

 モダン。その言葉の意味するところは現代的、当世風。最近、今どきの~みたいな意味合いだね。マジックにおけるモダンとは『第8版』以降のセットが使用可能なフォーマットだ。

 マジックのカード枠がいわゆる旧枠と呼ばれるものから新枠(今のものより一世代前のもの)へと切り替わった以降のセットが使えるよ、ということなんだが……この間の「プロツアー・指輪物語」にて実況のかつおぶし石川さんがもたらしたインフォメーションには驚いたね。その『第8版』は20年前のセット!衝撃の事実に思わず発汗してしまった。20年前を当世風と言っていいのか?なんて疑問も浮かんでしまう(笑)。マジック30年の歴史において、モダンじゃない時代の方がとっくに短くなってるんだなぁ。

 20年もの時代のカードが詰め込まれているモダン。万を超えるカード、無限にも等しい選択肢からデッキを組むわけだが……スタンダードやパイオニアに比べて、特に凄いなと感じる部分は土地。

 プロツアーのフィーチャーマッチを観ていても、土地の強さにはもう唸るしかない。マナ基盤の安定、多色化はもちろんのこと、基本土地タイプを揃えて版図呪文を強くする、フェッチランドによる墓地のカウント上昇や上陸誘発、起動&誘発型能力を持ったものなどなど……戦場に出てくる土地がとにかく強い。そんな土地を主役にしたデッキも存在するモダン。中でも今大会においてトップ8に食い込んだ「アミュレット・タイタン」はもはや芸術品の域。今回はこのデッキを取り上げよう!

ドミニク・ハーヴィー/Dominic Harvey - 「アミュレット・タイタン」
プロツアー・指輪物語 / モダン (2023年7月28~30日)[MO] [ARENA]
4 《ウルザの物語
1 《宝石の洞窟
3 《
2 《崩壊する痕跡
2 《マイコシンスの庭
2 《トレイリア西部
4 《ゴルガリの腐敗農場
1 《処刑者の要塞
1 《軍の要塞、サンホーム
2 《溶鉄の尖峰、ヴァラクート
1 《ボロスの駐屯地
1 《セレズニアの聖域
4 《シミックの成長室
3 《耐え抜くもの、母聖樹
1 《ヴェズーヴァ
1 《天上都市、大田原
-土地(33)-

1 《耕作する巨躯
4 《原始のタイタン
4 《イリーシア木立のドライアド
2 《迷える探求者、梓
4 《樹上の草食獣
-クリーチャー(15)-
4 《召喚士の契約
4 《一つの指輪
1 《探検の地図
4 《精力の護符
-呪文(13)-
1 《気前のよいエント
1 《ワームとぐろエンジン
1 《忍耐
3 《四肢切断
2 《羅利骨灰
1 《白鳥の歌
1 《否定の契約
1 《トーモッドの墓所
1 《仕組まれた爆薬
1 《光輝の泉
1 《カルニの庭
1 《ボジューカの沼
-サイドボード(15)-

 過去にも何度か当コラムで取り上げ、その度に「コンボの複雑さを文章で伝えられているのか?」ちょっとした不安も内包しつつ、それでも「モダンらしさ溢れるデッキだしなぁ」ということでスルーはできずにいた……というデッキだ。デッキ名にも冠しているキーカードは《精力の護符》と《原始のタイタン》。タイタンの能力で戦場に出す土地はタップイン(タップ状態で戦場に出ること)であり、すぐさまマナを得るというわけにはいかない。このようにタップインの土地各種を護符の能力でアンタップすることで恩恵を受けようというコンボデッキである。

 2マナを加えられるがタップイン+土地を手札に1枚戻すというデメリット付きの《シミックの成長室》などの通称「お帰りランド」。お帰りランドを護符でアンタップさせることで、土地を手札に戻す前にこの土地から2マナを得ることが可能だ。その上でそのお帰りランド自身を手札に戻す。そして《イリーシア木立のドライアド》《迷える探求者、梓》《樹上の草食獣》などのクリーチャーでその土地を再び戦場に出し、またアンタップになったところでマナを得る。護符は複数枚並ぶとそれだけ誘発してマナを加えられるので、複数の護符とお帰りランド、そしてこれら土地を出すカードの組み合わせから想像を絶するマナ加速が行えるのだ。

 そんな溢れ出るマナでどう勝つか?これを伝えるのに具体例があればなとこれまでもずっと思ってたんだけど……最高におあつらえ向きなサンプルがあるじゃないか。そう、プロツアーのフィーチャーマッチで起きたことをそのまままとめれば良いのだ。ドミニク・ハーヴィー/Dominic Harveyが披露した圧巻の「アミュレット・タイタン」捌き。とくとご覧あれ!

※《ウルザの物語》のⅢ章能力から2枚目の《精力の護符》を戦場に出すも、《ウルザの物語》以降は土地を戦場に出せず、土地0枚の状況が続いている。

①《ゴルガリの腐敗農場》をプレイ。護符の能力が計2回誘発し、緑マナ2黒マナ2を加える。腐敗農場が手札に戻る。

②《樹上の草食獣》を唱え、その能力で手札から腐敗農場を戦場に出す。また2回の誘発を経て、マナの合計は緑3黒4。

③緑1マナを残して《原始のタイタン》を唱え、その能力から《セレズニアの聖域》《シミックの成長室》を戦場へ。各々が護符で2回アンタップ、マナの合計は緑5白2青2。

④《召喚士の契約》でタイタンを手札へ、これを唱える。残りマナ緑2白1。

⑤タイタンの能力で《ボロスの駐屯地》と《処刑者の要塞》を戦場へ。護符が誘発、まずは駐屯地の方を2回解決して白2赤2を加える。

⑥要塞の1回目のアンタップを解決、これの能力をタイタン1体を対象にして起動。パワー+2と速攻&警戒を与える。2回目の護符の誘発を解決してアンタップし、もう1体のタイタンにも同様に速攻を持たせる。最後に駐屯地の能力を解決し、要塞を手札に戻す。

⑦タイタン2体で攻撃宣言。タイタン1体目の能力を解決し《ヴェズーヴァ》《シミックの成長室》が戦場へ。《ヴェズーヴァ》は《ボロスの駐屯地》のコピーになる。それぞれに2回アンタップ、マナを加えて残マナは白青赤緑が2マナずつ。

⑧2体目のタイタンの能力で《軍の要塞、サンホーム》を戦場へ。これを2回起動し、タイタンがそれぞれ二段攻撃を持つ。32点のダメージでフィニッシュ。

 土地0枚の状況からコンボ完走……スゴイ、凄すぎるッッ!スゲェの一言しか出ないぞ。これぞまさしくフィーチャーマッチ、職人の完璧なアミュレット捌き。ハーヴィーはこの勢いのままトップ8入賞。それも納得の素晴らしいプレイを披露してくれた彼に、改めて拍手を。

 モダンのデッキって半端ない、マジックの20年って尋常じゃない。「アミュレット・タイタン」に惚れこんで、デッキを作ろうと志したプレイヤーもいるんじゃないか?君もいつか大舞台で素晴らしいプレイを披露する機会に恵まれることを願っているよ!

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