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岩SHOWの「デイリー・デッキ」
青黒切削:モダンの門番(モダン)
店舗マジック、盛り上がってますか~ッ!
マジックプレイヤーにとっては我慢の続く日々だったけれども、そうやって耐えてきたからこそ今がある。またマジック取り扱い店に集合し、デュエルスペースで仲のいいもの同士フリープレイに興じたり、大会に参加してコミュニティを拡げたり……あの当たり前に思っていた日々がようやく戻ってきた。それゆえにパイオニアが再び盛り上がりを見せているという話は、当コラムでも最近毎回のようにしてきている。
そしてパイオニアが盛り上がっているということは、その実、他のフォーマットも盛り上がりを取り戻しているということでもある。MTGアリーナの普及によりスタンダードをデジタルで遊ぶ層は増えたが、アリーナに対応していないフォーマットはパイオニアをはじめモダンやレガシー、ヴィンテージにパウパーなどなど多数。そういったフォーマットは紙でプレイしてこそ。
しばらくはイベントに参加できず、眠っていたデッキたちも、そろそろ目を覚ましてまた火花散らす戦場へと赴くころだ。
パイオニアをプレイしている横で楽しそうに他のフォーマットをプレイしている光景を見ると、自分もやってみたいなと思うのが人情ってものだ。パイオニアプレイヤーが次に目指すべきステップは……モダン! パイオニアの延長で、さらに古い2000年代のカードと、このフォーマットのために作られた特殊セットが集結する、コアなファンの多いフォーマットだ。
パイオニアのデッキをさらに強化したようなデッキの数々、そしてこのフォーマットならではの他と一線を画す異形のデッキ。そういったものにそそられてモダンに挑戦だ!と臨む新規プレイヤーたちを歓迎するのが、このデッキだ。
4 《島》 2 《沼》 2 《湿った墓》 4 《汚染された三角州》 2 《溢れかえる岸辺》 2 《闇滑りの岸》 1 《殻船着の島》 1 《雲の宮殿、朧宮》 4 《廃墟の地》 -土地(22)- 4 《面晶体のカニ》 4 《遺跡ガニ》 -クリーチャー(8)- |
3 《外科的摘出》 4 《致命的な一押し》 4 《彼方の映像》 4 《湖での水難》 2 《対抗呪文》 4 《正気破砕》 4 《ターシャズ・ヒディアス・ラフター》 1 《墓所への乱入》 4 《書庫の罠》 -呪文(30)- |
1 《夢の巣のルールス》 -相棒(1)- 4 《魂標ランタン》 2 《血の長の渇き》 1 《根絶》 1 《対抗呪文》 3 《神秘の論争》 1 《墓所への乱入》 1 《再建》 1 《仕組まれた爆薬》 -サイドボード(14)- |
「青黒切削」である。モダンをプレイする上では避けては通れない、門番的なデッキである。絶対数は多くないが、切削デッキでしか味わえないゲーム感覚に魅了され、これをプレイし続ける者は少なくもない。店舗大会でモダンがあれば、1人はいてもおかしくない。初めて対戦した場合、他のデッキとの勝手の違いに戸惑うことは間違いない。
そもそも切削デッキは何を目的にしているのか。マジックではライブラリーからカードが引けなくなると負け、という敗北条件がある。これをこちらから対戦相手のライブラリーを切削することで意図的に狙うというわけで、ライブラリーが空っぽになる様から「ライブラリーアウト(縮めてLO)」とも形容されてきた。通常のデッキがライフを0にしての勝利を目指すのに対して、ライブラリーアウトは対戦相手のライフなんてものは目もくれない。ライブラリーだけを睨みつけ、それを1枚でも多く削り取るのだ。
ではどのようなカードを用いるのか個別に見ていこう。まずはクリーチャー、《面晶体のカニ》と《遺跡ガニ》。
これらは土地を戦場に出して「上陸」させることでライブラリーを3枚削る。モダンであれば《汚染された三角州》など1枚で土地を都合2回戦場に出せる「フェッチランド」が使えるので、毎ターン6枚以上をゴリゴリ削るという芸当もお手の物。《廃墟の地》で特殊な土地も対処しつつカニたちを誘発させるのが得意技だ。
パワーは0でも、そんじょそこらのクリーチャーよりはパンチ力がある危険なヤツらだ。出てきたらすかさず除去したいが、そこは切削側も織り込み済み。土地以外のパーマネントはカニしかないので、相棒に《夢の巣のルールス》をスタンバイ。墓地からカニを再出撃させて、しぶとくしつこく削っていくのだ。
では切削していく非クリーチャー呪文を確認。まずはモダンならではの1枚、《書庫の罠》。
先述のフェッチランドを用いる関係上、モダンはライブラリーの中からカードを探す場面が非常に多い。そうなるとこのカードはコスト{0}で唱えられてしまう。それこそ、1ターン目にフェッチを切って土地を持ってきたらそこに罠4連打で52枚削られて残りライブラリー0枚!なんていうゲーム展開も起こり得るのだ。まあ4連打は激レアにしても、2枚投げつけられるなんてことはモダンあるあるの範疇。モダンルーキーへの挨拶代わりってところだね。
《正気破砕》はこの罠を超える14枚というとてつもない枚数を削り落とす、まさしく正気が吹っ飛ぶ1枚。土地が引けない時などにサイクリングしても切削できる点はかなり評価できる。
そして、厳密には切削ではなく追放かつ枚数が不定なのが《ターシャズ・ヒディアス・ラフター》。
マナ総量が20になるまで追放し続けるというこのソーサリー、軽さこそ正義と言わんばかりのモダンでは、それこそ1マナばっかりのデッキ相手に20枚吹っ飛ばすなんてことも。他にも細かい切削呪文はあるが、正直この3枚があれば十分というのが最近のトレンドのようだね。
墓地を追放する《外科的摘出》《墓所への乱入》が採用されているのは、モダンに潜む数々の墓地利用デッキへわざわざカードを提供することを防ぐ防波堤であり、また《引き裂かれし永劫、エムラクール》などのライブラリーに戻ってしまうカードへの対抗手段でもある。
意気揚々と削ってたらエムラクールが降ってきて全部戻って振り出しに、なんてのはもう負けに直結するからね。だから対戦相手のデッキにエムラクールが入っている予感がしたら、そこからは慎重に、対抗手段が手札に来るまではごまかしつつ立ち回っていきたいところ。《彼方の映像》でのドローで必要なものを引き込もう。
モダンデビューした際に、洗礼と言わんばかりに立ちはだかるであろう切削デッキ。では最後に、これと相対した時にどう戦うと良いかを軽くアドバイス。
まず、カードをむやみやたらに引かないこと。デッキの性質上、手札の枚数差勝負を挑む必要は薄く、またカードを引くということは自分の寿命を削る行為でもある。ライブラリーの枚数を減らす行為は必要最低限にとどめよう。
そして、サイドボードを「入れ替えない」という手もあることを忘れずに。メインデッキの不要なカードをサイドの有用なカードと入れ替える、というのがサイドボーディングの基本だが、ルールとしては別にサイドからカードを入れたらそれと同じ枚数抜かなきゃいけないという制約はない。極端な話、15枚全部メインデッキに入れて何も抜かず、75枚のデッキで対戦したっていいのだ。サイドは入れ替えるだけでなく、入れっぱなしにして総数を60枚以上に増やすことで、ライブラリーアウトを1~2ターンずらして僅差の勝利を収める。そういうアプローチも狙ってみよう。
むしろ切削デッキでモダンに挑みたくなったのであれば、それもそれで素晴らしい。このフォーマットならではのデッキを堪能してほしいところだ。それじゃ、準備ができたら近くのマジック取り扱い店へと繰り出そうか。
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