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岩SHOWの「デイリー・デッキ」
スピリット・デッキ:鎖の音が木霊する…(パイオニア)
ホラーな表現というものも数多ある。何に恐怖するかは人それぞれ、なのでホラー映画や漫画において重要なのは、その表現が恐ろしいかをどうやって思い込ませるか。細かな演出を積み重ねることで、恐怖を植え付けるその過程にあるのだ……と思う、いちホラーファンとしての見解です。何気ない日常にあふれた光景を、そこに至るまでの過程でどれだけ怖いものとして見せることができるか、その勝負にホラー作品側が勝利した時、僕らは心底震え上がるのだ。
マジックの多元宇宙にも怖いもの、恐ろしいものがあふれている。そのまんまホラーなんてクリーチャータイプもいるくらいで、恐怖そのものが闇の世界を歩くプレインズウォーカーたちを蝕み、飲み込まんとする。
いよいよ到来した夏。真夏の怪談、恐怖の惨劇、味わいたければマジックだ! 今日は身の毛もよだつお化けデッキを紹介しよう!
8 《島》 4 《平地》 4 《神聖なる泉》 3 《港町》 3 《氷河の城砦》 -土地(22)- 4 《霊廟の放浪者》 4 《幽体の船乗り》 4 《鎖鳴らし》 4 《無私の霊魂》 4 《至高の幻影》 3 《鎖霊》 4 《天穹の鷲》 4 《呪文捕らえ》 3 《ネベルガストの伝令》 -クリーチャー(34)- |
4 《高尚な否定》 -呪文(4)- |
4 《神秘の制圧》 3 《減衰球》 2 《敬虔な命令》 2 《正義のうねり》 4 《神秘の論争》 -サイドボード(15)- |
というわけで、マジックのお化け・幽霊と言えばスピリット! 青を中心に、白などにも存在する伝統あるタイプであり、特にイニストラード次元には多くのスピリットが生息……と言ってよいのかはわからないが、とにかくたくさんのスピリットが群れを成してふわふわと漂っている地帯があるようだ。この次元のスピリットに共通する特徴として、布を被っており光を放つこと、そして……多くのものが鎖を身にまとっていることが挙げられる。
どこから伸びているのかはわからないが、じゃらじゃらとした鎖を本体から垂らしながら、夜空を漂うスピリットの姿が多くカード化されている。スピリットが多く発生するという港町などに住んでいると、この鎖が鳴る音が恐怖の象徴となるのだろう。チャリ…ジャラリ…という音がどこからともなく聞こえてきたら……ギャーーーッ。このスピリットを想起させるアイテムを名に冠した《鎖鳴らし》なんてのもいるくらいだ。
これがまたスピリットデッキでは他のスピリットと強いシナジーを形成する、名カードである。この夏、新たに《鎖霊》という直球な名前のスピリットも加わったことで、スピリットの動きが活発になってきた。今日はパイオニアのスピリットを紹介だ。
上記のものはご覧の通り「青白スピリット」。白を使う理由としては、スピリットたちを強化して勝つまでのターンを短くする《天穹の鷲》が使えること、そして実質的に呪文の打ち消し能力を持っている《呪文捕らえ》が使えること、この2つが特に大きい。
1ターン目からスピリットを展開し、《至高の幻影》《天穹の鷲》で強化して殴る。相手の除去は《鎖鳴らし》で呪禁を与えて弾いたり《無私の霊魂》で破壊不能にして耐え、重要なカードは《呪文捕らえ》でキャッチ。クリーチャーデッキとの殴り合いになれば《ネベルガストの伝令》でタップして攻撃を防ぐ。
このタップ役に《鎖霊》も加わったことで、骨太なクリーチャーサイズで押してくるデッキ相手にも幽霊のようにふわふわとまとわりついて妨害する力が向上した。肉体持ちには負けんぞというスピリットの意地を見よ!
7 《島》 4 《繁殖池》 4 《植物の聖域》 4 《ヤヴィマヤの沿岸》 1 《イプヌの細流》 -土地(20)- 4 《霊廟の放浪者》 4 《幽体の船乗り》 2 《セイレーンの嵐鎮め》 4 《鎖鳴らし》 4 《鎖霊》 4 《至高の幻影》 4 《ネベルガストの伝令》 -クリーチャー(26)- |
4 《顕在的防御》 4 《執着的探訪》 2 《第六感》 4 《高尚な否定》 -呪文(14)- |
3 《減衰球》 3 《本質の把捉》 3 《英雄的介入》 3 《神秘の論争》 -サイドボード(12)- |
こちらは珍しい青緑のスピリットデッキ。緑のスピリットは0枚で、クリーチャーは青単色。それを緑の非クリーチャー呪文でサポートする形だ。《鎖霊》の加入により軽くて強い青のスピリットが増え、ネベルガストとのタップ地獄に持ち込めば強化役が《至高の幻影》のみでも十分に殴り合える、という判断でこの構築に至ったのだろう。
相手の除去をかわし、最後の一押しにもなる《顕在的防御》を使う分、よりテクニックが要求される形だが、土地を1枚立てているだけで多くの状況に対応できるようになっている。
土地の枚数を20枚まで切り詰め、《執着的探訪》と《第六感》でドローして運用するという形も特徴的だ。
群れて押すというよりは、単騎で詰めていきながら霊をかき消そうとするものを逆に煙に巻いて、隙あらばじわりじわりと瞬速持ちで手数も増やす……クロック・パーミッションと呼ばれる戦術をとる形だ。
青白と青緑、どちらにも採用されている《高尚な否定》の存在も、スピリットデッキの隆盛を後押しする。
飛行クリーチャーがいれば{4}要求する打ち消しとなる2マナインスタントで、スピリット・デッキであればすべてのクリーチャーが飛んでいるのでまずこの条件は達成可能。《マナ漏出》を超える2マナの打ち消しは非常に強力。相手を選ばない強力なこのカードは、今後他のデッキやフォーマットでも見かける機会が増えそうだ。
このリストはまさかのサイドボード12枚、なんらかのアクシデントなのだろうが、《高尚な否定》で打ち消しまくったのだろう、リーグ戦を全勝で終えている。その強さ、おわかりいただけただろうか。
このデッキに何度も何度も圧倒されれば、鎖の音を耳にするだけでヤツらがそこにいるように錯覚してしまうようになるだろう。この夏は暑さ対策だけでなく、スピリットに対してもしっかり備えよう(サイドボードを用意しておこうの意味)。鎖の音が聞こえたら、各種妨害が飛んでくることをしっかりと計算しながら、カードをプレイする順番を考えてゲームを進めていこう。
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