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戦略記事

岩SHOWの「デイリー・デッキ」

イゼット・スペル(スタンダード)

岩SHOW

 やはり自分が関わったカードというものには愛着が湧いてしまう。

 自分が関わったというと大袈裟かもしれないが、要するに新しいカードや再録されるものをプレビューで紹介させていただいた、そのカードたちのことだ。幸いなことに、構築シーンでも活躍したカードがいくつかある。《頑固な否認》《無私の霊魂》なんかはなかなか強くて定番カードとして活躍してくれて、他では味わえない嬉しい気持ちになったものだ。

 そしてその最新のものと言えば! 当コラムで取り上げた謎変化》!

 まさかデイリー・デッキでプレビューする日が来るなんてね、そのサプライズも合わさって、このカードに対しては思い入れが強くなったものだ。

 再録カードなのでその機能に対しては把握できていて、活躍するか否かは環境次第だなと考えていた。カードとしては決して弱くはない、むしろハマればゲームを決める強さは持っている。ただ、どんなデッキに入れても活躍するカードというわけではない、クセがある! このクセを活かして調理してくれるプレイヤーが現れるか、そしてそのデッキが活躍できる環境にあるか。これはプレビュー段階ではとてもじゃないが読めない。日々ネット上にアップされるデッキリストの海を読み漁っては「《謎変化》いたりしないかな……」なんて淡い期待を胸にした日々を送っていた。

 そして、この真夏の8月中旬! 時は来た!

TKO - 「イゼット・スペル」
Red Bull Untapped International Qualifier 4 トップ8 / スタンダード (2020年8月9日)[MO] [ARENA]
6 《
6 《
4 《蒸気孔
4 《天啓の神殿
-土地(20)-

4 《戦慄衆の秘儀術師
4 《スプライトのドラゴン
2 《砕骨の巨人
2 《厚かましい借り手
4 《嵐翼の精体
-クリーチャー(16)-
4 《選択
4 《突破
4 《ショック
3 《送還
2 《サムトの疾走
4 《謎変化
3 《霊気の疾風
-呪文(24)-
3 《レッドキャップの乱闘
2 《唱え損ね
1 《無謀な空襲
2 《溶岩コイル
2 《否認
2 《炎の一掃
2 《覆いを割く者、ナーセット
1 《王家の跡継ぎ
-サイドボード(15)-
TKO氏のTwitter より引用)
 

 青赤で、クリーチャーも採用されているがそれよりも非クリーチャーの方が採用枚数が多い、そのデッキ構成から「イゼット・スペル」などと呼ばれる類のデッキだ。メインからしっかりと4枚投入された《謎変化》の雄姿を見よ!

 クリーチャー自体は16枚ではあるが、《謎変化》を加えれば実質20枚。これらと非クリーチャー呪文を絡めて、相手のライフを積極的に狙っていく。クリーチャーが25~30枚ほど入った一般的なアグロデッキと様相は異なるが、その目指すところは同じなのである。

 《謎変化》を見てもらえばこのデッキのやりたいことは分かる。毎ターン、非クリーチャー呪文を唱える!である。

 大量に採用されたコストの軽いインスタントとソーサリー、これらを唱えて、《謎変化》を3/3飛行にしたりその他のボーナスを受け取りながら攻めていくのだ。

 具体的に言えば、まずは《スプライトのドラゴン》。

 2マナ1/1飛行&速攻、恵まれた能力に加え、足りないサイズはインスタントかソーサリーを唱えるごとに成長していくすごいやつ。《選択》《突破》といった手札の枚数が増えるわけではないがとにかく軽いドロー呪文を唱えて、サイズアップを継続させて、ドラゴンと呼ぶに相応しいサイズまで持っていく。

 あるいはインスタントかソーサリーを唱えればコストがたったの2マナになる《嵐翼の精体》も強い。

 素のサイズが3/3で飛行持ちと文句のないスペックでありながら、非クリーチャー呪文唱えるたびに+1/+1修整を受ける果敢能力を持つ。

 《謎変化》《スプライトのドラゴン》《嵐翼の精体》、これら3種をメインの攻め手として、空から一気にライフを削る……アグレッシブさが伝わっただろうか。

 《選択》《突破》以外にも、とにかくすべての非クリーチャー呪文が軽いもので固められている。引いたは良いがマナが足りずに唱えられない、そんな状況になりかねない3マナ以上のカードはノーセンキュー。とにかく軽くしつつ1マナドロー8枚体制という構成が、デッキ内の土地の枚数を20枚という少なさまで切り詰めることを可能としている。軽い呪文ばかりなのに何枚も土地を引いてもしょうがないからね。毎ターンドローしてクリーチャーなり非クリーチャーなりを継続して引き続ける、理想のゲーム展開を求めた結果がこのシャープなリストだ。

 クリーチャー除去も軽く、《ショック》と《送還》に。

 どちらも確実性はないが、最序盤に出てくるものを焼ければ良いし、終盤は本体に投げつけてライフを詰められるので《ショック》こそがベストな選択肢、《送還》も戻されたクリーチャーを相手が出し直すころにはもう手遅れ。これに加えて《霊気の疾風》が相手への妨害手段となる。これらで手数の勝負を挑もう。

 上記の、呪文を唱えるごとに美味しい思いができるカードと、それを誘発させるための軽量呪文たち。その両方と相性抜群なのが《戦慄衆の秘儀術師》!

 このデッキが成立しているのはコイツのおかげと言っても過言ではないだろう。手札が増えるわけではないドロー、軽いが効果は抑え目な除去……それらとて、使いまわせれば脅威となる。このゾンビで攻撃すると、そのパワー以下の点数で見たマナ・コストのインスタントかソーサリーを墓地から唱えられる。上記のカードは1マナのものばかりなので、殴るたびに何かしらのカードを使いまわせるということだ。果敢や+1/+1カウンターを置くもご自由にってわけ。これらが噛み合った時の破壊力……地味に見えて派手にエグい!

 このデッキにおける、ほどよいスパイスとなっているのが2枚の《サムトの疾走》。

 クリーチャーに速攻をつけるので、スプライト以外のクリーチャーをこれで一気に走らせると気持ちが良い。特に《戦慄衆の秘儀術師》を走らせてタイムラグなく墓地再利用をかましてやるのは最高の気分になれる。パワーも+2で打点上昇もサポートし、占術もついているので不要な土地のドローを避けられる。適切なタイミングで引いてくることができれば、本当に良い仕事を見せてくれる1枚となるだろう。

 上記のデッキリストはオンライントーナメントでトップ8に入賞したことで話題となった。そしてそれをベースにしたデッキが、その後の大会で優勝したことでより注目されることとなった。

Anthony Arevalo - 「イゼット・スペル」
Red Bull Untapped International Qualifier 5 優勝 / スタンダード (2020年8月9日)[MO] [ARENA]
6 《
6 《
4 《蒸気孔
4 《天啓の神殿
-土地(20)-

2 《幽体の船乗り
4 《戦慄衆の秘儀術師
4 《スプライトのドラゴン
4 《嵐翼の精体
-クリーチャー(14)-
4 《選択
4 《突破
4 《ショック
4 《送還
2 《サムトの疾走
4 《謎変化
3 《霊気の疾風
1 《王家の跡継ぎ
-呪文(26)-
1 《厚かましい借り手
2 《唱え損ね
2 《レッドキャップの乱闘
3 《否認
2 《溶岩コイル
3 《旋風のごとき否定
2 《覆いを割く者、ナーセット
-サイドボード(15)-
mtgmelee より引用)
 

 リストはほぼ同じだが、メイン・サイドに微妙な違いがある。それらがどのようにゲームに影響を及ぼすのか、考えながら眺め、そして使ってみて自分に合った構成を見つけてほしい。

 一見難しいデッキにも見えるが、綺麗に動いた時には相手がどんなデッキでも圧倒してしまえる爆発力があり、初心者でも爽快感あふれるゲームを楽しめるはずだ。手数で攻めるゲームをやりたいのであれば、挑戦してみよう!

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