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戦略記事

岩SHOWの「デイリー・デッキ」

The Spy 80ver.(パイオニア)

岩SHOW

 『ゼンディカーの夜明け』のプレビュー期間に、当コラムで野心的なデッキの構想段階のリストを紹介した。それはCool Deckの回で取り上げた「デッキ内に土地が1枚も採用されていないが土地24枚として運用できるリスト」である。

 第2面が土地の呪文カードを大量に採用することで、土地が0枚で呪文カードのみで構成されたライブラリーを作り出すことができる。引いてきた呪文を土地として置いていって、それらのカードを唱えて勝つ。奇想天外なようで、それが実行できてしまうからマジックは面白い。

 今回紹介するのはパイオニアのデッキ。以前紹介した発売前に考えられたリストから、リリースされて数週間経って洗練されたリストへと進化したものだ。このデッキの特徴は、何度も言うように土地がない。そしてさらに使用者いわく「おっと、ヨーリオンを入れ忘れた。おっと、プレイヤーズツアー予選を突破しちゃった」とのこと。

 一体どんな姿なのか、その異形のリストをご覧あれ!

SanPop - 「The Spy」
Magic Online Pioneer Champs #12216020 優勝 / パイオニア (2020年10月11日)[MO] [ARENA]

-土地(0)-

4 《森の女人像
3 《楽園のドルイド
4 《絡みつく花面晶体
2 《銀打ちのグール
4 《秘蔵の縫合体
4 《地底街の密告人
3 《ブラックブルームのならず者
3 《カザンドゥのマンモス
4 《欄干のスパイ
2 《憑依された死体
2 《世界棘のワーム
-クリーチャー(35)-
4 《思考囲い
3 《巨森の補強
3 《集団的蛮行
3 《新生化
4 《バーラ・ゲドの復活
4 《異界の進化
3 《ペラッカの捕食
4 《アガディームの覚醒
4 《這い寄る恐怖
4 《ハグラの噛み殺し
4 《海門修復
4 《変わり樹の共生
1 《悪戦+苦闘
-呪文(45)-
1 《エメリアのアルコン
1 《再利用の賢者
3 《濃霧
2 《強迫
4 《突然の衰微
4 《神聖の力線
-サイドボード(15)-

 

 《空を放浪するもの、ヨーリオン》を入れ忘れた、というのはジョークだろう。メインデッキが80枚なのにヨーリオンを採用していないデッキだぜ!ってことだ。そういう構築がこの世にあるとは、思考の片隅にもなかったなぁ。デッキビルダーの発想の柔軟さ、恐るべしだ。

 この土地が不採用のデッキは「Oops, All Spell」や「The Spy」と呼ばれるコンボデッキの最新型。スパイの名の通り《欄干のスパイ》、そしてそれと同様の能力を持った《地底街の密告人》がキーカード。

 4マナ揃えて、スパイを唱えるか密告人を唱えて1マナでクリーチャーを生け贄にすることができればゴールだ。これらのカードの能力で対象を自分自身にし、自らのライブラリーを土地がめくれるまで切削し続ける。つまり全部墓地に置く。で、その墓地に落ちたカードで悪さをするのだ。

 ライブラリーがすべて墓地に落ちることで《這い寄る恐怖》がすべて誘発。

 これらを追放することで最大12点対戦相手のライフを失わせ、こちらのライフを回復させる。ライフの大半を奪ったところで、ライフを3点以上得たことでターン終了時に《銀打ちのグール》の能力が誘発し戦場に這い出てくる。それにより《秘蔵の縫合体》の能力も誘発し、次の対戦相手のターン終了時にこれらも後を追って戦場へと現れる。こうして並んだクリーチャーで攻撃して勝利するのを狙っている。

「ちょっと待って、スパイでライブラリーはすべて墓地に落ちてるんでしょ? 次のターンが来たらカードが引けなくて負けになるのでは?」と思った方、ご安心を。あらゆる領域から墓地に落ちた際に、ライブラリーに戻る能力を持った《世界棘のワーム》を採用してあるので、スパイが仕事をした後も安全に次のターンを迎えることができるのだ。

 このコンボを決める際に重要なのは、何ターン目にできるのかということ。第2面が土地のカードは、その大半がタップ状態で戦場に出るもの。なのでこれらを真面目に置いていればスパイコンボを決めるための4マナを手に入れるのは5ターン目ということになる。3点のライフを支払うことでアンタップ状態で出せるものも各色に1種類ずつあり、青黒緑の12枚を採用しているので4ターン目にコンボを決められることもあるだろう。ただこれだけでは心もとない。

 いかに相手のライフを削り、パワー3のクリーチャーが複数並ぶコンボと言えども、だらだらとターンを重ねてから決めたところで返しにこちらが殴り切られてしまったり、重いカードで対処されてしまっては意味がない。

 そこで4ターン目、早ければ3ターン目に決められれば、という話になってくる。これを叶えるためにこのリストでは緑を用いて、この色が得意とするマナを生み出すクリーチャーでこの問題の解決に当たっている。これはスマートなやり方だ。

 呪禁を持つことで除去されてターンの計算が狂ったということを避けられる《森の女人像》と《楽園のドルイド》が頼もしい。

 そして《絡みつく花面晶体》。土地にもなるし、2マナ出る状況ならマナクリーチャーとして加速も担う、実にデキる1枚! このデッキの非常に重要なカードで、地味ではあるもののその骨子を支える縁の下の力持ち的存在だ。

 また、これらのマナクリーチャーは餌にもなる。《異界の進化》および《新生化》を唱えるための生け贄ってことだ。

 これらのソーサリーでスパイたちを直接戦場に出すプランを備えることで、80枚に膨れ上がったデッキでもコンボパーツを手にしやすくなる。2ターン目マナクリーチャー、3ターン目に《異界の進化》からスパイ降臨、というのも夢ではないのだ。

 《異界の進化》および《新生化》はコンボだけでなく、状況によっては別のクリーチャーを持ってくることでゲームを優位に進めることも可能という点にも注目したい。例えば墓地からクリーチャーが戻ってこれないような状況であれば《カザンドゥのマンモス》などを出して殴り勝つという最終手段にもアクセス可能だ。

 サイドボードに1枚だけ用意された《エメリアのアルコン》もそうで、使用者いわくこれが良い仕事をしたらしい。

 このリストを公開したツイートに対して、対戦相手の1人が「アルコンで5ターン目に勝てる手札を潰されちゃったのは効いたよ~」とリプライしていたのが印象的だ。基本でない土地しか採用していない相手を足止めし、1ターンに2回以上呪文を唱えることで勝つデッキを封殺する。よくこのカードの採用に至ったなと、改めてビルダーのセンスに脱帽だ。

 カードのポテンシャルを爆発させるのは、いつだってデッキビルダーだ。『ゼンディカーの夜明け』を改めて見直せば、新しいデッキを生み出す力を秘めたカードに気付くかもしれない。さあ、カードを広げてデッキ構築のはじまりだ!

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