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戦略記事

岩SHOWの「デイリー・デッキ」

岩SHOWの「デイリー・デッキ」:黒緑昂揚(スタンダード)

岩SHOWの「デイリー・デッキ」:黒緑昂揚(スタンダード)

by 岩SHOW

 「失うものがなかったので依然として強い」......マジックを、スタンダードをやっていると耳or目にするフレーズである。スタンダードというフォーマットにはローテーションが存在する。いつまでも1つのデッキが栄華を誇るわけではなく、そのデッキを形成するカードがスタンダードから去れば、自ずとそのデッキも過去のものとなる。こういう話は何度か書いた記憶があるので(この連載を開始してからスタンダードも二度目のローテーションを迎えた)、この程度に留めて本題へ。

 「黒緑昂揚」は失うものがなかった。今回のローテーションで「バント・カンパニー」は心臓を失ったが、「黒緑昂揚」はピンピンしている。まあ、『異界月』にて生まれたばかりのデッキがそんなに早く退場するのも困るので当然と言えば当然だが、全世界のゴルガリスト(※1)にとってはありがたい話である。

(※1:黒緑2色のカードやデッキを心底愛する人々の総称。ゴルガリとは次元ラヴニカに存在する緑と黒を司るギルドのこと。なお、僕以外のプレイヤーに「ゴルガリストなんですね」とか言っても通じないので気を付けよう)

 失うものがなく、デッキが存続する。なんだったら、新たに得たカードもある。となると...環境初期、まだ他のデッキがその完成形にたどり着けていないタイミングでは、すでに完成した状態でスタートするデッキはそれだけで有利である。いわゆる「わからん殺し」はなくとも、安定した強さは保証済みでのデッキ。今回の「黒緑昂揚」の立ち位置はそこだった。

 実際に、プロツアーにこのデッキパワーが確約された墓地利用型中速デッキを持ち込んだプレイヤーは、合計55名・全体の11.8%で第2位の使用率となった(参考)。手堅くいこう、と思ったプレイヤーが多かったのか、あるいは調整の末にこのデッキが改めて強力であると結論付けたチームが多かったのか......そこまではわからないが、2番人気になるとは思いもしなかったものである。他のデッキがかなり散った、というのもあるだろうけどもね。とにもかくにも、『カラデシュ』環境における「黒緑昂揚」の姿を見てみよう。

Tyler Hill - 「黒緑昂揚」
プロツアー『カラデシュ』 18位 / スタンダード (2016年10月14~16日)[MO] [ARENA]
8 《
6 《
4 《花盛りの湿地
4 《風切る泥沼
2 《進化する未開地

-土地(24)-

4 《残忍な剥ぎ取り
1 《森の代言者
2 《金線の使い魔
1 《不屈の追跡者
3 《精神壊しの悪魔
1 《ゲトの裏切り者、カリタス
2 《墓後家蜘蛛、イシュカナ
1 《新緑の機械巨人
1 《約束された終末、エムラクール

-クリーチャー(16)-
4 《ウルヴェンワルド横断
2 《発生の器
4 《闇の掌握
3 《過去との取り組み
2 《殺害
1 《破滅の道
4 《最後の望み、リリアナ

-呪文(20)-
2 《節くれ木のドライアド
2 《不屈の追跡者
1 《ゲトの裏切り者、カリタス
2 《死の重み
3 《精神背信
2 《人工物への興味
1 《知恵の拝借
1 《餌食
1 《灯の再覚醒、オブ・ニクシリス

-サイドボード(15)-

 結論から言うと、「黒緑昂揚」は負け組となった。使用率2位であったものの、TOP8に1名も送り込むことが出来なかったのである。この場で紹介するのは、そんな同デッキの中でも最後のラウンドを勝利すればTOP8、負ければ終わりという「バブルマッチ」までたどり着いたものの、最後の最後で敗れて夢を果たせなかったデッキリストである。

 《残忍な剥ぎ取り》《精神壊しの悪魔》《過去との取り組み》《発生の器》そして《最後の望み、リリアナ》を用いてライブラリーから墓地にカードを落とし、墓地に4種類以上のタイプのカードが落ちている状況=昂揚の条件を満たして、それによりボーナスを得られるカードを運用する、中速のデッキである。

 《残忍な剥ぎ取り》が4/4になり、《ウルヴェンワルド横断》が《Demonic Tutor》さながらの万能サーチになる。《墓後家蜘蛛、イシュカナ》は1枚のカードでクリーチャー4体を生み出し盤面をガッチリと固定する。また、厳密には昂揚は持たないが似たようなマナ・コスト軽減能力を持つ《約束された終末、エムラクール》。これらのデッキの軸となるカードには何ら変更はない。相変わらず強力な面々だ。

 ここに加わったのが、『カラデシュ』が誇るアーティファクト・クリーチャーたちである。1枚のカードで2つのタイプを持つため、これらが墓地に落ちると昂揚達成の速度が大幅に上がる。デッキの潤滑油として優秀であり......かつ、それらを墓地に落とさず普通に使用しても強力だったら言うことなしである。これまではそういったカードがなかったのだが、『カラデシュ』にて待望の強力アーティファクト・クリーチャーが登場した。

 《金線の使い魔》は3マナ2/2とサイズは大したことがないものの、戦場に出ればライフを2点回復し、死亡すればカードを1枚引くことができる、ナイス・ブロッカー。地上がメインのビートダウン相手に出せば、ターンを稼ぎながら速やかな昂揚を実現してくれることだろう。

 《新緑の機械巨人》は5マナ8/8トランプル相当と、規格外のコストパフォーマンスを誇る。+1/+1カウンターを自身に乗せてもよし、他のクリーチャーを強化してもよし。序盤は墓地に落ちてラッキー、中盤から終盤にかけては《過去との取り組み》《最後の望み、リリアナ》でこれを拾ってジ・エンド!というのが理想の動きである。

 残念ながら先述の通りTOP8進出はならなかったが......即ち、このデッキはまだまだここから改良の余地があると前向きにとらえるのがゴルガリストの正しき姿勢。今回のプロツアーで影の薄い2色となってしまったゴルガリの、その明日を発明ひらくのは君の役目なのだよ。

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