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戦略記事

岩SHOWの「デイリー・デッキ」

パワー1レッド(スタンダード)

岩SHOW

 どこかでカウント違いをしていないのであれば、今回は当コラムの1101回目。別に何か綺麗な数字というわけでもないが、1が3つ並ぶとマジックプレイヤーとしては「なんだか軽量クリーチャーっぽい」と思ったりなんかするのではないかな。

 1/1/1と表記したりする、クリーチャーの基本にして最小限のサイズ、1マナ1/1。そりゃあ1/2/1や1/2/2の方が優秀なのだが、世の中そんなに甘くない。《ジャッカルの仔》のようにデメリットを持っているのが相場だ(最近はそうでもないが)。

 1/1/1は1ターン目に1体、2ターン目に2体と波状攻撃を仕掛けるのは得意。しかしながら相手に1/2以上が出てきただけで攻撃が止まってしまうという賞味期限の短さがこの手の連中の弱点だ。

 そうなると1/1/1の価値とはどこにあるのかということになるが、賞味期限が短い代わりに何かしらの能力を与えられているところに注目したい。中でも赤のそれはかなり強い連中が揃っている。

 かつては《怒り狂うゴブリン》がこのコストの代表的なクリーチャーとして基本セットにもたびたび再録されていたものだが、クリーチャーが強くなった現在ではそれにさらにメリットとなる能力がいくつか与えられていたりする。

 今日はそうした1101回目にふさわしく、1/1/1を始めとして、1/1を大量に扱うデッキを紹介しよう!

Zoya Belova - 「smol red boys gang」
スタンダード (2020年6月6日)[MO] [ARENA]
18 《
4 《エンバレス城

-土地(22)-

4 《熱烈な勇者
4 《不気味な修練者
4 《焦がし吐き
4 《ブリキ通りの身かわし
4 《朱地洞の族長、トーブラン

-クリーチャー(20)-
4 《災厄の行進
4 《禁じられた友情
4 《心火
4 《炎の侍祭、チャンドラ
2 《無頼な扇動者、ティボルト

-呪文(18)-
4 《エンバレスの盾割り
4 《猛火の斉射
2 《レッドキャップの乱闘
4 《焦熱の竜火
1 《無頼な扇動者、ティボルト

-サイドボード(15)-
Zoya Belova氏のTwitter より引用)

 

 パワー1で赤いデッキと言えば、《災厄の行進》を使ったアグロがちょくちょくその姿を見せるものだ。

 特に環境初期、どのプレイヤーもどのカードを使おうか迷いがある中でどうしても自分がやりたいことを優先し、大振り気味のデッキを選択するタイミングでは、その無慈悲なまでの速度で瞬殺することができるため、好んで使われることが多い。

 6月初頭、スタンダードにも禁止やルールの変更を受けて大きな変化が訪れ、新しい環境が始まったと言えるタイミング。そのタイミングで頭角を現したもののひとつが上記のリストだ。

 デッキの方向性は至ってシンプル。1/1/1など、パワー1のクリーチャーを展開して《災厄の行進》を置いて、思い切りぶん殴る。それで1ターンでも早く相手のライフを0にしようという、超前のめりなアグロの中のアグロと呼べるデッキだ。

 その性質上、長期戦は苦手。宵越しの手札は持たないとばかりの姿勢が、4ターン目には20点のライフを削り切る爆発力を生み出す。最速パターンの1つで言えば、

  • 1ターン目:1マナの速攻持ちで1点
  • 2ターン目:《災厄の行進》を置いて行進の1点と戦闘ダメージで1点
  • 3ターン目:《炎の侍祭、チャンドラ》を出して[0]能力起動、計3体のパワー1で殴って行進3点と戦闘ダメージで3点
  • 4ターン目:《朱地洞の族長、トーブラン》を出してチャンドラ起動から攻撃、行進で9点と戦闘ダメージで9点

 4ターン目の伸びっぷりがわけのわからないことになっているが、要するに1/1を多数展開して、行進とトーブランのコンボで相手のライフが多少回復してようがブロッカーがいようが、そんなものを帳消しにする圧倒的なダメージを直接本体に叩き込むのである。

 ブン回ったら勝つ、そうでなければ負けてもしょうがない。この開き直りがアグロデッキにとっては大事なもので、中途半端なことをしていないからこそ勝てるデッキになっているのである。

 だからプレイする時もその心構えが必要になる。回れば勝ち、そうでなければ相手の勝ち。自分との戦いを制することができるか否か、そう考えれて気楽に回すにはもってこいなデッキだ。

 このデッキは1/1を並べて行進かトーブランで大ダメージを叩き出すものであるが、もう1つ赤ならではなお飛び道具を備えている。《心火》だ。

 2マナで4点ダメージ、かなり軽くて大きなダメージが与えられる代わりに、クリーチャーかプレインズウォーカーの生け贄を要求してくる。このデッキであればもちろん、往々にして1/1を生け贄に捧げることになるのだが、それって……なんというか心が痛まない。1マナのやつなら出してすぐに生け贄に捧げて3マナと手札2枚で4点として使っても良いし、《炎の侍祭、チャンドラ》の出すエレメンタルはどうせターン終了時に死ぬので、それを投げつければ無駄がない。

 同じく3マナでトークンを生成するプレインズウォーカーである《無頼な扇動者、ティボルト》が呼び出すデビルも生け贄に捧げることでダメージを飛ばせる。

 トーブランがいる状況だとデビルが死んで3点、《心火》で6点と初期ライフのおよそ半分を削り取ってしまうダメージ効率の良さだ。ティボルトやチャンドラなどプレインズウォーカーを投げるという選択肢があることも忘れずに、そのターンのうちに勝つのであれば何も気にするな!

 《炎の侍祭、チャンドラ》の[-2]から《心火》を2連発することもこのデッキの勝ち方の1つであり、大変に気持ちが良く健康的なので各自体験されたし。

 ティボルトは「対戦相手はライフを得られない」能力を持っているのも重要。上述のようなブン回りであれば多少の回復は無視できるが、現実はそう毎回綺麗に行進トーブランが決まるわけでもない。そんな時に《自然の怒りのタイタン、ウーロ》や《吸収》などの回復を無視できるティボルトの存在は大変にありがたく、これが勝負を決めてしまうことも少なくない。

 パワー1がちょろちょろと並び出したら、ちょっと警戒した方が身のためだ。1/1を2体生成する《禁じられた友情》などは普通の赤単に入っていることは少ないので、《災厄の行進》デッキであるサインと考えるべきだろう。1/1が何体出てこようが、殴り合いで負けることはないっしょ、なんて気軽に戦っていると、思わぬ爆発力でボコられることも。

 相対した際には相手が長期戦を苦手としていることを思い出しながら、慎重に動いてライフを護るのが吉だろうね。

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