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戦略記事

岩SHOWの「デイリー・デッキ」

エスパー・コントロール(スタンダード)

岩SHOW

 《吸収》は憧れのカードだった。

 《対抗呪文》に白マナ1つ足すと3点回復がついてくる。打ち消しされた上に、せっかく削ったライフが回復してしまう。当時中学生、これを完全にされる側だった僕は相手の盤面に《》《》《平地》と立っているだけでムムムとなったものである。お小遣いを貯めてパックを買う中学生にとっては、あれを4枚揃えてついでに《神の怒り》などで武装したコントロールデッキを組むというのはなかなかにハードルが高く、憧れを抱きながら指をくわえて見ていたものである。

 《吸収》を使うデッキの中でも、『インベイジョン』ブロック構築やスタンダードで活躍していた《追放するものドロマー》をフィニッシャーに据えた「カウンタードロマー」とか「Go-Mar」と呼ばれたデッキには特に惹かれたなぁ。白青黒の3色ってのが、いかにもテクニカルで良かった。

 時を経て、その3色はドロマーからエスパーと呼ばれるようになり、僕も大人になって学生のころよりは組みたいデッキが組めるようになった。ここに来て『ラヴニカの献身』で《吸収》が帰ってきた!

 もう二度とスタンダードでは唱えられないと思った憧れの呪文を、今度は構える番になることができる! 組むしかない、「エスパー・コントロール」!

Tommy San Miguel - 「エスパー・コントロール」
StarCityGames.com Team Open Baltimore 5位 / スタンダード (3人チーム構築戦) (2019年2月2~3日)[MO] [ARENA]
1 《平地
1 《
4 《神無き祭殿
4 《孤立した礼拝堂
4 《神聖なる泉
4 《氷河の城砦
4 《湿った墓
4 《水没した地下墓地

-土地(26)-


-クリーチャー(0)-
4 《思考消去
2 《喪心
2 《アズカンタの探索
1 《渇望の時
1 《否認
3 《吸収
3 《屈辱
3 《ケイヤの怒り
2 《ヴラスカの侮辱
1 《残骸の漂着
2 《予知覚
2 《中略
1 《万全 // 番人
1 《昇華 // 消耗
2 《ウルザの後継、カーン
4 《ドミナリアの英雄、テフェリー

-呪文(34)-
4 《正気泥棒
3 《聖堂の鐘憑き
2 《人質取り
2 《黎明をもたらす者ライラ
3 《否認
1 《不敬の行進

-サイドボード(15)-
StarCityGames.com より引用)

 コントロールというデッキは、基本的には相手に自分のやりたいことを押し付けるのではなく、それをさせないという受けのデッキである。なので、そもそも相手がどんなカード・デッキを使ってくるのか? それに対するアンサーになり得るカードは何か? という大事な部分がハッキリしていないとデッキが組みにくいものだ。

 新セット発売直後などは特に一体何が飛び交う戦場なのかわからないのだが、この「エスパー・コントロール」というデッキは最初期から存在感を発揮している。それは2つのことが要因だろう。

 1つは、戦力がかなり把握できていたこと。《吸収》《屈辱》のような強さが過去に証明されているカードが再録されたため、カードパワーに疑問を持たずに構築することができたというわけだ。

 もう1つは、オンラインの先行リリース期間がコントロールを組むのに十分な情報と時間を与えてくれたという点。Magic OnlineとMTGアリーナの両方で世界中のプレイヤーがさまざまなデッキにトライし、環境で強そうなデッキ・人気が出そうなデッキがある程度判明した。コントロール愛好家たちがそれぞれのリストを温めながら新環境の大会に臨めたというわけだ。

 早速、長年の思いを叶えるべくこのリストやそれに似たものをコピーしてちょっと触ってみた感想を記していこう。まず、憧れていた《吸収》はやはり素晴らしい! 相手の行動を封じつつ、ライフを安全圏に逃がしてくれる。そりゃあ強いわけだ。赤単のようなデッキを相手にした場合、これで3点火力を打ち消せば先に撃たれたものも消したようなもんで、実質カード2枚じゃん!みたいなテンションになれた。いやー、これが《吸収》ユーザー側の視点ですか。勝負所を《吸収》で捌かれた相手が「うーむ、もう届かんな」と諦めて投了してくれる点も良いね。

 出てしまったパーマネントの対処も得意なのがエスパーの良いところ。《屈辱》はクリーチャーでもエンチャントでも3マナでパリンッと割れ、現在のスタンダードでこの両方を用いないデッキはほとんどないので腐ることが全くなかった。特に強いエンチャントをサクッと処理できる点が良いね。

 器用なカードであるからこそ適当に使わずに、《吸収》と《思考消去》と組み合わせて、ゲームプランをしっかりと立てながらベストなパフォーマンスをさせていきたいところだ。

 除去と言えば《ケイヤの怒り》は、マナ拘束こそ厳しいもののほとんど《神の怒り》である。じゃんじゃか流して気持ちよくなろう。

「それぐらいのクリーチャーなら……通しで! 後でまとめて流してあげよう」と考えながらプレイするのはコントロールの醍醐味で、20年以上前から変わらない楽しさがそこにはある。

 新カードからは最後に、《予知覚》を取り上げておこう。

 これが本当に強くて、唱えただけでほくほくになれる! 除去と打ち消しを構えながら、何もなかった相手ターンの終わりに唱えて手札を補充して良し。こちらの狙い通りにロングゲームにもつれこんで、すなわちマナに余裕がある状態なら、自ターンのメインで唱えて占術3で量だけではなく質も取りにいって良し。この、自分のメインから動いて相手を追い込めるという点が良い。《ドミナリアの英雄、テフェリー》と《ウルザの後継、カーン》以外にそういうカードが得られたのは大きいね。テフェリーがいる状態なら自分のメインで5マナ使っても土地が2枚起きるので隙が無い。そういう状況に持っていければもう勝ち!

 メインには0枚に抑えた分、サイドボードはクリーチャーたっぷりプランを取っている。《聖堂の鐘憑き》は赤いデッキにとっては出されるとこれほど辛いカードもなく、また久しぶりにその姿を見る《人質取り》は流行りの《ハイドロイド混成体》を奪って唱えてI win! なベスト・アンチカードとして機能する。この辺は今後もこのデッキのサイドボードの常連となることだろう。

 他の部分をどうするか? そのあたりの調整が、今後このデッキで勝つために必要な工夫となってくるんじゃないかな。相手の用意する対コントロールカードを読んで、それを上回るものを用意できた時……「エスパー・コントロール」は難攻不落の城塞となることだろう!

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