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岩SHOWの「デイリー・デッキ」
グリクシス・アグロ:あると安心「フラッド受け」(スタンダード)
マジックの楽しさのひとつとして「ランダム性」が挙げられる。ライブラリーをシャッフルすることで、ゲーム開始時の手札およびゲーム中に引くカードはすべてランダムなものとなり、同じデッキでも毎回異なるゲーム展開を体験することになる。
このランダムになりがちなゲーム展開を、可能な限り思った通りに進めるために、デッキには方向性が似通ったカードを採用することになる。ライフを攻めたいのであれば、1~2マナの攻撃面に優れたクリーチャーを大量に採用することで、どんな手札が来ても最序盤から攻めていけるようにする。
ランダム性に抗うための構築の工夫は、単にクリーチャーやその他の呪文の採用枚数だけに留まらない。「土地の枚数」というのも非常に重要なファクターだ。土地がなければマナを得られず、初手に土地がなければマリガンするしかなくなってしまう。初手に土地が来るように土地の枚数を増やすというのも手だが、そこでバランスを誤ると「どこまで引いても土地しかない」という事態にも陥る。いわゆる土地事故の一種だ。
土地は引けなくても辛いし引きすぎても辛い。デッキに一体何枚採用すべきだろうか? そこを悩んで調整する過程もまた、マジックの楽しみのひとつだ。一般的に、4マナの呪文を4ターン目に唱えることを目的とするのであれば、デッキの4割=24枚を土地にすると、滞りなく土地を4枚引ける確率が高いのでオススメとされている。もっと軽いカードで戦うデッキであればそこから減らし、もっと重いカードも確実に唱えたいとなれば増やしたり別の手段でマナが得られるカードを足すことになる。
どれだけベストを尽くし、最適なバランスの土地枚数でデッキを構築しても……引きの内容が偏ってしまうことはある。土地を引かないことを「マナ・スクリュー」と呼び、逆に土地か引かないことを「マナ・フラッド」と呼ぶ。スクリューはもう諦めるしかないことがほとんどなのだが、フラッドに関してはデッキ構築に工夫を施すことである程度緩和することが可能だ。
ゲーム終盤、互いに手札が尽きてどちらが先に有効なカードが引けるかという勝負になっている時に引いたのが土地だと……残念な気持ちになる。でも、マナ・フラッド対策、通称「フラッド受け」となり得るカードを用意しておけば、その土地も資源として最低限の仕事をさせることができ、勝利へと近づくことになる。
今日はそんなフラッド受けとなるカードが多数採用された、独創性の高いデッキを紹介しよう!
1 《島》 2 《沼》 2 《山》 4 《湿った墓》 1 《陰鬱な僻地》 4 《蒸気孔》 1 《天啓の神殿》 4 《血の墓所》 2 《試合場》 3 《寓話の小道》 -土地(24)- 4 《熱烈な勇者》 4 《漆黒軍の騎士》 4 《恋に落ちた剣士》 4 《嵐拳の聖戦士》 3 《真夜中の死神》 3 《残忍な騎士》 4 《悪ふざけの名人、ランクル》 -クリーチャー(26)- |
4 《型破りな協力》 2 《エンバレスの宝剣》 4 《王家の跡継ぎ》 -呪文(10)- |
1 《真夜中の死神》 1 《残忍な騎士》 3 《強迫》 3 《軽蔑的な一撃》 3 《害悪な掌握》 2 《溶岩コイル》 2 《炎の一掃》 -サイドボード(15)- |
このリストのベースとなっているのは、赤黒の騎士・クリーチャーを取りそろえたビートダウン・デッキだ。《漆黒軍の騎士》《熱烈な勇者》で1ターン目から攻めっ気をあふれさせていき、騎士を並べたところで《恋に落ちた剣士》の出来事《ご機嫌取り》で相手のライフをゴリッと削ってフィニッシュ!というのが理想のパターン。
《残忍な騎士》で除去し、相手にこちらの騎士を除去されても《真夜中の死神》でドローして手札を切らさない、多彩な攻め方が魅力だ。
フラッド受けという面で見ても、《漆黒軍の騎士》はマナを支払うことでサイズアップするので、後半引いてきた土地にも価値が発生しやすいというのが嬉しい。
この赤黒に青を足したことで、このデッキはそのオリジナリティを高めている。青が入ったことで用いられているカードは《王家の跡継ぎ》!
『エルドレインの王権』の主役とも言えるケンリス家の双子プレインズウォーカーだ。彼らは[+1]能力を2つ持っている。
1つはクリーチャーのパワーを2上げ先制攻撃とトランプルを付与するもの。育った《漆黒軍の騎士》にトランプルを付与するのは強い! 《残忍な騎士》のパワーが上がって先制攻撃というのも殴り合いになっている状況では美味しいものだ。
この攻撃をサポートする能力だけでも十分に優秀なのだが、もう1つの[+1]能力がフラッド受けであるのも攻めのデッキにとってはありがたい。カードを1枚引いて1枚捨てる、手札の枚数が増えるわけではないが、無駄となっている土地を捨てて他のカードが引ける可能性があるというのはとても大きいことなのだ。
これらの能力をカチャカチャと起動しつつ、[-8]でゲームエンドまで持っていけるポテンシャル。これは色を足すのに値するカードパワーというわけだ。
《王家の跡継ぎ》とともに、毎ターン追加のドローをもたらすことでフラッドを回避しようとするのが《嵐拳の聖戦士》。
2マナ2/2威迫、相手にもドローは与えてしまうが、その代わり強引にライフを減らすのは打点として評価できる。
《悪ふざけの名人、ランクル》も同じく強制的にライフを失わせてお互いドローという共通の能力で、攻め手を途切れさせない。
これら3つの追加ドローカードが共存していることから、このデッキには《型破りな協力》が採用されている。
このチョイス、実に面白い。上記のカードで自ターンで2枚目となるカードを引くと、1/1飛行のフェアリーがどこからともなくやってくる。クリーチャーで攻めるデッキにとって、何もせずとも自動的に殴りに行けるトークンが生成されるカードは大歓迎だ。除去にあふれたデッキを相手する時、またお互いがっぷり四つの殴り合いになった時、これらのトークンはアタックもブロックもこなす重要な勝利へのピースとして活躍するはず。ランクルのお互いクリーチャーを生け贄に捧げる能力でも、元手がタダなので気兼ねなく生け贄に捧げられるのも賢い。またこれ自体にもマナを注げば《王家の跡継ぎ》と同じく手札を入れ替えるドロー能力が付いているので、グダグダが極まったゲーム展開においても勝利を目指して機能してくれることだろう。
土地ばかり引いてしまうと手札はあるけど何もできない……とブルーな気持ちになってしまうものだが、このように抜け道を用意しておくことでそのダメージは軽減することが可能だ。攻めるデッキを作る際にはこの考え方を参考にしてみてほしい。
ところで僕は最近、手札に全く土地が来ないマナ・スクリューの方で大変に苦しめられた。こういった運勢の時には、引けないことは無いだろってくらい土地をどっさりと入れたデッキを使うのが良いだろうってことでそんなデッキを使ってみたところ、ストレスなく気持ちよくゲームに勝利することができた。どんなデッキかは、次回に紹介するとしよう。
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