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市川ユウキの「プロツアー参戦記」
プロツアー『サンダー・ジャンクション』 後編
こんにちは!市川(@serra2020)です!
前編より続き、後編はドラフト環境の考察からトーナメントレポートをお届けします。よろしくお願いします。
0.ドラフト考察
最強カラーは文句なしで緑。
クリーチャーの質が高く、連打するだけで勝てる《巨大ビーバー》、なぜか除去を打たれると1ドロー出来る《サボテンチュラ》はもちろんのこと《棘林の聖騎士》、《自由放浪団の猛士》なんかも他のカラーでは4番を張れるほどの逸材です。
そこに繋げるカードも《ハードブリスルの略奪者》としっかりと強めのマナクリーチャーがコモンに存在し、低レアリティでクリーチャーを担保出来ます。
スペル群も極上です。
乗騎クリーチャーで打ち込むと一方、+カウンター、2マナと《弱者狩り》を3段階くらいパワーアップした除去になる《鞍上からの投擲》。
これだけクリーチャーのラインナップが優れていますから一回守るだけで勝てる=軽く守れる《蛇皮のヴェール》も揃っておりますと、大盤振る舞いな緑。
メチャクチャでかい《護民官の道探し》こと《荒野無頼団の緑刃》。一瞬でゲームを決められるサイズになる《気性の荒いタンブルワグ》など、アンコモン/レア以上を見渡しても他よりも優れています。
この最強カラーである緑と組み合わせるベストカラーは白。
緑白で組んだら大体のクリーチャーにカウンターが乗る《群れと話す者、ミリアム》、ライフレースにならない《集いのグリフ》とマルチカラーのアンコモンが優秀で、これらが参入のチャンスと言えます。
《開拓地の探求者》、《雲飼い》などの白いアンコモンも緑白だと上手く使えます。どちらも他のカラーリングでも決して悪いカードではないのですが、こと緑と組み合わせたときこそ真価を発揮するカードです。
一方、最弱色は青。
《けばけばしい伊達者》、《泉の飛沫散らし》と2マナクリーチャーたちは一癖あります。前者はスペルを連打出来る青赤で組まなければ弱く、後者は攻める青黒にしないと……といった印象で早めに取りたくは全くありません。
レアも《牧場の迷い子、フブルスプ》や《宝物庫の鍵》など、プレイに値しないレアが多いです。マルチカラーのレアも《爆発の仕掛け人、ブリーチェス》や《潜入者、悟》などパッとしないカードばかり。
青単色で初手級のカードは《冷静なスフィンクス》と《肉大工、ゲラルフ》のみ。マルチカラーのレアも含めても《乱伐者、ボニー・ポール》が増えるのみで、コモン、レアどちらでも最弱を誇っています。
コモンもレアも弱いとなると卓内の誰もが参入できず、青が絡むマルチカラーのアンコモンがどしどし流れてくる状態。
《暴力的な不協和音、クラム》や《見覚えのある余所者、ラザーヴ》は単体で見ると優れたカードだと思いますが、青赤、青黒のカラーリングの弱さから序盤にピックすることは敬遠されがちで、良く流れてくる印象です。
ここまで挙げていない黒と赤は至って普通です。青ほど弱くはないし、緑や白ほど優れてはいない。ただ、正直青が飛び抜けて弱く、他4つは大きく離れていない印象なので黒赤などでも3-0は全然可能性があります。
プロツアーのドラフトは初日と2日目で卓の状況が大きく異なります。
初日はアリーナのランクドラフトでしか練習環境がないようなプレイヤーも多く見られ、アリーナ上で人気のカラーリングは卓内で競合する確率が高いと言えます。
今回で言えば緑白は決め打ち気味に入ってくるプレイヤーがいる可能性が高く、参入するのはリスクが高いと言えるでしょう。
逆に2日目は卓のレベルも上がり、流れに沿ったピックをするプレイヤーが多くなります。そうなれば人気色に飛び込む必要性も出てきますし、流れが良ければ参入することは問題ないでしょう。
1.出発~前日
今回のプロツアーの舞台はアメリカのシアトル。シアトルはアメリカでも西海岸に位置し、直行便もあって大変便利!12時間も掛からず(これは感覚が麻痺しているかもしれない)到着出来るので、アメリカでプロツアーが開催されるときは毎回シアトルでお願いしたいレベルです。
シアトルはダブルグランプリ(レガシー/スタンダード)であった「グランプリ・シアトル2018」以来で実に6年ぶりでした。
前回行ったときに気に入り過ぎて連日行ったクラムチャウダーとロブスターサンドのお店に再訪。どちらも変わらずメチャクチャ美味い!のですが、値段は日本円で倍以上に激変!
円安とアメリカのインフレは留まるところを知らず、行くたびに物価の上昇にクラクラします。気にしていたら何も食べられない、何も買えないので基本滞在中は気にしないようにしています。でもクラクラはします。
スターバックスの1号店!開業当時の趣を敢えて残しているみたいです。
写真の通り混んでいたので素通り。
シアトルは海沿いの街なので海産物が豊富です。市場があって、こんな感じでお魚が並べられていました。
2.初日/ブースタードラフト
初手は《害獣の侵入》。対象は「最大」なので、実は対象を取らなくてもプレイすることが出来ます。基本的には5マナ4体、7マナ6体のXスペルで、それに《帰化》能力がオマケで付いてくると考えると破格過ぎるカード、ありがたくピック。
2手目は優秀な除去呪文《直接射撃》。
3手目はマルチカラーの《灰毛の天才、オーロック博士》。正直この程度のカードで青に参入するのはリスクが高いですが、他にめぼしいカードがなかったこと、緑青になるなら必須級のカード、ピックせざるを得ません。
その後は特に波乱もなくそのまま緑青のデッキに。2-2で《荒野無頼団の緑刃》で流れてきたこと、3-1で《巨大なガラガラワーム》をオープンしたことは単純にツイていましたね。
緑色のデッキなのに上のマナ域が《愚者の滝のジン》、《豪華な機関車》と心許なくて完成度はイマイチ。
《サボテンチュラ》や《巨大ビーバー》はもとより、1パック目で流した《自由放浪団の猛士》と《棘林の聖騎士》も全て帰って来ず、緑が卓でフローしていた感じが伺えます。
第1回戦:白黒 ◯◯
第2回戦:青緑 ◯◯
第3回戦:黒赤 ×◯×
結果は予想外に2勝するも最後は上家の黒赤に負けて2-1。
メインを《用心棒、ラクドス》で粉々にされ、3ゲーム目は先手ターン2《腐食の荒馬》からの《悔悟せぬ者、アクル》であえなく勝負あり。
第1回戦は「プロツアー『指輪物語』」優勝者のジェイク・ビアズリー/Jake Beardsleyさん。
第2回戦は「マジック世界選手権2018」優勝他実績多数のハビエル・ドミンゲス/Javier Dominguezさんと序盤からとんでもないマッチングでした。
ハビエルさんは見せていない《巨大なガラガラワーム》をケアして攻撃に来なかったので驚きましたね。確かに私が《灰毛の天才、オーロック博士》で攻撃して何もなければハビエルさんの《群追いの灰色熊》がフリーアタックの盤面だったので、怪しくはあるんですがケアするかはまた別の話ですからね。
特に《巨大なガラガラワーム》は私の3パック目のオープンパックなので、ピックから得られる情報は全くないですから、流石トップオブトップのプレイヤーだなと感嘆していました。
3.初日/構築
6 《島》 4 《貴顕廊一家の劇場》 4 《山》 4 《舞台座一家の中庭》 2 《土建組一家の監督所》 4 《斡旋屋一家の潜伏先》 6 《森》 -土地(30)- 1 《好奇心の神童、ケラン》 4 《復活した精霊信者、ニッサ》 1 《樹海の幻想家、しげ樹》 4 《事件現場の分析者》 -クリーチャー(10)- |
3 《強靭の徳目》 4 《間の悪い爆発》 4 《世界魂の憤怒》 4 《記憶の氾濫》 3 《勝利の炎》 2 《洞窟探検》 -呪文(20)- |
2 《産業のタイタン》 2 《乱伐者、ボニー・ポール》 1 《温厚な襞背》 1 《ティシャーナの潮縛り》 2 《毒を選べ》 2 《吸血鬼の復讐》 1 《本質の散乱》 2 《否認》 1 《削剥》 1 《勝利の炎》 -サイドボード(15)- |
第4回戦:ボロス召集 ◯◯
第5回戦:アゾリウス・コントロール ××
第6回戦:エスパー・ミッドレンジ ◯×◯
第7回戦:エスパー・ミッドレンジ ◯◯
第8回戦:エスパー・ミッドレンジ ◯××
構築は3勝2敗、ドラフトラウンドと合わせて5勝3敗で初日抜け。
最後は怒涛のエスパー・ミッドレンジ3連戦。対エスパー・ミッドレンジは相手の構成次第ですが、殆ど五分五分でかなりタフなゲームになります。サイド後は墓地依存のカードは減らすサイドプランではあるものの、《事件現場の分析者》のバリューを考えると少ないに越したことはありません。
今回は3人合わせて《安らかなる眠り》1枚のみの墓地対策とかなりガードが低くて助かりましたが、それでも特段有利というわけではなく、3勝とはいきませんでした。
最終戦は《間の悪い爆発》にスタックしてジャッジを呼んで対戦相手がルールを確認。現環境のスタンダードでルールを確認するカードは9割方《ティシャーナの潮縛り》で、しかも《間の悪い爆発》のスタック。
《ティシャーナの潮縛り》かぁ、負けたかなぁと思いながらも盤面的に捨てないわけにもいかなく、ディスカードして当然《ティシャーナの潮縛り》で誘発を打ち消されて(全体ダメージの方は遅延誘発型能力なので打ち消せます)敗北しました。
今回の目標は10勝6敗。
明日も5勝3敗できれば目標達成……次のプロツアーに参加出来ます。
4.2日目/ブースタードラフト
初手は速報枠の《流刑への道》。ちょっと強いくらいの除去呪文なので、初手はちょっとさみしいです。
2手目はあまりにも取るものがなくてまさかの《浸食された渓谷》。練習で一度もみたことがないレベルの弱パック、思わず13枚あるか再確認しました。
《戦慄の奔出》はギリギリ初手もありうるかな?くらいのレアカードなので黒がこれから流れてくるかも?という淡い期待も持ちましたが兎角流れてこず。
出来たデッキはこちら。
砂漠の入っていない《サボテンチュラ》、タッチカラーのない《オアシスの庭師》、《頑固な穴掘り悪鬼》と縦シナジーの《匪獣の隆盛》と引いてはいけなそうなカードがちらほら。
流れ自体はそこまで悪くなさそうだったんですが、序盤の《流刑への道》と《頑固な穴掘り悪鬼》をピックしたタイミングで《集いのグリフ》を流してしまっていたので下の方に緑白が出来ていそうでした。
デッキカラーをロックしていたらマルチカラーのカードをピックして下にシグナルを出せるんですが、最序盤だとどうしてもその色にならなかったときのリスクを考えて単色のカードを優先してしまいます。
4~6手目くらいだとちょうど良いんだけどとは思うんですが、私の下で《集いのグリフ》をピックした人はまさしく4~6手目くらいでピックしているでしょうし、中々に難しいピックでした。
第9回戦:白黒 ××
第10回戦:黒赤 ◯◯
第11回戦:緑白 ×◯×
2ndドラフトは1勝2敗、トータル6勝6敗で構築ラウンドへ。
初戦の白黒は完成度がすごく、《厄介者、ギサ》から速報枠の《思考囲い》でトークンが出たりなどして10分くらいで負けました。
黒自体は私も参入タイミングを狙って摘んでいたものの、1~2パック目で流れてこず断念。が、3パック目でどうやら出ていなっただけのようで怒涛の黒ラッシュに。《殺害》が一周するなどのフィーバーで黒いデッキには当たりたくないなと思っていた矢先でした。
初戦のイーライ・カシス/Eli Kassisさんとはマッチが終わったあとに少し話したんですが、初手《厄介者、ギサ》で一直線だったようです。
3戦目はちょうど反対側だった緑白。メインがロングゲームになり、デッキを8割型見て相手が先手だと勝てなそうだなと、3ゲーム目でドラフトらしからぬ色替えを敢行。
相手はダブルマリガンで流石に勝ったか!?と思うも、現実は非情でマナフラッドして死亡。
ゲーム展開的に《集いのグリフ》さえなんとか出来ていれば勝てそうだったので、入れていなかった《振り落とし》(画像では入っていますが実際には投入していません)を入れておけば勝てていたかも知れません。
マナクリーチャーも2枚入っていますし、土地16で良かったです。ドラフトで色替えしたのは人生でも初めてのことで、思いついたのが2ゲーム目の最中だったこともあり細部まで詰められませんでした。
5.2日目/構築
第12回戦:アゾリウス・アーティファクト ◯××
第13回戦:ゴルガリ・ミッドレンジ ×◯×
第14回戦:エスパー・ミッドレンジ ◯◯
第15回戦:赤単アグロ ◯×◯
第16回戦:版図ランプ ◯×◯
スタンダードは3勝2敗。2日間トータルで9勝7敗。
プロツアーの参加権利は10勝6敗以上なので、惜しくも1勝足りず権利を獲得出来ませんでした。
構築6勝4敗は想定内。至って平凡なティムールランプを使って爆勝ち!みたいなのは正直イメージつかなかったのでこんなもんだろうなという感想。
ドラフトはあと1勝くらいしたかったですが、組んだ2つのデッキを見るに妥当だと思います。どちらも少しふわっとしたデッキになってしまって、もう少し明確なプランを持って(緑白はやらない!みたいな)望めば良かったなと反省しました。
6.まとめ
私は目標の10勝6敗に達しませんでしたが、調整チーム・森山ジャパンの面々は大躍進!トップ8に井川さん、高橋さん、松浦さんとなんと3人が入賞!
……からの井川さんが優勝!高橋さん準優勝、松浦さん3位で森山ジャパン怒涛の1・2・3フィニッシュ。
中村監督も誇らしげですpic.twitter.com/JJpnjuKMBV
— Masahide Moriyama/鮭くれーぷ (@SakeIzumo) April 28, 2024
トップ8に残った3人以外もご覧の好成績。チームとしては10人中8人がプロツアーチェインと、大成功で幕を閉じました。
チームの成功は喜ばしいことですが、自分が次のプロツアーに出られないと元も子もありません。アリーナで行われていたチャンピオンシップから含めると実に2年ほど競技イベントに出続けていた筆者ですが、とうとうプロツアーから脱落してしまいました。
次のプロツアーの権利を獲得出来るのは今月末にあるチャンピオンズカップファイナルのみと限られていますが、プロツアーに復帰できるように全力を尽くします!
また、もし権利が取れなかったとしてもくじけません。現状のシステムではどうしてもプロツアーに継続出場するのは難しいですからね、切り替えも大事です。
以上で今回の記事は終わりとなります。プロツアーの権利を喪失してしまったので次の記事は未定ですが、またこの連載でお会いしましょう!
ではまた!
市川
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