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戦略記事

岩SHOWの「デイリー・デッキ」

今週のCool Deck:ポックス・リアニメイト(モダン)

岩SHOW

 万を超えるカードがあれば、そりゃあその中にクールな名前もあるでしょう!

 というわけで今週もクールなデッキをご紹介する金曜日がやってきた。今回はあるクールなカード名について。マジックには本当に素晴らしい、声に出して読みたくなるカード名がたくさんある。《スラクジムンダール》《パリンクロン》《生ける屍》……最近のものだと《星山脈の業火》もクールでカッコイイよなぁ。

 そういった字面のクールさに加えて、元ネタが分かればよりクールに感じられる名前というのもある。長い年月を経て作られたリメイクやオマージュしたカードなどは、その全容を把握すれば思わずニンマリできるものだ。

 カード自体ではないものとリンクするカード名も素敵だよね。《時のらせん》と『時のらせん』とか、《ウルザの物語》と『ウルザズ・サーガ』とか。

 今年新登場したこのようなクールなカードの1つとして《頑強》がある。

 これだけ見るとまあ、普通のフレーズというか。強くて頑丈なものというのは伝わるが……というところ。ただマジック歴が長いプレイヤーはなるほどなと反応できるはずだ。《頑強》とはかつて『シャドウムーア』で登場した「頑強」という能力と丸っきり同じ名前だ。

 そしてその呪文としての効果。《頑強》は墓地から伝説でないクリーチャーを戦場に戻す。これだけだと2マナのソーサリーとしては強すぎるので、-1/-1カウンターを1個置くというデメリットが付けられている。-1/-1カウンターが置かれた状態で墓地から戦場に出る、というのは頑強能力を持ったクリーチャーが死亡した際に行う挙動と同じである。日本名だけではなく英名も頑強能力と同じ《Persist》となっているので、これを強く意識したものなのだろう。

 キーワード能力がカード名になっているのは極めて稀なものであり、クールと形容するに相応しい。今日はこんなクールな名前のリアニメイト呪文を用いたモダンのデッキを紹介しよう!

Devon O'Donnell - 「ポックス・リアニメイト」
モダン (2021年8月27日)[MO] [ARENA]
3 《
4 《神無き祭殿
4 《秘密の中庭
4 《悪臭の荒野
1 《サヴァイのトライオーム
2 《ロークスワイン城
4 《トロウケアの敷石
1 《ヨーグモスの墳墓、アーボーグ
-土地(23)-

4 《残虐の執政官
-クリーチャー(4)-
3 《不敬な教示者
4 《思考囲い
3 《コジレックの審問
4 《頑強
4 《虹色の終焉
4 《小悪疫
4 《無名の墓
1 《集団的蛮行
1 《掘葬の儀式
4 《ヴェールのリリアナ
1 《オルゾフの簒奪者、ケイヤ
-呪文(33)-
1 《セラの使者
1 《氷砕き
1 《集団的蛮行
1 《滅ぼし
4 《未練ある魂
3 《名誉回復
4 《虚空の杯
-サイドボード(15)-
Devon O'Donnell氏のTwitter より引用)

 

このクールなデッキは?

 モダンの「オルゾフ(白黒)リアニメイト」……否、「ポックス・リアニメイト」と呼ぶ方がそのイメージを深められるかな。

 《頑強》は小さいサイズのクリーチャーを釣り上げるには不向きかもしれないが、ある程度のサイズがあるもの、そして戦場に出た際に誘発するなどの能力で仕事をこなすクリーチャーに対して唱えるには非常に優れたリアニメイト呪文だ。伝説だけは戻せないが、それを割り切ればこれを軸にしてデッキを組む価値は大いにある。

 同じく伝説以外のカードを墓地に置く《無名の墓》とセットで使えと言わんばかりである。

 このデッキはそれらモダンの新たなリアニメイトパッケージに、さらに相性の良いものを1つ加えてデッキにまとめ上げている。では詳しく見ていこう。

どこがどうクールなのか?

クールポイントその1:悪疫/Pox

 《無名の墓》はライブラリーから墓地にクリーチャーを置ける便利なカードだが、これだけでリアニメイトデッキを組むのは少々駒が足りない。特に手札に大型クリーチャーが来てしまった場合、そのクリーチャーを能動的に捨てる手段を用意しておくと無駄が無くなりデッキの完成度が上がる。

 このリストではそのために《小悪疫》を用いる。

 他の手札破壊呪文と組み合わせることで対戦相手の手札を擦り減らし、同時にクリーチャーと土地も生け贄に捧げさせる。こちらも同じ損害を被るが、手札を捨てるの上述のようにリアニメイトコンボを後押しすることになり、土地の枚数が減っても軽い呪文で釣り上げるので大丈夫、クリーチャーはそもそも出していない状態で唱えるので気にするなと、対戦相手にだけこのカードの嫌な面を味わわせることが可能になっている。

 このカードは《悪疫》のリメイクというか後継機で、英名からポックスの愛称で知られるためこれを用いたリアニメイトデッキを「ポックス・リアニメイト」と呼ぶのである。デメリットをメリットに変える姿勢、実にクールだ。

 そしてこのデッキが釣り上げる大型クリーチャーは《残虐の執政官》。

 これまたイラストも名前もクールだが、その能力も強い! 戦場に出るか攻撃するかで誘発し、対戦相手に生け贄1体と手札を1枚捨てさせることを強要しつつライフも3点失わせる。こちらはカードを1枚引いて3点回復と、ある意味ポックスのクールバージョンとも呼べる能力の持ち主だ。これに加えて6/6飛行という重量ボディの持ち主とくれば、-1/-1カウンターを置くぐらいが何のデメリットかと。ある程度の代償を払ってもお釣りがくる、モダンでも最強クラスのフィニッシャーである。

 釣る前も釣ってからも、とにかくポックスの姿勢で対戦相手の資源をむしり取ろう。

クールポイントその2:墓地対策≠必殺

 リアニメイトデッキとは墓地対策に弱い。まあ当たり前のことである。墓地を経由するコンボで、それもソーサリーで行うのだから干渉はされやすい。この時代、多くのデッキはインスタントタイミングで飛び出す《忍耐》を用いている。

 果たしてこのデッキは大丈夫なのかというと……従来のリアニメイトのように、それら1枚でデッキが破綻してしまうような脆さはない。何故なら、リアニメイトデッキであるのと同時にポックスデッキでもあるからだ。リアニメイトはあくまで勝つためのメイン手段である。これを狙うことに完全特化したデッキというわけではない。

 他に勝つための手段として、メインデッキにはプレインズウォーカーたちの姿が。《ヴェールのリリアナ》《オルゾフの簒奪者、ケイヤ》といずれも3マナとコストは軽めで扱いやすく、手札破壊やクリーチャーなどのパーマネントに触れたり、相手の墓地を対策したりとなかなかの小技の持ち主。

 リリアナは[-6]能力で対戦相手のパーマネントを半分に減らす大技の持ち主で、これを起動されるとゲームは終わったようなもの。ケイヤは墓地のカードを追放し続けた後、それらの枚数分だけ相手のライフを失わせて直接的にゲームを終わらせられる。

 サイド後はこれらに加えて《未練ある魂》によるトークン戦術でも戦える。

 これをフラッシュバックされることを嫌った対戦相手が墓地対策を用いてきたら、その後悠々とリアニメイトを決めるという手もある。その逆もまた然り。墓地対策を1枚引いたぐらいじゃ手札破壊により捨てさせられるというのもあるし、対戦する際には油断は禁物。だからと言って墓地対策を山ほどいれて自分のデッキを弱くしてしまうというのも悪手。何事もバランスが大事、昔からそれがクールと言われているね。

クールテクニック!

 《小悪疫》といえば昔からセットのイメージが強いのが《トロウケアの敷石》。

 《小悪疫》でこれを生け贄に捧げた場合、そのまま平地タイプの土地が持ってこれるので使えるマナの量を減らさずに一方的に相手の土地を削ることが可能だ。1ターン目にこれを出して置いて2ターン目《ヨーグモスの墳墓、アーボーグ》から《小悪疫》という動きは、対戦相手にとってまさに青天の霹靂。モダン流のクールな挨拶だ。

 平地タイプの土地を持ってこれるので《サヴァイのトライオーム》を持ってくると良い、そうすると《虹色の終焉》に3色支払えるようになるので追放できるものの範囲も増える。

 無駄がないどころか、むしろ完璧な美しさを誇っている構成だと言えよう。That’s cool.

クールなまとめ

 《頑強》というカードを通じて初めて頑強能力を知った新米プレインズウォーカーも少なくないだろう。カードとは単にゲームで用いるものでなく、このような橋渡しの役目も担っている。全てのカード名には意味があると考えれば、見え方も変わってくるし何か発見があるはずだ。それじゃあ今週はここまで。Stay cool!! Persist yourself!

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