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戦略記事

岩SHOWの「デイリー・デッキ」

赤単ゴブリン:頂に立つデッキ(ヒストリック)

岩SHOW

 マジックにおける頂点とは何か。これについては各自意見があると思う。

 プロリーグに所属し、選ばれしプレイヤーだけが参加できる招待制トーナメントに参戦し、その中でも世界選手権に該当するイベントで優勝する……これは競技シーンにおける頂点の中の頂点と言って良いだろう。

 もっとハードルを下げるなら地元のお店やコミュニティで優勝するとか、そもそも勝ち負けを超えたところで活躍するとかそういった頂点もある。各々で自身の頂点を設定し、それを目指して日々一歩ずつ進んでいってほしいね。マジックは時間をかければかけるほど、得るものや返ってくるものがあるゲームだ。焦らずに頂点を目指そうぜ。

 数ある頂点の中で、今この時代はわかりやすいものが1つある。MTGアリーナにおけるランク戦。このランクの最上位、ミシックに到達すること。そしてそのミシック・ランクの中でもさらに上位である数字でランクが表示される領域。その真の頂である「#1」。全プレイヤーの頂点である1位の座に君臨すること。これほどわかりやすい頂点もないね。

 ランクは非常に流動的なもので、日々プレイヤーの勝ち負けによって変動する。たとえ#1の座にたどりつくことができたとしても、その後ろから迫り来るライバルたちがあっという間にその頂を奪い去っていくものだ。

 毎日のように誰かに移り変わっていく#1の座であるが、2020年11月には異常事態が発生していた。なんと、30日中29日もの間、この座を守り続けたプレイヤーが存在したのである。凄まじい話だ。Altheriaxというプレイヤーは、構築ランクにて主にヒストリックをプレイし、勝ち続けたとのことだ。今日はその勝利に次ぐ勝利をもたらし続けたデッキを紹介しよう。

Altheriax - 「赤単ゴブリン」
ヒストリック (2020年11月30日)[MO] [ARENA]
18 《
3 《エンバレス城
1 《ファイレクシアの塔
-土地(22)-

4 《スカークの探鉱者
4 《人目を引く詮索者
4 《ずる賢いゴブリン
4 《ゴブリンの酋長
4 《ゴブリンの女看守
4 《ゴブリンの戦長
4 《群衆の親分、クレンコ
4 《上流階級のゴブリン、マクサス
-クリーチャー(32)-
4 《髑髏砕きの一撃
2 《反逆の先導者、チャンドラ
-呪文(6)-
1 《ゴブリンの鎖回し
1 《ゴブリンの首謀者
1 《ゴブリンの損壊名手
4 《魂標ランタン
4 《削剥
2 《通報の角笛
2 《アクロス戦争
-サイドボード(15)-
AlthMTG氏のTwitter より引用)

 

 ヒストリックを代表するデッキの1つ、「赤単ゴブリン」。なんと言っても《上流階級のゴブリン、マクサス》が桁違いに強い。

 その効果にはムラがあるが、上手くめくれたときには大量のゴブリンを一気に従え戦場へ。同族に速攻を与えるゴブリンたちのおかげでマクサスとその軍団はタイムラグなく突撃し、マクサスはゴブリンの数だけ巨大化して大ダメージを叩き出す……

 6マナ=即死の可能性もある強烈なパワーカードを抱え、このマクサスからの勝利に特化したコンボ要素を持ったビートダウンデッキ。勝つときのわかりやすさと爽快さから使用者も多く、依然として人気の高いアーキタイプだ。

 マクサスを唱えることを目指しているので《スカークの探鉱者》《ずる賢いゴブリン》《ファイレクシアの塔》とマナ加速がたっぷり。さらには《アイレンクラッグの妙技》まで用いるリストも活躍したことで注目を集めたのも記憶に新しい。

 このゴブリン、最近何か得たものがあるのかというと……まず『ゼンディカーの夜明け』にて《髑髏砕きの一撃》が加入。

 ゴブリン・デッキはマクサス以外にも3~4マナのカードを用いるため、ビートダウンの中でもマナを必要とする方だ。しっかりとデッキ内の土地の枚数を保持しつつ、状況によっては除去として使えるこのソーサリーの恩恵は大きい。

 そして『カラデシュリマスター』にて登場した《反逆の先導者、チャンドラ》!

 彼女の加入がかなり大きい。前述のようにゴブリンはマナ加速がすべて、《アイレンクラッグの妙技》を採用しているほどだった。しかしながら、この妙技は単体では何もできないカードなのも事実。その点、チャンドラは[+1]能力で{R}{R}を得られるので、出した次のターンに6マナ捻出してマクサスを唱えるのは容易だ。

 それでありながら、もう1つの[+1]能力は唱えられる呪文を増やす擬似的なドローか、あるいは2点ダメージで継続的に相手を攻める。[-3]の除去も実直で、そして[-7]で紋章を得ればゲーム終盤はちっぽけな1/1や2/2でしかないゴブリンが5点ダメージを背負ってやってくる必殺の1枚に化ける。無駄ドローになるどころか、チャンドラ1枚でゲームに勝ててしまうレベルだ。

 《アイレンクラッグの妙技》のように唱えたターンに即マクサスというわけにはいかないが、確実性と強烈なプレッシャーを併せ持つこのプレインズウォーカーはヒストリックのゴブリンを大きく強化したのである。実際使ってみると本当にびっくりするくらい強い。

 サイドボードも、さすがに29日間も頂点に君臨したデッキは練られている。マクサスによるゴブリン展開を阻む《墓掘りの檻》や、ゴブリンたちの能力を封じる《静寂をもたらすもの》などの天敵に対抗するために《削剥》は欠かせない。これだけでアーティファクトとクリーチャーの両方に対抗できるので、サイドボードのスロットを広く使うことが可能になる。

 注目のカードは《通報の角笛》だ。

 これでゴブリンを指定することで、ゴブリンたちのコストを軽減させ、マクサスやクレンコといったヘビー級の降臨を後押しする。それと同時に毎ターン、ライブラリーの一番上がゴブリン・カードならそれを手札に加えられるというオマケが、コントロール・デッキを相手にした際にはとても頼もしい。ゴブリン相手にサイドボード後、アーティファクト破壊まで用意する対戦相手はほぼいないため、高確率でこの角笛は機能して勝利をもたらしてくれることだろう。見た目よりもずっと強いカードなので一度使ってみてほしい。

 頂点に立ち続けたヒストリックの「赤単ゴブリン」。強化されて強くなった、マクサスから大量にゴブリンがめくれる幸運に恵まれた、それらも確かにあるだろう。しかし「#1」の座を維持し続けたというのはまず実力があるということに他ならない。ボクシングやプロレスの王座防衛日数みたいなもんで、長期に渡ってランクを保ち続けることはマジックの新しい伝説となることだろう。

 頂点に輝き続けることで名を残すのは、未来のあなたかもしれない。

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