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岩SHOWの「デイリー・デッキ」
緑単信心:シルバーバレットの魅力(パイオニア)
マジックは互いのデッキをシャッフルしてライブラリーにして、そこからカードを引いていって対戦する。シャッフルされているということはカードの並びはランダムであり、何が引けるかはわからない。それゆえに再現性のないドラマが生まれるのがこのゲームの醍醐味である。
毎ターン願ったカードを手に入れられれば最高だが、そう簡単には運命の女神は微笑んではくれない。そこでゲームを決定付けるカードを手に入れるために、プレイヤーたちは工夫する。
最もポピュラーなアプローチは「カードを引く」ことだ。毎ターンのドローだけでなく、呪文や能力を駆使してカードをザクザクと引きライブラリーを掘り進んでいけば、おのずと欲しいカードに出会えることだろう。
ただ、先にも触れたようにライブラリーの中のカードの並びはあくまでランダム、どれだけドローを続けても目当ての1枚が底の方に固まっていたらそれを手に入れることはかなわないだろう。そこで、より確実性の高い手段として、特定のカードを探してきて手札に加える、いわゆるサーチ呪文や能力を用いるのはより効果的で確実だ。
マジックの歴史にはこのサーチを前提として組まれたデッキもある。60枚のメインデッキの中に、特定のデッキ・状況において火を噴くカードを1枚挿しする。これを複数種類用意し、サーチカードを用いてライブラリーの中から探してくる。1枚挿しが並んだデッキリストは一見いびつではあるが、そのスタイルに心を鷲掴みにされるプレイヤーも少なくはない。
このような構築テクニックを「シルバーバレット」と表現する。吸血鬼や悪魔などの怪物に対して、銀の弾丸はそれらを撃退する頼れる武器である。そこから、困難を解決する一発的な意味合いの慣用句として西洋では用いられているとのことだ。○○デッキに対する解決策=銀の弾丸をちりばめたデッキってことだね。
本日紹介するデッキは、このシルバーバレット戦術を用いる実験的なデッキである。絶対的な成績を残したというわけではないが、群雄割拠するパイオニアのイベントにて3勝2敗と勝ち越すことに成功しており、可能性が感じられる。それじゃデッキリストを見てみよう!
16 《森》 4 《ニクスの祭殿、ニクソス》 2 《ギャレンブリグ城》 -土地(22)- 4 《ラノワールのエルフ》 4 《エルフの神秘家》 4 《炎樹族の使者》 2 《旅するサテュロス》 4 《翡翠光のレインジャー》 4 《大食のハイドラ》 -クリーチャー(22)- |
4 《狼柳の安息所》 4 《大いなる創造者、カーン》 4 《アーク弓のレインジャー、ビビアン》 4 《世界を揺るがす者、ニッサ》 -呪文(16)- |
1 《ダークスティールの城塞》 1 《漁る軟泥》 1 《セテッサの請願者》 1 《新緑の機械巨人》 1 《絶え間ない飢餓、ウラモグ》 1 《約束された終末、エムラクール》 1 《歩行バリスタ》 1 《トーモッドの墓所》 1 《真髄の針》 1 《減衰球》 1 《危険な櫃》 1 《王神の立像》 1 《グレートヘンジ》 1 《影槍》 1 《領事の旗艦、スカイソブリン》 -サイドボード(15)- |
メインデッキはシルバーバレットどころか、綺麗に4枚挿しが並んだリストだ。このデッキがその弾丸を仕込んでいるのは、何を隠そうサイドボードだ。
マジックにはライブラリー以外にも、ゲーム外からカードを探してくる効果を持ったカードが存在する。デッキ内に1枚挿しせずに済むので、ドローの乱れがより起きにくくなるという点でゲーム外(構築戦においては往々にしてサイドボード)サーチは大変に優れていると言える。
しかしながら、それのためだけに15枚の枠をすべて1枚挿しにするデッキというのは珍しい。構築者にそうさせたのは、2人の魅力的なサーチ能力保持者だ。
《大いなる創造者、カーン》、アーティファクトをサーチしてくる能力を気軽に起動できるのが売りの無色プレインズウォーカー。そしてサーチ能力の起動コストは重いが、クリーチャーであれば何でも探してこれるその範囲の広さが魅力的な《アーク弓のレインジャー、ビビアン》。この2名が緑単色デッキでタッグを結成し、このような独創的なリストを誕生させたのだ。
メインの構成は先にも触れた通り、オーソドックス・正統派である。《ラノワールのエルフ》などのマナクリーチャーにより展開力をアップさせ、《炎樹族の使者》などシンボルの濃いパーマネントを並べることで緑への信心を上昇させ、《ニクスの祭殿、ニクソス》に繋げて爆発的なマナを得る。「緑単信心」に分類されるデッキである。
ニクソスや《ギャレンブリグ城》を《翡翠光のレインジャー》で手に入れ、それらの土地や《狼柳の安息所》を貼り付けたものを《旅するサテュロス》でアンタップすることで安定して大量のマナを得られるのが魅力的だ。
で、このようなマナの使い道としてカーンとビビアン、そしてそこからサーチされたカードを用いてゲームを終わらせるのである。
カーンから持ってくるアーティファクトは、《危険な櫃》《トーモッドの墓所》《減衰球》といった、特定のデッキや状況に対してのアンサーとなる、まさにシルバーバレット的なコントロール要素から、《領事の旗艦、スカイソブリン》《王神の立像》といった、ゲームを終わらせる手段まで豊富に用意されている。
注目は《グレートヘンジ》《新緑の機械巨人》と色付きのアーティファクトも用意されている点。緑単色ならではのチョイスであり、どちらも大変に強力でこのデッキの一番美味しいところ、大トロ的存在だ。
ビビアンから持ってくるものもまた、墓地利用デッキ相手の最終兵器《漁る軟泥》やライフを攻める赤単などに対する延命手段である《セテッサの請願者》といった銀の弾丸から、《絶え間ない飢餓、ウラモグ》《約束された終末、エムラクール》ら文字通りのフィニッシャーまで納得のいくラインナップだ。
ウラモグとエムラクールを唱えるマナは先述の通りニクソスなどから爆発的にマナが得られるので問題なし。大逆転だって演出してくれること間違いなしなサイドボードには、そそられるって!
サーチカードは下手すると強くなりすぎるので、ややブレーキを踏んだ設定がされているものだが、カーンとビビアンはどちらも4マナと現実的なコストである。その上、サーチを抜きにしても仕事をするカードである点もありがたい。特にビビアンは適当にクリーチャーを大きくしているだけでも十分にゲームを終わらせられるだろう。
このような夢があふれるリストに挑むプレイヤーが出てくるのも自然な話である。セットが拡がればそれだけ選択肢が増えて強くなるこれらのサーチカード、あなたも活用してみてはいかがだろうか。
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