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戦略記事

岩SHOWの「デイリー・デッキ」

シミック・ネクサスの最新型(スタンダード)

岩SHOW

 個人的な2019年上半期大ニュース、黒田正城氏がミシック予選突破! 日本人初のプロツアー王者がプロツアー(ミシックチャンピオンシップ)に久しぶりの参戦だ! いや~黒田さん、改めましておめでとうございます。ここ数年、あと1勝でプロツアーというところで届かず、というのが続いていたので、ようやく呪縛をぶち破ってくれたなぁと。本戦でも日本のクロダここにありと本領を発揮してきてほしいところだ。

 黒田さんが使用したデッキは「シミック・ネクサス」。《荒野の再生》でマナを大量に得て《運命のきずな》を唱える、現スタンダードにおけるコンボデッキの代表格だ。

 《荒野の再生》を用いるデッキは前環境から愛用していたので、おそらくこのカードでマナを得てカードを引いてワチャワチャとする動きが好きなおじさんなのだろう。

 黒田さんのような愛好家がいる一方で、実はこのデッキは減少傾向にあった。『灯争大戦』環境に切り替わって、確かに得るものもあったのだが、使われると嫌なカードが広くスタンダードのデッキに採用されてしまったからだ。

 そのカードは《時を解す者、テフェリー》。このカードは対戦相手のインスタント・タイミングでの呪文の使用を禁止する。ネクサス・デッキはターン終了時に《荒野の再生》で土地をアンタップして、そこから《運命のきずな》などのインスタントを唱えてターンを得たりカードを引いてゲームを掌握していくデッキだ。この戦略を先置きの、たった3マナのプレインズウォーカーに否定されてしまう!

 テフェリーを使用するデッキは雨上がりのタケノコのように爆増したこの5月。天敵とも言えるカードが3ターン目に飛び出るのが日常茶飯事ならネクサスは厳しいな……とこれを使うことを諦めたプレイヤーは多かった。実際、ランク戦でも全く当たらなくなったものである。

 ネクサスが鳴りを潜める間、テフェリーを使うデッキは勢力を広めたが、同時にテフェリーを気にしない、インスタント・タイミングで動かないデッキを使う方向にシフトしていったプレイヤーも増えた。前回紹介した「グルール・アグロ」なんかがそうだね。

 グルールやその他のアグロが勢力を伸ばせば……《根の罠》でこれらのデッキの猛攻をいなすことができる「シミック・ネクサス」にチャンスが巡ってくるというもの。ネクサスが数を減らしているのもあって、グルール側も対ネクサス最強兵器の《燃えがら蔦》をサイドボードから減らしている傾向にあった。まさしく、ここしかない!というタイミングでデッキ選択と環境が噛み合ったのだろうね。

 それでは、ミシックチャンピオンシップの権利を勝ち取ったリストを見てみよう!

Masashiro Kuroda - 「シミック・ネクサス」
ミシックチャンピオンシップ・バルセロナ2019 予選 大阪大会 優勝 / スタンダード (2019年5月18日)[MO] [ARENA]
6 《
6 《
4 《繁殖池
4 《内陸の湾港
3 《天才の記念像
3 《爆発域

-土地(26)-


-クリーチャー(0)-
4 《選択
4 《成長のらせん
4 《根の罠
3 《アズカンタの探索
2 《一瞬
4 《薬術師の眼識
4 《荒野の再生
4 《運命のきずな
3 《伝承の収集者、タミヨウ
2 《世界を揺るがす者、ニッサ

-呪文(34)-
3 《樹上の草食獣
4 《茨の副官
2 《永遠神ケフネト
2 《生体性軟泥
4 《否認

-サイドボード(15)-

 メインはクリーチャー0枚。《荒野の再生》を設置したら《水没遺跡、アズカンタ》と《伝承の収集者、タミヨウ》で《運命のきずな》を探して毎ターン唱えるループに持ち込む。

 このマナを食うアクションを支えると同時に、ループ突入後には毎ターンクリーチャーを供給して勝利をもたらしてくれるフィニッシャーが《世界を揺るがす者、ニッサ》。

 彼女で森から出るマナを倍にすれば、《荒野の再生》から一体何マナ得られることやら。土地をクリーチャー化させる能力は対プレインズウォーカーにも強く、これと《爆発域》《一瞬》でテフェリーを蹴散らしてループに持ち込もう。

 3/3を毎ターン作るという動きは小型のクリーチャーで戦うデッキにとっても脅威で、前環境でネクサスが苦手としていた「赤単」に対してもニッサが戦場に出てしまえば渡り合えるようになった。このデッキには外せないカードとして定着しそうだ。

 このリストの特徴はサイドボードに溢れている。《否認》以外の11枚はクリーチャー! 0枚のメインとのこのギャップ。

 《樹上の草食獣》はこのデッキが苦手とする《正気泥棒》やその他のパワー2クリーチャーを食い止めつつ、土地を伸ばして《荒野の再生》に繋いでくれる、地味ながらいぶし銀の働きを見せるかわいいやつ。

 《茨の副官》もブロック役だ。「赤単」の火力で除去されても1/1を残して可能な限りプレイヤーに通るダメージを抑えてくれる働き者。

 《永遠神ケフネト》も黒田さん本人いわく、除去されにくいブロッカーくらいに考えて使うのが良いとのことだが、突然《運命のきずな》を公開してゲームの流れを大きく変えてくれる可能性も秘めている。

 《生体性軟泥》は追加のフィニッシャーで、《運命のきずな》を封じられても《荒野の再生》で伸びたマナを勝利に結びつける重要な役目を担っている。

 特定のカードがきつい、といってもすべての対戦相手がそのカードをデッキに入れているわけではない。コンボデッキにとって、すべてはタイミング。ガードが下がっている好機を見定めて、君も初代王者に続いて夢の舞台を目指そう!

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