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岩SHOWの「デイリー・デッキ」
岩SHOWの「デイリー・デッキ」:特別編 2016年を彩ったデッキたち
岩SHOWの「デイリー・デッキ」:特別編 2016年を彩ったデッキたち
by 岩SHOW
今年もお世話になりました。個人的には当連載を開始し、当初は思いもしなかったほどの長いスパンで続けることができて......それがマジック的には一番の変化だったかなと。世界選手権やワールド・マジック・カップにも行けたというのも大きい経験だったね。マジックというゲームの面白さ・奥深さ・素晴らしさ、そういったものを伝えることができていれば嬉しいなと。来年ももっと頑張ろう!ということで、デイリー・デッキ2016年最終回。今年を彩ったデッキを振り返ろうかなと。決して手抜きじゃないぞ!早速見ていこう!
青赤エルドラージ(モダン)
プロツアー『ゲートウォッチの誓い』、それは僕らが知るマジックとは別次元の戦いが繰り広げられた、後世に語り継がれるであろうトーナメント。「無色エルドラージ」を受け止め蹴散らしたのはジャアチェン・タオ/Jiachen Taoが独自に生み出した「青赤エルドラージ」!
《空中生成エルドラージ》《不快な集合体》といったリミテッドで用いるカードという印象が強かったカードを、モダンで大活躍させた珠玉のデッキだ。《エルドラージの寺院》《ウギンの目》から高速でエルドラージたちを展開する、今振り返ると恐ろしいこと極まりないデッキだ。
黒緑アリストクラッツ(スタンダード)
バント・カンパニー(スタンダード)
2016年、強烈な印象を残したプレイヤーと言えばルイス・スコット=ヴァーガス/Luis Scott-Vargasだ。『ゲートウォッチの誓い』『イニストラードを覆う影』『異界月』とプロツアー3大会連続TOP8という快挙を成し遂げた。4大会連続なるか?というところでプロプレイヤーを休業しカバレージに専念するというのもカッコイイ、ずるいよ!
そんなルイスが使用したデッキは黒緑の《ナントゥーコの鞘虫》《ズーラポートの殺し屋》による瞬殺ルートを持ったコンボ寄りのビートダウン、そして白青緑の《森の代言者》《反射魔道士》などの3色の良いところを寄せ集めたミッドレンジデッキだ。この2種類のデッキの共通点は......
《集合した中隊》をデッキの主軸としていることだ。この4マナインスタントは、実質6マナ分の働きをするぶっ飛んだものだった。4マナ立ててターンエンドを宣言された時のうさん臭さが尋常ではなかったあの頃も、もう「懐かしい」過ぎ去った日々。
スゥルタイ対立(レガシー)
今年沸いた疑問が年内に解決した、というのは個人的に朗報。TOP8リストでひときわ異彩を放っていた「スゥルタイ対立」。フランスのレガシートーナメントでは往々にしてこの手のメタ外・独自進化を遂げたデッキが活躍したりするのだが、まさか2016年に《対立》の雄姿を見ることになるとはね。
その使用者はピエール・カナーリ/Pierre Canaliと記されており、これが初出場のプロツアー・コロンバス2004で優勝したピエール・カナーリ本人なのか?という疑問があったのだが......グランプリ・千葉2016でジェレミー・デザーニ/Jérémy Dezaniがこのデッキを使用し、その提供者がカナーリ本人であることを明かしてくれた。これでスッキリ!年越し準備万端だ。
白赤人間(スタンダード)
『イニストラードを覆う影』は闇の軍勢が力を取り戻し、人間たちが再び追い詰められるセットだ!......という話だったのだが、実際にはこのセットに収録された人間たちが強すぎて、狼男も吸血鬼もゾンビも手も足も出ない、という状況だった。《サリアの副官》により強化された《スレイベンの検査官》《町のゴシップ屋》ら軽量人間であっという間に20点のライフを削り取る、古き良き白ウィニーだ。
白単と青を少し足したものが環境初期に登場し、続いて《無謀な奇襲隊》を採用した白赤が姿を現し、一躍人気デッキに。最近では白緑や白黒も登場しているようだが......果たして、「白赤機体」に奪われたビートダウン筆頭の座を奪い返すことはできるのだろうか。2017年が楽しみだ。
ドレイク・フリッカー(Pauper)
2016年は『エターナル・マスターズ』が発売された年でもある。《意志の力》《カラカス》などに日本語名がようやく与えられたことにテンションが上がったのも記憶に新しい。
このセットの登場でカードとしての評価が大きく変わったものの1つが《流浪のドレイク》だ。
このドレイクは戦場に出ると、土地を5枚アンタップすることができる。これがこの度、コモンとなった(もとはアンコモン)。これと《記憶の壁》or《古術師》を《幽霊のゆらめき》でいったん追放して戦場に戻すと......簡単に無限マナ達成だ。
このギミックを搭載したデッキがコモン限定構築Pauperにて大量に作られ、環境最強デッキの一角として大暴れ。《流浪のドレイク》はこの記事で紹介した後に同フォーマットにて禁止カードに指定される。風のように現れ、去って行った。まさしくこの年を代表するデッキの1つだ。
現出ドレッジ(スタンダード)
2016年に開発され活躍したデッキはユニークなものが多く、マジックというゲームは洗練されているようで、まだまだ未踏の領域が残るゲームだなと思い知らされたものである。一番驚いたものをあげるのであれば......やはりこれだろう。AAさん(浅原晃)という傑物が生み出した2016年最高の発明をとくと見よ!
しかし何度も言うように、トーナメント開始20分前にこのデッキをなんとなくノリで組み上げるとは......2017年もAAさんの一挙手一投足から目が離せない。暴れてほしいなぁ。マジックシーンをひっかきまわしてほしいものである。
感染(モダン)
2016年激動のモダン環境、締めのイベントはワールド・マジック・カップ! チーム・モダンの比重が非常に大きいこのトーナメント、一番人気のデッキとなったのは「感染」。パーツが他と被りづらく、そしてもちろん強力なデッキであるため、今後チーム・モダンで遊ぶ機会があればこのデッキの存在は無視することはできないだろう。最速2ターンキル、4ターン目には安定して勝利することができる「感染」、今後はこのデッキを中心にモダンのメタゲームが進んでいくのだろうか。
2017年には日本国内でモダンのグランプリ・神戸2017(5月26~28日開催)も控えている。その頃には既存のデッキがどのように進化を遂げているか、あるいは......これを追いかけるのも楽しみだね。
バント・エルドラージ(モダン)
BBD(ブライアン・ブラウン=デュイン/Brian Braun-Duin)は夢をその手に掴んだ。その大きな身体と爽やかな笑顔にはトロフィーがよく似合う。世界選手権に「グランプリ・マスター」枠で出場したBBD、そこまでの道程は苦しいものだったと本人もインタビューで語っていた。
そんな彼のたゆまぬ努力が実を結んだその瞬間は、2016年マジックシーンでも屈指の名場面となった。彼がこのトーナメントの3日目、モダンラウンドで使用したのは「バント・エルドラージ」。《ウギンの目》禁止後もエルドラージは死なず!マナクリーチャーの加護と《変位エルドラージ》を引っ提げて、エルドラージ・サーガ第2章の始まりだ。
5色人間(ヴィンテージ)
せっかくなのでヴィンテージのデッキも1つ。このデッキはなかなかに衝撃のリストで、皆さまの反応も大きかったように思う。
数々の人間をまとめる《アヴァブルックの町長》が凛々しいが、今改めて見ると《サリアの副官》に置き換えても良いような気もする。あと、当時はなかった《聖域の僧院長》とかもデッキに入るかな。必然的に白が濃くなって、5色である理由もなくなるかもしれない。
ヴィンテージの研究がもっと進めば、それまでの常識を覆すようなデッキが増えるかもしれない。2017年は皆もデカい花火を上げようぜ!
グリクシス・コントロール(スタンダード)
2016年といえば......ヤソさん(八十岡翔太)が勝ちまくった年でもある。プロツアー『イニストラードを覆う影』TOP4、世界選手権2016TOP4、そしてプロツアー『カラデシュ』優勝! 日本中のマジックファンから愛されるマジックの聖人が、遂にプロツアー個人戦タイトルをその手に収めた。めでたい!この上なくめでたい!
ヤソさんが使用したのは「グリクシス・コントロール」、なのだが......本人が優勝者インタビューで「(このデッキを)使わない方が良い」と公言。実際にかなり玄人向き......というよりもいわゆる「本人専用機」であり、かつプロツアー『カラデシュ』には《霊気池の驚異》を用いたデッキが多いという読みに基づいて作られたデッキであり、海外のプロがこれをコピーしてグランプリに参加しても扱いきれずに「I'm not Shota Yasooka」という記事を書いたというエピソードもあるほどだ。
なので、当コラムでも恐れ多くて紹介できなかったという背景があるのだが......各種媒体での本人による解説や、決勝戦のカバレージ(テキストもビデオも)はファンなら必読必聴!ということで特別に取り上げさせていただいた。《奔流の機械巨人》を繰り出す姿が最高にカッコよかったんだよなぁ。
今年の印象深かったデッキ、10選。もっとマニアックなものを選んでやろうかとも思ったけども、やや無難目チョイスに。2016年、200回を超える連載を続けてみて......大変なこともあったけども、ただただ楽しかった! 広大なネットのジャングルを冒険し、面白いデッキリストという秘宝を見つけた時の歓び......また来年も、世界中の人々がそれぞれの思いを込めたデッキを眺めるのが楽しみでしょうがない。それでは、皆さまにとって2017年がより素晴らしいマジックイヤーになりますように! メリークリスマス! 良いお年を!
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