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岩SHOWの「デイリー・デッキ」
青黒死の影(レガシー)
ついに! レガシーがグランプリのその先、プロツアーの舞台でプレイされた。チーム構築戦の3種目の1つとして、歴史上はじめてレガシーがプロツアーのフォーマットとなり、世界中の強豪たちが激闘を繰り広げた。
レガシーはスタンダードやモダンと比べると、競技シーンでプレイされることは少ない。そのため、プロプレイヤーたちがどんなデッキを選ぶのか? それだけでも、もう開幕前からワクワクさせられたものである。
メタゲームブレイクダウンを見ると……青黒赤の3色コントロールが使用率ではトップに。続く2位は「スニーク・ショー」で、これには納得。で、3位が「エルドラージ・ストンピィ」と……割と予想外の1位&3位になって、早速プロツアーとレガシーの化学反応を楽しませてもらった。
で、続けてズズズッと見ていくと……9チームが選択したデッキに「UB Shadows」というデッキ名が。これ、青黒の《死の影》デッキである。
以前にも《狂暴化》で一撃必殺を狙える楽しいデッキとして紹介したこともあるレガシーの《死の影》デッキが、ここにきて青黒の2色にまとめられ完成度を一段階上げてきたのだ。
一時期モダンがプロツアーのフォーマットから外れていたのは、プロツアーに臨むプロプレイヤーたちの異常とも言える研究速度により、とんでもなく強いデッキが発見されて環境が壊れてしまいがちだったからだ。まあそこまでの話ではないんだけれども、それでもプロプレイヤーが本気でレガシーと向き合うことで、新たなデッキを発見・テクニックを開発した……と言えるんじゃないかな。
決勝ラウンドにも進出したチーム「ChannelFireball」が使用した「青黒死の影」を見てみよう!
3 《湿った墓》 2 《Underground Sea》 2 《血染めのぬかるみ》 1 《溢れかえる岸辺》 1 《汚染された三角州》 1 《沸騰する小湖》 1 《霧深い雨林》 2 《新緑の地下墓地》 1 《湿地の干潟》 4 《不毛の大地》 -土地(18)- 4 《死の影》 4 《秘密を掘り下げる者》 4 《通りの悪霊》 2 《グルマグのアンコウ》 -クリーチャー(14)- |
4 《渦まく知識》 3 《思案》 1 《定業》 2 《頑固な否認》 4 《思考囲い》 2 《致命的な一押し》 2 《再活性》 4 《目くらまし》 2 《殺し》 4 《意志の力》 -呪文(28)- |
3 《外科的摘出》 3 《夜の戦慄》 1 《虚無の呪文爆弾》 2 《トーラックへの賛歌》 2 《ゲスの玉座》 1 《悪魔の布告》 1 《仕組まれた爆薬》 2 《最後の望み、リリアナ》 -サイドボード(15)- |
《秘密を掘り下げる者》を変身させ、《目くらまし》などで相手を足止めしながらさっさと殴り倒す、「○○デルバー」と呼ばれているデッキのバリエーションの1つだ。
《稲妻》などの赤い火力を足したもの、さらに《タルモゴイフ》などの緑のクリーチャーを足したものなどはあるが、このデッキでは青と黒の2色にまとめ、掘り下げる者とともにダブルエースを務めるのは《死の影》だ。ライフが少なければ少ないほど真価を発揮するこの1マナクリーチャーを活かすために、デッキ内にはとにかくライフが減る仕組みが満載だ。
《思考囲い》をプレイしたり、《意志の力》を代替コストでプレイする際にライフは自然と失われる。これに加えてフェッチランドから《湿った墓》をアンタップで戦場に出せば合計で3点喪失。《通りの悪霊》をサイクリングすれば2点失いつつデッキも圧縮だ。こういったアクションを再序盤からバシバシとって、対戦相手の妨害をしつつこちらのライフを減らしていく。この間、掘り下げる者が《昆虫の逸脱者》に化けて殴っていれば最高だ。
自らライフを減らすので相手に殴り合うクリーチャーが出てくると危険だが、そこは《殺し》で対処しよう。同時に4点ものライフを失えるときたもんだ(一見、矛盾しているような気もするが)。
お膳立てが整ったら、満を持して1マナでとてつもないサイズになった《死の影》を出陣させてブン殴って、ゲームを終わらせよう。または墓地のカードをモリモリ消費して《グルマグのアンコウ》でも良い。デルバー系デッキの苦手とする、長期戦にもつれ込ませない、さっさと相手を倒してしまうという点を強く意識したデッキだ。
個人的には《再活性》が採用されているのが熱い。
ライフを失う手段としても使え、打ち消されたり手札破棄により墓地に行った《死の影》を救出する手段として重宝するはずだ。《通りの悪霊》を捨ててこれで釣れば、1マナで7点ものライフを失うことができる。5マナ3/4沼渡りというスペックがどうにも対処しづらいデッキもあるので、《Underground Sea》などを渡ってボカスカ殴ってやろう!
サイドボードにも注目、ここにプロがレガシーと向き合ったゆえに採用されているカードがある。《ゲスの玉座》だ。
これはレガシー環境を定義するカードへの対抗策。そのカードとは、《虚空の杯》。軽いカード、特に1マナのカードを封じてしまうデンジャラスな置物で、このデッキはその1マナのカードがデッキの大半を占め、おまけにアーティファクトに触りづらい青黒という色。
杯対策をどうするかというのは至上命題なのだが、この《ゲスの玉座》は完璧とも言える対抗手段だ。杯はその上に乗ったカウンターの数を参照して、点数で見たマナ・コストの呪文が等しい呪文を打ち消す。《ゲスの玉座》の増殖能力で、このカウンターの数を増やしてしまえば……打ち消される呪文は2マナにチェンジ! メインデッキに2マナのカードは《目くらまし》しかないので、1が2になることで被害をほとんど受けずにデッキが機能するようになるのだ。
しかもここからがミソで、カウンターが2個になった《虚空の杯》が戦場にあると、対戦相手が手札からX=1で2枚目の杯を出そうにも、それを打ち消してしまうのだ。玉座1つで、戦場のみならず今後置きなおされるかもしれない手札やライブラリー内の杯全てに対策できてしまう……これ、意味が分かった時にはシビれたね!
まだまだ未知の部分が多いフォーマットに、新たなデッキ・テクニックが名を刻んだ。これぞ、マジック25周年記念プロツアーを象徴するデッキの1つだ。これからの歴史で、こういった熱いデッキがもっともっと、数えきれないほど生まれていくのだろう。それらをこれからもこうやって紹介し続けていきたいものです。
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