READING

戦略記事

市川ユウキの「プロツアー参戦記」

プロツアー『ローウィンの昏明』 前編

市川 ユウキ


 こんにちは!市川(@serra2020)です!今回はプロツアー『ローウィンの昏明』に向けての調整記と大会レポートを綴っていこうと思います。

 前編では、1月30日から2月1日までに行われたプロツアー『ローウィンの昏明』に向けての調整記をお送りします。よろしくお願いします。
 

0. 近況

 唐突ですが、ピンチです。MOCS(Magic Online Champions Showcase)にてプロツアー『久遠の終端』、第31回マジック:ザ・ギャザリング世界選手権、そして今回のプロツアー『ローウィンの昏明』の権利を獲得した筆者でしたが……

  • プロツアー『久遠の終端』:8勝8敗
  • 第31回マジック:ザ・ギャザリング世界選手権:2勝5敗(初日敗退)

 ──と、いかんせん鳴かず飛ばずな成績に終始しており、ストックしていた権利もとうとう最後となってしまいました。

 このまま目をつむってフルスイングしていても三球三振が目に見えているので、ここまでの敗因を分析します。

プロツアー『久遠の終端』
 

 タメシ・ベルチャーがベストデッキだと考えつつも、経験不足から他のデッキを使用
→結果、タメシ・ベルチャーは高いウィンレートを記録し、優勝者も輩出

第31回マジック:ザ・ギャザリング世界選手権
 

 個人としてはティムール・カワウソに注力。チームデッキはバント気の技だったが、どちらにも風向きの悪さを感じ、2つ目のチームデッキであるイゼット・ルーティングを急遽使用
→結果、デッキに慣れておらず、ドラフト2勝1敗するも構築0勝4敗で初日落ち

 この2つの失敗に共通して言えるのは、自分の引き出しの狭さです。

 1回目は青単《ゴブリンの放火砲》を選べていればベストデッキであったことは疑いようがなく、2回目はベストデッキではなかったものの、デッキに慣れていれば2日目に進出することは可能だったでしょう。

 使用可能なデッキを広げておく作業は、チームテストが始まってからでは基本的に遅いです。 チームテストは、個人のプレイ練度を上げるというよりも「使うデッキを選ぶ作業」に重きが置かれるからです。

 ですので、始まるまでにどれだけ研鑽を積んでおくかが重要になります。そのため今回は、チームテストが始まるまでに浅く広くスタンダードのデッキをプレイすることにしました。
 

1. 調整メンバー

 

 また、今回から森山ジャパンに復帰しました。プロツアーにカムバック後の2回のイベントは、国際的テストチーム「Team Cosmos Heavy Play」の一員として活動してきましたが、一旦離脱することに。

 理由ははっきりしていて、自分の英語力のなさです。

 「そんなの、やる前からわかるだろ!」と言われそうですが、やってみて初めてわかることもあります。2回も参加すれば多少は慣れ、日常会話くらいは比較的できるようになりました。

 問題はマジックの細かいディスカッション。特にリミテッドの議論は英語のカード名も飛び交い、聞き慣れない単語に加えて会話のスピードも非常に速く、ついていけませんでした。都度録音して、終わった後に翻訳しながら聞き直していましたが、そうなると単純に2倍の時間がかかります。構築のディスカッションも、相手の言っていることは概ね理解できるものの、自分が言いたいことをすべて伝えるのはなかなか難しい。

 そんな歯がゆさを感じている中で森山ジャパンからちょうど復帰の打診があり、厚かましくも復帰させてもらいました。

 ただ、Team Cosmos Heavy Playでの経験も本当に素晴らしく、とても楽しい時間でした。自分の英語力のなさが悔しくもありつつ、チームメンバーとの関係が切れたわけでもないので、また機会があれば挑戦してもいいかなとも思っています。

 紆余曲折ありつつ、旧知の森山ジャパンメンバーとともにプロツアー『ローウィンの昏明』に向けて練習を開始しました。今回の目標は10勝6敗以上で、次回プロツアー・ラスベガスの権利獲得です。
 

2. スタンダード/前環境末期

シミック・ウロボロイド
Simon Nielsen - 「Simic Ouroboroid」
Magic Spotlight The Avatar – Lyon / スタンダード(2026年1月11日)[MO] [ARENA]
4 《植物の聖域》
3 《ウィローラッシュの境界》
7 《森》
4 《繁殖池》
4 《マルチバースへの通り道》
-土地(22)-

1 《孔蹄のビヒモス》
1 《再利用の賢者》
2 《マネドリ》
1 《失われし伝承の歩哨》
1 《鋭い目の管理者》
4 《ラノワールのエルフ》
4 《アナグマモグラの仔》
4 《遺伝子送粉機》
1 《マラング川の執政》
4 《蜘蛛の顕現》
4 《ウロボロイド》
4 《量子の謎かけ屋》
-クリーチャー(31)-
2 《跳ね弾き》
4 《自然の律動》
1 《スパイダーセンス》
-呪文(7)-
2 《屑鉄撃ち》
2 《神出鬼没の狩人、スーラク》
1 《軽蔑的な一撃》
1 《声も出せない》
2 《鋭い目の管理者》
2 《溶かし歩きの消散》
1 《ビビアン・リード》
1 《バーシンセー》
1 《スパイダーセンス》
2 《魂標ランタン》
-サイドボード(15)-
(magic.gg より引用)

 

 シミック・ウロボロイドは、登場当初は《遠眼鏡のセイレーン》や《天才遺伝学者、ジャッカル》などが入ったアグロ寄りのデッキでした。

 

 現在は《蜘蛛の顕現》などのマナクリーチャーが大量に採用され、《ウロボロイド》、そして《孔蹄のビヒモス》を目指すランプデッキへと変貌。マナクリーチャーの水増しとして《マネドリ》や《自然の律動》も入り、再現性の高い構成になっています。

バント気の技
Nelson, Kye - 「Bant Airbending」
Magic Spotlight: The Avatar - SCG CON Atlanta / スタンダード(2026年1月10日)[MO] [ARENA]
4 《始まりの町》
3 《フラッドファームの境界》
4 《繁殖池》
4 《マルチバースへの通り道》
4 《ハッシュウッドの境界》
1 《平地》
2 《植物の聖域》
-土地(22)-

4 《素早き救済者、アン》
4 《ラノワールのエルフ》
2 《遺伝子送粉機》
4 《アナグマモグラの仔》
4 《岐路に立つアン》
4 《木苺の使い魔》
4 《灰毛の天才、オーロック博士》
4 《不動の守護者、アッパ》
-クリーチャー(30)-
4 《次元転移用ウェブウォッチ》
4 《気のベンダーの位に至る》
-呪文(8)-
2 《再利用の賢者》
2 《エイヴンの阻む者》
4 《縫い目破り》
1 《クチルの側衛》
1 《魂の洞窟》
1 《スパイダーセンス》
2 《アバターの怒り》
2 《量子の謎かけ屋》
(melee.gg より引用)

 

 世界選手権後、強烈なメタによって環境から姿を消していたバント気の技は、環境末期に復権しました。

 

 その立役者は《次元転移用ウェブウォッチ》でしょう。《次元転移用ウェブウォッチ》のマナはこれによって追放したカードのキャストコストに充てられるのはもちろん、気の技で追放したカードを唱えることも可能です。

 

 また、《灰毛の天才、オーロック博士》で《次元転移用ウェブウォッチ》で捲れたカードのコストが安くなったり、《次元転移用ウェブウォッチ》自体を《不動の守護者、アッパ》で追放して再度リソースを取るなど、デッキと相性がピッタリ。

 正直、これまで採用されていなかったのが不思議なくらいデッキに噛み合ったカードで、これによってバント気の技は大幅強化。

 

 問題だったマナベースの脆弱さも、『ローウィンの昏明』で《寺院の庭》《神聖なる泉》が加わることで改善が確定しているのもポジティブ要素です。

イゼット講義
 Tomajko, Oliver - 「Izzet Lessons」
Magic Spotlight: The Avatar - SCG CON Atlanta / スタンダード(2026年1月10日)[MO] [ARENA]
6 《島》
1 《アグナ・ケラ》
3 《山》
4 《マルチバースへの通り道》
4 《リバーパイアーの境界》
4 《尖塔断の運河》
-土地(22)-

4 《ばあば》
-クリーチャー(4)-
3 《嵐追いの才能》
1 《轟く機知、ラル》
4 《ブーメランの基礎》
4 《爆裂の技》
2 《アイローの表演》
3 《忍耐の記念碑》
4 《火の技の修行》
4 《積み重ねられた叡智》
4 《愛着を捨てる》
1 《飲めば潤う!》
4 《美術家の才能》
-呪文(34)-
1 《司書、ワン・シー・トン》
1 《金屑の嵐》
1 《今のうちに出よう》
1 《アイローの表演》
2 《無(む)効(こう)》
1 《紅蓮地獄》
1 《轟く機知、ラル》
2 《瞬間凍結》
1 《量(りょう)子(し)の謎(なぞ)かけ屋(や)》
2 《魂標ランタン》
1 《否認》
1 《舷側砲の一斉射撃》
(melee.gg より引用)

 

Lukas Jaklovsky - 「Izzet Lessons」
Magic Spotlight The Avatar – Lyon / スタンダード(2026年1月11日)[MO] [ARENA]
5 《島》
2 《アグナ・ケラ》
4 《山》
4 《マルチバースへの通り道》
4 《リバーパイアーの境界》
4 《尖塔断の運河》
-土地(23)-

4 《ばあば》
-クリーチャー(4)-
1 《噴出の稲妻》
2 《ブーメランの基礎》
4 《爆裂の技》
3 《アイローの表演》
4 《火の技の修行》
4 《忍耐の記念碑》
2 《呪文貫き》
4 《積み重ねられた叡智》
3 《愛着を捨てる》
2 《飲めば潤う!》
4 《美術家の才能》
-呪文(33)-
2 《否認》
1 《本質の散乱》
1 《アイローの表演》
1 《愛着を捨てる》
2 《無効》
1 《轟く機知、ラル》
2 《瞬間凍結》
2 《魂標ランタン》
1 《量子の謎かけ屋》
1 《炎魔法》
1 《舷側砲の一斉射撃》
-サイドボード(15)-
(magic.gg より引用)

 

 世界選手権を優勝したイゼット講義も、環境で存在感を放っていました。面白いのは、デッキが2つに派生していたことです。

 

 違いは《嵐追いの才能》の有無。

 《嵐追いの才能》自体はとても強力なカードですが、環境がシミック・ウロボロイド、バント気の技という2つの《アナグマモグラの仔》デッキと、イゼット講義のミラーマッチで大部分を占めるのであれば、それらに効果的でない《嵐追いの才能》は不要である、とも言えます。

 

 ただ、それらの代わりに入るカードも《噴出の稲妻》や《呪文貫き》など、決め手に欠けるカードたちで、理論的には正しく感じるものの、直感的にはそれらのリストをあまり良く感じていませんでした。

 イゼット講義は“講義”というキーワードゆえに、新セットでの大幅なアップデートは見込めませんが、待望の《蒸気孔》の再録によってマナベースが確実に良くなります。

緑単上陸

 イゼットカラーのデッキの対抗馬として登場した上陸デッキ。

 《氷耕しの探検家》や《強靭形態の調和者》、《重厚な世界踏破車》などのタフネスの高いクリーチャーは火力呪文で対処しづらく、《強靭形態の調和者》はワープコストで追放領域に逃げ、《重厚な世界踏破車》は機体であるためソーサリースピードの除去が当たりません。いずれも対処の難しいクリーチャーです。

 

 《強靭形態の調和者》と《氷耕しの探検家》の相性は目を見張るものがあります。

 《脱出トンネル》と組み合わせると、《ラノワールのエルフ》が致死ダメージ+ブロック不可で突っ込んでくることもしばしばありました。

 環境末期は、上記の2つの《アナグマモグラの仔》デッキ、イゼット講義を代表とするイゼットカラーの各種デッキ、そしてそれらに有利な緑ベースの上陸デッキ、といった様相でした。
 

3. スタンダード

スゥルタイ・リアニメイト
 

 『ローウィンの昏明』の目玉カードであり、世界王者ジャン=エマニュエル・ドゥプラ/Jean-Emmanuel Deprazのプレイヤー・スポットライト・カードでもある《並外れた語り部》。

 一見して、スゥルタイ・リアニメイトの純粋強化と感じました。

行弘 賢 - 「スゥルタイ・リアニメイト」
第31回マジック:ザ・ギャザリング世界選手権 / スタンダード(2025年12月5~7日)[MO] [ARENA]
3 《花盛りの湿地》
4 《繁殖池》
1 《魂の洞窟》
1 《迷路庭園》
1 《島》
1 《マルチバースへの通り道》
1 《沼》
1 《地底街の下水道》
2 《地底の遺体安置所》
3 《ウェイストウッドの境界》
3 《湿った墓》
2 《ウィローラッシュの境界》
-土地(23)-

3 《簒奪者、アーデン》
4 《最後の贈り物の運び手》
4 《繁殖蜘蛛》
2 《苦難の収穫者》
4 《不注意な読書家》
4 《ベイルマークの大主》
4 《スーペリア・スパイダーマン》
1 《峰の恐怖》
-クリーチャー(26)-
3 《花粉の分析》
4 《誉れある死者の目覚め》
4 《苦々しい勝利》
-呪文(11)-
1 《魂の洞窟》
3 《大洞窟のコウモリ》
1 《破壊の嵐孵り》
2 《災厄の占い師、グラルブ》
4 《脅迫戦術》
2 《魂標ランタン》
1 《緊急の検死》
1 《網撃の精鋭》
-サイドボード(15)-
 

 《スーペリア・スパイダーマン》に依存したデッキであるスゥルタイ・リアニメイトにとって、《並外れた語り部》はその水増しになりつつ、手札の《最後の贈り物の運び手》を捨てる手段にもなります。まさに理想的なカードと言えます。

 

 また、『ローウィンの昏明』の目玉サイクルのインカネーションサイクルのうち、《欺瞞》と《幽愁》は自然にデッキに入りそうな逸材です。盤面や手札に干渉しながら墓地に優秀なクリーチャーを送り込めるため、非常にデッキにフィットしています。

 

 さらに《スーペリア・スパイダーマン》をプレイするときに{U}{U}{B}{B}とマナを支払っていた場合、墓地の《欺瞞》をコピーすればなんと《欺瞞》の両方の能力を使えるという好相性。

 これによって《最後の贈り物の運び手》などを引いていなかった場合でもミッドレンジライクにゲームを進めることも可能になりました。

スゥルタイ・リアニメイト[MO] [ARENA]
1 《島》
1 《沼》
4 《繁殖池》
4 《草むした墓》
1 《魂の洞窟》
4 《花盛りの湿地》
4 《地底街の下水道》
4 《ウェイストウッドの境界》
-土地(23)-

4 《最後の贈り物の運び手》
2 《苦難の収穫者》
3 《簒奪者、アーデン》
4 《並外れた語り部》
4 《欺瞞》
4 《不完全な自然体、ルーウェン》
4 《スーペリア・スパイダーマン》
-クリーチャー(25)-
4 《苦々しい勝利》
3 《花粉の分析》
4 《誉れある死者の目覚め》
1 《幻獣との交わり》
-呪文(12)-
2 《魂標ランタン》
3 《死人に口無し》
1 《鋭い目の管理者》
1 《不屈の屑鉄ボット》
2 《強迫》
2 《緊急の検死》
1 《災厄の占い師、グラルブ》
1 《量子の謎かけ屋》
2 《幽愁》
-サイドボード(15)-

 ただし問題はマナベースです。2ターン目に《欺瞞》の黒黒を要求しつつ、《幽愁》の青青も満たすのは非常に難しい。そのため主にマナベースの試行錯誤を重ねることになりました。

 これは青を極力廃した形の緑黒タッチ青バージョン。

スゥルタイ・リアニメイト[MO] [ARENA]
2 《繁殖池》
4 《湿った墓》
4 《草むした墓》
4 《魂の洞窟》
4 《地底街の下水道》
4 《ウィローラッシュの境界》
4 《始まりの町》
-土地(26)-

4 《最後の贈り物の運び手》
2 《苦難の収穫者》
4 《ベイルマークの大主》
3 《簒奪者、アーデン》
4 《並外れた語り部》
4 《欺瞞》
4 《幽愁》
4 《スーペリア・スパイダーマン》
-クリーチャー(29)-
4 《苦々しい勝利》
1 《報いの呪詛》
-呪文(5)-
4 《大洞窟のコウモリ》
3 《報いの呪詛》
2 《緊急の検死》
2 《災厄の占い師、グラルブ》
2 《悪夢滅ぼし、魁渡》
1 《破壊の嵐孵り》
1 《量子の謎かけ屋》
-サイドボード(15)-

 こっちは緑を《並外れた語り部》と《幽愁》のみに絞って《魂の洞窟》をフル採用した青黒タッチ緑バージョン。ただ、どれもしっくり来ず。

 

 既存のリストに入っていた《不注意な読書家》自体非常に強力なカードです。特に《不注意な読書家》から《並外れた語り部》の動きは強力で、《並外れた語り部》で持ってきた《最後の贈り物の運び手》などをラグなくディスカードすることが出来ます。

 ただ、2ターン目に黒黒を要求する《欺瞞》との共存はかなり難しいものがあります。

 

 その他、《誉れある死者の目覚め》もマナベースの問題で採用しづらかったり、どうしても《欺瞞》、《幽愁》に引っ張られてデッキが破壊されている感があります。

 また、デッキの強化ポイントが《並外れた語り部》によって安定して4ターン目に《スーペリア・スパイダーマン》をプレイできるようになったことであり、1ターン早く《スーペリア・スパイダーマン》が出るような爆発力強化、というワケではありません。

 そのため、相手のデッキが早い場合、例えば先手4ターン目には《孔蹄のビヒモス》が突っ込んでくるシミック・ウロボロイド、《素早き救済者、アン》によってこちらの動きをディレイしつつコンボに入ってくるバント気の技などにはその強化ポイントはやや活きづらいと言えます。

 採用できるカードの選択肢は多いため色々試行錯誤してみましたが、結局どれも上手くいかず。結局問題の根本がマナベースにある以上、ここから大幅なイノベーションは起きにくいと判断し、早々に選択肢から外すことにしました。

バント気の技
バント気の技[MO] [ARENA]
1 《平地》
1 《植物の聖域》
4 《神聖なる泉》
4 《繁殖池》
4 《寺院の庭》
2 《フラッドファームの境界》
4 《ハッシュウッドの境界》
4 《始まりの町》
-土地(24)-

4 《ラノワールのエルフ》
4 《木苺の使い魔》
4 《灰毛の天才、オーロック博士》
4 《不動の守護者、アッパ》
4 《アナグマモグラの仔》
2 《岐路に立つアン》
4 《素早き救済者、アン》
4 《並外れた語り部》
-クリーチャー(30)-
2 《気のベンダーの位に至る》
4 《現実改変の支点》
-呪文(6)-
2 《魂標ランタン》
1 《鋭い目の管理者》
4 《縫い目破り》
2 《呪文嵌め》
2 《エイヴンの阻む者》
2 《量子の謎かけ屋》
2 《Wistfulness]》
-サイドボード(15)-
 

 前述の通りマナベースが大幅に強化されたバント気の技は、非常に良い感触でした。

 

 以前採用されていた《マルチバースへの通り道》がどうしても気に入らなかったため、それを抜けるのは大きな改善です。3色デッキである以上、場に出たとき単色土地になるカードは事故の元で、《フラッドファームの境界》などと絡めた2ランドキープも難しい土地でした。

 

 また、《並外れた語り部》もここで活躍します。《素早き救済者、アン》《灰毛の天才、オーロック博士》《不動の守護者、アッパ》といった異なるクリーチャーを揃えるコンボデッキであるため、それらにアクセスできるカードは非常に貴重です。

 しかし、アメリカの地域チャンピオンシップで躍進し、一気にトップメタの仲間入り。

 勝率表を見ても全対面有利という異常な数値が出ていました。こうなると、《門衛のスラル》や《倦怠の宝珠》といった明確なメタカードが増えるのは当然です。実際、チーム内でもそれらを厚く取る動きが広がっていました。

 ランクマッチでの勝率も目に見えて下がり、以前の世界選手権の調整時と同様に「局所的なメタカードを突破できるデッキではない」という印象が再び強まりました。

 直感を信じるのもプレイヤースキルの一部だと考え、別の選択肢を探すことにしました。

《自然の律動》系デッキ
Wylde-LaRue, Tristan - 「Four-Color Rhythm」
Regional Championship - SCG CON Portland - Season 4 - Round 2 / スタンダード(2026年1月24日)[MO] [ARENA]
2 《ウィローラッシュの境界》
1 《森》
4 《始まりの町》
3 《寺院の庭》
4 《繁殖池》
4 《マルチバースへの通り道》
4 《ハッシュウッドの境界》
-土地(22)-

1 《孔蹄のビヒモス》
4 《マネドリ》
4 《ラノワールのエルフ》
4 《アナグマモグラの仔》
1 《輝晶の機械巨人》
4 《遺伝子送粉機》
1 《マラング川の執政》
4 《蜘蛛の顕現》
1 《爆発的神童》
4 《並外れた語り部》
4 《量子の謎かけ屋》
-クリーチャー(32)-
1 《縫い目破り》
4 《自然の律動》
1 《溶かし歩きの消散》
-呪文(6)-
1 《ウロボロイド》
1 《再利用の賢者》
1 《エレンドラ谷の守護者》
1 《神聖なる泉》
1 《縫い目破り》
1 《鋭い目の管理者》
2 《溶かし歩きの消散》
1 《幽愁》
2 《スパイダーセンス》
2 《魂標ランタン》
1 《勝利の楽士》
1 《鳴り渡る龍哮の征服者》
(melee.gg より引用)

 

Buonadonna, Mason - 「シミック・ウロボロイド」
Regional Championship - SCG CON Portland - Season 4 - Round 2 / スタンダード(2026年1月24日)[MO] [ARENA]
4 《植物の聖域》
3 《ウィローラッシュの境界》
7 《森》
4 《繁殖池》
4 《マルチバースへの通り道》
-土地(22)-

1 《孔蹄のビヒモス》
1 《再利用の賢者》
2 《マネドリ》
1 《鋭い目の管理者》
4 《ラノワールのエルフ》
4 《アナグマモグラの仔》
4 《遺伝子送粉機》
1 《マラング川の執政》
4 《蜘蛛の顕現》
3 《ウロボロイド》
1 《並外れた語り部》
4 《量子の謎かけ屋》
-クリーチャー(30)-
2 《ローウィンの主、オーコ》
2 《スパイダーセンス》
4 《自然の律動》
-呪文(8)-
1 《軽蔑的な一撃》
1 《神出鬼没の狩人、スーラク》
1 《声も出せない》
1 《鋭い目の管理者》
1 《洪水の大口へ》
2 《溶かし歩きの消散》
2 《幽愁》
2 《脚当ての陣形》
1 《バーシンセー》
1 《スパイダーセンス》
2 《魂標ランタン》
(melee.gg より引用)

 

 地域チャンピオンシップで1・2フィニッシュを果たし、チーム内評価も最高。

Kenta Harane - 「Simic Rhythm」
プロツアー『ローウィンの昏明』 / スタンダード(2026年1月30~2月1日)[MO] [ARENA]
4 《植物の聖域》
4 《繁殖池》
4 《森》
4 《マルチバースへの通り道》
1 《始まりの町》
1 《寺院の庭》
4 《ウィローラッシュの境界》
-土地(22)-

4 《アナグマモグラの仔》
1 《孔蹄のビヒモス》
2 《並外れた語り部》
4 《遺伝子送粉機》
1 《鋭い目の管理者》
4 《ラノワールのエルフ》
2 《マネドリ》
4 《ウロボロイド》
4 《量子の謎かけ屋》
1 《ルクサの体現、サブ=スネン》
4 《蜘蛛の顕現》
-クリーチャー(31)-
4 《自然の律動》
2 《スパイダーセンス》
1 《声も出せない》
-呪文(7)-
1 《門衛のスラル》
3 《鋭い目の管理者》
2 《脚当ての陣形》
1 《再利用の賢者》
1 《屑鉄撃ち》
1 《スパイダーセンス》
2 《神出鬼没の狩人、スーラク》
1 《寺院の庭》
3 《声も出せない》
-サイドボード(15)-

 自然とチーム最大勢力になっていきました。

 

 ただ、私はこのデッキに対してネガティブでした。まず、プレイスタイルが絶望的に合っていない。こうしたマナ計算系のデッキは昔から苦手で、トーナメントで良い結果を残したことがありません。

 

 さらに、このデッキが本当に攻略不能なレベルの強さなのか確信を持てませんでした。

 《ラノワールのエルフ》や《アナグマモグラの仔》から《孔蹄のビヒモス》を目指すシンプルな構造のデッキが、環境のメインターゲットになってなお勝ち続けられるのか疑問が残りました。
 

4. 使用デッキ

 紆余曲折の末、私がプロツアーで使用したのはイゼット講義でした。

 直近の大会では全く結果を残せず、使用率は高いのに勝率が低い、いわば“負け組”のデッキでした。しかし私はそこに対してネガティブには感じていませんでした。

 

 理由はシンプルで、デッキパワーの高さを確信していたからです。

 新環境前からイゼット講義を継続して練習していましたが、回すたびに「このデッキは本当に強い」と感じていました。基本はコントロールデッキでありながら、《ばあば》《美術家の才能》《忍耐の記念碑》周りでとんでもない動きができ、問答無用に相手をねじ伏せる展開もあります。

 

 クリーチャーも殆ど入っていませんが、《ばあば》が残ってしまうと相手からするとかなり厳しいですし、サイド後の《量子の謎かけ屋》も相手の《魂標ランタン》などの墓地対策を乗り越えられる良いサイドカードです。

 

 もちろん、墓地対策カードが多いと厳しいマッチアップになることは間違いありません。特にメインボードから繰り出される《魂標ランタン》に対してはお手上げです。

 リソース獲得手段である《積み重ねられた叡智》や、優れた除去である《爆裂の技》をキャンセルされてしまうことを考えると間違いなく勝率が下がる要因でしょう。

回転

 

 しかし、環境のメインターゲットがシミック・ウロボロイドやバント気の技になると考えると、話は別です。

 《魂標ランタン》はそれらのデッキに対しては効率の悪いキャントリップ呪文でしかなく、この直近の結果を踏まえてメインボードに墓地対策を入れようと考える人はごく少数でしょう。

 

 イゼット講義と同じく墓地対策が厳しいスゥルタイ・リアニメイトも結果を出しておらず、環境の墓地対策が薄くなるだろうというのは明白でした。

 また、スゥルタイ・リアニメイトはイゼット講義からすると厳しい相手です。《幽愁》などでメインから《美術家の才能》や《忍耐の記念碑》に対処出来ますし、それらが《魂の洞窟》を経由することもしばしばあるからです。

 しかし、そこは敢えて軽視することにしました。

 まず、直近の大会でスゥルタイ・リアニメイトが勝っていないこと。そして、チーム内で納得いく形のスゥルタイ・リアニメイトが組めなかったこと。この2つの観点からスゥルタイ・リアニメイトは単純にデッキパワーが低いのではないかと考えました。

 いたとしてもデッキ自体が弱いので、トーナメントで勝ち上がっていけば当たらなくなるだろうという判断です。
 

5. デッキ解説

Yuuki Ichikawa - 「Izzet Lessons」
プロツアー『ローウィンの昏明』 / スタンダード(2026年1月30~2月1日)[MO] [ARENA]
1 《アグナ・ケラ》
5 《島》
2 《山》
2 《マルチバースへの通り道》
4 《リバーパイアーの境界》
4 《尖塔断の運河》
4 《蒸気孔》
-土地(22)-

4 《ばあば》
-クリーチャー(4)-
4 《愛着を捨てる》
4 《積み重ねられた叡智》
4 《美術家の才能》
4 《爆裂の技》
4 《火の技の修行》
3 《アイローの表演》
2 《飲めば潤う!》
4 《忍耐の記念碑》
3 《呪文嵌め》
2 《三歩先》
-呪文(34)-
1 《アグナ・ケラ》
2 《無効》
1 《舷側砲の一斉射撃》
2 《本質の散乱》
1 《除霊用掃除機》
2 《否認》
2 《量子の謎かけ屋》
2 《轟く機知、ラル》
2 《魂標ランタン》
-サイドボード(15)-

 今回は珍しくチームデッキに乗らず、単独での使用となりました。自分なりに考えてデッキを組み上げたので、ざっくり解説していきます。

 

 まず《嵐追いの才能》+《ブーメランの基礎》パッケージの不採用について。

 以前は「環境には合っていないが、代替カードも決め手に欠ける」というのが私の考えでした。

 

 しかし、《呪文嵌め》の再録によって評価が変わりました。環境に《アナグマモグラの仔》が多いことを考えると、それを1マナで打ち消せる《呪文嵌め》は非常に強力です。

 

 ミラーマッチでも《美術家の才能》や《積み重ねられた叡智》といったキーカードをカウンターでき、まさに八面六臂の活躍をしてくれます。

 

 さらに、《蒸気孔》の再録によって後手1ターン目でもアンタップインで青マナを構えやすくなったのも大きな追い風です。

 

 空いたスロットには《三歩先》を2枚採用。《嵐追いの才能》不採用によりビートダウンプランがなくなったため、相手のカードとしっかり付き合う構成に寄せました。確定カウンターの中では《三歩先》が最も優秀だと感じています。

  《ばあば》や《美術家の才能》レベル2のマナ軽減の影響を受けやすく、「カウンター+2ドロー・ディスカード」のようなモードも3〜4マナでプレイ可能です。相手が動いてこなければ、《忍耐の記念碑》をコピーしながら2ドロー・ディスカードのモードで使えるなど、構え損になりにくい点も魅力的。

 

 サイドボードには少し珍しい《本質の散乱》を採用。本来この枠は《瞬間凍結》でしたが、緑系上陸の減少とバント気の技の増加というメタゲームの変化を受けて入れ替えました。

 《本質の散乱》の亜種として《今のうちに出よう》なども候補にありましたが、《嵐追いの才能》を採用していないためバウンスモードが活きづらい点や、1ターン目《マルチバースへの通り道》→《火の技の修行》のような展開だと次のターンにプレイできない点を考慮し、《本質の散乱》に決定しました。

 

 サイド後の勝ち筋兼リソースカードとして《量子の謎かけ屋》と《轟く機知、ラル》を採用。メイン戦では《美術家の才能》と《忍耐の記念碑》が通ればそのまま勝てますが、サイド後はそれらが対策されやすくなります。

 《帰化》系のエンチャント/アーティファクト破壊や墓地対策により、《積み重ねられた叡智》が機能しづらくなるため、別軸の勝ち手段が必要になります。

 《量子の謎かけ屋》は《美術家の才能》との相性が良く、《轟く機知、ラル》のマイナス能力は《忍耐の記念碑》を2回誘発させるなど、メインのカード群との噛み合いも優秀です。

 

 墓地対策は《除霊用掃除機》と《魂標ランタン》で分散しました。

 基本的には《魂標ランタン》のほうが強力です。相手の墓地を丸ごと追放できるため、イゼット講義ミラーの《積み重ねられた叡智》への完璧な回答になりますし、スゥルタイ・リアニメイトにも複数対象があるタイミングの《スーペリア・スパイダーマン》に対応できます。

 一方で、《嵐追いの才能》レベル2や《かまどの精》を使ったエレメンタル系デッキのように、墓地の特定カードを狙ったり、継続的に墓地を追放したい相手には《除霊用掃除機》のほうが優れています。

 つまり一長一短ですが、《魂標ランタン》は不要になったらキャントリップで他のカードに変換できるのに対し、《除霊用掃除機》はそれができません。2枚引きたくないカードでもあるため、このバランスに落ち着きました。

 イゼット講義の使用者はチーム内で私一人。森山ジャパンに復帰していきなり単独行動というのもどうかと思いましたが、ここで勝たなければ次はありません。自分の読みとチーム調整の成果を信じ、我が道を行くことにしました。

 この選択ができたのも、前環境からコツコツと様々なデッキを触り、自分の引き出しを増やしてきたからこそ。

 やってて良かった、イゼット講義。


 といったところで前編は終了です。後編ではドラフト環境の考察からトーナメントレポートをお届けします。お楽しみに。

  • この記事をシェアする

RANKING

NEWEST

CATEGORY

BACK NUMBER

サイト内検索