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岩SHOWの「デイリー・デッキ」
今週のCool Deck:スモッグ・マーベリック(レガシー)
今週も僕が独断で選んだ「これはクールだ」と感じたデッキを紹介するこのコーナーがやってまいりました。
さあ今回のテーマは……デッキ名! 周期的にやってくるこの衝動、クールなデッキ名を身体が求める!
デッキ名って、皆が思ってるよりも大事なんですよ。一見するとデッキ内容はよくわからない。しかしながら一度対戦したり動いているのを目の当たりにすれば「あぁ、これが○○ってデッキなんだな」と納得がいって、むしろずっと覚えやすかったりもするものだ。過去にはシリアルの名前、バンドの名前、ファーストフード店の名前……いろいろなところからインスピレーションを得てつけられたクールなデッキ名が横行していたものである。
そしてレガシーにおいては、今もなおそのような風習が残っている。古き時代につけられたデッキ名が10年近く使用され続けることで、名前の意味はわからなくてもそれはそういうもんだと認識されているのだ。そのルーツ自体も不明だが、ネットに掲載されたデッキ名を皆が用いるようになって今や誰もが知るデッキ名に……というパターンも多い。これってつまりはもう文化として定着したということで、なんともクールな話だよな。
そんなデッキのひとつが「マーベリック」。英語表記でMarverickで、これは一匹狼や異端者など、群れからはぐれた人やものを意味する。
その由来はアメリカはテキサスの政治家・弁護士・大地主というクールな人物、サミュエル・マーベリック。マーベリックは牧場を所有していたが、彼はそこで飼育する牛たちに焼き印を押さなかったという。一般的には焼き印を押すことで群れからはぐれた牛を自身の所有物か否か見分けているのであるが、マーベリックはこれを断固として拒否。その理由は牛に苦痛を与えないためというクールなものであったが、他の牧場主からは「焼き印がない牛を全部自分のものだと主張するためでは?」と揶揄されることもあったとか。ともかく、このエピソードから自身の考えを貫いて群れない人のことをマーベリックと呼ぶようになったのだとか。
そのマーベリックがどうしてレガシーのデッキ名になったのかというと、これが先述の通りよくわかっていない。僕の記憶では10年くらい前かな、当時世界中のプレイヤーによるレガシーのデッキが掲載されていて注目を集めているサイトがあったんだが、そこである日唐突にこのデッキ名が表記されているのを見るようになったと記憶している。
きっかけとも言えるのが《緑の太陽の頂点》の登場。
このソーサリーはライブラリーから緑のクリーチャーを直接戦場に出すものであり、しかも使用後はライブラリーに戻る。これを複数枚採用しつつ、特定の状況下で強いクリーチャーなどを1枚ずつ散らすことで、ニッチなカードが手札に溢れることを防ぎつつもあらゆる状況に対処可能というクールなデッキが作れるようになった。頂点のX=0で《ドライアドの東屋》を持ってきてマナ加速からスタートする、そんなデッキが「マーベリック」と呼ばれるようにいつの間にかなっていた。
おそらくはリストに1枚挿しのクリーチャー=一匹狼たちがひしめく光景から由来するのだろうけども、何せ今ほど情報発信が盛んではない時代だったので、ハッキリとした答えは分からない。ただ誰もがこのデッキ名にはしっくりきて受け入れている、その事実がもうクールだね。
2 《森》 1 《ドライアドの東屋》 1 《平地》 1 《沼》 2 《寺院の庭》 1 《Bayou》 1 《Scrubland》 4 《新緑の地下墓地》 3 《吹きさらしの荒野》 1 《湿地の干潟》 1 《虹色の眺望》 1 《地平線の梢》 1 《カラカス》 3 《不毛の大地》 1 《爆発域》 -土地(24)- 3 《呪詛呑み》 1 《極楽鳥》 1 《貴族の教主》 1 《下賤の教主》 3 《ウィザーブルームの初学者》 2 《石鍛冶の神秘家》 1 《闇の腹心》 1 《クァーサルの群れ魔道士》 3 《聖遺の騎士》 1 《忍耐》 1 《秋の騎士》 1 《ラムナプの採掘者》 1 《探索する獣》 -クリーチャー(20)- |
3 《剣を鍬に》 3 《煙霧の連鎖》 2 《むかしむかし》 2 《虹色の終焉》 4 《緑の太陽の頂点》 1 《梅澤の十手》 1 《殴打頭蓋》 1 《飢餓の潮流、グリスト》 -呪文(17)- |
2 《忍耐》 1 《外科的摘出》 3 《思考囲い》 2 《コジレックの審問》 1 《流刑への道》 1 《剣を鍬に》 1 《夏の帳》 2 《嵐の乗り切り》 1 《虹色の終焉》 1 《毒の濁流》 -サイドボード(15)- |
このクールなデッキは?
そんなレガシーの「マーベリック」の最新型を紹介しよう。ブラジルはリオデジャネイロでのトーナメントで使用されたリストが実にクールだったものでね。
「マーベリック」は緑を中心に、白もメインカラーを務めるデッキである。《剣を鍬に》などの高い除去性能、《梅澤の十手》《殴打頭蓋》といった装備品と《石鍛冶の神秘家》パッケージで攻撃性をより高めている。
また《緑の太陽の頂点》から引っ張ってくるクリーチャーも《クァーサルの群れ魔道士》《聖遺の騎士》と白緑多色のものが多く、《貴族の教主》という便利なマナ加速もあることで成立しているデッキだ。
ここに黒を足して「ダーク・マーベリック」と呼ばれる形もまた人気が高く、今回のリストはそれにあたる。では、どんな一匹狼やダーク要素が含まれているのか、クールな種明かしといこう。
どこがどうクールなのか?
クールポイントその1:We love silver bullets!
「マーベリック」は何はともあれ《緑の太陽の頂点》がないと始まらない。1ターン目X=0で《ドライアドの東屋》でスタートし、X=1で《極楽鳥》などマナ・クリーチャーをGet。序盤から使えるマナの量に差をつけて、相手よりも大ぶりなアクションで押していく狙いだ。
マナ・クリーチャーは定番の《貴族の教主》に加えて、黒を足しているのもあって《下賤の教主》も採用。
どちらも賛美能力で攻撃するクリーチャーを強化してくれる殴り合いをサポートする役目も務める。それぞれに青と赤のマナには使い道は無いように見えるが、《虹色の終焉》を使う関係から色マナは1種でも多く得られて損することは決してない。
X=2は、アーティファクト&エンチャントデッキに対抗する手段でありこれまた賛美で殴り支援する《クァーサルの群れ魔道士》、そして後述する1枚とバリエーション自体は少なめ。ただこのマナ域には頂点サーチとは関係ないが強力で、1枚で勝利を手繰り寄せるカードパワーを持つ《石鍛冶の神秘家》と《闇の腹心》が控えている。
X=3だとこれまたアーティファクト&エンチャント対策であり回復もできる《秋の騎士》、墓地対策の《忍耐》とやれることの選択肢が豊富に。
特に重視しているのが土地関係。《聖遺の騎士》は《カラカス》《爆発域》そして《不毛の大地》をサーチして、これらが刺さる相手に優位に立つと同時に圧倒的なサイズで押しつぶすフィニッシャーも兼ねる。
さらに《ラムナプの採掘者》が並ぶことで土地を生け贄に捧げても再利用が可能に。特に《不毛の大地》を毎ターン投げつける動きは、これだけで機能不全に陥るデッキもあるほどにクールで強力無比。
また、このマナ域には非クリーチャーでありながら頂点サーチが可能な《飢餓の潮流、グリスト》も含まれている。
このプレインズウォーカーはそれほど劇的な影響を盤面に与えるものではないのだが、それでも頂点の選択肢にクリーチャーではないカードを潜ませておけるというのはクールだ。自分の《闇の腹心》の処理手段になったりと、[-2]能力を上手く使いこなしたい。
これらで十分に決着となることだろうが、しぶといデッキ相手にはX=4で《探索する獣》を降臨させてとどめを刺すべし。
これらのプランを《殴打頭蓋》《梅澤の十手》で確たるものにする、使っていて満足度の高いビートダウンだ。
いつ引いても柔軟に使える《緑の太陽の頂点》は本当にクールなものだと、マーベリックを使っているとしみじみと感じるはず。この頂点や石鍛冶で状況に合わせた1枚挿しを手に入れるという戦法を「シルバーバレット」と呼ぶ。狼男に対する《銀弾》のように、相手に合わせた適切な武器で戦おうということだ。
クールポイントその2:ダークの理由
《緑の太陽の頂点》X=2のサーチ先であり、黒を足している理由とは《ウィザーブルームの初学者》!
登場直後のレガシーではこのカードが注目されたのももう半年以上前の話か。インスタントかソーサリーを唱える、あるいはそれらをコピーすると誘発する能力、魔技。《ウィザーブルームの初学者》のそれは相手のライフを1点失わせてこちらが1点得る、通称ドレインだ。
このドレインがなぜ注目されたかというと、レガシーでは簡単にソーサリーのコピーを無尽蔵に発生させることが可能だからだ。《煙霧の連鎖》1枚でね。
これは対象のプレイヤーに手札2枚を捨てさせる、マナ総量2にしては大きいアドバンテージをもたらすものなのだが、対象となったプレイヤーはこれのコピーを作って撃ち返しても良いという、ある種のデメリットが設定されている。
交互にコピーしあってグズグズな泥仕合に持ち込むのも楽しい呪文なのだが、これを自分自身を対象にして唱えて、そしてコピーもまた自分を対象に。こうすることで延々と自分の手札を捨てさせることが可能になる。この意味のない行為が、《ウィザーブルームの初学者》がいると無限ドレインとなり、すなわち2枚で即決着の必殺コンボとなるわけだ。
《緑の太陽の頂点》からコンボパーツを持ってこれるのは非常にクールで、手札に《煙霧の連鎖》があって対戦相手にも妨害がなさそうな状況であれば、ササッとコンボを揃えて勝ってしまえる。コンボが決まらなくてもビートプランが控えているし、逆に《罠の橋》など殴れなくなってもコンボで勝てるというオプションがあったりと、頂点同様デッキ自身も柔軟性に富んでいる。マーベリックに黒を足すメリット、大いにアリ。
クールなまとめ
他者の意見に流されずに自分の信念を貫く。そうした生き方というのはクールで、いつもそうありたいと思っている。群れない一匹狼、良いじゃないか。
大事なのは孤高と孤独は別ということ。仲間もいるし、しっかりと自己も確立している。コミュニティの中でそういう存在になれば、君のマジックライフも潤うはず。《緑の太陽の頂点》でそんなメンツを戦場に揃えて、最高の盤面を作り上げるのと同じだね。それじゃあ今週はここまで。Stay cool! Be a maverick!!
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