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戦略記事

岩SHOWの「デイリー・デッキ」

ディミーア・コントロール:一家のテーマ、2色の小テーマ(ヒストリック)

岩SHOW

 『ニューカペナの街角』というセットがよく出来ているなと感じたのは。メインテーマである3色の一家と「関係があるようでない、でもちょっと関係のある」みたいなデザインの一家とは別の勢力やニュートラルな連中がカード化されている点。

 それが一体何のことかというと、2色のカードのことだ。3色の一家にはそれぞれにメカニズムやテーマが存在し、それに沿ってカードがデザインされている。その一家を形成する色のうち、2色の組み合わせの多色のカードというものは一家のテーマと相性の良いテーマが用意されている。

 例えば緑白青の斡旋屋一家のテーマは「盾カウンター」であり、そして白青2色のテーマは「カウンターが置かれたクリーチャーに対するボーナス」といった具合に。

 これがリミテッドになった場合には、3色のテーマを活かしたパワフルなデッキを目指すか、2色で小テーマを追求した綺麗なデッキにまとめるか、という選択肢をもたらしてくれてなかなか面白いものだ。

 『アルケミー:ニューカペナ』はこの2色の小テーマを更に発展させる方向で、デジタルならではの挙動を見せるカードが収録されている。

 青黒の2色は墓地にあるカードのマナ総量がテーマとなっており、これの種類が5種類以上あると……というカードがいくつか用意されている。常夜会一家の謀議能力で手札を捨てることと噛み合っているわけだね。

 この青黒の墓地カウントをアルケミー風に発展させたのが《守秘義務》。

Bind_to_Secrecy.png

 このインスタントがどのようなものか、実際に採用されているリストを見ながら解説していこう。

Mystmin - 「ディミーア・コントロール」
ヒストリック (2022年6月5日)[MO] [ARENA]
1 《
3 《
4 《湿った墓
3 《異臭の池
3 《水没した地下墓地
2 《清水の小道
1 《ロークスワイン城
1 《ヴァントレス城
1 《天上都市、大田原
1 《見捨てられたぬかるみ、竹沼
1 《ストーム・ジャイアントの聖堂
1 《目玉の暴君の住処
1 《這い回るやせ地
1 《爆発域
2 《寓話の小道

-土地(26)-

1 《悲哀の徘徊者

-クリーチャー(1)-
3 《守秘義務
1 《痛ましい絆
4 《致命的な一押し
3 《思考囲い
1 《ダブリエルの萎縮
1 《コジレックの審問
2 《湖での水難
1 《ジュワー島の撹乱
2 《除外
1 《神秘の論争
1 《無限の秘本
3 《ヤヘンニの巧技
2 《記憶の氾濫
1 《絶滅の契機
1 《サメ台風
1 《暗記 // 記憶
4 《覆いを割く者、ナーセット
1 《悪夢の詩神、アショク

-呪文(33)-
1 《地底街の略取
1 《守秘義務
2 《才気ある霊基体
1 《無効
1 《ダブリエルの萎縮
1 《思考囲い
2 《霊気の疾風
2 《害悪な掌握
2 《神秘の論争
1 《衰滅
1 《サメ台風

-サイドボード(15)-
MTG Arena Zone より引用)

 

 ヒストリックの「ディミーア(青黒)コントロール」を眺めながら話を進めよう。

 《守秘義務》はモードを持ったインスタントだ。ひとつは《否認》と同じ非クリーチャー呪文に対する打ち消し。もうひとつは対戦相手の墓地のクリーチャーをコピーしたカードを手札に加えるという、デジタルでしかできない処理を行うというもの。

 ヒストリック環境にはコンボデッキも多く、またクリーチャーデッキであっても《集合した中隊》や各種プレインズウォーカーなど、クリーチャーでない呪文に対する打ち消しはあらゆる相手に突き刺さる。その枠が攻守を切り替えるクリーチャーにもなるというのはある種コントロールの理想とも言える。打ち消し兼フィニッシャーとして、アルケミーやヒストリックなどで今後活躍することになるだろうね。

 そして《守秘義務》には墓地に5種類のマナ総量がある場合、カードを1枚もらえるボーナスが付随している。そのカードは以下の15枚の候補からランダムに提示された3枚の中から選択した1枚になる。

 いずれも青と黒、過去のセットの既存のカードであり墓地に関する能力を持ったものだ。《不可思議》や《壊死性の傷》などなど、派手さはないがシブい仕事をする面々が揃っていて味わい深い。昔からの青黒コンを愛するヘビーユーザーであればこのカードのシブさが刺さるのではないだろうかね。

 打ち消しながら《巧みな軍略》《ナーガの信託者》で次の妨害手段を補充したり、クリーチャーのコピーとともに《死体運び》《偏執的な縫い師》など墓地再利用カードを獲得して二段構えで攻めに転じたり……ゲーム展開に応じて臨機応変に、同じカードでも全く同じ働きを見せることはないんじゃないかな?と思えるくらいに引き出しの多い1枚に仕上がっている。

 この《守秘義務》のポテンシャルを発揮するためにも、デッキ内にはなるべく複数種類のマナ総量を取り揃えていきたいところ。低コストで能動的に墓地に落とせる《サメ台風》なんかは良いね。

 《異臭の池》も手札を減らさずにマナ総量0を墓地に投下してくれる。

 《暗記 // 記憶》は4マナの《暗記》かつ6マナの《記憶》であり、これはルールにより墓地にある時のマナ総量は双方を足して10。これだけ重けりゃ他のカードと被るってことはないね。

 《記憶》と《覆いを割く者、ナーセット》のコンボで手札の枚数差を圧倒的なものにするのも未だに強烈なムーブとしてヒストリックで健在だ。他にも分割カードをいろいろと吟味してみても良いかもしれないね。《アズカンタの探索》と組み合わせることでより能動的に墓地を満たしていけるので、そういう構築も楽しそうだなぁ。

 一家の3色だけでなく、所属不明な2色のカードも良いものが揃っているニューカペナ。アルケミーによりその側面をさらに強化された新規カードにも要注目だ。

 テーブルトップのマジックとはまた別ベクトルのものとして、デジタルだからこそのマジックも楽しむことができたら……この上なく贅沢で幸せなことだよな。

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