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岩SHOWの「デイリー・デッキ」
ランドレス・ベルチャー(モダン)
ライブラリーの中身がどうなっているのか。それは誰にもわからない。
それがマジックの面白いところで、同じデッキ・同じプレイヤーで対戦しても毎回同じ展開になるとは限らない。シャッフルされ、無作為化されたライブラリーから次に引くカードは何か、何を引いた場合どのようなゲーム展開であれば好ましい状況か、そういったことを考えながらプレイし、毎ターンのドローを迎える。
この時のワクワクドキドキ感を味わうためにマジックをやっていると言っても良いが、毎回ランダムなドローではなく思った通りのカードが引ければ……そんな思いがないわけではない。そこで占術だったり、《神秘の教示者》《師範の占い独楽》といったライブラリーを並べ替えるカードだったりが好んで使われることになる。何が引けるかわかれば最善のプレイをする難易度は大きく下がるというもの。
《ゴブリン徴募兵》のようなあまりにも強力すぎるライブラリー操作は一部のデッキを支配的なものにするため禁止されてしまうものだが、コストが重いものや《索引》のようなカード1枚を使ってまで……というカードは許されている。
そして今、意外なカードがこのライブラリー操作界でトップクラスのものへと昇華されモダンで輝きを放っている。《小道の再交差》だ。
ライブラリーの上から最初にめくれた土地を戦場に出し、その後対戦相手と一緒にライブラリーの一番上のカードを公開しあって、こちらのカードの方が高い点数で見たマナ・コストを持っていればこのカードを手札に戻すことができる。複数回土地を出せるかもしれない、上手くいけばコスパに優れたマナ加速。
これが一体どうライブラリー操作なのかというと、土地がめくれるまで公開され続けたカードはライブラリーの一番下にプレイヤーが望む順番で置くことができるという点に注目。
これを捻った視点から見るとこうなる。「ライブラリーに土地が1枚もない場合、すべてのカードを公開した後にそれを好きなように並べ替える」と。そう、土地を探すカードを土地が0枚のデッキで用いることで、ライブラリーを完全に操作してしまおうというのだ。最初にこれに気付いたプレイヤーの発想力には恐れ入るよ。
『ゼンディカーの夜明け』の両面カードによって「土地0枚」のデッキでも「土地を運用可能」になったことで、《小道の再交差》はそのカードパワーをグンと引き上げられた。
これにより組まれたデッキが「ランドレス・ベルチャー」だ!
4 《棘平原の危険》 4 《ヴァラクートの覚醒》 4 《バーラ・ゲドの復活》 4 《変わり樹の共生》 4 《海門修復》 4 《髑髏砕きの一撃》 -第2面が土地である呪文(24)- 4 《猿人の指導霊》 -クリーチャー(4)- |
3 《否定の契約》 4 《捨て身の儀式》 4 《発熱の儀式》 4 《魔力変》 4 《血染めの月》 4 《小道の再交差》 4 《アイレンクラッグの妙技》 4 《ゴブリンの放火砲》 1 《魂の再鍛》 -その他の呪文(32)- |
2 《外科的摘出》 1 《墓掘りの檻》 1 《稲妻》 1 《自然の要求》 2 《神々の憤怒》 1 《焼けつく双陽》 4 《神聖の力線》 2 《沸騰》 1 《巣穴からの総出》 -サイドボード(15)- |
ベルチャーとはCharbelcher……つまり《ゴブリンの放火砲》のこと。
ライブラリーを一番上から順に公開していき、土地が出たらストップ。それまで公開されたカードの枚数分のダメージを対象に与え、公開された土地が山だったらそのダメージは倍になる。このデッキはランドレスの名の通り土地がないのですべてのカードが公開され、20点のライフを大きく上回るダメージを対戦相手に叩き込んで一撃必殺を決められる。
《ゴブリン徴募兵》でしこたまゴブリンを並べてぶっ放されたり、レガシーでは土地が1枚以下のデッキで用いられたりした、ぶっ放し系コンボの代名詞的アーティファクトだ。
24枚の土地でない土地があるため、3枚くらいは安定して土地を置くことができるだろう。それと《猿人の指導霊》や《捨て身の儀式》などで4マナ、その4マナを《アイレンクラッグの妙技》で7マナにジャンプアップさせて放火砲を唱えて起動まで必要なマナを得て、ファイア!ドカーン(完)――というのが理想的な展開だ。手札にさえ恵まれれば、1ターン目にコンボを決められるだろう。
このベルチャーコンボに《小道の再交差》が組み込まれ、土地がない性質を活かしてコンボを成立させるための超万能サーチ呪文として機能するというわけだ。砲火砲や妙技をトップに仕込んでコンボ成立! シンプルに勝ちに行くならこうだが、相手が青いデッキでない、インスタントでの介入手段がないデッキなのであれば一番上に《魂の再鍛》を、その下に「《ゴブリンの砲火砲》《アイレンクラッグの妙技》《猿人の指導霊》《髑髏砕きの一撃》《捨て身の儀式》《発熱の儀式》」のように砲火砲+7マナというパッケージを積んで、次のターンのドローで《魂の再鍛》を奇跡で唱えてそれらを丸ごとゲットしてコンボ完成!という手もある。
これはかなり芸術点が高く、決まったときはこれぞコンボという気持ちにさせてくれる。
ベルチャーの本質はぶっ放しにあり、《否定の力》などで打ち消されてはやむなし。そのような展開も《小道の再交差》でしっかりと立て直せるように積むことで、決して打ち消しの前にやられるだけのデッキではなくなったと言えるだろう。どうしてもそれらが気になるのであれば《夏の帳》で武装すると良い。
以前のベルチャーデッキはマナを得る=手札を失うという形だったため、妨害への対策カードを使うとコンボを決めるためのマナが得られなくなるという弱点があった。土地を置けるようになったのでこのウィークポイントはかなり解消され、逆に《血染めの月》のような嫌がらせカードを挟んでからコンボに行くなどの余裕ができた。いざとなればクリーチャーを展開して殴るなんて構成も作れるだろう。
可能性が大きく拡がったベルチャーデッキ、モダンで楽しむなら今が旬!
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