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岩SHOWの「デイリー・デッキ」
ブリッジヴァイン(モダン)
『基本セット2019』の発売以降、定期的にあるカードの話をしている。《縫い師への供給者》だ。
やっぱりこのカードはすごいよ。カード1枚で最大7枚まで墓地の枚数を増やすことができる。それがたった1マナで、しかも1/1のクリーチャーだってんだから……本当にすごいことだよ。
どのぐらいすごいのか、ちょっと古いカードと比較してみよう。《まやかしの記憶》のテキストを確認してほしい。……もう良いかな? このカードも1枚で墓地に8枚ものカードを送り込むことができる、派手な効果を持っている。が、ターン終了とともに増えた分だけ無くなってしまう。2マナ払ってそのターンにしか得しないカードがある一方で、1マナ1/1で期限設定もない墓地肥やし。本当に強いカードが出たもんだ。当時、少ないバイト代で買ったパックから出たレアということでなんとか《まやかしの記憶》を用いたデッキを使おうと努力してたなぁ。(もちろん弱かった!)
供給者がスタンダードとレガシーのデッキを強化した話はすでにしたので、今日はお待たせしましたモダンでの活躍について触れよう。
このカードを採用したモダンデッキは、マジック25周年記念プロツアーの直前に姿を現した。最初は面白デッキとしてTwitter上で注目を集めたが、それをベースに洗練させたデッキはモダンの一線級デッキを相手にしても引けを取らないどころか出し抜くほどの強さを見せた。そして、その記念すべきプロツアーにおいてモダンのデッキにそれを選んだチームは少なくなかった。
最高の舞台でその猛烈な動きを世に知らしめた、「ブリッジヴァイン」見参ッ!
1 《沼》 1 《山》 2 《血の墓所》 1 《草むした墓》 1 《踏み鳴らされる地》 4 《血染めのぬかるみ》 2 《新緑の地下墓地》 2 《樹木茂る山麓》 4 《黒割れの崖》 -土地(18)- 4 《墓所這い》 4 《傲慢な新生子》 4 《縫い師への供給者》 4 《臓物の予見者》 3 《ゴブリンの奇襲隊》 2 《ボーマットの急使》 4 《恐血鬼》 4 《復讐蔦》 1 《大いなるガルガドン》 2 《歩行バリスタ》 -クリーチャー(32)- |
4 《信仰無き物あさり》 2 《集団的蛮行》 4 《黄泉からの橋》 -呪文(10)- |
2 《暗黒破》 2 《稲妻の斧》 2 《思考囲い》 4 《破壊的な享楽》 1 《集団的蛮行》 4 《虚空の力線》 -サイドボード(15)- |
ヴァインというのはモダンでもおなじみ《復讐蔦》のこと。
墓地から蘇る4/3速攻を悪用しようと、過去さまざまなアプローチが続けられてきた。最近では手札を捨てることでコストが軽くなる《虚ろな者》と組み合わせての「ホロウヴァイン」が有名なところか。
では、デッキ名に冠せられたもうひとつの名詞・ブリッジとは? これはモダンではこれまでデッキが組めそうで組めなかった、クセの強いエンチャント《黄泉からの橋》のこと。
戦場に出しても何も意味がない、墓地にあることで能力を発揮するこの唯一無二のカードが、ついにモダンで火を噴くときが来た!
デッキの狙い自体は、クリーチャーを高速大量展開というシンプルなもの。それを実現するために真面目にマナを払って手札から唱えるのではなく、手札やライブラリーから墓地に送り込んで墓地から蘇らせる or ゾンビ・トークンを発生させるというアプローチをとっている。勝ち方はビートダウンだが、その動きは立派なコンボデッキだ。
《信仰無き物あさり》《傲慢な新生子》といった従来のラインナップに、供給者が加わったことで1マナアクションが少なかったヴァイン系デッキの弱点を大きく改善すると同時に、その速度も次の次元へと突入することになった。
例えば、こんな動きができる。
- 1ターン目:《縫い師への供給者》で墓地にカードが3枚置かれる(《復讐蔦》《黄泉からの橋》含む)
- 2ターン目:《臓物の予見者》を唱えて供給者を生け贄に、さらに墓地にカードが3枚(《恐血鬼》《墓所這い》含む)置かれると同時に橋の能力でゾンビ・トークンを生成。土地を置いて上陸能力で《恐血鬼》が戦場に出て、ゾンビをコントロールしているので《墓所這い》を墓地から唱える。同じターンに2回目のクリーチャー呪文を唱えたので《復讐蔦》の能力が誘発、戦場に戻って攻撃へ……
2ターン目にして戦場には1/1、2/1、2/1、2/2、4/3とクリーチャーだらけ! これでもまだ手札や墓地は切れていないので、さらなる攻めを継続することができる。こうやって最序盤から波状攻撃で押しまくる! 他に類を見ないダイナミックな動きを見せるのがこのデッキの強さであり、最大の魅力だ。
《復讐蔦》《黄泉からの橋》を最大限に活かすために、マナコストが{X}{X}であり0マナで唱えられるクリーチャーが搭載されている。このリストではやや少なめだが、《歩行バリスタ》《搭載歩行機械》を計8枚採用してX=0で唱える→タフネス0なので即墓地へ→ゾンビ発生という動きをとりやすくしているものもある。1ターンに2回のクリーチャー呪文という条件も簡単に満たせるってわけだ。
蔦で殴ってゾンビは次のターンに合流、というのもでも十分な打撃力だが、《ゴブリンの奇襲隊》を採用し速攻を与えて殴ることでより速くゲームを終わらせるスタイルが定着している。2ターン目に10点なんてことも夢じゃない。
とんでもない爆発力を見せる「ブリッジヴァイン」は、プロツアーでの活躍もあってより警戒される存在となった。《虚空の力線》《安らかなる眠り》などの墓地対策をサイドボードに過剰気味に採用したデッキがMagic Onlineで増えている。なので、今が最も勝ちにくいタイミングかもしれない。
ただご安心を、モダンでは対策せねばならないデッキは数多く、いつまでもサイドの枠を墓地対策に大きく割き続けることはできない。どこかのタイミングでガードが下がる時がやってくる。そのタイミングを見極めれば、このデッキで大勝することができるはずだ。また、このリストのようにどうせエンチャントやアーティファクトで対策してくるのだから、《破壊的な享楽》を4枚積みで武装しておけば、なんとかなったりするものだ。
《縫い師への供給者》は2回に分けて墓地を肥やせる。1回目の分がたとえ追放されても、《臓物の予見者》《大いなるガルガドン》なんかの餌にしてもう1回誘発させてやれば墓地は作り直せる。ただ爆発力を得ただけでなく安定感も増した《復讐蔦》デッキが、今後どこまでのし上がるか見ものだ!
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