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岩SHOWの「デイリー・デッキ」
グランプリ・静岡2018(レガシー)王者:エルドラージ・ストンピィ
マジックはゲームという大きいジャンルで括った場合、かなり複雑なものに分類されるだろう。使えるカードの種類が増えれば増えるほど、その難解さは極まってくる。
レガシーなんかはその極致とも言えるだろう。ドローで手札が目まぐるしく入れ替わり、マナ・コストを無視してプレイされるカードも多々あり……高い技術を持ったプレイヤーでも、このフォーマットの荒波に飲まれてしまうことは少なくない。
難しい環境、だからこそ簡単というか、シンプルな戦術を用いるデッキを使うというのも推奨されるアプローチだ。自身のターンに全力投球して、相手のターンは黙って見守る……対応して動けないデッキを使うというのは、勇気が試されることでもある。はたから見るとブン回りで圧倒したように見えて、実は紙一重の戦いだったということはよくあることだ。
日本国内史上初、2つのグランプリを同じ週末に開催したグランプリ・静岡2018にて、レガシー・トーナメントを制した「エルドラージ・ストンピィ」もまた、使用する際にこちらの覚悟を試してくるデッキである。
3 《荒地》 4 《古えの墳墓》 3 《裏切り者の都》 4 《エルドラージの寺院》 3 《ウギンの目》 4 《魂の洞窟》 1 《ヨーグモスの墳墓、アーボーグ》 4 《不毛の大地》 -土地(26)- 4 《エルドラージのミミック》 4 《作り変えるもの》 1 《猿人の指導霊》 4 《難題の予見者》 4 《現実を砕くもの》 3 《忘却蒔き》 1 《終末を招くもの》 1 《絶え間ない飢餓、ウラモグ》 4 《果てしなきもの》 -クリーチャー(26)- |
2 《厳かなモノリス》 2 《アメジストのとげ》 4 《虚空の杯》 -呪文(8)- |
3 《漸増爆弾》 2 《魔術遠眼鏡》 2 《アメジストのとげ》 3 《罠の橋》 4 《虚空の力線》 1 《梅澤の十手》 -サイドボード(15)- |
ストンピィとはかつては緑の軽量クリーチャーを用いた速攻デッキを意味していたが、時が流れて現在では「2マナ土地から妨害系パーマネントとデカいクリーチャーを展開するデッキ」を指す呼称となっている。
エルドラージということでこのデッキは色マナを用いない、完全に無色のデッキだ。無色マナ{C}をコストとして要求するエルドラージを確実に運用するには、有色のカードと組み合わせることがややリスキーになる。モダンのように有色呪文でいろいろとメリットが得られるのであればそれもアリだが、レガシーであれば無色単でも問題なくデッキとして成立するし、「無色マナが出ない!」という事故に遭うリスクを排除できるメリットが勝る。
《虚空の杯》はストンピィ・デッキの顔であり、これがあるから成立しているデッキと言っても決して過言ではない。
相手をストンプ(踏みつけ)するためのクリーチャーたちをたった1枚で農場送りにする《剣を鍬に》をはじめ、レガシーを代表する数々の1マナ呪文をシャットアウト。
エルドラージ型にはこれに加えて《アメジストのとげ》も採用されているのがポイント。
《虚空の杯》のように特定のマナ域を完全に抑え込めるわけではないが、すべての非クリーチャー呪文のプレイを遅らせる能力はこれまた強烈。このリストを使用し優勝した覚前輝也は、アーティファクトに対して破壊手段を持つデッキ相手に《虚空の杯》をすべてサイドアウトし、このアメジストを増量するというアプローチでゲームを優位に進めることに成功していた。どうせ割られるなら、その割りに来る呪文が飛んでくるターンを1ターン遅らせて、そのうちに殴りきろうというわけである。一見、1マナの呪文が多数あるデッキ相手に杯をサイドアウトするというのも、勇気や覚悟が試されるね。
エルドラージたちはいい意味でコストに見合わないオーバースペックなものばかり。《難題の予見者》で手札を弾いて、除去されにくい《現実を砕くもの》を走らせてとやっていれば勝ててしまうだろう。
《エルドラージのミミック》も最序盤に出てきて、上述のエルドラージを後続展開すれば勝手にサイズアップしてガンガンライフを持っていってくれる縁の下の力持ちだ。1ターン目に《ウギンの目》からこのミミックや《果てしなきもの》を大量展開するというのもこのデッキのベストムーブである。
フィーチャーマッチを見ていて、特に暴れ回っていたのは《忘却蒔き》。
対戦相手のライブラリーを上から追放し、その後追放されているすべての土地を自分の戦場に出すというマナ加速的な役割を持つこの大型エルドラージ……《グルマグのアンコウ》を用いるデッキにとっては悪夢のような存在である。《汚染された三角州》などの生け贄に捧げるフェッチランドで墓地の枚数を増やし、それらをアンコウの探査能力で追放して唱えるというのは黄金ムーブなのだが、それによって追放された土地も《忘却撒き》の能力によって奪われてしまうのだ。
ただ、取られるのがフェッチなら相手は無色デッキだし痛くも痒くもない……と思われるかもしれないが、《ヨーグモスの墳墓、アーボーグ》がこれに加わると…《絶え間ない飢餓、ウラモグ》を唱えるのだってイージーだ。《不毛の大地》を奪われた日にはそれでゲームエンドまで行ってしまうのを覚悟した方がいいだろう。
ウラモグを唱える方法はもう1つ、《厳かなモノリス》を用いるという手段も。
このモノリスと3枚の《荒地》の存在が、このデッキを、ある天敵を前にしても戦えるようにしてくれている。《血染めの月》だ。このエンチャントによってすべての土地が山と化して赤マナしか出なくなると、クリーチャーが全く展開できなくなってしまう。この弱点をこれらのカードで補ってあるのがこのリストの最大の特徴だ。3枚の《荒地》は緑絡みのデッキが《暗殺者の戦利品》を使ってくることも想定しているのだろう。
冒頭でも触れたように、相手のターンにできることはほとんどない。自分のターンにベストな動きをして、後は信じて突き進むのみ。シンプルかつ強力な「エルドラージ・ストンピィ」、強い意志を持って使用すれば、きっとこのデッキは応えてくれるはずだ。
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