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戦略記事

岩SHOWの「デイリー・デッキ」

グルール・アグロから飛び出すまさかのコンボ!(パイオニア)

岩SHOW

 その昔、マジックを始めたばかりの時。僕の中学校のコミュニティでは《騙し討ち》と《ウェザーシード・ツリーフォーク》が皆の憧れのカードであった。

 《騙し討ち》は現レガシーでも使われる、クリーチャーのマナ・コストをガッツリ無視する踏み倒し系カードの元祖とも呼べる1枚。エンチャントであり、起動は{R}のみなので何度も能力を使ってお得にクリーチャーを展開できるのが強みだ。

 《ウェザーシード・ツリーフォーク》は緑マナシンボルが3つと非常に濃く、使えるデッキは限られてくるものの5マナでパワー5のトランプルは当時としては破格のスペック。さらに死亡すると手札に戻ることから、除去したり相討ちブロックしたりといった対処を無力化するというのがただひたすらに脅威だった。

 そしてこの2枚はちょっとしたコンボを形成している。ウェザーシードのコストを《騙し討ち》で踏み倒し、速攻で攻撃→その後、《騙し討ち》の能力によりウェザーシードは生け贄に捧げられてしまうが……大丈夫、本人の能力で手札に帰ってくるよ!という、ちょっとしたサイクルを形成できる。

 今見ると牧歌的というかかわいらしいコンボかもしれないが、当時の僕らにとってはえげつない攻めだったんだよな。

 そしてこのコンボに必要なカード2枚を1日でパックから揃えた友人がいた。羨望のまなざしで見られていたなぁ。そしてその2枚の組み合わせが強いと教えられた彼は早速デッキを組むのだが……今となってはなんともなごむエピソードが。

 僕らのコミュニティは皆がマジックのルールを完璧に把握しているわけではなく、かつ当時は今みたいにネットで調べてルールを確認するということもできなかった。なのでルールを間違って解釈しているプレイヤーも少なくなく……騙し討ち&ウェザーシードの彼もその例に漏れず、攻撃したウェザーシードは即座に死亡して手札に戻り、そして{R}を支払えば続けざまに攻撃ができる、と誤った解釈をしていた。「○○君の無限に殴ってくるコンボに勝てへんねんけどどうしたら良いと思う?」と相談され「そんなん、そもそもできへんから大丈夫や!」と答えたのを覚えている(笑)。

 攻撃は1ターンに1回しかできない、マナを支払った回数分だけ攻撃できるなんてことがあったら最高じゃないか、そんなウマい話が……あるんです。2022年、夢のコンボはパイオニアにあった!

IslandGoSAMe - 「グルール・アグロ」
Magic Online Pioneer League 5勝0敗 / パイオニア (2022年3月27日)[MO] [ARENA]
7 《
2 《
4 《踏み鳴らされる地
4 《根縛りの岩山
4 《岩山被りの小道
1 《ハイドラの巣
1 《バグベアの居住地
-土地(23)-

4 《エルフの神秘家
4 《ラノワールのエルフ
4 《群れ率いの人狼
4 《砕骨の巨人
4 《戦闘の祝賀者
4 《ガラクの先触れ
4 《無謀な嵐探し
1 《運命の神、クローティス
-クリーチャー(29)-
4 《鏡割りの寓話
4 《エシカの戦車
-呪文(8)-
3 《漁る軟泥
2 《運命の神、クローティス
4 《引き裂く流弾
2 《炎恵みの稲妻
2 《乱動する渦
2 《反逆の先導者、チャンドラ
-サイドボード(15)-

 

 一見すると普通の「グルール(赤緑)アグロ」に見えるかもしれないが、ここには人類の夢、ロマンが詰め込まれている。《戦闘の祝賀者》だ。

 これで攻撃し次のターンにアンタップしない、督励という能力を選ぶと……そのターン、追加の戦闘が発生する。これを何度も誘発させるのを狙うのだ……そう、《鏡割りの寓話》を使って。

回転

 この英雄譚を《キキジキの鏡像》へと変身させる。1マナとタップで対象のクリーチャーのコピーを作り出す、この2022年の春を代表するパワーカードとして今や見ない日は無いとも言える1枚だ。

 この《キキジキの鏡像》で《戦闘の祝賀者》をコピーしようというのがこのリストの狙いだ。祝賀者のコピーは速攻を持っているので即座に攻撃し、督励で追加戦闘を得られる。

 そして、その際に他のクリーチャーをすべてアンタップする。本来は攻撃したクリーチャーをもう一度突撃させるためのアンタップなのだが、キキジキの能力をおかわりするためにも使えるというわけ。

 またマナを支払ってタップして祝賀者3号を呼び出し、督励で起こして……マナが許す限りこれを繰り返せば、対戦相手のライフもすっからかんになっているという、いろいろ楽しいコンボになっている。

 個人の感覚ではあるが、安易な無限コンボというわけではなくマナを必要とする有限のコンボであり、かつクリーチャーで攻撃するという防がれやすい勝利パターンなのがなんだか好感を持てるというか、現実離れしているわけではないので落ち着くね。

 キキジキ&祝賀者は赤単色でも狙えるコンボではあるが、そこに緑を足すことでデッキとしての安定感や厚みをもたらしている。

 《ラノワールのエルフ》《エルフの神秘家》でマナを伸ばして、より早く《鏡割りの寓話》やクリーチャーを展開するのをサポート。

 《群れ率いの人狼》《ガラクの先触れ》は攻撃役として強いだけでなく、手札を増やす能力でコンボパーツを揃えるのをアシスト。

 《エシカの戦車》は緑系アグロデッキにおける支柱とも言える1枚だが、このデッキであれば他のデッキよりもテクニカルに用いることが可能だ。

 その理由はもちろんキキジキ。キキジキで生成したコピーはターン終了時に生け贄に捧げられてしまうが、そのトークンをさらに《エシカの戦車》の能力でコピーすると……生け贄に捧げるという部分はコピーされず、そのトークンは戦場に残るのだ。《無謀な嵐探し》や《ガラクの先触れ》を量産するとかなりのプレッシャーになること間違いなし!

 遠き日のルールの勘違いが、正式なコンボとなって帰ってきたのかなと感じさせてくれたパイオニアの「グルール・キキジキ・アグロ」。コンボに依存しているわけではなくシンプルに殴り勝てるデッキってのは対応力が高くて魅力的だ。

 皆も《戦闘の祝賀者》のように、《キキジキの鏡像》と組み合わせて強いカードを探して楽しもうぜ。このデッキは似たものをヒストリックなど他のフォーマットでも作れるので、練り甲斐がありそうだ!

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