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岩SHOWの「デイリー・デッキ」
構築譚 その1:12Knights
『ドミナリア』の発売まで1か月を切っている。早いねぇ! あっという間に新しい環境の始まりで、そして今回は新しいのに懐かしいというちょっと特殊なセットなので、いつもよりさらに楽しみなのだ。
ドミナリアやそれに関する多元宇宙の歴史を感じさせるカードが多数登場するようで、個人的には「英雄譚」なる新たなメカニズムがとても気になっている。
この英雄譚にかけて、このコラムでもマジックの25周年目にふさわしいセットの発売へ向けて何か盛り上げるお手伝いをしたいな…ということで、「構築譚」と題して不定期シリーズをやっていこうかななんて。まあ、今までもやってきた過去に活躍したデッキを紹介するだけなんだけども、ほら、ジャンル名が「過去のスタンダード」とかよりは雰囲気があって良いじゃない!というわけで「構築譚」の第1回、始まりじゃ~!
今日は1996年に活躍したデッキを紹介しよう。この年はアテネオリンピックが開催されたり、羽生善治現竜王・棋聖が史上初の七冠を達成した年として知られる。この22年前にマジック界で起きたことと言えば……僕もリアルタイムでは経験していないのだけど、この前後の時代にマジックをプレイしていた者にとっては有名過ぎるある事件が真っ先に思い浮かぶ。
聞いたことはないだろうか、「ネクロの夏」というフレーズを。世界選手権1996にて、《ネクロポーテンス》でドローし《ネビニラルの円盤》で流す、「ネクロディスク」なるデッキが猛威を振るったことを古くからのプレイヤーはこう表現し語り継いできたのだ。
とにかく、他のデッキよりもやれることが一段階上を行っていた、それぐらいに高いデッキパワーを誇り、成績上位者もこのデッキが占めていたというのだが……ではこの最強とされたデッキが世界王者の座をかっさらったのかというと、実はそうではない。
歴史的なまでの黒の荒波を乗りこなし、その頂点に輝いたのは、黒単デッキを狩るために作られた純なる白ウィニーだったのだ!
15 《平地》 1 《Kjeldoran Outpost》 4 《ミシュラの工廠》 4 《露天鉱床》 -土地(24)- 4 《サバンナ・ライオン》 4 《白騎士》 4 《白き盾の騎士団》 4 《Order of Leitbur》 2 《Phyrexian War Beast》 2 《セラの天使》 -クリーチャー(20)- |
1 《Lodestone Bauble》 1 《Zuran Orb》 4 《剣を鍬に》 1 《土地税》 1 《増援》 1 《臨機応変》 4 《解呪》 1 《天秤》 1 《復仇》 1 《ハルマゲドン》 -呪文(16)- |
1 《黒の万力》 1 《臨機応変》 1 《魂の絆》 4 《神への捧げ物》 1 《Energy Storm》 1 《復仇》 2 《アレンスンのオーラ》 1 《流刑》 2 《鋸刃の矢》 1 《Kjeldoran Outpost》 -サイドボード(15)- |
ウィニーというのは最近用いなくなったが、1~2マナ圏のクリーチャーを序盤からじゃらじゃら展開して殴るアグロデッキと思ってもらえばよい。かつては白と黒がこのウィニー戦略の色であったが、今ではすべての色で行える戦略となり、それに伴ってウィニーという呼称も用いなくなってきた。このデッキは白ウィニーの中でも2マナ圏にプロテクション(黒)を持った騎士を合計12枚用意し、徹底的にネクロを制するという姿勢を体現した「12Knights」と呼ばれるデッキだ。
動きはとても簡単、12の騎士と《サバンナ・ライオン》で開幕からポカポカ殴っていく。対戦相手が狙い通り黒ければ、騎士を除去することもブロックすることも困難なのでただそれだけのことで圧倒できてしまうことも。
この頃の白いデッキはメインから《解呪》を4枚積んでいるのが当たり前。
今ではなかなかできない構築ではあるが、これによって「ネクロディスク」側の対抗手段であるディスクこと《ネビニラルの円盤》がタップ状態の間に破壊することで、一切抵抗させずに制圧することもできる。
こう書くと1つのデッキを徹底的に狙っているデッキにも見えるが、総合力は高く純粋なデッキとして見ても当時のものとしては強い部類に入るだろう。
《Lodestone Bauble》《増援》といったやたらとシブいライブラリー操作、《Zuran Orb》と《天秤》のスーパーコンボなど、殴る一辺倒のデッキであっても引き出しは多い。
そして騎士たちを黒以外のデッキ相手にも活躍させるために採用されているのが《臨機応変》。
その名の通り、このカードでプロテクションの色を書き換えてどんなデッキ相手にもしぶとい騎士にしようってわけだが……わざわざメイン・サイドにこのカードを採用していながら、このデッキには青マナを生み出すカードが1枚も入っていない!
どういうこと?と思われるかもしれないが……これには語り継がれている説が2つあって、1つは《アダーカー荒原》を書き忘れたためデッキリスト不備によりその枠が強制的に基本土地の《平地》になったというもの。もう1つは自分で《平地》と書き間違えてしまったというもの。どちらにせようっかりさん!!
というわけでこのトーナメントでは《臨機応変》は何もしないカードとなってしまったのだが……それでもこのデッキが優勝してしまったのは、それだけネクロを踏み続けたというデッキチョイス・そして先述の引き出しの多さという構築の両面で大きくアドバンテージを得た結果であろう。
それではまた、構築の歴史の世界で会いましょう!
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