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戦略記事

岩SHOWの「デイリー・デッキ」

岩SHOWの「デイリー・デッキ」:ダーク・バント(レガシー)

岩SHOWの「デイリー・デッキ」:ダーク・バント(レガシー)

by 岩SHOW

 人は「ダークサイド」なるものに惹かれる。強大なる闇の存在......代償なしでは得られぬ、暗黒面の力。あらゆるファンタジー作品において、常道を踏み外しダークサイドに属するキャラクターたちが登場し活躍する。マジックにおいても、黒が絡むクリーチャーやプレインズウォーカーは恐ろしき闇の力を振るう。個人的に好きなのは《無慈悲なる者ケアヴェク》かな。

 さて、マジックの背景世界のみならず、そのゲームにおいてもダークサイドに飲まれたデッキというものは存在する。本来ならば黒と関係のない色で構成されたデッキに、黒いカードをほんの少し加える(これを「タッチ」と言う)ことで、本来そのデッキが有さなかった除去や手札破壊が使えるようにする構築がしばしば見られる。こういったデッキを「ダーク○○」と呼ぶ。近年で最も活躍したダーク系のデッキと言えば「ダーク・ジェスカイ」だろう。青白赤のジェスカイカラーのデッキに《はじける破滅》や《苦い真理》といったカードを追加採用したこのデッキは、『戦乱のゼンディカー』発売後のスタンダードでは高い人気を誇ったのも今となっては懐かしい。

 こういう前フリをしたからには、今日はダーク○○をご紹介するということ。それではご覧いただこう、レガシーの「ダーク・バント」だ。

Thiago Cordeiro - 「ダーク・バント」
7 etapa da Liga Mineira de Legacy トップ8 / レガシー (2016年9月18日)[MO] [ARENA]
3 《Tropical Island
2 《Tundra
1 《Underground Sea
4 《霧深い雨林
2 《溢れかえる岸辺
2 《吹きさらしの荒野
1 《低木林地
4 《不毛の大地

-土地(19)-

4 《死儀礼のシャーマン
4 《貴族の教主
4 《石鍛冶の神秘家
3 《真の名の宿敵
1 《トレストの使者、レオヴォルド

-クリーチャー(16)-
4 《渦まく知識
4 《剣を鍬に
2 《思案
4 《目くらまし
1 《森の知恵
4 《意志の力
1 《梅澤の十手
1 《火と氷の剣
1 《殴打頭蓋
2 《精神を刻む者、ジェイス
1 《遍歴の騎士、エルズペス

-呪文(25)-
2 《翻弄する魔道士
2 《外科的摘出
2 《狼狽の嵐
1 《墓掘りの檻
1 《真髄の針
2 《突然の衰微
2 《盲信的迫害
1 《解呪
1 《壌土からの生命
1 《クローサの掌握

-サイドボード(15)-
mtgtop8.com より引用)

 一昔前に......いやもう二昔以上前にもなるか。レガシー環境において頂点に君臨していたデッキのひとつであった「バント石鍛冶」を思い出させるデッキである。緑のマナ加速からの《石鍛冶の神秘家》による装備品戦略、それをサポートする青い打ち消しとドロー、そして白い除去......という、シンプルな構成のデッキであった。

 今回このデッキに追加されたダーク要素は...メインデッキではわずかに《死儀礼のシャーマン》の能力起動に用いるのと、《トレストの使者、レオヴォルド》のみに留まる。シャーマンはマナクリーチャーの追加であり、ライフ回復もダメージ源としての仕事もこなすスーパー1マナクリーチャーとして広く知られていることだろう。今日は主に《トレストの使者、レオヴォルド》について語ろう。

 たった1枚の採用ながら、このレオヴォルドの能力はレガシーというフォーマットに実に噛み合っており強力だ。3色要求するということで唱えるためのハードルは高いが、一度戦場に出てしまえば対戦相手の《渦まく知識》も《思案》も《森の知恵》も《垣間見る自然》も《信仰無き物あさり》も怖くない。レガシーではこれらを用いてコンボパーツをかき集めたり物量で押すデッキが多く存在するため、それらに対して先置きで蓋が出来るレオヴォルドの能力は魅力的なものである。

 また、もう1つの能力も絶妙にいやらしい。レオヴォルドが戦場にいる限り、あなたやあなたのパーマネントは対戦相手の呪文や能力の対象になり辛くなることだろう。たとえ《不毛の大地》を起動して土地を割ったところで、カードを引かれてすぐさまリカバリーなんてされたら割に合わないからだ。レオヴォルドがすぐさま《稲妻》や《剣を鍬に》で除去されても1枚ドローは確約されるし、もしそこで《意志の力》《目くらまし》を引いたらそのまま護ってやることだって可能だ。これがマナクリーチャー経由で2ターン目なんかに戦場に出て来たら、厄介なことこの上ないだろうな。

 対戦相手の土地を《不毛の大地》《リシャーダの港》で抑え込んで《罰する火》を投げつけてクリーチャーを除去する「Lands」にとっては、まさしく悪夢のようなクリーチャーである。伝説のクリーチャーということもあって1枚に抑えられてはいるものの、今後も「Lands」が幅を利かすようであればその枚数は増えていくかもしれない。このデッキのようにバントで採用する以外にも、出張先は多くなるかもね。

 黒を採用することで得られるのはレオヴォルドのみではなく、サイドボードには《突然の衰微》《妄信的迫害》、あと黒マナがなくても使用できるが《外科的摘出》が採用されている。メインでの対戦でレオヴォルドを引かず、黒い要素を一切見せずにゲームを終えていたら......《妄信的迫害》なんて予想外の角度からぶっ刺さることだろう。こういった対戦相手の意表を突くサイドボードを行えるのもダーク系が売りにしているところである。メインで勝っている状況では、無駄にタッチしている色を見せない、というのも大事なことだ。

 「ダーク○○」の歴史は古く、個人的には「ダーク・ファイアーズ」世代だったりするので......今後、そういったデッキも紹介していくことになるだろう。どんなデッキにも気が付けば黒をタッチしてしまうダークサイドの信者たちよ、その刻が来るのを待っていてくれたまえ。

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