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戦略記事

岩SHOWの「デイリー・デッキ」

ラクドス・マッドネス(ヒストリック)

岩SHOW

 歴史ある能力、マッドネス。初出は『トーメント』、2002年2月のセットでもうすぐ20周年だ。

 マッドネスとは狂気のこと。怒り狂ったり、正気を失ったクレイジーな状態をイメージすればピッタリだ。その印象から黒と赤が思い浮かぶことだろう、

 実際にそれらのカラーリングが主なマッドネスカラーとなるが、この能力を持つカードは5色全ての色に存在し、『トーメント』当時最も活躍したのは《日を浴びるルートワラ》《尊大なワーム》《堂々巡り》と緑と青だったりする。

 手札から捨てた際に追放され、それをそのまま呪文として唱えても良いというマッドネス能力。《野生の雑種犬》でルートワラやワームを捨ててダメージを上昇させながら低コストで高速展開したり、《サイカトグ》で《堂々巡り》を捨てて1マナで打ち消したりと暴れ回ったわけである。

 本来失うはずの手札を損失なく唱えられるという能力は素晴らしいもので、《マーフォークの物あさり》《適者生存》など手札を捨てて別の手札を得るカードとの組み合わせはまさしく極上のもの。

 歴史ある能力だけに、現在のルールに至るまでには変遷があり、最も強力だったタイミングでは手札から捨てた際にすぐ唱えるか選ばなければならない現在のそれと異なり、優先権を放棄するまでは唱える権利を保持するというものだった。つまり捨ててから土地を置いてマッドネスのコストを支払うみたいなことだって出来たのだ。非常に強力だったが、ルール上ややこしいなどもあって改訂され、今の形に落ち着いたというところだ。

 マッドネスは『Jumpstart: Historic Horizons』でテーマの1つ、「狂気」として再録。黒赤2色で、マッドネス呪文とそれを活かすための手札を捨てる能力を持ったカードがどっさり。《癇しゃく》《終末の苦悶》と除去に優れたこのパックはJumpstartのゲームにおいてかなり勝ちやすいので、とにかくサクッと勝ってレアを2枚手に入れたい時にはオススメだ。

 で、Jumpstartをプレイしていると《ラクドスの首狩り》など、これに含まれるカードはヒストリック構築においても活躍するポテンシャルを感じさせるものだった。MTGアリーナでのリリース当日、強いだろうなぁ~と思ってランク戦に挑むと……世界中の皆も同じ考えだったようで、マッドネスデッキとの遭遇率、高し!

 今日はそんなヒストリックの新顔、「ラクドス・マッドネス」を紹介しよう! デッキ名が韻を踏んでてイカすぜ。

Matte99 - 「ラクドス・マッドネス」
ヒストリック (2021年8月29日)[MO] [ARENA]
3 《
4 《
4 《血の墓所
4 《竜髑髏の山頂
4 《荒廃踏みの小道
1 《バグベアの居住地
-土地(20)-

4 《猛火のルートワラ
4 《ボーマットの急使
4 《ドラゴンの怒りの媒介者
4 《炎刃の達人
4 《ラクドスの首狩り
2 《死の飢えのタイタン、クロクサ
-クリーチャー(22)-
4 《信仰無き物あさり
4 《邪悪な熱気
4 《信仰無き回収
4 《癇しゃく
2 《終末の苦悶
-呪文(18)-
1 《夢の巣のルールス
-相棒(1)-

2 《マグマの媒介者
3 《魂標ランタン
4 《思考囲い
2 《致命的な一押し
1 《大群への給餌
2 《コラガンの命令
-サイドボード(14)-
Matte99氏のTwitter より引用)

 

 マッドネス呪文を活かすために軽い手札を捨てるカードを揃えて、デッキを構築するパーマネントを2マナ以下にまとめることで《夢の巣のルールス》を相棒に。

 マッドネス以外のカードも捨てることはあるので、ルールスでそれらを再利用可能にしておくことでより確実にアドバンテージを失わずに立ち回れるということだ。

 この手のちょっと尖ったコンセプトのアグレッシブなデッキを組む場合、色が片方どちらか合っていればルールスを使うというのはヒストリックでは定番だね。

 まずはデッキの顔であるマッドネスから確認。先ほども例に挙げた《癇しゃく》、1マナ3点のこれは外せない。除去でありながらプレイヤーにも飛ぶので、最後の一押しになる点が素晴らしい。

 同じく除去として《終末の苦悶》、こちらは2マナで対象の条件を選ばない確定除去。破壊不能など持たない限り問答無用で2マナでどかせられるので、3マナ以上のクリーチャーを除去してテンポの面で有利に立とう。

 最後にクリーチャー、初期マッドネス組の《日を浴びるルートワラ》のリメイク、《猛火のルートワラ》!

 たかが1/1といえど、マナ・コスト{0}でクリーチャーが唱えられるのはやっぱり特別なこと。最序盤から大量のクリーチャーをザクザク並べて押す、それがこのデッキの攻め方だ。ルートワラはマナを支払ってパワー3に引き上げることも可能で、なめているとコイツにごっそり持っていかれるぞ!

 手札を捨てる要素(昔は「共鳴者」なんて呼んだものだ)は、まずは何と言っても《信仰無き物あさり》。

 これは問答無用の最強捨て手段。1マナで2枚も捨てられるので、《癇しゃく》やルートワラを捨てて高速展開に繋げよう。

 これのリメイクであるのが《信仰無き回収》。

 2ターンに分けて《信仰無き物あさり》と同じく2枚捨てて2枚引くという動作を行う。《信仰無き物あさり》と違って捨てるのが先なので、マッドネス呪文を都合よく引いて投げ捨てるということはできないが、インスタントなので相手のターンの様子を見てからマッドネスができるのは面白い。ソーサリーやクリーチャーも、マッドネスであれば相手のターンに唱えられる点をお忘れなく!

 そして最後は《ラクドスの首狩り》、やっぱり構築でめちゃ強だ。

 2マナ3/3速攻という攻めに特化しながらもさりげなくタフネスも高いので相討ちになることも少なく、2ターン目から何も気にせず突っ込ませるのが最高に楽しい。エコーは手札でお支払い、さあマッドネスだ。これらでカードを捨てれば《炎刃の達人》が大はしゃぎして大ダメージにも繋がるので、ガンガン狙うべし。

 さて、このデッキにはマッドネスともう1つの要素が抱き合わせになっている。昂揚だ。

 墓地にカード・タイプが4種類以上あれば昂揚状態となりボーナスを得られるカード、これをマッドネスと同じく手札を捨てるカードで速やかに達成させようという算段だ。

 《ドラゴンの怒りの媒介者》は昂揚すれば1マナ3/3飛行という驚異のスペックを手に入れる。そこに至るまでの準備も、自身の諜報能力で加速させる。

 信仰無き呪文らを唱えて捨てると同時にライブラリーから直にカードを墓地に送って、いち早く昂揚するべし。

 《邪悪な熱気》は普通に使っても《ショック》相当で決して弱くない除去で、これが昂揚すればなんと6点に跳ね上がる。大抵のクリーチャーやプレインズウォーカーは一発だな。

 マッドネスしつつ同時に昂揚も狙う、無理なく自然に行えるこのプランをデッキを歪めずに後押しするために《ボーマットの急使》を採用しているのもニクイね。

 1枚で2種類のカード・タイプにカウントされ、戦場に出して殴らせても仕事をする。手札を得られると同時に捨てることでマッドネスも狙えたりして、マスターピース的な1枚だ。《ドラゴンの怒りの媒介者》でたっぷり諜報して《死の飢えのタイタン、クロクサ》に繋げるのもフィニッシュのワンシーンだ。

 手札なんて捨ててやる! でもしっかり使って元は取ってやる! 良い根性しているマッドネスデッキ、今後はラクドス(黒赤)だけでなく他のバリエーションも見かけることになるだろう。《弧光のフェニックス》デッキとのハイブリッドなんかも狙えそうだしな。

 要注目の攻撃的アーキタイプ、気になった方はちょっと狂気に身を預けてみても……良いんじゃなかろうか?

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