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戦略記事

岩SHOWの「デイリー・デッキ」

岩SHOWの「デイリー・デッキ」:赤緑ポンザ(モダン)

岩SHOWの「デイリー・デッキ」:赤緑ポンザ(モダン)

by 岩SHOW

 最近のマジックでは、マナを払った分だけしっかりと恩恵を受けることのできるデザインのカードが増えたように思う。以前のように、5マナ以上の重いクリーチャーを2マナの除去でサクッと撃墜されて何も得られず、ということは明らかに減った。デッキに採用される土地の枚数は増え、コストが重くともリターンの大きいカードを採用するデッキ構築も一般的なものとなった。1年ほど前のアブザン(白緑黒)系のデッキが《砂塵破》や《精霊龍、ウギン》を用いていたのなんてそれの典型だ。

 一方で、そういったヘビー級を盤面に叩き付けることを妨害するタイプのカードは数を減らしている。土地破壊だ。対戦相手の土地を盤面から取り去る=マナを奪うことで、行動不能に陥れてしまおう、というのは初期のマジックにおける一般的な戦略であった。基本セット、大型セットには当たり前のように《石の雨》が採用されていたのももう遠い昔の話。今では《破砕》のような4マナで土地を1枚破壊するというのが最軽量の土地破壊呪文となってしまっている。

 土地を破壊されてイヤな思いをして負けるプレイヤーを減らそう、というデザインの方向性自体は素晴らしいし尊重したいが、ランデス(土地破壊)全盛期に育った世代としてはやや刺激が足りないと思ってしまう時がある。

 でも大丈夫、モダンなら《石の雨》も現役だ。1ターン目マナクリーチャー、2ターン目に土地破壊という必勝パターンもまだまだ狙える。「赤緑ポンザ」を紹介しよう。

Dan Wren - 「赤緑ポンザ」
ワールド・マジック・カップ2016 スコットランド予選(ダンディー) / モダン (2016年9月18日)[MO] [ARENA]
9 《
1 《
3 《踏み鳴らされる地
4 《樹木茂る山麓
4 《吹きさらしの荒野
1 《ケッシグの狼の地

-土地(22)-

4 《東屋のエルフ
2 《極楽鳥
2 《強情なベイロス
1 《嵐の息吹のドラゴン
1 《スラーグ牙
4 《業火のタイタン

-クリーチャー(14)-
4 《楽園の拡散
4 《血染めの月
4 《石の雨
2 《内にいる獣
4 《ムウォンヴーリーの酸苔
1 《原初の命令
4 《忌むべき者のかがり火
1 《紅蓮の達人チャンドラ

-呪文(24)-
3 《台所の嫌がらせ屋
1 《カメレオンの巨像
1 《最後のトロール、スラーン
3 《突然のショック
2 《古えの遺恨
3 《神々の憤怒
2 《四肢切断

-サイドボード(15)-
mtgtop8.com より引用)

 数々のパワーカードが居並ぶモダンにて《石の雨》がまだまだ現役のカードとして活躍しているというのは...何とも感慨深い。それらのパワーカードも、結局のところ土地がないと唱えることができないということだ。このデッキが採用している土地破壊は合計11枚。《石の雨》《ムウォンヴーリーの酸苔》の土地破壊専用カードと、《内にいる獣》《原初の命令》の何でも対処できるカードとで構成されている。

 基本戦略は、前述のようにマナを伸ばすカードを用いながら対戦相手の土地を破壊していき、マナの格差をつけてからこちらがパワーカードを連打していく、という形になる。

 1ターン目は何が何でもマナ加速系のカードを唱えたい。《東屋のエルフ》《極楽鳥》と定番のマナクリーチャーに加えて、《》に貼りつけるオーラ《楽園の拡散》も採用して合計10枚。これだけ搭載しておけば2ターン目に3マナ、3ターン目に4マナを得られる確率はかなり高い。《東屋のエルフ》と《楽園の拡散》を組み合わせることで、ただマナ・クリーチャーを2体並べるよりも1マナ多く生み出すことができるのがポイントだ。1ターン目にはしっかりと《》を最優先で戦場に出したいものだ(《踏み鳴らされる地》でもOK)。

 土地破壊の中でも《ムウォンヴーリーの酸苔》は、対戦相手と自分が使えるマナの差を拡げるカードとしては最上級のものだ。土地破壊とマナ加速を同時にこなすこのソーサリーは登場時から固定ファンも多く、おそらくモダンで現状緑絡みの土地破壊デッキを用いているプレイヤーはこのカードを唱えたいがためにデッキを組んでいると言っても過言ではないのだ(と思う)。

 さて、マナの差がついたら勝利手段を叩き付ける時間だ。このデッキで4枚採用されているフィニッシャーは《業火のタイタン》! 戦場に出た時と攻撃時に3点のダメージをばらまく、攻撃的な大型クリーチャーを連打して、戦場のクリーチャーを薙ぎ払いつつさっさと勝ってしまおうというわけだ。

 ダラダラしていると土地を引かれて盤面を立て直されて逆転負けなんてこともあるので、この巨人を中途半端な枚数ではなく4枚採用しているのは理に適っているし、何より美しい。同じくフィニッシャー枠の《スラーグ牙》《嵐の息吹のドラゴン》あたりが散らして採用されているのは、それぞれに効く相手が異なるためというのもあるだろう。自身の周りにライフを序盤から狙ってくるデッキが多ければ《スラーグ牙》を2枚にしても良いだろうし、《嵐の息吹のドラゴン》のプロテクション(白)が活きてくるならその逆も然り。あるいは、全く別のカードを採用するのもありだ。プレインズウォーカーを採用するとかね。これらのフィニッシャーを探してくるのに《原初の命令》《紅蓮の達人チャンドラ》は役に立ってくれることだろう。

 土地を破壊して相手を動けなくして自分だけ悠々と勝利に向かう。こういったデッキを古くから「ポンザ」と呼び、今日でもその習慣は引き継がれている。そもそも「ポンザ」とは何を意味するのか? 疑問に思ったプレイヤーも少なくないだろう。ポンザ=Ponzaは、最初に赤単の土地破壊デッキを構築し世に広めた人物がよく注文するファーストフードが元ネタとのことである。その料理はどんなものか、調べてみると...そもそもPonzaというのはイタリアの島の名前で、正しくはポンツァ。「Ponza food」で検索してみたところ、ピザのようなラビオリのような料理の写真が多数出てきたので、おそらくそういったものがポンツァ風~といった名前で提供されていたのではないかなと。ポンツァ島の人々も、まさか自分の故郷がデッキ名になっているとは思っていないんだろうなぁ。

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