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岩SHOWの「デイリー・デッキ」
構築譚:ラクドス・ミッドレンジ(過去のスタンダード)
2018年秋のセット『ラヴニカのギルド』へのワクワクが止まらない。やっぱりギルドの数だけ能力があるってのは嬉しいことで。新しいマジック体験ができそうという期待が、プレビューカードを見て日増しに高まっている(これを書いている今日は新しいヴラスカが公開されたり!)。
で、ふと思ったのは、前のラヴニカのときってどんなデッキ・カードが活躍してたかな?ということ。『ラヴニカへの回帰』が発売されたのは2012年の秋。え、6年前……? そうか、モダンフォーマットが制定されたのもこの時だったな……う~む、恐ろしい。
6年前のセットでは今回のセットとフィーチャーされたギルドがやや異なる。その中でも前回組のラクドス、赤黒のギルドがスタンダードにもたらしたインパクトは大きかった。当時、すでに赤と黒にはビートダウン向きのカードは揃っていた。『ラヴニカへの回帰』より《血の墓所》と《ラクドスのギルド門》が参入したことにより、マナベースが大幅強化され《ゲラルフの伝書使》と《雷口のヘルカイト》といったカードを同時に運用する、パワフルなデッキが登場した。
7 《沼》 1 《山》 4 《血の墓所》 4 《竜髑髏の山頂》 4 《ラクドスのギルド門》 4 《魂の洞窟》 -土地(24)- 4 《戦墓のグール》 4 《墓所這い》 4 《悪名の騎士》 4 《ゲラルフの伝書使》 4 《ファルケンラスの貴種》 3 《地獄乗り》 3 《雷口のヘルカイト》 -クリーチャー(26)- |
4 《灼熱の槍》 2 《血の署名》 2 《夜の犠牲》 2 《硫黄の流弾》 -呪文(10)- |
2 《士気溢れる徴集兵》 3 《火柱》 2 《脳食願望》 2 《死体焼却》 1 《夜の犠牲》 2 《地下世界の人脈》 3 《忌むべき者のかがり火》 -サイドボード(15)- |
ベースとなっているのは『イニストラード』ブロックに多数収録されたゾンビの部族シナジーを活かしたデッキ。《ゲラルフの伝書使》などをコントロールすることで《墓所這い》を使いまわすビートダウンに、《ファルケンラスの貴種》が入り生け贄シナジーも加わっている。《硫黄の流弾》で大ダメージが狙えるのだ。
同時に《地獄乗り》《雷口のヘルカイト》と、重めだが速攻を持ち打撃力満点のクリーチャーを多数採用しているのが特徴だ。
開幕から軽量クリーチャーで攻め立てつつ、それのみに頼らない、重量級も用いることで中盤以降のゲームも有利に戦おうというコンセプト。そのため、アグロ系のデッキでありながら土地はしっかり24枚採用。こういった形は今日では基本となっているが、当時では比較的新しい戦略だった。開幕速攻もできるが、瞬間的な爆発力よりも中盤戦以降の安定感を重要視した構成……中速デッキの走りである。
こうしたデッキは「ラクドス・ミッドレンジ」と呼ばれた。今では当たり前のように耳にするミッドレンジというアーキタイプ名も、定着しだしたのはこのころ。グランプリで優勝したこのリストを皮切りに、その戦略とデッキ名は爆発的に広まったのだった。
ミッドレンジ戦略が定番となったら、今度は派生形が誕生してくる。黒に寄せたゾンビ・シナジーありの上記リストとは別ベクトルの、赤に寄せたデッキリストもまた流行ることに。
8 《山》 1 《沼》 4 《血の墓所》 4 《竜髑髏の山頂》 4 《魂の洞窟》 3 《戦の大聖堂》 -土地(24)- 4 《ラクドスの哄笑者》 4 《流城の貴族》 4 《灰の盲信者》 4 《悪名の騎士》 4 《ファルケンラスの貴種》 3 《地獄乗り》 3 《雷口のヘルカイト》 -クリーチャー(26)- |
4 《火柱》 4 《灼熱の槍》 2 《忌むべき者のかがり火》 -呪文(10)- |
2 《トーモッドの墓所》 2 《悲劇的な過ち》 1 《脳食願望》 1 《強迫》 2 《ミジウムの迫撃砲》 2 《火山の力》 1 《戦慄掘り》 1 《究極の価格》 2 《滅殺の火》 1 《忌むべき者のかがり火》 -サイドボード(15)- |
《ラクドスの哄笑者》《灰の盲信者》とクリーチャー面でラヴニカの恩恵を受けている。
軽いところを展開したら《地獄乗り》《ファルケンラスの貴種》《雷口のヘルカイト》で押し込む。かなり赤単に寄せているのでマナベースに余裕があり、それゆえに《戦の大聖堂》が採用でき、軽いクリーチャーたちが止まりづらくなっているのが最大の特徴。
シナジーは薄いが、より安定して攻撃ができるよう、個のカードを活かしきるように作られており安定感は高い。同時に相変わらず速いデッキであり、もたついたコントロールなどを意に介さずに斬り続ける様は爽快であった。
こうした「ラクドス・ミッドレンジ」は、現在の「赤黒アグロ」の在り方に重なる部分があるね。ただ少々違うのは、ラヴニカ後に隆盛を迎えたものと、その前にすでに天下を取ったデッキという点。『ラヴニカのギルド』発売時のローテーションでは現在の赤黒を支えているカードの大多数が失われることになる。
変化せざるを得ない赤は、同セットで推されているボロス(赤白)のカードを用いてアグロデッキを存続させていくのだろうか。軽いゴブリンも多数登場し、ゴブリン・シナジーに寄せた構築になるのかもしれない。
こうやって歴史を振り返るのと未来を予想するのが同時に行える、マジックというゲームのスケールの大きさをまた垣間見たような気がするなぁ。
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