岩SHOWの「デイリー・デッキ」：５色人間（ヴィンテージ）

by 岩SHOW

　スタンダードでは現在「人間」デッキがビートダウンの代表デッキの１つとなっている。白単・青白・白緑・青白緑......様々なバリエーションの人間シナジーデッキが活躍している。一昔前では、人間たちをフィーチャーした部族デッキが組めるなんて考えられなかった。思えば初代『イニストラード』にて《教区の勇者》などの人間シナジーを持ったクリーチャーが登場したのも、今となっては懐かしい話だ。あのイニストラードに、今こうして５年ほどの時を越えて再度訪れているのだと考えると感慨深いものがある。

　さて、その初代人間シナジー組に属するあるカードが、グランプリ・東京2016の裏で行われていたイベントにて活躍していたのをご存じだろうか？ フランスのアヌシーにて開催されたBAZAAR of MOXEN Annecy 2016のメインイベント・ヴィンテージ。65名のプレイヤーが参加したこの大会を制したのは......ヴィンテージらしい《Mishra's Workshop》からアーティファクトを連打するデッキ、でもなく。《闇の誓願》からストームを稼いだ《苦悶の触手》を叩き付けるデッキ、でもなく。《ドルイドの誓い》から《グリセルブランド》を２ターン目に射出するデッキ、でもなく。「５色人間」だったのだ！

　すべての人間に＋1/＋1修正を与える《アヴァブルックの町長》がヴィンテージで活躍するなんて、誰が想像できたというのか。この町長の加護を受ける人間も《瘡蓋族の狂戦士》《カマキリの乗り手》《反射魔道士》などなどここ１年のスタンダードのクリーチャーたちである。なんとまあ、ヴィンテージ感ゼロ！

　ヴィンテージっぽくない面々が並ぶとは言え、それらも唯一無二の存在といっても良い能力を持った連中だ。人間はこのように能力のバリエーションが豊富なのがセールスポイントだ。《スレイベンの守護者、サリア》は相手が軽量呪文を唱えるのを食い止め、《封じ込める僧侶》は《ドルイドの誓い》やリアニメイト戦略、「ドレッジ」系のデッキを文字通り封じ込める。《闇の腹心》でカードを引き増しして、その手札を《貴族の教主》のマナブーストで展開していく。大型クリーチャーを出されたら《反射魔道士》で弾いて、《瘡蓋族の狂戦士》はストーム対策であり、《カマキリの乗り手》とともに速攻で駆け抜ける！

......個人的には、《クァーサルの群れ魔道士》が仲間はずれなのが何とも可哀想ではあるが、先出ししておけるアーティファクト・エンチャント対策でありながら殴り値を高めるクリーチャーなので採用しないわけにもいかずというところか。

　後はこれらを《Timetwister》以外のパワー９と万能除去《突然の衰微》を用いて高速展開をサポートする、というシンプルなデッキ。おそらく、初めてヴィンテージを遊ぶというプレイヤーにこのデッキをそのまま渡しても問題なく扱えるだろう。

　無限ターンや２ターン目《引き裂かれし永劫、エムラクール》なんかを仕掛けてくるデッキが居並ぶ中で、ただただ純粋なビートダウンが優秀というのは素晴らしい。皆もぜひ、ネットの海に転がる世界各地のヴィンテージのトーナメント結果を閲覧して見てほしい。面白いものがまだまだ落ちてるぞ！