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岩SHOWの「デイリー・デッキ」
ラクドス金床:ガチャガチャ系の神髄(スタンダード)
マジックは、究極的にはやることは全プレイヤーで一緒だ。デッキを作って対戦し、勝利を目指す。
なのに……なのにどうしてこうもプレイヤーたちの使うデッキは異なるのか。結局のところ、人の生き方なんだよな。お腹が減ったからファストフードでサッとハンバーガーを食べる者もいれば、ラーメン屋の列に並ぶ者もいる。中には食べないという選択をする者だっているだろう。人の生き方は自由だ。
デッキ選択も全く同じだ。ゲームである以上、勝てる・強いデッキを目指すのは当然のことである。そうして絞り込まれた選択肢の中でも、最後にどれを使うかのデッキチョイスは、好みに委ねられるね。突き抜けた一強のようなデッキがある環境でさえ、競技トーナメントで使用されたデッキが1種類しか存在しなかったなんてことは決してない。ある一定の強さを満たしていれば、自分に向いているデッキ・自分が楽しいと思えるデッキを選ぶってのが人間だ。
『神河:輝ける世界』参入後のスタンダードは、それ以前の環境とは大きく印象が異なる。三強に支配されているようなイメージが強かった前環境から一転、新規カードが既存のカードのポテンシャルを引き出して、様々なデッキが乱立する世界へと生まれ変わった。MTGアリーナでランク戦をプレイしていても、当たる頻度の差こそあれどバリエーション豊かなデッキと遭遇するようになった。
選択肢が少ない中でも好きなデッキを選ぶマジックプレイヤーという生き物が、選択肢があふれる輝かしい世界で自由にやっていいと言われたら……そりゃあ好きを突き詰めるだろうなぁ。
好みが色濃く反映されているデッキリストを眺めるのは、こっちも楽しくなってくるというもんだ。
5 《沼》 3 《山》 4 《憑依された峰》 4 《荒廃踏みの小道》 2 《目玉の暴君の住処》 2 《バグベアの居住地》 1 《反逆のるつぼ、霜剣山》 -土地(21)- 4 《よろめく怪異》 3 《ヴォルダーレンの美食家》 2 《波止場の料理人》 4 《税血の収穫者》 2 《隠棲した絵描き、カレイン》 -クリーチャー(15)- |
4 《実験統合機》 4 《鬼流の金床》 3 《命取りの論争》 2 《勢団の取り引き》 4 《ステンシアの蜂起》 1 《アガディームの覚醒》 3 《家の焼き払い》 3 《食肉鉤虐殺事件》 -呪文(24)- |
3 《嘘の神、ヴァルキー》 4 《強迫》 3 《削剥》 3 《影の評決》 2 《不笑のソリン》 -サイドボード(15)- |
今回のデッキはラクドス(黒赤)カラー。このリストはこの手のデッキが好きな人にはたまらないものだろう。
分類するなら、いわゆる「ガチャガチャ系」である。細かいパーマネント、その中でも特にアーティファクトを並べ、タップしたり生け贄に捧げたりと1ターンにせわしなく動き回るデッキをこのように呼ぶ。歯車がガチャガチャと音を鳴らすイメージだね。能力を起動し、ひとつひとつで起こることは微細なことでもそれらを噛み合わせることで大きな影響へと繋げていく。
このデッキのガチャガチャの中心、動力源とも言えるのは《鬼流の金床》だ。
アーティファクトを生け贄に捧げ、対戦相手のライフを1点失わせこちらが1点得る。これを繰り返せば対戦相手のライフを0にできるわけで、このデッキはそれをいかに効率よく行うかを突き詰めている。
生け贄に捧げるためのアーティファクトは《ヴォルダーレンの美食家》《税血の収穫者》などから得る血・トークン、あるいは《よろめく怪異》《隠棲した絵描き、カレイン》などが生成する宝物・トークンなど、トークンをメインに用いることで、生け贄に捧げてもカード1枚を失っているわけではないという低燃費な運用法だ。
また、この金床が戦場にある際に、自ターンにアーティファクトが戦場を離れると鬼を模した構築物・トークンが生成される。この能力は各ターンに一度しか誘発しないのだが、金床で適当なアーティファクトを生け贄に捧げたら次の弾になるものが自動的に用意されるというのは素晴らしい。
ひとたび構築物が出てくれば、毎ターンそれを生け贄に次の構築物を得るという、自己完結したループも可能だ。たかが1点とは言え、これが毎ターン続くとボクシングのボディブローのように確実に効いていく。気付けば取り返しのないライフ差が開いているなんてことも。
構築物の生成は金床での生け贄だけでなく、血や宝物自身の能力を起動して生け贄に捧げても誘発する。これら低コストのカードをガチャガチャ起動や誘発させていって、相手のライフを削りながら攻撃は受け流していくというのが理想のゲーム展開だ。
パーマネントが低コストのものにトークンにと、序盤から多数並ぶというその特性を利用したフィニッシャーが《ステンシアの蜂起》だ。
人間・トークン生成後、パーマネント総数がジャスト13ならこれを生け贄に捧げて7点ダメージを任意の対象へ。クリーチャーやプレインズウォーカーの除去に使っても良いが、余裕があれば対戦相手本体に撃ち込むべし。これで一発ゴリッと減らして、金床での削力利を一気にショートカットだ。
《食肉鉤虐殺事件》や《家の焼き払い》も単なる除去として考えず、一気にライフを減らす手段として認識すると、20点前後のライフを戦闘ダメージ以外で0にするのは決して難しい話ではない。
このアーティファクト生け贄デッキにおいて、大きなアクセントとなっているのは《実験統合機》だ。
1マナという軽さで扱いやすく、戦場に出た時と離れた時にライブラリートップを追放し、そのターン中それを唱えられるという変則的なアドバンテージをもたらす。
序盤は1マナで出して土地をめくってそれを出す、という運用が理想的だ。金床が出た後にはここぞというタイミングで生け贄に捧げ、手数を増やしてこの綱渡りデッキの細い勝ち筋を手繰り寄せる起爆剤として用いる。場合によってはそれ自身の能力で生け贄に捧げて侍を呼び出したり、《命取りの論争》《勢団の取り引き》のコストに充てて一気に3枚分のカードを獲得したり。
このなんでもなさそうなコモンの持つ力を最大減に発揮させてやること、それがこのデッキの勝利の鍵となるのだ。
派手な新レアに依存しているわけでもないので、カードが集まり切っていなくても比較的組みやすいというのもこのデッキの魅力である。「ラクドス金床」、スタンダードでも十分に楽しいデッキだが、アルケミーだと《血塗られた刷毛》のような相性抜群なカードもあるので、そちらでもぜひ組んでみてね。
面白そうだなと思ったら、あなたも今日からガチャガチャ系愛好家。楽しい、好きだという気持ちに素直に従って、デッキを選んであげてほしいね。
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